問題:
公序良俗及び不法原因給付に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 法律行為が公序に反することを目的とするものであるとして無効になるかどうかは、その法律行為に基づく履行が請求された時点の公序に照らして判断すべきである。
イ. 妻子のある男性が、不倫な関係にある女性に対し遺産の3分の1を包括遺贈した場合であっても、その遺贈が、不倫な関係の維持継続を目的とせず、専らその女性の生活を保全するためにされたものであり、相続人である妻子も遺産の各3分の1を取得するものとされていて、その遺贈により相続人の生活の基盤が脅かされるものとはいえないなどの事情があるときは、その遺贈は公序良俗に反するものとはいえない。
ウ. 食品衛生法による食肉販売の営業許可を受けない者のした食肉の買入契約は、無効である。
エ. 不法の原因により未登記建物を贈与し、これを引き渡した場合には、贈与者は、その建物の所有権が自己にあることを理由として、その返還を請求することはできず、その建物の所有権は、受贈者に帰属する。
オ. 不法の原因により既登記建物を贈与した場合には、その引渡しをしただけで、民法708条にいう給付があったといえる。
答え:
誤っているものは、ア・ウ・オの3つである。
解説:
本問は、公序良俗(民法90条)に反する法律行為の判断基準時、不倫な関係にある者に対する包括遺贈と公序良俗、営業許可を受けない者のした契約の効力及び不法原因給付(同法708条)における「給付」の意義と所有権の帰属に関する判例を問うものであり、誤っているのはア・ウ・オの3つである。民法90条は、「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」と定め、同法708条は、「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。」と定めている。
ア 誤り。最判平成15年4月18日(民集57巻4号366頁)の裁判要旨の一は、「法律行為が公序に反することを目的とするものであるとして無効になるかどうかは,法律行為がされた時点の公序に照らして判断すべきである。」というものである。判断の基準時は法律行為がされた時点であり、履行が請求された時点ではないから、本肢は誤りである。なお、同判決は、令和2年4月1日施行の改正前の民法90条(「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」)の下での判断である。
イ 正しい。最判昭和61年11月20日(民集40巻7号1167頁)の裁判要旨は、「妻子のある男性がいわば半同棲の関係にある女性に対し遺産の三分の一を包括遺贈した場合であつても、右遺贈が、妻との婚姻の実体をある程度失つた状態のもとで右の関係が約六年間継続したのちに、不倫な関係の維持継続を目的とせず、専ら同女の生活を保全するためにされたものであり、当該遺言において相続人である妻子も遺産の各三分の一を取得するものとされていて、右遺贈により相続人の生活の基盤が脅かされるものとはいえないなど判示の事情があるときは、右遺贈は公序良俗に反するものとはいえない。」というものである。本肢は、この裁判要旨に沿うものである。同判決は、判示の事情の下での判断(事例判決)であり、不倫な関係にある者に対する遺贈が一般に有効であるとしたものではない。
ウ 誤り。最判昭和35年3月18日(民集14巻4号483頁)の裁判要旨は、「食品衛生法第二一条による食肉販売の営業許可を受けない者のした食肉の買入契約は無効ではない。」というものである(同判決にいう食品衛生法21条は、判決当時の規定である。)。営業許可を受けない者のした食肉の買入契約は無効ではないから、本肢は誤りである。
エ 正しい。最大判昭和45年10月21日(民集24巻11号1560頁)の裁判要旨は、その一で「不法の原因により未登記建物を贈与した場合、その引渡は、民法七〇八条にいう給付にあたる。」とし、その二で「建物の贈与に基づく引渡が不法原因給付にあたる場合に、贈与者は、目的物の所有権が自己にあることを理由として、右建物の返還を請求することはできない。」とし、その三で「建物の所有者のした贈与に基づく履行行為が不法原因給付にあたる場合には、贈与者において給付した物の返還を請求できないことの反射的効果として、右建物の所有権は、受贈者に帰属するに至ると解するのが相当である。」としている。本肢は、これらの裁判要旨のとおりである。なお、同判決の裁判要旨の四は、未登記建物の贈与が不法原因給付であってその所有権が受贈者に帰属した場合において、贈与者がその建物につき所有権保存登記を経由したときは、受贈者が贈与者に対し建物の所有権に基づいてその所有権保存登記の抹消登記手続を請求することは許されるとしている。
オ 誤り。最判昭和46年10月28日(民集25巻7号1069頁)の裁判要旨は、「不法の原因により既登記建物を贈与した場合、その引渡をしただけでは、民法七〇八条にいう給付があつたとはいえない。」というものである。既登記建物については、引渡しをしただけでは同条にいう給付があったとはいえないから、本肢は誤りである。
ポイント:法律行為が公序に反するものとして無効(民法90条)になるかどうかは、法律行為がされた時点の公序に照らして判断する(最判平15.4.18)。不倫な関係にある女性への包括遺贈が公序良俗に反しないとされた最判昭61.11.20は、遺贈の目的が生活の保全にあり、相続人の生活の基盤が脅かされないなど判示の事情の下での事例判決である。食肉販売の営業許可を受けない者のした食肉の買入契約は無効ではない(最判昭35.3.18)。不法原因給付(同法708条)については、未登記建物の贈与は引渡しで「給付」に当たり、贈与者は所有権に基づく返還請求もできず、その反射的効果として所有権は受贈者に帰属する(最大判昭45.10.21)が、既登記建物は引渡しをしただけでは「給付」があったとはいえない(最判昭46.10.28)。「未登記は引渡しで給付、既登記は引渡しだけでは給付に当たらない」と対で押さえる。
問題:
