相続の相談はいつ行けばいい?──四十九日などの区切りの考え方と、早めに動いたほうがよい場合

この記事の要点 四十九日などの区切りは、宗教・宗派や地域、家庭によって考え方が異なる慣習で、法律が定める手続きの期限ではありません。相談に行く時期を法要の日取りに合わせる必要はありません 一方で、相続放棄・限定承認の3か月、準確定申告の4か月、相続税の申告の10か月、相続登記の申請の3年など、法律で期限が決まっている手続きがあります 借金がありそうなとき、相続人と連絡がつかないとき、不動産を売る予定があるときなどは、気持ちの整理を待たずに、期限が関係するかどうかだけでも早めに確かめておくと安心です 「四十九日が済んで、落ち着いてから相談しよう」と考える方もいるでしょう。結論からいえば、相談に行く時期は法要の区切りではなく、「期限のある手続きが関係しそうかどうか」で考えるのが基本です。 ...

2026年10月17日 · ひぐらしさとし

死亡保険金の非課税枠とは──「500万円×法定相続人の数」の意味と、使える人・使えない人

この記事の要点 亡くなった方が保険料を負担していた死亡保険金は、民法上の相続財産ではなくても、相続税では「相続や遺贈で取得したもの」とみなされ、課税の対象になる(相続税法3条1項1号) 非課税枠は「500万円×法定相続人の数」。人数は、相続放棄をした人も放棄がなかったものとして数え、養子は数に入れられる人数に上限がある(同法12条1項6号・15条2項) 枠を使えるのは相続人が受け取った保険金だけ。相続放棄をした人や相続人でない人が受け取った保険金には使えず、相続人どうしでは受け取った額の割合で枠を分ける 結論から言うと、死亡保険金の非課税枠は「人数を数えるときは相続放棄をした人も含めるが、枠を使えるのは相続人が受け取った分だけ」という、少しねじれた仕組みです。順に整理します。 ...

2026年10月17日 · ひぐらしさとし

預金の残高証明書はいつ・誰が取る?──死亡日現在で請求する順番と相続放棄の3か月

この記事の要点 預金の残高証明書は、相続人が金融機関に「死亡日現在」の残高で請求するのが基本で、請求は死亡の連絡とセットになる(連絡と同時に口座の取引は原則制限される) 相続放棄・限定承認を選べる期間は、原則として自分のために相続が始まったことを知った時から3か月。残高証明書はその判断材料なので、取引先の洗い出しが済んだら早めにまとめて請求する 誰が請求できるか・必要書類・手数料・発行までの日数は金融機関ごとに異なることがあるため、事前に確認する 結論から言うと、残高証明書は「遺産分割の話し合いの前」よりさらに早く、「相続するか放棄するかを決める前」に揃え始めたい書類です。この記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月16日 · ひぐらしさとし

特別養子の戸籍はどう書かれている?──「民法817条の2」の記載と相続人確定での読み方

この記事の要点 特別養子縁組は家庭裁判所の審判で成立し、戸籍には「縁組日」ではなく裁判の確定日が記載される。法令の記載例では、養親の戸籍の養子の欄に【民法817条の2による裁判確定日】という項目で記載される 戸籍は「実方の戸籍 → 養子ひとりの新戸籍 → 養親の戸籍」とつながる。出生までさかのぼるときは、間にはさまる新戸籍を抜かさない 実親の相続では、特別養子縁組の記載がある子は原則として相続人にならない(民法817条の9)。ただし、夫婦の一方が配偶者の嫡出子(連れ子)を特別養子とした場合の例外と、離縁による親族関係の回復に注意する 結論から言うと、特別養子縁組は、ひとつの戸籍だけを見ても全体がつかめません。養親の戸籍、養子について一度だけ作られる新しい戸籍、縁組前の実方(じっかた=生みの親の側)の戸籍の3か所に、それぞれ違う形で記載が残るためです。ここでは、相続手続きのために集めた戸籍の中でこの記載に行き当たったときの読み方に絞って、法令に定められた記載例に沿って整理します。 ...

2026年10月16日 · ひぐらしさとし

成年後見人が2人以上いるときはどうなる?──「共同して」か「分掌して」か、家庭裁判所が決める権限の使い方

この記事の要点 成年後見人は1人とは限らない。すでに成年後見人がいる場合でも、家庭裁判所は必要があると認めるときは、さらに成年後見人を選任することができる(民法第843条第3項) 成年後見人が数人あるとき、家庭裁判所は職権で、「共同して」権限を使うか、「事務を分掌して(分担して)」権限を使うかを定めることができ、その定めは後見登記に記録される(民法第859条の2第1項、後見登記等に関する法律第4条第1項第7号) 成年後見人が数人あっても、第三者からの意思表示は、そのうちの1人に対してすれば足りる(民法第859条の2第3項) 成年後見人というと、1人の後見人が本人の財産のことも生活のこともすべて引き受けるイメージがあるかもしれません。結論から言うと、成年後見人は2人以上選ばれることがあり、その場合に後見人どうしでどう権限を使うかは、家庭裁判所が定めることができます。本記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月15日 · ひぐらしさとし

