司法書士に頼めること全リスト──登記だけではない業務の全体像

この記事の要点 司法書士の業務は司法書士法第3条で定められており、登記・供託の代理だけでなく、裁判所提出書類の作成や、140万円以下の簡易裁判所での訴訟代理(認定司法書士)まで含まれる 成年後見についても、申立書類の作成に関わったり、家庭裁判所から選任されて後見人等に就任したりする形で関わる制度がある 相談先を迷ったときは、まず「何を頼みたいか」を整理し、お近くの司法書士に確認するのが近道 「司法書士って、名義変更(登記)をお願いする人でしょう?」というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。たしかに不動産や会社の登記は司法書士の代表的な業務ですが、司法書士法が定める業務範囲は、実はそれだけにとどまりません。 ...

2026年9月13日 · ひぐらしさとし

成年後見の「意思決定支援」とは?本人の意思を尊重する後見事務の考え方

この記事の要点 意思決定支援(いしけっていしえん)とは、後見人が本人に代わって一方的に決めるのではなく、本人が自分の意思で決められるよう支えるという考え方 2020年に最高裁判所・厚生労働省等でつくる意思決定支援ワーキング・グループが「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」を公表し、後見事務の実務上の指針とされている 財産管理や身上保護の場面でも、まず本人の意向を丁寧に聴くことが後見事務の出発点になる 「後見人がついたら、もう自分の希望は聞いてもらえないのでは」——成年後見の利用を検討する中で、こうした不安の声を耳にすることがあります。しかし、後見人の役割は本人に代わって一方的に物事を決めることではなく、できる限り本人の意思を確認し、それを尊重しながら支援することが基本とされています。本記事は、執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月9日 · ひぐらしさとし

成年後見人には誰がなれる?──親族後見人・専門職後見人・市民後見人のちがい

この記事の要点 成年後見人は、申立ての際に候補者を挙げることはできても、最終的に誰を選ぶかを決めるのは家庭裁判所です(民法843条) 後見人には大きく分けて「親族後見人」「専門職後見人(弁護士・司法書士・社会福祉士など)」「市民後見人」「法人後見」という選択肢があります 「市民後見人」という呼び方は法律で定義された用語ではなく、研修を受けた市民が家庭裁判所に後見人候補として推薦される仕組みを指す、行政施策上の呼び方です 結論から言うと、成年後見人に「誰がなるか」は、申立人の希望どおりに決まるとは限りません。申立ての際に候補者を挙げることはできますが、実際に選ぶのは家庭裁判所であり、本人の状況によっては親族以外の人や法人が選ばれることもあります。 ...

2026年9月5日 · ひぐらしさとし

成年後見人あてに本人の郵便物が届く?──郵便物等の回送・管理の制度

この記事の要点 成年後見人は、家庭裁判所の許可(嘱託)があれば、本人あての郵便物等を自分の住所に配達してもらうことができます(民法860条の2) 配達された郵便物等は、後見人が開いて見ることができます。ただし後見の事務に関係ないものは、速やかに本人へ渡さなければなりません(民法860条の3) 本人は、後見人が受け取った郵便物等(すでに本人に渡されたものを除く)について、後見人に閲覧を求めることができます 結論からお伝えします。成年後見人は、家庭裁判所の許可(嘱託)なしに本人あての郵便物を受け取れるわけではありません。嘱託を経て配達を受けられるようになると、受け取った郵便物等を開いて見ること自体はできますが、後見の事務に関係のないものは速やかに本人へ渡さなければならず、本人から閲覧を求められればそれに応じる必要があります。入口に家庭裁判所の関与を置き、受け取った後は交付義務と閲覧請求権で歯止めをかける、という組み立てになっています。 ...

2026年9月1日 · ひぐらしさとし

成年後見人は途中で辞められる?代えられる?──辞任・解任と後任選任のしくみ

この記事の要点 成年後見人は自分の判断だけでは辞められません。辞任には「正当な事由」と家庭裁判所の許可が必要です(民法844条) 解任できるかどうかを判断するのは家庭裁判所です。不正な行為など「後見の任務に適しない事由」があるときに、請求または職権で解任されます(民法846条) 辞任・解任があっても成年後見そのものは終わりません。後任の成年後見人は家庭裁判所が選任します 結論からお伝えします。成年後見人は、途中で辞めることも、家庭裁判所の判断で交代となることもありますが、いずれも「本人(成年被後見人)を保護する仕組みを途切れさせない」形でしか進みません。辞めるのも代わるのも、家庭裁判所の関与のもとで行われます。 ...

