問題:
所有権の原始取得に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 無主の動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。無主の不動産は、国庫に帰属する。
イ. 遺失物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する。
ウ. 埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する不動産その他の物の中から発見された埋蔵物については、その発見者及び当該不動産その他の物の所有者が等しい割合でその所有権を取得する。
エ. 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
オ. 動産の付合において、主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する。
答え:
誤っているものは、イの1つである。
解説:
所有権の取得原因のうち原始取得(無主物先占・遺失物拾得・埋蔵物発見・付合)は、新たに生じた土地の表題登記や境界の帰属を考える前提として押さえておくべき分野である。特に遺失物と埋蔵物とでは公告期間が異なるため、条文の数字を正確に押さえておく必要がある。
アは正しい。民法239条1項は「所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する」と定め、同条2項は「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」と定める。動産は先占により私人が取得できるのに対し、不動産は無主物であっても国庫に帰属し、先占の対象とならない。
イは誤りである。民法240条は「遺失物は、遺失物法(平成十八年法律第七十三号)の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する」と定める。遺失物の公告期間は三箇月であって、六箇月ではない。埋蔵物の公告期間(後述のウ、六箇月)と入れ替えた誤りであり、両者の期間の違いを正確に記憶しておく必要がある。
ウは正しい。民法241条は「埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する」と定める。埋蔵物の公告期間は六箇月であり、遺失物の三箇月より長い。
エは正しい。民法242条は「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない」と定める。賃借権等の権原に基づいて物を附属させた場合には、その権利者の権利が優先される点が但書の急所である。もっとも、但書によって附属させた者に所有権が留保されるのは、附属した物が不動産とは別個の物としての独立性を保っている場合に限られると解されている。最高裁昭和44年7月25日第三小法廷判決(民集23巻8号1627頁)は、建物の賃借人が賃貸人兼所有者の承諾を得て賃借建物である平家の屋上に二階部分を増築した事案について、その二階部分は増築部分として既存建物の「構造の一部を成すもので、それ自体では取引上の独立性を有せず、建物の区分所有権の対象たる部分にはあたらない」とし、増築について賃貸人の承諾を受けていても「民法二四二条但書の適用はないものと解するのが相当であり」、その所有権は構築当初から既存建物の所有者に属したものと判示している。権原に基づく附属であっても、附属物が独立性を失えば但書は働かないということである。
土地に植栽された樹木については、判例は民法242条但書の類推という形で整理している。最高裁昭和35年3月1日第三小法廷判決(民集14巻3号307頁)は、地盤所有者として立木を植栽した者について、立木を「権原に基づいて植栽したものであるから、民法二四二条但書を類推すれば」、その後に地盤を取得した者との関係では「本件立木の地盤への附合は遡つて否定せられ、立木は上告人の独立の所有権の客体となりえた」としたうえで、その分離の効果を第三者に対抗するには「少なくとも立木所有権を公示する対抗要件を必要とする」と判示した。権原に基づく植栽といえるかどうかで帰属を決めたうえ、第三者との関係では別途公示を要するという流れであり、次の第2問で扱う立木と明認方法の取扱いに直接つながる。
オは正しい。民法244条は「付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する」と定める。設問は付合した物のうち主従の区別ができない場合の帰結を正しく述べている。
問題:
土地の定着物である立木及び明認方法に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 土地の定着物である立木は、原則として土地の構成部分であり独立した不動産として扱われないが、「立木ニ関スル法律」に基づき所有権保存の登記を受けた立木は、土地とは別個の不動産とみなされ、譲渡又は抵当権の目的とすることができる。
イ. 立木ニ関スル法律による登記を受けていない未登記の立木であっても、判例上、樹皮を削って所有者名を記載する等の明認方法を施すことにより、土地とは独立して譲渡の目的とすることができるとされている。
ウ. 明認方法は対抗要件であるから、立木の譲渡と同時に施さなければ効力を生じず、譲渡後相当期間を経過してから施した明認方法には、いかなる場合も対抗力が認められない。
エ. 立木ニ関スル法律に基づき調製される立木登記簿は、当該立木が生育する土地の登記記録とは別個に調製されるものであるが、立木の所有権保存の登記がされたときは、当該土地の登記記録の表題部に当該立木の登記記録を表示する措置がとられる。
オ. 未登記の土地上に生育する樹木は、原則として土地の構成部分として当該土地の一部を成すにとどまり、土地家屋調査士が申請する土地の表題登記の対象は土地そのものであって、樹木を土地から切り離して独立の登記の対象とすることはできない。
答え:
誤っているものは、ウの1つである。
解説:
土地の定着物のうち立木は、原則として土地に含まれ独立の不動産とはならないが、立木ニ関スル法律による登記又は判例上の明認方法により、土地とは別個の取引対象となり得る。表示登記の対象を土地・建物に限る調査士業務の前提を理解するうえで、立木がどのような場合に「土地とは別」になるのかを押さえておきたい分野である。
アは正しい。立木ニ関スル法律1条1項は、一筆の土地又は一筆の土地の一部分に生立する樹木の集団であって、その所有者が同法により所有権保存の登記を受けたものを「立木」とすると定める。そのうえで、同法2条1項が「立木ハ之ヲ不動産ト看做ス」と定め、同条2項が立木の所有者は土地と分離して立木を譲渡し、又はこれを抵当権の目的とすることができる旨を定める。不動産とみなす旨の規定は1条ではなく2条1項に置かれている点に注意したい。
イは正しい。立木ニ関スル法律による登記を経ていない立木であっても、判例上、明認方法(樹皮を削って所有者名を墨書する等、当該立木の所有者が何人であるかを外部から認識できる方法)を施すことにより、土地とは独立して譲渡の目的とし、これを第三者に対抗することができるとされている。最高裁昭和36年5月4日第一小法廷判決(民集15巻5号1253頁)は、明認方法について「立木に関する法律の適用を受けない立木の物権変動の公示方法として是認されているものであるから、それは、登記に代るものとして第三者が容易に所有権を認識することができる手段」でなければならないと述べる。同判決の事案でも、山林の要所に所有者であることを示す標杭を立てたほか、山林中の四、五箇所で立木を削って同様の標示をしたことが、明認方法として扱われている。
ウは誤りである。明認方法は対抗要件であるが、立木の譲渡と同時に施すことを要するとする限定はない。譲渡後に明認方法を施した場合であっても、その時点から対抗力を生じ、その後に利害関係を有するに至った第三者に対しては対抗することができると解されている。裏を返せば、明認方法を施すより前に既に利害関係を取得していた第三者に対しては対抗できないということであり、対抗の可否は、明認方法を備えた時期と第三者が利害関係を取得した時期との先後によって決まることになる。したがって、「同時でなければ効力を生じない」のではなく、「遅れて施した明認方法は、それ以後の第三者との関係でのみ効力を持つ」と整理するのが正確である。もっとも、明認方法は継続して存在することを要し(存続要件)、一度施した明認方法が消失した場合には、その消失後に取引関係に入った第三者には対抗できなくなる。前掲最高裁昭和36年5月4日第一小法廷判決は、判示事項を「明認方法は対抗力の存続の要件か。」としたうえで、明認方法は「第三者が利害関係を取得する当時にもそれだけの効果をもつて存在するものでなければならず」、したがって「たとい権利の変動の際一旦明認方法が行われたとしても問題の生じた当時消失その他の事由で右にいう公示として働きをなさなくなつているとすれば明認方法ありとして当該第三者に対抗できない」と判示している。ウは、譲渡と同時でなければ効力を生じないとし、かつ、後に施した明認方法についていかなる場合も対抗力が認められないとする点で、この理解と整合しない。
エは正しい。立木ニ関スル法律12条は「各登記所ニ立木登記簿ヲ備フ」と定め、同法13条は「立木登記簿ハ一個ノ立木ニ付一登記記録ヲ備フ」と定める。立木の登記は、不動産登記法上の土地又は建物の登記記録とは別に調製される立木登記簿によって行われる。もっとも、土地の登記記録と全く切り離されているわけではなく、同法19条1項は「所有権保存ノ登記ヲ為シタルトキハ土地ノ登記記録中表題部ニ立木ノ登記記録ヲ表示シ登記官ヲ明カナラシムル措置ヲ為スベシ」と定め、立木登記規則28条1項は、この表示を「立木の登記の登記番号を記録する方法によってする」と定めている。立木が土地の登記記録の中で独立の不動産として登記されるわけではないが、土地の登記記録の表題部を見れば、その土地に登記された立木があることが登記番号で分かる仕組みであり、両者の結び付きは表題部の記録によって保たれている。
オは正しい。立木ニ関スル法律による登記も明認方法も施されていない樹木は、土地の構成部分にとどまり、独立した不動産として扱われない。土地家屋調査士が申請する土地の表題登記は土地そのものを対象とするものであり、樹木のみを切り離して登記の対象とすることはできない。
問題:
表示に関する登記の対象となる「建物」の意義に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 建物は、土地に定着した建造物であって、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいうとされている。
イ. ビニールハウスは、周壁を有せず外気を分断する構造を欠くため、原則として建物として表題登記の対象とならない。
ウ. ガソリンスタンドの給油所の上屋のように、屋根及び支柱のみで周壁を有しない構造物は、周壁を欠くため、原則として建物として認定されない。
エ. 建築基準法上の建築確認を受けていない建造物は、当該建築確認を欠くことを理由として、不動産登記法上の建物として表題登記の対象とすることができない。
オ. 建物としての要件を満たすかどうかの認定は、定着性・外気分断性・用途性という一般的な基準に加え、具体的な構造物ごとの先例・実務上の取扱いを踏まえて個別に判断される。
答え:
誤っているものは、エの1つである。
解説:
不動産登記法44条は建物の表示に関する登記の登記事項を定めるが、何をもって「建物」とするかという実質的な基準は、不動産登記規則111条が明文で定めている。すなわち同条は「建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない」と規定する。ここから導かれる定着性・外気分断性・用途性の三要件が認定基準の基本形であり、個々の構造物への当てはめは、不動産登記事務取扱手続準則77条の認定例と先例の積み重ねによって具体化されてきた。
アは正しい。不動産登記規則111条により、建物として認定されるためには、土地に定着していること(定着性)、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有すること(外気分断性)、その目的とする用途に供し得る状態にあること(用途性)の三要件を満たす必要がある。
イは正しい。ビニールハウスは、支柱にビニールシートを張った構造が一般的であり、堅固な周壁を欠き外気を分断する構造とはいえないため、原則として建物として認定されない。もっとも、不動産登記事務取扱手続準則77条(1)オは、建物として取り扱うものとして「園芸又は農耕用の温床施設。ただし、半永久的な建造物と認められるものに限る。」を掲げており、半永久的な建造物と認められる構造の温室については、建物と判断される余地がある。
ウは正しい。屋根及び支柱のみで周壁を有しない構造物は、外気を分断する機能を欠くのが通常であるから、原則として建物として認定されない。もっとも、規則111条は「屋根及び周壁又はこれらに類するもの」という書き方をしており、周壁が物理的に存在するかどうかだけで一律に結論が決まるわけではない。現に準則77条(1)は、「停車場の乗降場又は荷物積卸場。ただし、上屋を有する部分に限る。」(ア)や「野球場又は競馬場の観覧席。ただし、屋根を有する部分に限る。」(イ)を建物として取り扱うものに掲げており、周壁を伴わない構造物であっても建物と扱われる例がある。外気分断性を満たすかどうかは、構造物の種類・利用状況に応じ、準則77条の例示と先例の積み重ねを踏まえて個別に判断されるものであり、設問が「原則として」と留保している点にはその含みがある(オの解説も参照)。
エは誤りである。建築基準法上の建築確認の有無は、当該建造物の建築基準法上の適法性の問題であって、不動産登記法上の建物該当性とは別個の問題である。建築確認を受けていない建造物であっても、定着性・外気分断性・用途性の三要件を満たす限り、不動産登記法上の建物として表題登記の対象となり得る。