占有者と回復者との関係に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 強迫によって占有をしている者は、占有物から生ずる果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
イ. 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失した場合において、その占有者が所有の意思のない占有者であるときは、善意であれば、その滅失によって現に利益を受けている限度において回復者に賠償をすれば足りる。
ウ. 占有者が占有物を返還する場合において、その物の保存のために支出した必要費の償還を回復者に請求することができるのは、善意の占有者に限られる。
エ. 占有者が占有物の改良のために支出した有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができるが、裁判所は、回復者の請求により、善意の占有者に対しても、その償還について相当の期限を許与することができる。
オ. 善意の占有者が占有物から生ずる果実を取得したときは、通常の必要費は、その占有者の負担に帰する。
答え:
正しいものは、ア・オの2つである。
解説:
本問は、占有者と回復者との関係のうち、悪意の占有者等による果実の返還(民法190条)、占有者による損害賠償(同法191条)及び占有者による費用の償還請求(同法196条)を問うものであり、正しいのはア・オの2つである。
ア 正しい。民法190条1項は、「悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。」と定め、同条2項は、「前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。」と定めている。強迫によって占有をしている者には同条1項が準用されるから、本肢は正しい。
イ 誤り。民法191条は、「占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。」と定めている。所有の意思のない占有者は、善意であっても全部の賠償をしなければならないから、本肢は誤りである。
ウ 誤り。民法196条1項は、「占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。」と定めている。同項は、必要費の償還を請求することができる占有者を善意の占有者に限定していないから、本肢は誤りである。
エ 誤り。民法196条2項は、「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。」と定めている。裁判所が償還について相当の期限を許与することができるのは悪意の占有者に対してであるから、善意の占有者に対しても期限を許与することができるとする点で、本肢は誤りである。
オ 正しい。民法189条1項は、「善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。」と定め、同法196条1項ただし書は、「占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。」と定めている。本肢は、これらの規定のとおりである。
ポイント:果実については、善意の占有者は果実を取得し(民法189条1項)、悪意の占有者は果実を返還し、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負い、この規定は暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者に準用される(同法190条)。占有者の責めに帰すべき事由による滅失・損傷の賠償は、悪意の占有者は全部、善意の占有者は現に利益を受けている限度であるが、所有の意思のない占有者は善意でも全部である(同法191条)。必要費は占有者が回復者から償還させることができ、果実を取得したときは通常の必要費は占有者の負担となる(同法196条1項)。有益費は価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い支出額又は増価額を償還させることができ、裁判所が相当の期限を許与することができるのは悪意の占有者に対してである(同条2項)。191条ただし書の「所有の意思のない占有者」と196条2項ただし書の「悪意の占有者」は、いずれも原則から外れる者として取り違えやすいので、条文の主語で区別して押さえる。
問題:
遺言の効力及び遺言の解釈に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、遺言者の死亡の時に遡ってその効力を生ずる。
イ. 認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってするほか、遺言によってもすることができる。
ウ. 遺言書の特定の条項を解釈するに当たっては、当該条項の文言のみに基づいてその趣旨を確定すべきであり、遺言書の他の記載との関連や遺言書作成当時の事情を考慮することは許されない。
エ. 受遺者の選定を遺言執行者に委託する旨の遺言は、遺産の利用目的が公益目的に限定されているため、その目的を達成することができる被選定者の範囲が国又は地方公共団体等に限定されているものと解されるときは、有効である。
オ. 遺言者は、遺言で、遺言執行者の指定を第三者に委託することができ、その委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
答え:
正しいものは、イ・エ・オの3つである。
解説:
本問は、遺言の効力の発生時期(民法985条)、遺言による認知(同法781条2項)、遺言の解釈、受遺者の選定を遺言執行者に委託する旨の遺言の効力及び遺言執行者の指定の委託(同法1006条)を問うものであり、正しいのはイ・エ・オの3つである。
ア 誤り。民法985条1項は、「遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。」と定め、同条2項は、「遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。」と定めている。停止条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は条件が成就した時から効力を生ずるのであり、遺言者の死亡の時に遡って効力を生ずるのではないから、本肢は誤りである。