2026年8月28日 · ひぐらしさとし

成年後見人と本人の利益がぶつかるとき──特別代理人の選任と後見監督人の役割

この記事の要点 成年後見人と本人の利益がぶつかる行為(利益相反行為)については、後見人は本人を代理できず、本人のために特別代理人を選任するよう家庭裁判所に請求します(民法860条・826条) ただし後見監督人がいるときは、監督人が本人を代表するため、特別代理人の選任は必要ありません(民法860条ただし書・851条4号) 保佐・補助にも同じ仕組みがあり、こちらは臨時保佐人・臨時補助人を選任します(民法876条の2第3項・876条の7第3項) 「母の成年後見人になった。その母の相続——父の遺産分割協議に、自分も相続人として参加する」。このような場面では、後見人であるご本人(子)が、母の代理人としての立場と、自分自身の相続人としての立場を同時に持つことになります。民法は、こうした場面で後見人が本人を代理することを認めず、別の代理人を立てる仕組みを用意しています。本記事は、執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月24日 · ひぐらしさとし

成年後見人・任意後見監督人の報酬はどう決まる?──家庭裁判所への報酬付与の申立て

この記事の要点 成年後見人・保佐人・補助人・任意後見監督人の報酬は、本人が自由に決めるものではなく、家庭裁判所への申立てと審判によって定まる 報酬は本人(被後見人等)の財産の中から支払われ、家庭裁判所は本人の資力その他の事情を考慮して判断する 具体的な金額は事案ごとに家庭裁判所が個別に判断するため、本記事では目安額は示さない 「後見人になったら、報酬はいつ、どうやってもらえるのか」——制度を調べ始めた方から、こうした質問を伺うことがあります。成年後見人等は本人のために重い責任を負う立場ですが、報酬は自動的に支払われるものではなく、また後見人等が自分で金額を決めてよいものでもありません。本記事は、執筆時点(2026年08月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月20日 · ひぐらしさとし

成年後見人の仕事は本人が亡くなったら終わる?──死後事務でできることとできないこと

この記事の要点 成年後見人の代理権は、本人の死亡によって原則として当然に終了すると解されており、その後の財産管理は本来相続人が担うもの ただし民法第873条の2により、相続人が財産を管理できるようになるまでの間、特定の財産の保存・弁済期到来済みの債務の弁済・火葬や埋葬の契約締結など、限られた行為だけは例外的に認められる 現行法では、この規定の主語は「成年後見人」に限られ、保佐人・補助人には適用がない(この点は成立済みの法改正で見直される予定・施行日は未定) 「本人が亡くなったら、後見人の仕事もそこで終わり」というイメージを持たれる方が多いのですが、実際には民法に定められた限られた範囲で、死後も一定の事務を担うことがあります。本記事は、執筆時点(2026年08月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月16日 · ひぐらしさとし

親が施設に入ったら実家はどうする?──売却を阻む「意思能力」の壁

この記事の要点 実家の名義人(親)の意思能力が失われると、本人が売買契約を結ぶことも登記手続きを委任することもできなくなり、実家は「売れない不動産」になる 意思能力を失ったあとに売却するには、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい、居住用不動産の処分については家庭裁判所の許可(民法859条の3)を別途得る必要がある 元気なうちに家族信託を設計しておけば、あらかじめ定めた範囲で受託者が実家を管理・売却でき、売却のたびに家庭裁判所の許可を得る手間がかからない 成年後見も家族信託も、選べるのは本人に意思能力があるうちだけ。判断能力が失われてからでは家族信託は組めない 制度ごとに費用・手続きの流れが異なるため、実家をどうするか迷ったら早めにお近くの司法書士にご相談ください 結論から言うと、親御さんが施設に入所したあと空き家になった実家を売ろうとしても、名義人である親御さん本人の「意思能力」が失われていると、そのままでは売却できません。意思能力とは、自分がしようとしている行為の内容や結果を理解し、判断できる能力のことです。不動産の売買は法律上の契約であり、契約を結ぶには意思能力が前提になります。 ...

2026年8月15日 · ひぐらしさとし

本人情報シートは誰が書く?──成年後見の申立てで使う診断書とのちがい

この記事の要点 「本人情報シート」を作成するのは、ケアマネジャー(介護支援専門員)や相談支援専門員など、本人を職務上の立場から支援している福祉関係者。「親族や本人が作成することは想定していません」と裁判所の手引に明記されている 「診断書(成年後見制度用)」を作成するのは医師。本人情報シートは、その医師が診断するときの「補助資料」という位置づけ 後見・保佐・補助のどの類型になるかを判断するのは家庭裁判所。後見・保佐では原則として鑑定が必要とされ、その要否を判断するのも家庭裁判所。補助は鑑定ではなく医師その他適当な者の意見を聴く仕組みで、いずれも書類を出す側が選べるものではない 成年後見の申立てを調べていくと、「診断書」と「本人情報シート」という2つの書類が出てきます。どちらも本人の状態を伝える書類なので混同されがちですが、書く人も、果たす役割も別の書類です。診断書は医師が書き、本人情報シートは本人を支えている福祉関係者が書きます。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし