成年後見人が2人以上いるときはどうなる?──「共同して」か「分掌して」か、家庭裁判所が決める権限の使い方

この記事の要点 成年後見人は1人とは限らない。すでに成年後見人がいる場合でも、家庭裁判所は必要があると認めるときは、さらに成年後見人を選任することができる(民法第843条第3項) 成年後見人が数人あるとき、家庭裁判所は職権で、「共同して」権限を使うか、「事務を分掌して(分担して)」権限を使うかを定めることができ、その定めは後見登記に記録される(民法第859条の2第1項、後見登記等に関する法律第4条第1項第7号) 成年後見人が数人あっても、第三者からの意思表示は、そのうちの1人に対してすれば足りる(民法第859条の2第3項) 成年後見人というと、1人の後見人が本人の財産のことも生活のこともすべて引き受けるイメージがあるかもしれません。結論から言うと、成年後見人は2人以上選ばれることがあり、その場合に後見人どうしでどう権限を使うかは、家庭裁判所が定めることができます。本記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月15日 · ひぐらしさとし

取締役になれない人とは?──会社法の欠格事由と、在任中に成年後見が始まった取締役の扱い

この記事の要点 取締役になれない人(欠格事由)は会社法331条1項に定められています。現在の条文に挙がっているのは「法人」と「一定の罪を犯して刑に処せられた人」で、成年被後見人・被保佐人は含まれていません 成年被後見人が取締役に就任するには、成年後見人が本人の同意を得たうえで、本人に代わって就任を承諾する必要があります(会社法331条の2第1項) 一方、在任中の取締役が後見開始の審判を受けると、会社との委任の関係が終わり、取締役を退任します(会社法330条・民法653条3号)。保佐・補助の開始では退任しません 退任したら2週間以内に退任の登記が必要です(会社法915条1項)。この退任は「後任が決まるまで務め続ける」仕組みの対象外なので、人数が足りなくなるなら後任選びを急ぐ必要があります 成年後見制度を見直す改正法が公布されていますが、成年後見の見直しの部分は2026年10月時点では未施行です。この記事は現在の条文で説明しています 経営者の方に知っておいてほしいのは、「取締役になれない人」と「取締役を続けられなくなる場面」は、条文上は別の話だということです。 ...

2026年10月13日 · ひぐらしさとし

成年後見の審判が出るまでの間、本人の財産はどう守る?──審判前の保全処分(財産の管理者の選任・後見命令)

この記事の要点 後見開始の申立てがあった後、審判が効力を生じるまでの間、家庭裁判所は本人の生活や財産を守るために「財産の管理者」を選任するなどの保全処分をすることができる。申立てによるほか、家庭裁判所の職権でもできる(家事事件手続法第126条第1項) 本人の財産の保全のため特に必要があるときは、後見開始の申立てをした人の申立てにより、「後見命令」を出すことができる。後見命令が出ると、本人がした財産上の行為(日用品の購入など日常生活に関する行為を除く)を取り消せるようになる(同条第2項・第7項) いずれも家庭裁判所の後見開始の手続きに付随する家事事件手続法上の制度で、民事保全法に基づく民事保全(仮差押え・仮処分)とは別の仕組み 成年後見の申立てをしても、審判が出るのは家庭裁判所での審理を経た後です。その間に本人の財産が失われるおそれがあるときは、どうすればよいのでしょうか。結論から言うと、家庭裁判所は、審判が効力を生じるまでの間に限って「審判前の保全処分」をすることができ、本人の財産を管理する人(財産の管理者)を選んだり、本人がした財産上の行為を取り消せるようにしたり(後見命令)することができます。本記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月11日 · ひぐらしさとし

判断能力が回復したら成年後見は終わる?──後見開始の審判の取消しのしくみ

この記事の要点 後見・保佐・補助は、開始の原因(判断能力の低下)がなくなったときは、請求を受けた家庭裁判所が開始の審判を取り消します(民法10条・14条1項・18条1項) 判断能力が回復したかどうかを判断するのは家庭裁判所です。後見と保佐の取消しでは、原則として医師の意見を聴くことが法律で定められています(家事事件手続法119条2項・133条) 取消しの審判は、成年後見人の辞任・解任や任意後見契約の解除とは別の手続です。取消しの後は、裁判所書記官の嘱託によって後見の登記に終了が記録されます 「いったん成年後見が始まったら、一生続くのでしょうか」と疑問に思う方もいるでしょう。結論からお伝えすると、本人の判断能力が回復して開始の原因がなくなれば、家庭裁判所の「後見開始の審判の取消し」によって成年後見を終わらせる仕組みが法律に用意されています。ただし、回復したかどうかを決めるのは家庭裁判所であり、家族や成年後見人の判断だけで終わらせることはできません。 ...

2026年10月7日 · ひぐらしさとし

補助開始の審判とは?──本人の同意が必要な理由と、同意権・代理権を選んで付ける仕組み

この記事の要点 補助は、判断能力が「不十分」な方のための類型で、本人以外の人が申し立てるときは本人の同意が必要です(民法15条2項) 補助開始の審判だけでは補助人に権限は生まれず、「同意権を付ける審判」か「代理権を付ける審判」の少なくとも一方を一緒にしなければなりません(民法15条3項) 同意権を付けられるのは、民法13条1項に挙げられた行為の一部に限られます(民法17条1項ただし書) 結論からお伝えします。補助は、本人に判断能力がある程度残っていることを前提に、本人が納得した範囲で、必要な支援だけを選んで付ける仕組みです。後見・保佐・補助の3類型の全体像は法定後見の3類型『後見・保佐・補助』はどう違う?で整理していますので、この記事では補助に絞って見ていきます。 ...

