親が施設に入ったら実家はどうする?──売却を阻む「意思能力」の壁

この記事の要点 実家の名義人(親)の意思能力が失われると、本人が売買契約を結ぶことも登記手続きを委任することもできなくなり、実家は「売れない不動産」になる 意思能力を失ったあとに売却するには、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい、居住用不動産の処分については家庭裁判所の許可(民法859条の3)を別途得る必要がある 元気なうちに家族信託を設計しておけば、あらかじめ定めた範囲で受託者が実家を管理・売却でき、売却のたびに家庭裁判所の許可を得る手間がかからない 成年後見も家族信託も、選べるのは本人に意思能力があるうちだけ。判断能力が失われてからでは家族信託は組めない 制度ごとに費用・手続きの流れが異なるため、実家をどうするか迷ったら早めにお近くの司法書士にご相談ください 結論から言うと、親御さんが施設に入所したあと空き家になった実家を売ろうとしても、名義人である親御さん本人の「意思能力」が失われていると、そのままでは売却できません。意思能力とは、自分がしようとしている行為の内容や結果を理解し、判断できる能力のことです。不動産の売買は法律上の契約であり、契約を結ぶには意思能力が前提になります。 ...

2026年8月15日 · ひぐらしさとし

本人情報シートは誰が書く?──成年後見の申立てで使う診断書とのちがい

この記事の要点 「本人情報シート」を作成するのは、ケアマネジャー(介護支援専門員)や相談支援専門員など、本人を職務上の立場から支援している福祉関係者。「親族や本人が作成することは想定していません」と裁判所の手引に明記されている 「診断書(成年後見制度用)」を作成するのは医師。本人情報シートは、その医師が診断するときの「補助資料」という位置づけ 後見・保佐・補助のどの類型になるかを判断するのは家庭裁判所。後見・保佐では原則として鑑定が必要とされ、その要否を判断するのも家庭裁判所。補助は鑑定ではなく医師その他適当な者の意見を聴く仕組みで、いずれも書類を出す側が選べるものではない 成年後見の申立てを調べていくと、「診断書」と「本人情報シート」という2つの書類が出てきます。どちらも本人の状態を伝える書類なので混同されがちですが、書く人も、果たす役割も別の書類です。診断書は医師が書き、本人情報シートは本人を支えている福祉関係者が書きます。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし

成年後見の『登記されていないことの証明書』とは?──後見登記の証明書2種類の違いと、請求できる人

この記事の要点 後見の登記に関する証明書は2種類。登記の記録が「ある」ことを示すのが登記事項証明書、「ない」ことを示すのが登記されていないことの証明書で、根拠となる条文は同じ 請求できる人は法律で限定されている。本人、本人の配偶者や四親等内の親族、後見人・後見監督人など、立場ごとに請求できる登記記録が決まっており、誰でも他人の分を取れる制度ではない 各種の資格・営業許可などの場面で提出を求められることがあるが、求められる書類は制度改正で変わっているため、提出先の最新の案内で確認が必要 令和8年(2026年)6月24日公布の改正法により、後見・保佐を廃止して補助に一元化する見直しが予定されており、後見登記もその対象に含まれる。ただし施行日は政令待ちで、確認時点ではまだ定まっていない 「後見の登記がされていない証明書を出してください」と言われて、はじめてこの書類の存在を知った、という方は少なくありません。名前が長いうえに、よく似た名前の「登記事項証明書」もあるため、どちらを取ればよいのか迷いやすい書類です。本記事は、執筆時点(2026年08月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月8日 · ひぐらしさとし

成年後見開始の申立てはどう進む?──誰が申し立てられる?審判までの流れ

この記事の要点 後見開始の申立ては誰でもできるわけではなく、本人・配偶者・四親等内の親族・市区町村長など、法律で決まった人に限られる 申立て先は本人の住所地の家庭裁判所で、法律上は原則として「鑑定」を経て審判が行われる(明らかにその必要がないと認められるときは省略される) 審判が確定すると、家庭裁判所からの嘱託によって法務局の後見登記に記録される(本人や後見人が自分で登記申請するわけではない) 「親の物忘れが進んできたので後見人をつけたい」と思っても、思い立った人が誰でも家庭裁判所に申し立てられるわけではありません。本記事は、執筆時点(2026年08月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月4日 · ひぐらしさとし

任意後見契約の3つの型──将来型・移行型・即効型はどう違う?