イ 正しい。民法781条1項は、「認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによってする。」と定め、同条2項は、「認知は、遺言によっても、することができる。」と定めている。本肢は、同条のとおりである。
ウ 誤り。最判昭和58年3月18日(集民138号277頁)の裁判要旨は、「遺言の解釈にあたつては、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書の特定の条項を解釈するにあたつても、当該条項と遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して当該条項の趣旨を確定すべきである。」というものである。特定の条項の解釈に当たっても、遺言書の全記載との関連や遺言書作成当時の事情などを考慮すべきであるから、本肢は誤りである。
エ 正しい。最判平成5年1月19日(民集47巻1号1頁)の裁判要旨は、「受遺者の選定を遺言執行者に委託する旨の遺言は、遺産の利用目的が公益目的に限定されているため、右目的を達成することができる被選定者の範囲が国又は地方公共団体等に限定されているものと解されるときは、有効である。」というものである。本肢は、この裁判要旨のとおりである。
オ 正しい。民法1006条1項は、「遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。」と定め、同条2項は、「遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。」と定めている。本肢は、同条1項及び2項のとおりである。
ポイント:遺言は遺言者の死亡の時から効力を生ずるが、停止条件が遺言者の死亡後に成就したときは、条件が成就した時から効力を生ずる(民法985条)。認知は届出によるほか遺言によってもすることができ(同法781条)、遺言者は遺言で遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができ、委託を受けた者は遅滞なく指定をして相続人に通知しなければならない(同法1006条1項・2項)。遺言の解釈では、文言を形式的に判断するだけでなく遺言者の真意を探究し、特定の条項についても遺言書の全記載との関連、作成当時の事情、遺言者の置かれていた状況などを考慮する(最判昭58.3.18)。受遺者の選定を遺言執行者に委託する遺言も、公益目的に限定され、被選定者の範囲が国又は地方公共団体等に限定されていると解されるときは有効である(最判平5.1.19)。985条2項は「死亡時に遡る」のではなく「成就した時から」である点を押さえる。
問題:
抵当権の設定の登記がある甲建物からその附属建物を分割して乙建物とする建物の分割の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法及び不動産登記規則の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。なお、抵当証券は発行されていないものとする。
ア. 建物の分割の登記の申請情報と併せて、抵当権の登記名義人が当該抵当権を乙建物について消滅させることを承諾したことを証する情報が提供されたときは、登記官は、乙建物について当該抵当権が消滅した旨を登記しなければならない。
イ. アの場合において、当該抵当権を目的とする転抵当の登記があるときであっても、転抵当権者が承諾したことを証する情報を提供することを要しない。
ウ. 不動産登記法40条の規定による権利が消滅した旨の登記をしない場合において、当該抵当権について共同担保目録が作成されていないときは、登記官は、乙建物の登記記録の乙区に甲建物の登記記録から当該抵当権の登記を転写し、建物の分割の登記に係る申請の受付の年月日及び受付番号を記録するとともに、共同担保目録を作成しなければならない。
エ. 不動産登記法40条の規定により分割後の甲建物について当該抵当権が消滅した旨の登記をするときは、登記官は、甲建物の登記記録の当該抵当権の登記を抹消する記号を記録すれば足り、付記登記によって甲建物について当該抵当権が消滅した旨を記録することを要しない。
オ. アの承諾を証する情報は、抵当権の登記名義人が作成した情報でなければならず、当該登記名義人に対抗することができる裁判があったことを証する情報をもってこれに代えることはできない。
答え:
誤っているものは、イ・エ・オの3つである。
解説:
本問は、所有権等の登記以外の権利に関する登記がある建物について建物の分割の登記をする場合の権利の消滅の登記(不動産登記法54条3項・40条)、その承諾を証する情報(不動産登記規則128条1項・104条1項)、消滅の登記をしない担保権の転写と共同担保目録(同規則128条1項・102条1項)及び消滅の登記の記録方法(同規則128条1項・104条3項)を問うものであり、誤っているのはイ・エ・オの3つである。不動産登記法54条1項1号は、建物の分割の登記を「表題登記がある建物の附属建物を当該表題登記がある建物の登記記録から分割して登記記録上別の一個の建物とする登記」と定義している。