2026年10月3日 · ひぐらしさとし

成年後見の申立ては取り下げられる?──家庭裁判所の許可が必要な理由(家事事件手続法121条)

この記事の要点 後見開始の申立ては、審判(家庭裁判所の決定)が出る前であっても、家庭裁判所の許可がなければ取り下げられない(家事事件手続法第121条) 同じ制限は、保佐・補助の開始の申立てや、任意後見監督人の選任の申立て(任意後見契約の効力を発生させるためのものなど)にも置かれている 後見人を誰にするかは家庭裁判所が決める。家庭裁判所の案内では、「希望した候補者が選ばれそうにないから取り下げる」といった選任への不満を理由とする取下げは、本人の利益に配慮して許可されない可能性が高いと説明されている 「親に後見人をつけようと申し立てたけれど、やはりやめたい」と思っても、成年後見の申立ては自由に取り下げることができません。結論から言うと、審判が出る前でも家庭裁判所の許可が必要で、審判が出た後は取り下げ自体ができなくなります。本記事は、執筆時点(2026年09月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月29日 · ひぐらしさとし

任意後見契約はやめられる?──効力が生じる前と後で違う解除の方法

この記事の要点 任意後見監督人が選ばれる前なら、本人・任意後見受任者のどちらからでも、公証人の認証を受けた書面によって、いつでも解除できる(任意後見契約に関する法律9条1項) 任意後見監督人が選ばれた後は、本人・任意後見人のどちらからの解除も、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て行う(同条2項) 家庭裁判所が任意後見人をやめさせる「解任」(同法8条)は、当事者の意思で契約をやめる「解除」とは別の仕組み 任意後見契約は、結んだあとでもやめる(解除する)ことができます。ただし、その方法は、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任する前か後かで大きく変わります。選任の前は比較的簡単な手続きで解除できますが、選任の後は家庭裁判所の許可が必要になります。本記事は、執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月25日 · ひぐらしさとし

成年後見を受けると資格や仕事を失う?──『欠格条項』はどう変わったか

この記事の要点 かつては「成年被後見人・被保佐人」であることそのものを理由に、医師や会社役員など多くの資格・職業から一律に排除する規定(欠格条項)が数多くの法律にありました 令和元年(2019年)6月14日公布の法律により、こうした一律の欠格条項は多数の法律から削除され、法律によっては、代わりに「心身の故障により業務を適正に行うことができない者」かどうかを個別に審査する規定が置かれました。見直しの対象となった法律では、「後見を受けているかどうか」という身分だけで一律に排除する仕組みは、基本的になくなっています 会社の取締役については、これとは別の会社法改正により、成年後見人・保佐人の同意を得て本人に代わって就任を承諾する手続き(会社法331条の2)が新設されています 「後見を受けると、今の仕事や資格を失ってしまうのでは」——成年後見の利用をためらう理由として、こうした心配の声を聞くことがあります。かつてはその心配にも根拠がありました。しかし今は、法律の見直しにより状況が変わっています。本記事は、執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月21日 · ひぐらしさとし

成年後見制度の「中核機関」「地域連携ネットワーク」とは?──利用促進法が目指す地域の支え合い

この記事の要点 2016年に施行された成年後見制度利用促進法をきっかけに、市区町村が中心となって「中核機関」の整備と「地域連携ネットワーク」の構築を進めています 中核機関は、制度の相談対応や後見人候補者の調整、就任後の後見人への支援などを担う地域の窓口です 地域連携ネットワークは、家庭裁判所や専門職団体、福祉関係機関などが連携し、申立て前から就任後まで継続的に本人を支える体制です 2026年6月には成年後見制度そのものを見直す民法改正が成立しましたが、施行日は公布から2年6月以内に政令で定める日とされており、2026年9月時点ではまだ施行されていません 結論から言うと、「中核機関」と「地域連携ネットワーク」は、個々の後見の申立てそのものを扱う機関ではなく、成年後見制度を「使いたい人が使える制度」にするために、国が市区町村に整備を促している地域の支援体制です。申立て前の相談から、後見人になった後のフォローまでを地域全体で支える仕組みと考えると分かりやすいです。 ...

2026年9月17日 · ひぐらしさとし

保佐人の同意が必要な行為とは?──民法13条が定める10種類をやさしく解説

この記事の要点 保佐開始の審判を受けた本人(被保佐人)は、日常の買い物などは自分でできますが、借金や不動産の売買など重要な行為をするときは保佐人の同意が必要です 同意が必要な行為は民法13条1項に10種類が列挙されており、家庭裁判所の審判でこれ以外の行為にも範囲を広げることができます 保佐人が正当な理由なく同意しないときは、家庭裁判所に「同意に代わる許可」を求める仕組みがあります 結論からお伝えします。保佐制度は、判断能力が「著しく不十分」な方(本人=被保佐人)について、日常生活に関する行為は本人の自由に任せつつ、財産や生活に重大な影響を与える一部の行為だけを保佐人のチェック(同意)にかける仕組みです。法定後見の3類型(後見・保佐・補助)の違いは法定後見の3類型『後見・保佐・補助』はどう違う?で解説していますが、この記事では保佐に絞って、具体的にどの行為に同意が必要になるのかを見ていきます。なお、保佐人には、この記事で扱う同意権とは別に、家庭裁判所の審判によって特定の法律行為について本人に代わって行う代理権が与えられることもあります(民法876条の4第1項)。同意権と代理権は別の仕組みであり、本記事で取り上げるのは同意権に限られます。 ...

2026年9月13日 · ひぐらしさとし