問題:

A、B及びCが、債権者Xに対し、300万円の連帯債務(各自の負担部分は100万円ずつ)を負っている場合に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。なお、各記述において、別段の意思表示はないものとする。

ア. AがXに対して200万円の貸金債権を有する場合において、Aが相殺を援用しない間は、Bは、Aの負担部分である100万円の限度において、Xに対して債務の履行を拒むことができる。

イ. XがAに対して履行の請求をしたときは、B及びCに対しても、その効力を生ずる。

ウ. AがXに60万円を弁済して共同の免責を得た場合には、その額はAの負担部分である100万円を超えないから、Aは、B及びCに対して求償することができない。

エ. Aが、他の連帯債務者があることを知りながら、共同の免責を得ることをB及びCに通知しないでXに300万円を弁済した場合において、BがXに対して相殺に供することができる債権を有していたときは、Bは、その負担部分について、相殺をもってAに対抗することができ、この場合には、Aは、Xに対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

オ. XがAに対して債務の全部を免除した後、BがXに300万円を弁済したときは、Bは、Aに対しては、求償権を行使することができない。

答え:

正しいものは、ア・エの2つである。

解説:

ア 正しい。民法439条1項は、「連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。」と定め、同条2項は、「前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。」と定めている。同項がBに認めているのは、Aの負担部分である100万円の限度で債務の履行を拒むことである。

イ 誤り。民法441条は、「第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。」と定めている。同条本文が除外しているのは、更改(民法438条)、相殺の援用(民法439条1項)及び混同(民法440条)であり、履行の請求はこれに含まれない。別段の意思表示がない本肢では、Aに対する履行の請求は、B及びCに対してその効力を生じない。なお、民法440条は、「連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。」と定めている。

ウ 誤り。民法442条1項は、「連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。」と定めている。Aは、60万円がAの負担部分を超えなくても、B及びCに対し、60万円のうち各自の負担部分(3分の1ずつ)に応じた20万円ずつを求償することができる。なお、同条2項は、「前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する。」と定めている。

エ 正しい。民法443条1項は、「他の連帯債務者があることを知りながら、連帯債務者の一人が共同の免責を得ることを他の連帯債務者に通知しないで弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得た場合において、他の連帯債務者は、債権者に対抗することができる事由を有していたときは、その負担部分について、その事由をもってその免責を得た連帯債務者に対抗することができる。この場合において、相殺をもってその免責を得た連帯債務者に対抗したときは、その連帯債務者は、債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。」と定めている。

オ 誤り。民法445条は、「連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第四百四十二条第一項の求償権を行使することができる。」と定めている。Aに対する免除は、民法441条本文により、B及びCに対してその効力を生じず、300万円を弁済したBは、免除を受けたAに対しても、Aの負担部分に応じた額を求償することができる。

ポイント:連帯債務者の一人について生じた事由は、民法441条本文が除外する更改、相殺の援用及び混同(民法438条、439条1項、440条)の場合を除き、他の連帯債務者に対して効力を生じず、履行の請求や免除もこの原則に従うが、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力はその意思に従う(民法441条)。反対債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、他の連帯債務者はその負担部分の限度で債務の履行を拒むことができる(民法439条2項)。求償は、免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、支出した財産の額のうち各自の負担部分に応じてすることができ(民法442条1項)、他の連帯債務者があることを知りながら事前の通知をしないで免責を得た者は、他の連帯債務者から債権者に対抗することができた事由をもって対抗される(民法443条1項)。免除を受けた者や時効が完成した者に対しても求償権を行使することができる(民法445条)。「441条本文の例外は更改・相殺・混同だけ、相殺しない間は負担部分の限度で拒める、求償は負担部分を超えなくてもできる、事前の通知を怠ると対抗される、免除を受けた者にも求償できる」と押さえる。


問題:

登記識別情報に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 申請人である法人が法定代理人によらないで登記を申請した場合には、登記識別情報の通知は、当該法人の代表者に対してするものとされている。