オは正しい。定着性・外気分断性・用途性は不動産登記規則111条に基づく建物認定の一般的な基準であるが、これらの要件をどのように当てはめるかは、不動産登記事務取扱手続準則77条が「建物として取り扱うもの」「建物として取り扱わないもの」を号を分けて例示しているほか、構造物の種類・用途に応じた先例や実務上の取扱いを踏まえて個別に判断される。
問題:
測量士及び測量士補の職務に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 基本測量又は公共測量は、測量士でなければ、その計画を作製することができない。
イ. 測量士補は、測量士が作製した計画に従い、測量に従事することができる。
ウ. 測量士補が単独で公共測量の作業計画を作製し、これに従って測量士が当該測量に従事することは、測量法上適法である。
エ. 測量士及び測量士補のいずれの資格も有しない者が基本測量又は公共測量に従事することは、測量法上禁止されておらず、罰則の対象ともならない。
オ. 土地家屋調査士が土地の表示に関する登記の申請手続のために自ら行う現況測量は、測量法上の基本測量又は公共測量のいずれにも該当しないため、当該測量を行うにあたり測量士又は測量士補の資格を有することを要しない。
答え:
誤っているものは、ウ・エの2つである。
解説:
測量法は、基本測量・公共測量について測量士でなければ計画を作製できないとする一方、測量士補には測量士が作製した計画に基づく測量への従事を認めており、両者の職務範囲は明確に区別されている。この区別を土地家屋調査士自身が行う現況測量との関係で理解できているかが本問の急所である。
アは正しい。測量法48条1項は「技術者として基本測量又は公共測量に従事する者は、第49条の規定に従い登録された測量士又は測量士補でなければならない」と定めて、技術者となり得る者を測量士と測量士補に限っている。そのうえで、同条2項は「測量士は、測量に関する計画を作製し、又は実施する」と定め、同条3項は「測量士補は、測量士の作製した計画に従い測量に従事する」と定める。この三つの項を順に読むと、①技術者となり得るのは測量士と測量士補に限られ(1項)、②そのうち測量士補の職務は測量士の作製した計画に従う測量への従事にとどまる(3項)から、③結局、計画を作製できるのは測量士に限られる、という順序で結論に至る。
ここで押さえておきたいのは、2項・3項がそれぞれの職務の内容を定める規定であって、「測量士補は計画を作製してはならない」という禁止の形で直接書かれているわけではない点である。アの結論は、1項の資格限定と2項・3項の職務の書き分けを併せて読むことで導かれるものであり、3項だけを反対に読んで導かれるものではない。
イは正しい。測量法48条3項は「測量士補は、測量士の作製した計画に従い測量に従事する」と定める。計画の作製主体と測量の実施主体とで求められる資格が区別されている。
ウは誤りである。計画の作製権限は測量士に限られており、測量士補が単独で公共測量の作業計画を作製することは認められていない。アの解説のとおり、計画の作製と測量への従事とでは求められる資格が異なり、測量士補は計画作製の主体とはなり得ない。
エは誤りである。測量法48条1項は「技術者として基本測量又は公共測量に従事する者は、第49条の規定に従い登録された測量士又は測量士補でなければならない」と定める。そして、同法62条2号は、48条1項の規定に違反した者を1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する旨を定めている。48条1項が規律しているのは「技術者として」基本測量又は公共測量に従事する場合であり、技術者として従事する以上、無資格者がこれを行うことは禁止され、かつ罰則の対象ともなる。したがって、およそ禁止されておらず罰則の対象ともならないとするエは誤りである。なお、この禁止が及ぶ範囲は条文上「技術者として」従事する者と限定されており、技術者に当たらない補助的な関与までを一律に禁止する趣旨かどうかは、条文の文言だけからは一義的に決まらない。エが誤りである理由は、あくまで「およそ禁止も罰則もない」と言い切っている点にある。
オは正しい。測量法4条は「基本測量」を「すべての測量の基礎となる測量で、国土地理院の行うもの」と定義し、同法5条は「公共測量」を、基本測量以外の測量のうちその実施に要する費用の全部又は一部を国又は公共団体が負担し、又は補助して実施する測量等と定義したうえで、「建物に関する測量その他の局地的測量」又は「小縮尺図の調製その他の高度の精度を必要としない測量」で政令で定めるものをこれから除いている。土地家屋調査士が表示に関する登記の申請手続のために自ら行う現況測量は、これらのいずれにも当たらない。測量士又は測量士補であることが求められるのは、同法48条1項により「技術者として基本測量又は公共測量に従事する者」に限られるから、当該現況測量を行うにあたり測量士又は測量士補の資格を有することは要件とされていない。
