この記事の要点

  • 実印・印鑑証明書・登記識別情報(権利証)を盗まれたなど、自分の不動産に身に覚えのない登記をされそうなときは、法務局(登記所)に「不正登記防止申出(ふせいとうきぼうししんで)」をすることができる
  • 申出をしても登記が自動的に止まるわけではない。申出の日から3か月以内にその不動産の登記の申請があったときに、法務局から申出人へ知らせが届き、登記官が申出を相当と認めていた場合には本人確認の調査の対象になる、という仕組み
  • 申出は、原則として本人が法務局の窓口に出頭して行う。印鑑証明書などの添付に加えて、盗難届を出すなど「原因そのものへの手当て」をしているかも確認される

「実印と印鑑証明書が入ったケースごと盗まれた」「権利証の置き場所を他人に知られてしまった」——こうしたとき、真っ先に心配になるのが、知らない間に不動産の名義を書き換えられてしまわないか、ということです。

このような場面のために、法務局には不正登記防止申出という取扱いがあります。名義人本人が「自分になりすました申請が出るおそれがある」と法務局に申し出ておく、という仕組みです。

「申出」であって、登記を止める手続ではない

まず押さえておきたいのは、この申出それ自体に、登記を止める効力はないということです。

申出があると、登記官はその不動産について注意を払い、申出の日から3か月以内に、その申出に係る登記の申請があったときは、申出をした人に速やかにその旨を知らせます。あわせて、登記官がその申出を相当と認めて「本人確認の調査を要する」と記録していた場合には、その申請は「申請人となるべき人以外の人が申請していると疑うに足りる相当な理由がある」場合にあたるものとされ、登記官が申請人の権限を調べる本人確認の調査(不動産登記法24条1項)の対象になります

つまり、不正な申請を自動的にはね返す壁ではなく、気づく機会と、調べてもらうきっかけを作っておく手続だと理解しておくのが正確です。期間も無期限ではなく3か月なので、危険な状態が続くなら、あらためて申し出る必要があります。

原則は「本人が窓口に行く」

この申出は、登記名義人本人(またはその相続人など)が、登記所に出頭してするのが原則です。委任状を書いて司法書士などに代わりに行ってもらう形は、本人が出頭できないやむを得ない事情があると認められる場合に限られます。なりすましを防ぐための手続なので、入口の本人確認が厳しくなっているわけです。

提出するのは所定の様式による申出書で、申出人の印鑑証明書などを添付します。申出人が法人であれば代表者の資格を証する書面が必要になりますが、申出書に会社法人等番号を書けば添付を省略できる扱いもあります。なお、登記簿上の氏名や住所が今の氏名・住所と違っているときは、そのつながりを示す書面の提出も求められます。

「原因への手当て」もセットで見られる

見落とされがちですが、登記官は申出を受けたとき、申出人が本人であることの確認に加えて、申出をするに至った経緯と、申出が必要になった理由に対応する措置を採っているかを確認することになっています。

具体的には、実印や印鑑証明書を盗まれたのなら印鑑登録の廃止や改印、登記識別情報(権利証)が漏れたおそれがあるのならその失効の申出、盗難そのものについては警察への届出、といった手当てです。申出さえすれば元の危険は放置してよい、という建て付けにはなっていません。

これは執筆時点(2026年09月)の取扱いに基づく一般的な解説です。不正登記防止申出は法律そのものではなく、法務局の事務処理の手引きである「不動産登記事務取扱手続準則」(平成17年2月25日付け法務省民二第456号法務省民事局長通達。最終改正 令和6年12月2日)の35条に定められた取扱いのため、必要書類や当日の流れは登記所ごとに細かな違いがあります。行く前に、その不動産を管轄する法務局に電話で確認しておくと確実です。

まとめ

不正登記防止申出は、「止める」手続ではなく「知らせてもらう・調べてもらう」手続です。効力は申出の日から3か月、原則は本人が窓口へ、そして盗難届や改印など原因への手当てとセットで考える——この3点を押さえておけば、いざというときに慌てずに済みます。

実印や権利証の紛失・盗難に気づいたら、どの手続をどの順番で打つべきかは状況によって変わります。登記後に届く書類の意味とあわせて整理したうえで、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。

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