イ. 登記識別情報の失効の申出は、登記名義人に限りすることができ、登記名義人の相続人は、することができない。

ウ. 登記識別情報の通知を受けるべき者が官庁又は公署である場合には、当該官庁又は公署があらかじめ登記識別情報の通知を希望する旨の申出をした場合を除き、登記識別情報は通知されない。

エ. 書面申請により登記識別情報の通知を受けるべき者が、登記完了の時から30日以内に登記識別情報を記載した書面を受領しない場合は、登記識別情報の通知を要しない場合に当たる。

オ. 同一の不動産について所有権の移転の登記と抵当権の設定の登記とが前後を明らかにして同時に申請された場合において、所有権の移転の登記によって登記名義人となる者が抵当権の設定の登記の登記義務者となるときは、抵当権の設定の登記の申請情報と併せて提供すべき登記識別情報は、当該申請情報と併せて提供されたものとみなされる。

答え:

誤っているものは、イ・エの2つである。

解説:

ア 正しい。不動産登記規則62条1項は、「次の各号に掲げる場合における登記識別情報の通知は、当該各号に定める者に対してするものとする。」と定め、1号に「法定代理人(支配人その他の法令の規定により当該通知を受けるべき者を代理することができる者を含む。)によって申請している場合」について「当該法定代理人」を、2号に「申請人が法人である場合(前号に規定する場合を除く。)」について「当該法人の代表者」を掲げている。なお、同条2項は、「登記識別情報の通知を受けるための特別の委任を受けた代理人がある場合には、登記識別情報の通知は、当該代理人に対してするものとする。」と定めている。

イ 誤り。不動産登記規則65条1項は、「登記名義人又はその相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、通知を受けた登記識別情報について失効の申出をすることができる。」と定めている。なお、同条5項本文は、登記名義人の相続人その他の一般承継人が失効の申出をするときは、申出情報と併せて相続その他の一般承継があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報を提供しなければならないと定めている。

ウ 正しい。不動産登記法21条は、「登記官は、その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において、当該登記を完了したときは、法務省令で定めるところにより、速やかに、当該申請人に対し、当該登記に係る登記識別情報を通知しなければならない。ただし、当該申請人があらかじめ登記識別情報の通知を希望しない旨の申出をした場合その他の法務省令で定める場合は、この限りでない。」と定めている。不動産登記規則64条1項は、同条ただし書の法務省令で定める場合として、4号に「法第二十一条本文の規定により登記識別情報の通知を受けるべき者が官庁又は公署である場合(当該官庁又は公署があらかじめ登記識別情報の通知を希望する旨の申出をした場合を除く。)」を掲げている。

エ 誤り。不動産登記規則64条1項3号は、「法第二十一条本文の規定により登記識別情報の通知を受けるべき者(第六十三条第一項第二号に定める方法によって通知を受けるべきものに限る。)が、登記完了の時から三月以内に登記識別情報を記載した書面を受領しない場合」を掲げている。不動産登記規則63条1項2号は、書面申請について「登記識別情報を記載した書面を交付する方法」を定めており、書面申請の場合の期間は3月である。30日は、電子申請の方法(同項1号)によって通知を受けるべき者について、送信することが可能になった時から30日以内に自己の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに登記識別情報を記録しない場合を定める不動産登記規則64条1項2号の期間である。なお、同条3項は、登記官は、同条1項2号に規定する場合には同号に規定する登記識別情報を、同項3号に規定する場合には同号に規定する登記識別情報を記載した書面を廃棄することができると定めている。

オ 正しい。不動産登記法22条本文は、「登記権利者及び登記義務者が共同して権利に関する登記の申請をする場合その他登記名義人が政令で定める登記の申請をする場合には、申請人は、その申請情報と併せて登記義務者(政令で定める登記の申請にあっては、登記名義人。次条第一項、第二項及び第四項各号において同じ。)の登記識別情報を提供しなければならない。」と定めている。不動産登記規則67条は、「同一の不動産について二以上の権利に関する登記の申請がされた場合(当該二以上の権利に関する登記の前後を明らかにして同時に申請がされた場合に限る。)において、前の登記によって登記名義人となる者が、後の登記の登記義務者となるときは、当該後の登記の申請情報と併せて提供すべき登記識別情報は、当該後の登記の申請情報と併せて提供されたものとみなす。」と定めている。

ポイント:登記識別情報の通知は、法定代理人によって申請している場合は当該法定代理人に、申請人が法人である場合は当該法人の代表者に対してし、通知を受けるための特別の委任を受けた代理人がある場合は当該代理人に対してする(不動産登記規則62条)。通知を要しない場合は、あらかじめ通知を希望しない旨の申出をした場合、電子申請で送信が可能になった時から30日以内に記録しない場合、書面申請で登記完了の時から3月以内に書面を受領しない場合、通知を受けるべき者が官庁又は公署である場合(通知を希望する旨の申出をした場合を除く。)である(不動産登記法21条ただし書、不動産登記規則64条1項)。失効の申出は登記名義人のほか相続人その他の一般承継人もすることができる(不動産登記規則65条1項)。前後を明らかにして同時に申請された場合に前の登記で登記名義人となる者が後の登記の登記義務者となるときは、後の登記の登記識別情報は提供されたものとみなされる(不動産登記法22条、不動産登記規則67条)。「法人は代表者へ、電子は30日・書面は3月、官公署は希望しなければ通知なし、失効の申出は相続人もできる、連件の後の登記は提供したものとみなす」と押さえる。


問題:

株式会社の設立における現物出資財産等についての検査役の調査等に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 現物出資財産が不動産である場合において、定款に記載された価額が相当であることについて税理士の証明を受けたときは、不動産鑑定士の鑑定評価を受けていなくても、当該現物出資財産に関する定款の記載事項について、検査役の調査を要しない。

イ. 現物出資財産等について定款に記載された価額の総額が500万円を超えない場合には、当該現物出資財産等に関する定款の記載事項について、発起人は、検査役の選任の申立てをすることを要しない。

ウ. 発起人ではない弁護士は、設立時監査役に選任されている場合であっても、現物出資財産等について定款に記載された価額が相当であることについての証明をすることができる。

エ. 募集設立の場合において、株式会社の成立の時における現物出資財産の価額が定款に記載された価額に著しく不足するときは、当該財産を給付した者ではない発起人は、検査役の調査を経ていなくても、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明すれば、当該不足額を支払う義務を負わない。

オ. 裁判所が、検査役の報告を受けて、現物出資に関する定款の記載事項を不当と認めてこれを変更する決定をした場合には、発起人は、当該決定の確定後1週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる。

答え:

正しいものは、イ・オの2つである。

解説:

ア 誤り。会社法33条10項は、「前各項の規定は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める事項については、適用しない。」と定め、3号に、現物出資財産等について定款に記載され、又は記録された価額が相当であることについて弁護士、公認会計士、税理士等の証明を受けた場合を掲げているが、同号の括弧書きは、「現物出資財産等が不動産である場合にあっては、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価」としている。現物出資財産が不動産である場合には、税理士の証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価を受けなければ、同号には当たらない。

イ 正しい。会社法33条1項は、「発起人は、定款に第二十八条各号に掲げる事項についての記載又は記録があるときは、第三十条第一項の公証人の認証の後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。」と定めている。同条10項1号は、「第二十八条第一号及び第二号の財産(以下この章において「現物出資財産等」という。)について定款に記載され、又は記録された価額の総額が五百万円を超えない場合」について「同条第一号及び第二号に掲げる事項」を掲げており、この場合には、同条1項から9項までの規定は、これらの事項については適用されない。

ウ 誤り。会社法33条11項は、「次に掲げる者は、前項第三号に規定する証明をすることができない。」と定め、1号に「発起人」を、2号に「第二十八条第二号の財産の譲渡人」を、3号に設立時取締役又は設立時監査役を、4号に「業務の停止の処分を受け、その停止の期間を経過しない者」を掲げている。設立時監査役である弁護士は、発起人でなくても、同項3号により証明をすることができない。

エ 誤り。会社法52条1項は、株式会社の成立の時における現物出資財産等の価額が定款に記載され、又は記録された価額に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、当該株式会社に対し、連帯して、当該不足額を支払う義務を負うと定めている。同条2項は、発起人(現物出資財産を給付した者又は財産引受けに係る財産の譲渡人を除く。)及び設立時取締役が義務を負わない場合として、1号に「第二十八条第一号又は第二号に掲げる事項について第三十三条第二項の検査役の調査を経た場合」を、2号に「当該発起人又は設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合」を掲げている。しかし、会社法103条1項は、「第五十七条第一項の募集をした場合における第五十二条第二項の規定の適用については、同項中「次に」とあるのは、「第一号に」とする。」と定めている。募集設立の場合には、検査役の調査を経た場合(同項1号)に限り義務を負わず、注意を怠らなかったことを証明しても義務を免れない。

オ 正しい。会社法33条7項は、「裁判所は、第四項の報告を受けた場合において、第二十八条各号に掲げる事項(第二項の検査役の調査を経ていないものを除く。)を不当と認めたときは、これを変更する決定をしなければならない。」と定め、同条8項は、「発起人は、前項の決定により第二十八条各号に掲げる事項の全部又は一部が変更された場合には、当該決定の確定後一週間以内に限り、その設立時発行株式の引受けに係る意思表示を取り消すことができる。」と定めている。なお、同条9項は、この場合には、発起人は、その全員の同意によって、当該決定の確定後1週間以内に限り、当該決定により変更された事項についての定めを廃止する定款の変更をすることができると定めている。

ポイント:定款に現物出資・財産引受け等の事項があるときは、発起人は公証人の認証の後遅滞なく検査役の選任の申立てをしなければならないが(会社法33条1項)、現物出資財産等の価額の総額が500万円を超えない場合や、価額が相当であることについて弁護士・公認会計士・税理士等の証明(不動産の場合は当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合などは、その事項について検査役の調査の規定が適用されない(会社法33条10項)。発起人、財産引受けに係る財産の譲渡人、設立時取締役又は設立時監査役、業務の停止の処分を受けその停止の期間を経過しない者などは、証明をすることができない(会社法33条11項)。裁判所の変更決定があったときは、発起人は確定後1週間以内に限り引受けの意思表示を取り消すことができる(会社法33条7項・8項)。価額が著しく不足するときの発起人及び設立時取締役の不足額支払義務について、発起設立では検査役の調査を経た場合と注意を怠らなかったことを証明した場合に義務を負わないが、募集設立では検査役の調査を経た場合に限られる(会社法52条、103条1項)。「500万円以下は不要、不動産は証明と鑑定評価、設立時役員は証明不可、変更決定から1週間で取消し、募集設立では無過失の証明で免れない」と押さえる。


問題:

控訴に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア. 終局判決後、当事者双方が共に上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をしたときは、控訴をすることができない。

イ. 控訴の提起は、控訴状を控訴裁判所に提出してしなければならない。

ウ. 控訴の取下げは、被控訴人が本案について口頭弁論をした後にあっては、被控訴人の同意を得なければ、その効力を生じない。

エ. 被控訴人は、控訴権が消滅した後であっても、口頭弁論の終結に至るまで、附帯控訴をすることができ、控訴の取下げがあったときは、附帯控訴はその効力を失うが、控訴の要件を備えるものは、独立した控訴とみなされる。

オ. 控訴審において反訴を提起するには、相手方の同意を要し、相手方が異議を述べないで反訴の本案について弁論をした場合であっても、反訴の提起に同意したものとはみなされない。

答え:

誤っているものは、イ・ウ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。民事訴訟法281条1項は、「控訴は、地方裁判所が第一審としてした終局判決又は簡易裁判所の終局判決に対してすることができる。ただし、終局判決後、当事者双方が共に上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をしたときは、この限りでない。」と定めている。なお、同条2項は、「第十一条第二項及び第三項の規定は、前項の合意について準用する。」と定めている。

イ 誤り。民事訴訟法286条1項は、「控訴の提起は、控訴状を第一審裁判所に提出してしなければならない。」と定めている。なお、同法287条1項は、「控訴が不適法でその不備を補正することができないことが明らかであるときは、第一審裁判所は、決定で、控訴を却下しなければならない。」と定めている。

ウ 誤り。民事訴訟法292条1項は、「控訴は、控訴審の終局判決があるまで、取り下げることができる。」と定め、同条2項は、「第二百六十一条第三項及び第四項、第二百六十二条第一項並びに第二百六十三条の規定は、控訴の取下げについて準用する。」と定めている。訴えの取下げについて相手方の同意を要する場合を定める同法261条2項は準用されていないから、控訴の取下げには、被控訴人の同意を要しない。

エ 正しい。民事訴訟法293条1項は、「被控訴人は、控訴権が消滅した後であっても、口頭弁論の終結に至るまで、附帯控訴をすることができる。」と定め、同条2項は、「附帯控訴は、控訴の取下げがあったとき、又は不適法として控訴の却下があったときは、その効力を失う。ただし、控訴の要件を備えるものは、独立した控訴とみなす。」と定めている。なお、同条3項ただし書は、「附帯控訴の提起は、附帯控訴状を控訴裁判所に提出してすることができる。」と定めている。

オ 誤り。民事訴訟法300条1項は、「控訴審においては、反訴の提起は、相手方の同意がある場合に限り、することができる。」と定め、同条2項は、「相手方が異議を述べないで反訴の本案について弁論をしたときは、反訴の提起に同意したものとみなす。」と定めている。

ポイント:控訴は地方裁判所が第一審としてした終局判決又は簡易裁判所の終局判決に対してすることができるが、終局判決後に当事者双方が上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をしたときはこの限りでない(民事訴訟法281条1項)。控訴状は第一審裁判所に提出し(民事訴訟法286条1項)、附帯控訴状は控訴裁判所に提出することもできる(民事訴訟法293条3項ただし書)。控訴の取下げは控訴審の終局判決があるまですることができ、訴えの取下げに関する相手方の同意の規定(民事訴訟法261条2項)は準用されない(民事訴訟法292条)。附帯控訴は控訴権の消滅後も口頭弁論の終結に至るまですることができ、控訴の取下げ又は不適法却下で効力を失うが、控訴の要件を備えるものは独立した控訴とみなされる(民事訴訟法293条1項・2項)。控訴審の反訴は相手方の同意を要し、異議を述べないで反訴の本案について弁論をすれば同意したものとみなされる(民事訴訟法300条1項・2項)。「控訴状は第一審裁判所へ、控訴の取下げに同意は不要、附帯控訴は独立の控訴として残ることがある、控訴審の反訴は同意か応訴」と押さえる。


問題:

弁済供託に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア. 弁済者が債権者を確知することができないときは、弁済者に過失がない限り、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。

イ. 弁済者が弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだことを理由に弁済の目的物を供託したときは、その債権は、債権者が供託を受諾した時に消滅する。

ウ. 弁済の目的物が供託に適しないときは、弁済者は、裁判所の許可を得ることなく、その物を競売に付し、その代金を供託することができる。

エ. 供託によって抵当権が消滅した場合には、債権者が供託を受諾せず、かつ、供託を有効と宣告した判決が確定していない間であっても、弁済者は、民法496条1項の規定により供託物を取り戻すことはできない。

オ. 供託者は、供託が錯誤に出たこと又はその原因が消滅したことを証明すれば、供託物を取り戻すことができる。

答え:

正しいものは、ア・エ・オの3つである。

解説:

ア 正しい。民法494条2項は、「弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。」と定めている。

イ 誤り。民法494条1項は、「弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。」と定め、1号に「弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。」を、2号に「債権者が弁済を受領することができないとき。」を掲げている。債権は、債権者が供託を受諾した時ではなく、弁済者が供託をした時に消滅する。

ウ 誤り。民法497条は、「弁済者は、次に掲げる場合には、裁判所の許可を得て、弁済の目的物を競売に付し、その代金を供託することができる。」と定め、1号に「その物が供託に適しないとき。」を掲げている。競売に付すには裁判所の許可を要する。

エ 正しい。民法496条1項は、「債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は、供託物を取り戻すことができる。この場合においては、供託をしなかったものとみなす。」と定め、同条2項は、「前項の規定は、供託によって質権又は抵当権が消滅した場合には、適用しない。」と定めている。

オ 正しい。供託法8条2項は、「供託者ハ民法第四百九十六条ノ規定ニ依レルコト、供託カ錯誤ニ出テシコト又ハ其原因カ消滅シタルコトヲ証明スルニ非サレハ供託物ヲ取戻スコトヲ得ス」と定めている。同項は、民法496条の規定によること、供託が錯誤に出たこと又はその原因が消滅したことを取戻しの事由とし、供託者にその証明を求めている。なお、民法498条1項は、「弁済の目的物又は前条の代金が供託された場合には、債権者は、供託物の還付を請求することができる。」と定め、供託法8条1項は、「供託物ノ還付ヲ請求スル者ハ法務大臣ノ定ムル所ニ依リ其権利ヲ証明スルコトヲ要ス」と定めている。

ポイント:弁済供託は、弁済の提供をしたが債権者が受領を拒んだとき、債権者が弁済を受領することができないとき、及び弁済者が過失なく債権者を確知することができないときにすることができ、債権は弁済者が供託をした時に消滅する(民法494条)。供託に適しない物などは、裁判所の許可を得て競売に付し、その代金を供託することができる(民法497条)。債権者が供託を受諾せず、又は供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は供託物を取り戻すことができ、その場合は供託をしなかったものとみなされるが、供託によって質権又は抵当権が消滅した場合はこの取戻しの規定は適用されない(民法496条)。供託者は、民法496条の規定によること、供託が錯誤に出たこと又はその原因が消滅したことを証明して供託物を取り戻す(供託法8条2項)。「債権の消滅は供託の時、確知不能は無過失が必要、自助売却は裁判所の許可、担保権が消えたら496条の取戻しはできない、取戻しは496条・錯誤・原因消滅の証明」と押さえる。


出題分野の振り分け

問 分野 主な論点 主な根拠条文
第1問 民法(債権総論・連帯債務) 相殺を援用しない間の履行拒絶、相対的効力の原則、負担部分を超えない弁済と求償、事前の通知を怠った場合の求償の制限、免除を受けた連帯債務者に対する求償 民法438条、439条、440条、441条、442条、443条1項、445条
第2問 不動産登記法(登記識別情報) 通知の相手方、失効の申出をすることができる者、官庁又は公署に対する通知、通知を要しない場合の期間、同時申請における提供の省略 不動産登記法21条、22条、不動産登記規則62条、63条1項、64条、65条1項・5項、67条
第3問 会社法(設立・現物出資財産等と検査役の調査) 不動産の現物出資と証明・鑑定評価、500万円以下の場合の検査役の調査の要否、証明をすることができない者、募集設立における不足額支払義務、裁判所の変更決定と引受けの取消し 会社法33条、52条、103条1項
第4問 民事訴訟法(控訴) 不控訴の合意、控訴状の提出先、控訴の取下げと相手方の同意、附帯控訴、控訴審における反訴 民事訴訟法261条2項、281条、286条1項、287条1項、292条、293条、300条
第5問 供託法(弁済供託と取戻し) 債権者不確知と過失、債権の消滅時期、自助売却と裁判所の許可、抵当権が消滅した場合の取戻し、供託法上の取戻しの要件 民法494条、496条、497条、498条1項、供託法8条