ア 正しい。不動産登記法54条3項は、「第四十条の規定は、所有権等の登記以外の権利に関する登記がある建物についての建物の分割の登記又は建物の区分の登記をするときについて準用する。」と定めている。ここにいう「所有権等」は、同法50条で「所有権、地上権、永小作権、地役権及び採石権」と定義されており(同条は「以下この款及び第百十八条第五項において同じ。」と定め、同法54条は同じ款に置かれている。)、抵当権の登記は所有権等の登記以外の権利に関する登記に当たる。そして、同法40条は、「登記官は、所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地について分筆の登記をする場合において、当該分筆の登記の申請情報と併せて当該権利に関する登記に係る権利の登記名義人(当該権利に関する登記が抵当権の登記である場合において、抵当証券が発行されているときは、当該抵当証券の所持人又は裏書人を含む。)が当該権利を分筆後のいずれかの土地について消滅させることを承諾したことを証する情報が提供されたとき(当該権利を目的とする第三者の権利に関する登記がある場合にあっては、当該第三者が承諾したことを証する情報が併せて提供されたときに限る。)は、法務省令で定めるところにより、当該承諾に係る土地について当該権利が消滅した旨を登記しなければならない。」と定めている。本肢は、当該抵当権を目的とする第三者の権利に関する登記がない場合について、これらの規定のとおりである(第三者の権利に関する登記がある場合についてはイ参照)。
イ 誤り。アで引用した不動産登記法40条の括弧書は、「当該権利を目的とする第三者の権利に関する登記がある場合にあっては、当該第三者が承諾したことを証する情報が併せて提供されたときに限る。」と定めている。また、不動産登記規則104条1項(同規則128条1項において準用)は、権利が消滅した旨の登記をするために併せて提供すべき情報として、2号で「前号の権利を目的とする第三者の権利に関する登記があるときは、当該第三者が承諾したことを証する当該第三者が作成した情報又は当該第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報」を掲げている。転抵当は当該抵当権を目的とする第三者の権利であるから、転抵当の登記があるときは転抵当権者の承諾を証する情報の提供を要し、本肢は誤りである。
ウ 正しい。不動産登記規則128条1項は、「第百二条及び第百四条第一項から第三項までの規定は、前条第一項の規定により甲建物からその附属建物を分割して乙建物とする建物の分割の登記をする場合について準用する。」と定めている。そして、同規則102条1項は、「登記官は、前条の場合において、乙土地の登記記録の権利部の相当区に、甲土地の登記記録から権利に関する登記(地役権の登記にあっては、乙土地に地役権が存続することとなる場合に限る。)を転写し、かつ、分筆の登記に係る申請の受付の年月日及び受付番号を記録しなければならない。この場合において、所有権及び担保権以外の権利(地役権を除く。)については分筆後の甲土地が共にその権利の目的である旨を記録し、担保権については既にその権利についての共同担保目録が作成されているときを除き共同担保目録を作成し、転写した権利の登記の末尾にその共同担保目録の記号及び目録番号を記録しなければならない。」と定めている。抵当権は担保権であり、その登記は権利部の乙区にされるから、本肢は、これらの規定のとおりである。
エ 誤り。不動産登記規則104条3項(同規則128条1項において準用)は、「甲土地から乙土地を分筆する分筆の登記をする場合において、法第四十条の規定により分筆後の甲土地について権利が消滅した旨の登記をするときは、分筆後の甲土地の登記記録の当該権利に関する登記についてする付記登記によって分筆後の甲土地について当該権利が消滅した旨を記録し、当該権利に関する登記を抹消する記号を記録しなければならない。」と定めている。付記登記によって消滅した旨を記録したうえで抹消する記号を記録するのであるから、抹消する記号の記録で足りるとする本肢は誤りである。なお、乙建物について権利が消滅した旨の登記をするときは、同条2項(同規則128条1項において準用)により、分割後の甲建物の登記記録の当該権利に関する登記についてする付記登記によって乙建物について当該権利が消滅した旨を記録し、当該権利に関する登記を乙建物の登記記録に転写することを要しない。
オ 誤り。不動産登記規則104条1項(同規則128条1項において準用)は、「法第四十条の規定による権利が消滅した旨の登記は、分筆の登記の申請情報と併せて次に掲げる情報が提供された場合にするものとする。」と定め、1号で「当該権利の登記名義人(当該権利が抵当権である場合において、抵当証券が発行されているときは、当該抵当証券の所持人又は裏書人を含む。)が当該権利を消滅させることを承諾したことを証する当該登記名義人が作成した情報又は当該登記名義人に対抗することができる裁判があったことを証する情報」を掲げている。登記名義人に対抗することができる裁判があったことを証する情報も、承諾を証する情報として提供することができるから、本肢は誤りである。
ポイント:所有権等(所有権、地上権、永小作権、地役権及び採石権)の登記以外の権利に関する登記がある建物の分割の登記又は区分の登記には、分筆に伴う権利の消滅の登記の規定(不動産登記法40条)が準用され(同法54条3項・50条)、権利の登記名義人の承諾を証する情報(その権利を目的とする第三者の権利に関する登記があるときは、当該第三者の承諾を証する情報も)を併せて提供すれば、承諾に係る建物について権利が消滅した旨が登記される。承諾を証する情報は、登記名義人が作成した情報又は登記名義人に対抗することができる裁判があったことを証する情報である(不動産登記規則128条1項・104条1項)。消滅の登記をしない担保権は乙建物の登記記録に転写され、共同担保目録が作成されていなければ作成される(同規則128条1項・102条1項)。消滅の登記は、乙建物について消滅させるときも分割後の甲建物について消滅させるときも、甲建物の登記記録の当該権利に関する登記にする付記登記で記録し、甲建物について消滅させるときは抹消する記号もあわせて記録する(同規則128条1項・104条2項・3項)。「付記登記は甲建物側」と覚える。
問題:
地図、地図に準ずる図面及び建物所在図の作成、備付け及び変更に関する次の記述のうち、不動産登記規則及び不動産登記事務取扱手続準則の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 地図を作成するときは、磁気ディスクその他の電磁的記録に記録するものとされているが、電磁的記録に記録することができないときは、ポリエステル・フィルム等を用いて作成することができる。