この記事の要点 将来型・移行型・即効型は、任意後見契約を「いつ結び、いつ効力を生じさせるか」による使い方の呼び分けで、法律上の分類ではない どの型でも、契約は法務省令で定める様式の公正証書で結ぶ必要があり(任意後見契約に関する法律3条)、効力が生じるのは家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から(同法2条1号・4条1項) 移行型は判断能力があるうちから財産管理を任せられる一方、誰も監督人の選任を申し立てないまま委任契約の代理権だけが使われ続けることが、形の上では起こりえる構造になっている点に注意が必要 将来型・移行型・即効型の違いは、「契約を結ぶ時期」と「効力を生じさせる時期」の組み合わせの違いです。3つとも同じ任意後見契約であり、法律に3つの型が書かれているわけではなく、実務や文献で使われている呼び分けです。制度の全体像は任意後見契約とは──元気なうちに「将来の後見人」を自分で選ぶで解説していますので、この記事では「型の使い分け」に絞って整理します。本記事は、執筆時点(2026年07月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

成年後見制度支援信託とは──本人の財産を守るためのもうひとつの仕組み

この記事の要点 後見制度支援信託・支援預貯金は、本人の財産のうち普段使わない金銭を信託銀行等や金融機関に預け、後見人の手元管理を最小限にする仕組み 対象は「成年後見」と「未成年後見」に限られ、保佐・補助・任意後見では利用できない 信託・預貯金からお金を動かすときは、家庭裁判所が発行する指示書が必要になる 「後見人になると、本人の財産をすべて自分の口座や手元で管理するのだろうか」——そう思われがちですが、実際には財産の額によって、家庭裁判所がもう一つの仕組みを提案することがあります。それが後見制度支援信託・後見制度支援預貯金です。本記事は、執筆時点(2026年07月)の制度・運用に基づく一般的な解説です。 ...

2026年7月27日 · ひぐらしさとし

成年後見人になったら何をする?財産管理と家庭裁判所への報告の流れ

この記事の要点 成年後見人になったら、まず本人の財産を調べて「財産目録」を作ることから始まる 財産目録ができるまでの間は、急を要する行為を除き代理権の行使が制限される その後は日常の財産管理を行いながら、家庭裁判所へ定期的に事務の状況を報告する 「成年後見人に選ばれたら、すぐに本人の財産を自由に動かせるのだろうか」——制度を調べ始めた方から、こうした疑問を伺うことがあります。実際には、就任後すぐに自由な財産管理が始まるわけではなく、まず財産を確定させる手続きを経てから、家庭裁判所の目が届く形で事務が続いていきます。本記事は、執筆時点(2026年07月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年7月23日 · ひぐらしさとし

後見監督人とは?成年後見人を見守る仕組みと選ばれるケース

この記事の要点 後見監督人(こうけんかんとくにん)は、成年後見人がきちんと本人のために事務をしているかを見守るため、家庭裁判所が選任する人 すべての後見に必ず付くわけではなく、家庭裁判所が「必要がある」と判断した場合に選任される 保佐・補助にも同様の仕組み(保佐監督人・補助監督人)があり、任意後見の「任意後見監督人」とは別の制度 「後見人が決まったのに、さらに『後見監督人』という人が出てきた」——後見の手続きを進める中で、こうした戸惑いの声を聞くことがあります。後見監督人は、後見人に代わって本人を支援する人ではなく、後見人の仕事ぶりをチェックする役割の人です。本記事は、執筆時点(2026年07月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年7月19日 · ひぐらしさとし

成年後見人が『できないこと』とは──医療同意・身元保証・自宅の売却で知っておきたい限界

この記事の要点 成年後見人は本人の財産管理や契約を広く代理できるが、「何でもできる」わけではなく、法律上できないことがある 医療への同意、本人の身元保証、婚姻などの身分行為は、後見人が本人に代わって行うことはできない 本人が住む自宅の売却など、影響の大きい行為には家庭裁判所の許可が必要 「成年後見人になれば、本人のことは何でも代わりに決められる」——そう思われがちですが、実際には後見人にも「できないこと」があります。本記事は、執筆時点(2026年07月)の制度に基づく一般的な解説です。後見・保佐・補助の違いについては、法定後見の3類型『後見・保佐・補助』はどう違う?もあわせてご覧ください。 ...

2026年7月15日 · ひぐらしさとし

任意後見契約とは──元気なうちに「将来の後見人」を自分で選ぶ

この記事の要点 任意後見契約(にんいこうけんけいやく)は、判断能力があるうちに、将来判断能力が低下したときに備えて「誰に・何を任せるか」を自分で決めておく契約 家庭裁判所が後見人を選ぶ「法定後見」と違い、支援する人(任意後見人)と任せる内容を自分で選べるのが最大の特徴 契約は必ず公証役場で公正証書として作成し、実際に効力が生じるのは判断能力が低下して家庭裁判所が「任意後見監督人」を選んだ時点から 将来、認知症などで判断能力が下がったとき、財産の管理や契約を誰に任せるか——それを、元気なうちに自分の意思で決めておけるのが「任意後見契約」です。判断能力が下がってから家庭裁判所が支援者を選ぶ法定後見の3類型(後見・保佐・補助)とは、支援者を「誰が選ぶか」という点で大きく異なります。この記事では、任意後見契約とは何か、どんな流れで使われるのかを一般的な内容として整理します。 ...

2026年7月14日 · ひぐらしさとし