この記事の要点

  • 契印(けいいん)とは、2枚以上に分かれた書類を一体のものとして扱うため、ページのつなぎ目にまたがるように押す印のことで、委任状や登記原因証明情報が複数枚にわたる場面などで求められることがある
  • 「契印」という語は不動産登記規則46条(契印等)にあり、申請書が2枚以上のときの契印は同条が明文で義務づけている。もっとも同条が対象としているのは申請書(と信託目録に記録すべき情報を記載した書面)で、委任状の契印を直接義務づける規定は見当たらない
  • 誰の印を使うか、代理人がまとめて押してよいかといった扱いには幅があり、求められた際は用途を確認しておくと安心

登記の委任状が2枚、3枚になったとき、「ここに契印をお願いします」と言われた経験がある方もいらっしゃると思います。契印とは、2枚以上にわたる書類が一続きのものであることを示すため、ページのつなぎ目にまたがるように押す印のことです。1枚に収まらない委任状や、契約書の形式で作られた登記原因証明情報などで登場します。

なお、この記事は執筆時点(2026年9月)の法令・実務の取扱いに基づく一般的な解説です。

なぜ登記の書類で求められるのか

不動産登記の申請では、申請人の意思にもとづいて作成された書類が、差し替えや抜き取りなく一体のものとして提出されたことを示す必要があります。書類が複数枚にわたるとき、ページのつなぎ目へ契印をしておけば、途中の紙だけがすり替えられていないことを見た目で確認しやすくなります。こうした理由から、契印は登記の実務で広く行われてきました。

ここで押さえておきたいのは、不動産登記の法令(不動産登記法・不動産登記令・不動産登記規則)のなかで「契印」という語が出てくるのは不動産登記規則46条(契印等)だけで、そこで対象とされているのは「申請書」だという点です。同条1項は「申請人又はその代表者若しくは代理人は、申請書が二枚以上であるときは、各用紙のつづり目に契印をしなければならない。」と定めており、申請書が複数枚にわたる場合の契印は、慣行ではなく規則上の義務ということになります(同条3項は、信託目録に記録すべき情報を記載した書面についても同様の定めを置いています)。

一方で、委任状(代理権限を証する情報を記載した書面)について、契印を直接義務づける明文の規定は見当たりません。不動産登記法・不動産登記令には「契印」という語自体がなく、規則46条を委任状に準用する規定も置かれていないためです。つまり委任状の契印は、捨印と同じように、法律が明文で義務づけたものというより、実務のなかで積み重ねられてきた慣行という位置づけになります。

実務での扱いの傾向

誰が契印をするかについて、申請書には条文の手当てがあります。不動産登記規則46条2項は、申請人などが2人以上いる場合は「その一人がすれば足りる」としたうえで、登記権利者と登記義務者が共同して申請するときは、それぞれの側から1人ずつが契印しなければならないと定めています。

これに対し委任状には、こうした条文上の手当てがありません。契印は本人(委任者)自身の印で押すのが基本の形とされていますが、複数枚の書類を整えて提出するのは司法書士などの代理人であることが多く、どの印を使うか、押し忘れがあったときにどこまで問題になるかは、書類の性質や場面によって扱いに幅があります。その点を一般論で言い切ることはできませんが、慣行として定着している以上、最初から整えておいたほうが後の確認の手間は少なくなります。

まとめ

契印は、複数枚にわたる書類を一体の書面として示すための工夫です。申請書については不動産登記規則46条が明文で義務づけていますが、委任状についてはそうした明文がなく、実務のなかで定着した慣行という位置づけになります。誰の印を使うか、どこまで厳密に求められるかは場面によって幅があるため、書類を準備する段階で疑問があれば、お近くの司法書士にご相談ください。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。

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