イ. 国土調査法20条1項の規定により登記所に送付された地籍図の写しを、地図として備え付けることを不適当とする特別の事情があるため地図として備え付けなかった場合には、その図面が地図に準ずる図面としての要件を満たすと認められるときであっても、これを地図に準ずる図面として備え付けることはできない。
ウ. 地図に準ずる図面として備え付けた図面について、地図として備え付けることを不適当とする特別の事情(不動産登記規則10条5項ただし書)が消滅したときは、当該図面を地図として備え付けるものとされている。
エ. 建物所在図の縮尺は、当該地域の地図の縮尺にかかわらず、原則として二百五十分の一とするものとされている。
オ. 合筆の登記をした場合には、地図又は地図に準ずる図面に記録されている筆界線を削除し、合筆後の地番を記録して従前の地番を削除するものとされている。
答え:
誤っているものは、イ・エの2つである。
解説:
本問は、地図及び建物所在図の作成方法(不動産登記事務取扱手続準則12条1項・15条1項・2項)、地籍図の写し等を地図として備え付けなかった場合の地図に準ずる図面としての備付けと、その後の地図としての備付け(不動産登記規則10条5項、準則13条)並びに合筆の登記をした場合の地図等の変更の方法(準則16条1項5号)を問うものであり、誤っているのはイ・エの2つである。
ア 正しい。準則12条1項は、「地図を作成するときは、磁気ディスクその他の電磁的記録に記録するものとする。ただし、電磁的記録に記録することができないときは、ポリエステル・フィルム等を用いて作成することができる。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。なお、建物所在図についても、準則15条1項が同じ定めを置いている。
イ 誤り。不動産登記規則10条5項は、「国土調査法第二十条第一項の規定により登記所に送付された地籍図の写しは、同条第二項又は第三項の規定による登記が完了した後に、地図として備え付けるものとする。ただし、地図として備え付けることを不適当とする特別の事情がある場合は、この限りでない。」と定めている。そして、準則13条1項は、「規則第10条第5項ただし書(同条第6項において準用する場合を含む。以下この条及び次条第4号において同じ。)に規定する場合において、これらの図面が地図に準ずる図面としての要件を満たすと認められるときは、地図に準ずる図面として備え付けるものとする。」と定めている。同項ただし書の特別の事情があるため地図として備え付けなかった図面も、地図に準ずる図面としての要件を満たすと認められるときは地図に準ずる図面として備え付けるものとされているから、本肢は誤りである。
ウ 正しい。準則13条2項は、「地図に準ずる図面として備え付けた図面が、修正等により地図としての要件を満たすこととなったとき、又はその図面につき規則第10条第5項ただし書の特別の事情が消滅したときは、地図として備え付けるものとする。」と定めている。本肢は、同項のとおりである。
エ 誤り。準則15条2項は、「建物所在図の縮尺は、原則として当該地域の地図と同一とする。」と定めている。建物所在図の縮尺は、原則として当該地域の地図の縮尺と同一とされているから、地図の縮尺にかかわらず二百五十分の一とする本肢は誤りである。
オ 正しい。準則16条1項は、地図又は地図に準ずる図面の変更又は訂正の方法として、5号で「合筆の登記をした場合には、地図又は地図に準ずる図面に記録されている筆界線を削除し、合筆後の地番を記録して従前の地番を削除する。」と定めている。本肢は、同号のとおりである。なお、同項4号は、「分筆の登記をした場合には、地図又は地図に準ずる図面に分筆線及び分筆後の地番を記録する。」と定めている。
ポイント:地図と建物所在図は、いずれも電磁的記録に記録して作成するのが原則であり、記録できないときはポリエステル・フィルム等を用いて作成することができる(準則12条1項・15条1項)。国土調査法20条1項により送付された地籍図の写しは、登記の完了後に地図として備え付けるのが原則であるが、不適当とする特別の事情があるときは備え付けず(不動産登記規則10条5項)、その場合でも地図に準ずる図面としての要件を満たせば地図に準ずる図面として備え付け、修正等により地図の要件を満たしたとき又は特別の事情が消滅したときは地図として備え付ける(準則13条)。建物所在図の縮尺は、原則として当該地域の地図と同一である(準則15条2項)。合筆の登記をしたときは筆界線と従前の地番を削除して合筆後の地番を記録し、分筆の登記をしたときは分筆線と分筆後の地番を記録する(準則16条1項4号・5号)。「地図にできない地籍図でも準ずる図面にはなり得る」と押さえる。
問題:
相隣関係に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア. 甲土地の所有者Aは、隣地である乙土地の所有者Bが所有する竹木の枝が境界線を越えている場合において、Bの所在を知ることができないときは、その枝を自ら切り取ることができ、その切取りのため必要な範囲内で、乙土地を使用することができる。
イ. アの場合と異なり、Bの所在は判明しているが急迫の事情があるため、Aが自ら当該枝を切り取ることとし、その切取りのため乙土地を使用する場合において、あらかじめ通知することが困難なときは、Aは、乙土地の使用を開始した後、遅滞なく、その目的、日時、場所及び方法をBに通知することをもって足りる(乙土地を現に使用している者はBのみとする。)。
ウ. 甲土地の所有者Aが、他の土地に設備を設置しなければ水道水の供給を受けることができないため、継続的給付を受けるため必要な範囲内でC所有の丙土地に給水管を設置しようとする場合において、丙土地をDが賃借して現に使用しているときは、Aは、あらかじめ、その目的、場所及び方法をC及びDに通知しなければならない。
エ. ウの場合において、Aが給水管を設置するために丙土地を使用するに当たり、丙土地上のC所有の住家にEが賃借人として居住しているときは、Aは、Cの承諾を得れば、Eの承諾を得ないで当該住家に立ち入ることができる。
オ. 土地の所有者Aが、その所有する甲土地の一部をFに譲り渡したことにより、Aの手元に残った土地が他の土地に設備を設置しなければ電気の供給を受けることができない土地となったときは、Aは、継続的給付を受けるため、Fに譲り渡した土地のみに設備を設置することができるが、この場合には、その土地の損害に対して償金を支払わなければならない。
答え:
誤っているものは、エ・オの2つである。
解説:
本問は、越境した竹木の枝の切取り(民法233条3項)とそのための隣地の使用及び通知(同法209条1項3号・3項)、継続的給付を受けるための設備の設置に関する通知と土地の使用(同法213条の2第3項・4項)並びに土地の一部の譲渡によって継続的給付を受けることができない土地が生じた場合の特則(同法213条の3)を問うものであり、誤っているのはエ・オの2つである。
ア 正しい。民法233条3項は、「第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。」と定め、2号で「竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。」を掲げている。そして、同法209条1項は、「土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。」と定め、3号で「第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り」を掲げている。本肢は、これらの規定のとおりである。
イ 正しい。民法233条3項3号は、土地の所有者が自ら枝を切り取ることができる場合として「急迫の事情があるとき。」を掲げている。そして、同法209条3項は、「第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。」と定めている。同条2項は、「隣地使用者」を「隣地を現に使用している者」と定めており、本肢では乙土地を現に使用している者はBのみであるから、本肢は、これらの規定のとおりである。
ウ 正しい。民法213条の2第1項は、「土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。」と定めている。そして、同条3項は、「第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。」と定めている。丙土地を賃借して現に使用しているDも通知の相手方となるから、本肢は正しい。
エ 誤り。民法213条の2第4項は、「第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。」と定めている。準用される同法209条1項ただし書は、「住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。」と定めている。住家に立ち入るために必要なのは居住者であるEの承諾であるから、住家の所有者Cの承諾を得ればEの承諾を得ないで立ち入ることができるとする本肢は誤りである。
オ 誤り。民法213条の3第1項は、「分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第五項の規定は、適用しない。」と定め、同条2項は、「前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。」と定めている。適用が除外される同法213条の2第5項は、「第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。」と定める規定である。同法213条の3第1項が同条2項により土地の一部を譲り渡した場合に準用されるときは、本肢では、Aの手元に残った土地について、譲受人Fの所有地が同条1項にいう「他の分割者の所有地」に当たるから、Aは、Fに譲り渡した土地のみに設備を設置することができる点は正しい。しかし、本肢にいう「その土地の損害」に対する償金を定める同法213条の2第5項は適用されないから、償金を支払わなければならないとする本肢は誤りである。なお、同項は、括弧書で同条4項において準用する同法209条4項に規定する損害を除いており、同法213条の3第1項後段が適用しないとしているのは同法213条の2第5項であるから、本肢は、同法209条4項の償金の要否を問うものではない。
ポイント:竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき、急迫の事情があるとき等は、土地の所有者は越境した枝を自ら切り取ることができ(民法233条3項)、その切取りのため必要な範囲内で隣地を使用することができる(同法209条1項3号)。隣地を使用する者は、あらかじめ目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知するが、あらかじめ通知することが困難なときは使用開始後遅滞なく通知すれば足りる(同条3項)。他の土地に設備を設置する者は、あらかじめ目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならず(同法213条の2第3項)、設備の設置のために他の土地を使用するときは、住家への立入りに居住者の承諾を要する同法209条1項ただし書等が準用される(同法213条の2第4項)。分割又は土地の一部の譲渡によって継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができ、この場合には同法213条の2第5項の償金の規定は適用されない(同法213条の3)。「住家は居住者の承諾」「分割・一部譲渡の場合は他の分割者の所有地のみ・213条の2第5項の償金なし」と押さえる。
問題:
土地家屋調査士又は土地家屋調査士法人(以下「調査士法人」という。)に対する懲戒に関する次の記述のうち、土地家屋調査士法の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 法務大臣は、調査士法人に対し戒告の処分をしようとするときは、行政手続法13条1項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。