簡易裁判所の裁判に家族や会社の社員が代わりに出られる?|裁判官の許可による代理人(代理人許可)の基礎

この記事の要点 簡易裁判所の民事裁判では、裁判官の許可を得れば、弁護士でない人(家族や会社の社員など)を代理人にできます(民事訴訟法54条1項ただし書) 許可を求めるには、申請書と、本人と代理人の関係がわかる書類を出します。許可はいつでも取り消されることがあります 和解や訴えの取下げなどを代理人に任せるには、委任状で特別に任せておく必要があります 結論から言うと、簡易裁判所の民事裁判では、裁判官の許可があれば、弁護士でない家族や会社の社員に代わりに手続きをしてもらうことができます。民事訴訟(民事裁判)については、簡易裁判所だけに設けられた仕組みです。本記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月15日 · ひぐらしさとし

「推定相続人」「法定相続人」「共同相続人」の違い──民法の条文に「法定相続人」は出てこない【相続の条文で解説】

この記事の要点 民法の条文は、相続が始まったあとに実際に相続する人を「相続人」、相続が始まる前の段階で「相続が開始した場合に相続人となるべき者」を「推定相続人」(民法892条のかっこ書きで定義)、相続人が複数いるときのそれぞれを「共同相続人」と使い分けています よく聞く「法定相続人」という言葉は、民法にも相続税法にも出てきません(2026年10月時点のe-Gov法令検索の現行条文の全文で確認)。民法900条の見出し「法定相続分」、不動産登記規則247条の「法定相続情報」、国税庁の案内の「法定相続人の数」のように、周辺で使われている言葉です 相続税法15条の基礎控除で数える「相続人の数」は、相続放棄をした人がいても放棄がなかったものとして数えます。相続放棄をした人を「初めから相続人とならなかったものとみなす」民法939条とは数え方が違うので、同じ「相続人」でも、どの法律の条文で数えているかを確かめることが大切です 相続の説明では「法定相続人」という言葉がよく使われます。ところが、民法の相続のきまり(第五編)の中で相続人を定めている章(第二章)の見出しは「相続人」で、その条文を読んでも「法定相続人」という言葉は出てきません。この記事では、民法が使い分けている言葉のうち「相続人」「推定相続人」「共同相続人」の三つを取り上げます。それぞれが何を指すのかを、条文の文言で確かめます(執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です)。 ...

2026年10月14日 · ひぐらしさとし

自分で申請していない登記が載っているのはなぜ?──裁判所や役所が法務局に頼む『嘱託登記』のしくみ

この記事の要点 登記は、当事者の「申請」のほか、裁判所や役所などの官庁・公署の「嘱託(しょくたく)」によってもされます(不動産登記法16条1項)。 差押えの登記は、差押えをした側(裁判所書記官や税務署長など)が嘱託します。差押えが取り下げられたり解除されたりしたときの抹消も、同じ側が嘱託するしくみです。 国や地方公共団体に土地を売るときの登記も、役所の側が売主の承諾を得て嘱託します(同法116条1項)。 登記簿を取ってみたら、自分が頼んだ覚えのない登記が載っていた──そうした登記には、「嘱託登記」によるものがあります。結論からいうと、登記は本人が法務局に申請するものばかりではなく、裁判所や役所が法務局に頼んでするものがあります。 ...

2026年10月14日 · ひぐらしさとし

相続の相談中に専門用語が分からないとき──その場で聞き返してよいこと、聞き方のコツ

この記事の要点 相談中に分からない言葉が出てきたら、その場で聞き返してかまわない。意味がずれたまま答えると、事実の確認が食い違うおそれがある 聞き方のコツは「言葉をそのまま繰り返して尋ねる」「自分の言葉で言い直して確かめる」「自分の家族に当てはめてもらう」の3つ 被相続人・法定相続人・登記名義人・遺産分割協議など、相続の相談でよく出る言葉の言い換えを知っておくと、聞き取りやすくなる 相続の相談では、ふだん使わない言葉がいくつも出てきます。「話の腰を折るのは悪い」「こんなことも知らないのかと思われたくない」と、分からないまま聞き流してしまう方もいるかもしれません。結論から言うと、分からない言葉はその場で聞き返してかまいません。 ...

2026年10月13日 · ひぐらしさとし

相続した不動産を売ったときの「取得費加算の特例」とは──納めた相続税の一部を、売却益の計算で差し引ける制度(租税特別措置法39条)

この記事の要点 相続税額がある人が、相続した財産を一定の期間内に売ると、納めた相続税のうちその財産に対応する部分を「取得費」に加えて、売却益(譲渡所得)を計算できる(租税特別措置法39条1項) 期間は「相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」。申告期限は原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内なので、おおむね相続開始から3年10か月が目安 相続税額がない人(基礎控除の範囲内で相続税がかからなかった人など)は対象外。使うには確定申告で特例を受ける旨を書き、計算明細書などを添付するのが原則 相続した不動産を売って利益が出ると、売った相続人に所得税・住民税(譲渡所得の税金)がかかることがあります。一方で、その不動産にはすでに相続税もかかっています。このように「相続税」と「売ったときの税金」の両方がかかる場面で、納めた相続税の一部を売却益の計算で差し引けるのが 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例 です。以下は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月13日 · ひぐらしさとし