ただし、ここで結論できるのは「測量法上の資格要件がこの測量には及ばない」ということまでである。表示に関する登記の申請手続のために行う調査・測量を業として行うことが土地家屋調査士法上どのように位置づけられるかは、測量法とは別の法律の問題であり、測量法上の資格が不要であることから直ちに「誰が行ってもよい」という結論が導かれるわけではない。オが正しいとされるのも、あくまで測量法上の資格の要否を問う記述だからである。
問題:
登記記録における行政区画又はその名称の変更に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 行政区画又はその名称の変更があった場合には、登記記録に記録した行政区画又はその名称について変更の登記があったものとみなされる。
イ. 字又はその名称に変更があった場合も、登記記録に記録した当該字又はその名称について変更の登記があったものとみなされる。
ウ. 行政区画又はその名称の変更に伴い登記記録上の表示をみなし変更するためには、当該土地又は建物の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人による変更の登記の申請が必要である。
エ. 字の名称に変更があった場合、登記記録上の当該字の名称は当然に変更されたものとみなされるが、当該変更によって既存の地番自体が変更されるものではない。
オ. 登記官は、行政区画若しくは字又はこれらの名称に変更があったときは、速やかに、表題部に記録した行政区画若しくは字又はこれらの名称を変更しなければならない。
答え:
誤っているものは、ウの1つである。
解説:
行政区画又はその名称の変更があった場合の登記記録上の表示については、不動産登記規則92条がみなし規定を置いている。表題登記の申請義務や地目・地積の認定と異なり、当事者の申請を要しない点が本条の特色であり、この点の理解を問う。なお、このみなし規定の根拠が「法」ではなく「規則」に置かれている点も、あわせて押さえておきたい。
アは正しい。不動産登記規則92条1項前段は「行政区画又はその名称の変更があった場合には、登記記録に記録した行政区画又はその名称について変更の登記があったものとみなす」と定める。
イは正しい。同項後段は「字又はその名称に変更があったときも、同様とする」と定め、字又はその名称の変更についても、行政区画の変更と同様にみなし変更の対象としている。
ウは誤りである。同項のみなし規定は、行政区画又はその名称の変更という事実の発生により当然に登記記録上の表示が変更されたものとみなすものであり、当事者による変更の登記の申請を要しない。ウは、当事者の申請を必要とする点で、このみなし規定の趣旨と整合しない。
エは正しい。字の名称の変更があった場合、登記記録上の当該字の名称は同項後段によりみなし変更の対象となるが、これは字(地番区域)の名称に関するものであって、既に付されている個々の地番の数字自体をみなし変更するものではない。もっとも、登記官の事務処理の取扱いを定める不動産登記事務取扱手続準則59条は、行政区画又は字(地番区域であるものに限る。)の変更があった場合において、地番の変更を必要とするときは、職権で、表題部に記録された地番の変更の登記をするものとしており、地番の変更を要する場面では、規則92条1項のみなし変更とは別に、登記官の職権による地番の変更の登記がされる。
オは正しい。不動産登記規則92条2項は「登記官は、前項の場合には、速やかに、表題部に記録した行政区画若しくは字又はこれらの名称を変更しなければならない」と定める。みなし変更により登記記録上の効力は当然に変更後の表示によることとなるが、記録そのものを実際に書き改める作業は、登記官が職権で行う。
出題分野の振り分け
| 問 | 出題分野 | 論点 |
|---|---|---|
| 第1問 | 民法(所有権の取得) | 無主物先占、遺失物拾得・埋蔵物発見の公告期間、不動産の付合、動産の付合における共有 |
| 第2問 | 立木ニ関スル法律・判例法理 | 立木の物権変動、明認方法の意義と対抗要件としての性質、立木登記簿と土地の登記記録との関係 |
| 第3問 | 不動産登記規則・準則(表示登記の対象) | 建物の意義(規則111条=定着性・外気分断性・用途性)、準則77条の認定例、建築基準法上の建築確認との関係 |
| 第4問 | 測量法 | 測量士・測量士補の職務範囲、計画作製権限、無資格者の測量従事、調査士自身が行う現況測量との関係 |
| 第5問 | 不動産登記規則(登記記録の取扱い) | 行政区画・字の名称の変更に伴う登記記録上のみなし変更(規則92条1項)、登記官の職権による変更(同条2項)、字(地番区域)の名称と地番の関係 |