イ. 懲戒の事由があったときから7年を経過したときは、土地家屋調査士に対する懲戒の処分の手続を開始することができないが、調査士法人に対する懲戒の処分の手続については、このような期間の制限は設けられていない。
ウ. 法務大臣が調査士法人に対し解散の処分をしようとする場合には、当該処分に係る行政手続法15条1項の通知は、聴聞の期日の1週間前までにしなければならない。
エ. 法務大臣から土地家屋調査士に対し懲戒の処分をしようとする旨の通告を受けた調査士会連合会は、当該処分の手続が結了した旨の通知を受けるまでの間であっても、当該土地家屋調査士が引き続き2年以上業務を行わないことを理由として、その登録を取り消すことができる。
オ. 法務大臣は、調査士法人に対し解散の処分をしたときは、遅滞なく、その旨を官報をもって公告しなければならない。
答え:
正しいものは、ア・ウ・オの3つである。
解説:
本問は、土地家屋調査士(以下「調査士」という。)及び調査士法人に対する懲戒の種類(土地家屋調査士法42条・43条1項)、懲戒の手続(同法44条3項・4項)、登録取消しの制限(同法45条2項)、除斥期間(同法45条の2)及び懲戒処分の公告(同法46条)を問うものであり、正しいのはア・ウ・オの3つである。同法42条は、調査士に対する処分として「一 戒告」「二 二年以内の業務の停止」「三 業務の禁止」を、同法43条1項は、調査士法人に対する処分として「一 戒告」「二 二年以内の業務の全部又は一部の停止」「三 解散」を掲げている。
ア 正しい。土地家屋調査士法44条3項は、「法務大臣は、第四十二条第一号若しくは第二号又は前条第一項第一号若しくは第二号に掲げる処分をしようとするときは、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第十三条第一項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず、聴聞を行わなければならない。」と定めている。調査士法人に対する戒告は同法43条1項1号の処分であるから、本肢は正しい。
イ 誤り。土地家屋調査士法45条の2は、「懲戒の事由があつたときから七年を経過したときは、第四十二条又は第四十三条第一項の規定による処分の手続を開始することができない。」と定めている。調査士法人に対する処分(同法43条1項)にも7年の除斥期間が及ぶから、本肢は誤りである。
ウ 正しい。土地家屋調査士法44条4項は、「前項に規定する処分又は第四十二条第三号若しくは前条第一項第三号の処分に係る行政手続法第十五条第一項の通知は、聴聞の期日の一週間前までにしなければならない。」と定めている。調査士法人に対する解散の処分は同法43条1項3号の処分であるから、本肢は正しい。
エ 誤り。土地家屋調査士法45条2項は、「調査士会連合会は、調査士について前項の通告を受けた場合においては、法務大臣から第四十二条各号に掲げる処分の手続が結了した旨の通知を受けるまでは、当該調査士について、第十五条第一項第一号又は第十六条第一項各号の規定による登録の取消しをすることができない。」と定めている。そして、同法16条1項は、「調査士が次の各号のいずれかに該当する場合には、調査士会連合会は、その登録を取り消すことができる。」と定め、1号で「引き続き二年以上業務を行わないとき。」を掲げている。引き続き2年以上業務を行わないことを理由とする登録の取消しは、手続が結了した旨の通知を受けるまではすることができないから、本肢は誤りである。なお、同法45条1項は、法務大臣は、調査士に対し同法42条各号に掲げる処分をしようとする場合においては、行政手続法15条1項の通知を発送し、又は同条3項前段の掲示をした後直ちに調査士会連合会にその旨を通告しなければならないと定めている(令和8年4月1日時点の規定による。令和5年法律第63号による改正〔令和8年5月21日施行〕の後は「同条第四項前段の措置をとつた後」とされているが、本肢の正誤には影響しない。)。
オ 正しい。土地家屋調査士法46条は、「法務大臣は、第四十二条又は第四十三条第一項の規定により処分をしたときは、遅滞なく、その旨を官報をもつて公告しなければならない。」と定めている。調査士法人に対する解散の処分は同法43条1項の処分であるから、本肢は正しい。
ポイント:調査士法人に対する懲戒は、戒告、2年以内の業務の全部又は一部の停止及び解散であり(土地家屋調査士法43条1項)、調査士と同じく法務大臣が行う。戒告と業務の停止の処分は、調査士・調査士法人のいずれについても、行政手続法13条1項の区分にかかわらず聴聞を行い(同法44条3項)、これらの処分及び業務の禁止・解散の処分に係る行政手続法15条1項の通知は聴聞の期日の1週間前までにする(同条4項)。7年の除斥期間と官報による公告は、調査士に対する処分(同法42条)にも調査士法人に対する処分(同法43条1項)にも及ぶ(同法45条の2・46条)。懲戒の通告を受けた調査士会連合会は、手続結了の通知を受けるまで、業務の廃止(同法15条1項1号)又は同法16条1項各号(引き続き2年以上業務を行わないとき、心身の故障により業務を行うことができないとき)による登録の取消しをすることができない(同法45条2項)。調査士法人の条文が出たら「43条1項も含むか」を条文の文言で確かめる。
問題:
建物の認定及び床面積の定め方に関する次の記述のうち、不動産登記規則及び不動産登記事務取扱手続準則の規定に照らし正しいものはいくつあるか。
ア. 機械上に建設した建造物は、地上に基脚を有し、又は支柱を施したものであっても、建物として取り扱わない。
イ. 園芸又は農耕用の温床施設は、半永久的な建造物と認められるものに限り、建物として取り扱う。
ウ. 建物の内部に煙突がある場合において、その煙突の一部が建物の外側に及んでいるときは、その煙突の部分は、各階の床面積に算入しない。
エ. 区分建物でない建物で、柱又は壁が傾斜しているものの床面積は、各階の床面の接着する壁その他の区画の中心線で囲まれた部分による。
オ. 地下街の建物の床面積は、壁又は柱等により区画された部分の面積により定めるが、常時一般に開放されている通路及び階段の部分は除かれる。
答え:
正しいものは、イ・エ・オの3つである。
解説:
本問は、建物の認定の基準(不動産登記規則111条、不動産登記事務取扱手続準則77条)及び建物の床面積の定め方(同規則115条、準則82条)を問うものであり、正しいのはイ・エ・オの3つである。不動産登記規則111条は、「建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。」と定め、準則77条は、「建物の認定に当たっては、次の例示から類推し、その利用状況等を勘案して判定するものとする。」と定めている。
ア 誤り。準則77条は、「(2) 建物として取り扱わないもの」として、イで「機械上に建設した建造物。ただし、地上に基脚を有し、又は支柱を施したものを除く。」を掲げている。地上に基脚を有し、又は支柱を施したものは、同号イのただし書により建物として取り扱わないものから除かれているから、これらも含めて建物として取り扱わないとする本肢は誤りである。
イ 正しい。準則77条は、「(1) 建物として取り扱うもの」として、オで「園芸又は農耕用の温床施設。ただし、半永久的な建造物と認められるものに限る。」を掲げている。本肢は、同号オのとおりである。
ウ 誤り。準則82条は、「建物の床面積は、規則第115条に定めるところによるほか、次に掲げるところにより定めるものとする。」と定め、(10)で「建物の内部に煙突又はダストシュートがある場合(その一部が外側に及んでいるものを含む。)には、その部分は各階の床面積に算入し、外側にあるときは算入しない。」と定めている。建物の内部にある煙突は、その一部が外側に及んでいるものも含めて各階の床面積に算入するから、本肢は誤りである。床面積に算入しないのは、煙突が建物の外側にあるときである。
エ 正しい。準則82条(9)は、「柱又は壁が傾斜している場合の床面積は、各階の床面の接着する壁その他の区画の中心線で囲まれた部分による。」と定めている。本肢は、区分建物でない建物について、同号のとおりである。なお、不動産登記規則115条は、「建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、一平方メートルの百分の一未満の端数は、切り捨てるものとする。」と定めている。
オ 正しい。準則82条(4)は、「地下停車場、地下駐車場及び地下街の建物の床面積は、壁又は柱等により区画された部分の面積により定める。ただし、常時一般に開放されている通路及び階段の部分を除く。」と定めている。本肢は、同号のとおりである。なお、地下停車場、地下駐車場又は地下街の建造物は、準則77条(1)エにより建物として取り扱うものとされている。
ポイント:建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならず(不動産登記規則111条)、その認定は準則77条の例示から類推し、利用状況等を勘案して判定する。機械上に建設した建造物は建物として取り扱わないが、地上に基脚を有し又は支柱を施したものは除かれ(同条(2)イ)、園芸又は農耕用の温床施設は半永久的な建造物と認められるものに限り建物として取り扱う(同条(1)オ)。床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物は内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により定め(同規則115条)、区分建物でない建物で柱又は壁が傾斜している場合は各階の床面の接着する壁その他の区画の中心線による(準則82条(9))。建物の内部の煙突等は一部が外側に及んでいても床面積に算入し、外側にあるときは算入せず(同条(10))、地下街等は区画された部分の面積によるが常時一般に開放されている通路及び階段の部分を除く(同条(4))。ただし書の「除く」「限る」が付いた例示は、ただし書の内容まで正確に押さえる。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(総則・公序良俗) | 公序良俗に反する法律行為の無効と判断の基準時、不倫な関係にある者への包括遺贈、営業許可を受けない者のした契約の効力、不法原因給付と返還請求の可否・所有権の帰属 | 民法90条・708条、最判平15.4.18、最判昭61.11.20、最判昭35.3.18、最大判昭45.10.21、最判昭46.10.28 |
| 第2問 | 民法(物権・占有) | 善意・悪意の占有者による果実の取得と返還、占有物の滅失・損傷の責任、必要費・有益費の償還と期限の許与 | 民法189条1項・190条・191条・196条 |
| 第3問 | 民法(相続・遺言) | 停止条件付き遺言の効力発生時期、遺言による認知、遺言執行者の指定の委託、遺言の解釈 | 民法985条・781条2項・1006条1項・2項、最判昭58.3.18、最判平5.1.19 |
| 第4問 | 不動産登記法・不動産登記規則(建物の分割の登記) | 所有権等以外の権利の登記がある建物の分割と権利消滅の登記、承諾を証する情報、転写と共同担保目録の作成 | 不動産登記法40条・50条・54条3項、不動産登記規則102条1項・104条・128条1項 |
| 第5問 | 不動産登記規則・準則(地図関連制度) | 地図・地図に準ずる図面・建物所在図の作成、備付けと変更 | 不動産登記規則10条5項、不動産登記事務取扱手続準則12条1項・13条・15条2項・16条1項5号 |
| 第6問 | 民法(相隣関係) | 越境した枝の切取りと隣地の使用・通知、設備の設置の通知の相手方、住家への立入り、土地の一部譲渡の特則と償金 | 民法209条1項・3項、213条の2第3項・4項、213条の3、233条3項 |
| 第7問 | 土地家屋調査士法(懲戒) | 調査士法人に対する懲戒と聴聞、聴聞の通知の期限、除斥期間、懲戒の手続に付された者の登録の取消しの制限、官報公告 | 土地家屋調査士法16条1項・44条3項・4項・45条2項・45条の2・46条 |
| 第8問 | 不動産登記規則・準則(建物の認定と床面積) | 建物の要件と認定の例示、床面積の算定(中心線・内側線、傾斜した柱・壁、煙突、地下街等) | 不動産登記規則111条・115条、不動産登記事務取扱手続準則77条・82条 |