成年後見人と本人の利益がぶつかるとき──特別代理人の選任と後見監督人の役割

この記事の要点 成年後見人と本人の利益がぶつかる行為(利益相反行為)については、後見人は本人を代理できず、本人のために特別代理人を選任するよう家庭裁判所に請求します(民法860条・826条) ただし後見監督人がいるときは、監督人が本人を代表するため、特別代理人の選任は必要ありません(民法860条ただし書・851条4号) 保佐・補助にも同じ仕組みがあり、こちらは臨時保佐人・臨時補助人を選任します(民法876条の2第3項・876条の7第3項) 「母の成年後見人になった。その母の相続——父の遺産分割協議に、自分も相続人として参加する」。このような場面では、後見人であるご本人(子)が、母の代理人としての立場と、自分自身の相続人としての立場を同時に持つことになります。民法は、こうした場面で後見人が本人を代理することを認めず、別の代理人を立てる仕組みを用意しています。本記事は、執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月24日 · ひぐらしさとし

少額訴訟で勝ったあと、お金を回収するには|少額訴訟債権執行の基礎

この記事の要点 少額訴訟で勝っても、裁判所が自動的に相手からお金を取り立ててくれるわけではありません。回収するには、あらためて強制執行を申し立てる必要があります 少額訴訟の判決や和解の調書をもとに預金・給料などの「金銭債権」を差し押さえる場合には、簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てる「少額訴訟債権執行」という手続きが用意されています(民事執行法167条の2) 対象は金銭債権に限られます。不動産や動産を差し押さえる手続きは地方裁判所・執行官の担当となり、司法書士が代理できる範囲からは外れます 以下は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月24日 · ひぐらしさとし

「追認」とは? 取り消せる行為・無権代理を有効に確定させる意味

この記事の要点 追認(ついにん)とは、取消しができる行為や無権代理行為のように、いったん効力が不確定な状態にある法律行為を、後から「有効なものとする」と確定させる意思表示のこと 効果は場面によって違い、無権代理行為の追認は原則として契約の時にさかのぼって効力が生じる(民法116条)のに対し、取り消すことができる行為の追認は「以後、取り消すことができない」という効果になる(民法122条) 追認ができるのは誰でもよいわけではなく、取消しができる行為なら取消権を持つ人、無権代理行為なら本人というように、法律が定める立場の人に限られる 契約書や登記の話をしていると、「あとで追認すれば大丈夫です」という言い方を聞くことがあります。追認とは、いったん効力が不確定になっている法律行為を、後から「有効なものとして確定させる」意思表示のことです。似た言葉に「承認」や「同意」がありますが、追認は「すでに行われた行為の効力を、事後に確定させる」という点に特徴があります。 ...

2026年8月23日 · ひぐらしさとし

登記書類の「捨印」って何?押す・押さないの実務の傾向

この記事の要点 捨印(すていん)とは、書類の欄外にあらかじめ押しておく訂正用の印のことで、法令が押印を義務づけている制度ではなく、実務上の慣行として広まったもの 登記の委任状などで求められる場面があるのは、軽微な字句の誤りをその都度作成者に押印し直してもらわずに直せるようにするため 捨印を求めるかどうか・どこまで訂正の範囲を認めるかは、事務所や場面によって扱いに差があり、近年はオンライン申請の広がりで紙の書類そのものが減ってきた面もある 登記の委任状や契約書に署名押印するとき、「念のため、こちらにも捨印をお願いします」と言われた経験がある方は少なくないと思います。捨印とは、書類の欄外にあらかじめ押しておく、訂正のための印のことです。誤字や記載漏れが見つかったとき、その捨印を使って二字削除・三字加入のように訂正すれば、作成者に改めて押印をもらいに行かなくても直せる、という便宜のための仕組みです。 ...

2026年8月23日 · ひぐらしさとし

相続の相談、本人が体調不良や遠方で行けないときは家族だけでもいい?

この記事の要点 本人が体調や距離の事情で同行できないときも、まず家族だけで状況や進め方を聞いてもらうこと自体は一般的にできる ただし正式に手続きを依頼する段階では、原則として本人の意思確認が必要になる 家族だけで相談に行くときは、本人が同行できない理由と、本人がこれまでどう考えているかを整理しておくとスムーズ 入院中や施設入所中、あるいは遠方に住んでいるなどの事情で、本人が相談の場に同行できないことは珍しくありません。結論から言うと、こうした場合でもまずは家族だけで相談に行き、状況や今後の進め方について話を聞いてもらうこと自体は、多くの事務所で一般的に対応してもらえます。相続や登記の相談は、その場で契約を結ぶ場に限らず、状況整理や見通しを聞く場でもあるためです(相談と依頼の違いについては相談したら必ず依頼しないといけない?もあわせてご覧ください)。 ...

2026年8月22日 · ひぐらしさとし

固定資産税の『免税点』とは──小さな土地でも税金がかからないことがある仕組み

この記事の要点 固定資産税には「免税点」があり、土地30万円未満・家屋20万円未満・償却資産150万円未満なら原則として課税されない 免税点は一筆・一棟ごとではなく、同じ市区町村内でその人が持つ土地全体(または家屋全体)の合計額で判定される(共有名義の持分の取扱いは別途確認が必要) 令和9年度(2027年度)分から家屋の免税点は30万円、償却資産は180万円に引き上げられる(土地の30万円は据え置き) 「納税通知書が来ない=相続登記もしなくていい」ではない点に注意 固定資産税の納税通知書が届かない土地がある、というご相談を受けることがあります。山林や評価額の低い小さな土地などで起こりやすい現象で、その理由のひとつが、地方税法が定める「免税点」という仕組みです。ただし、通知が届かない理由は免税点だけとは限らず、公共の用に供する道路のようにそもそも非課税とされている場合など、別の理由によることもあります。 ...

2026年8月22日 · ひぐらしさとし

亡くなった方の預金を放置すると「休眠預金」に?──10年ルールと相続手続きの段取り

この記事の要点 2009年1月1日以降の取引を最後に、10年以上「異動」のない預金は「休眠預金」として預金保険機構に移管されることがあります 移管後も、取引のあった金融機関の窓口で払戻しを請求でき、相続人も請求できます(お金を受け取れなくなるわけではありません) ただし窓口での手続きに時間と書類が余計にかかるため、相続では早めに口座を洗い出し、解約まで進めておくのが段取りの基本です 亡くなった方の預金口座を長く放置していても、預金が没収されてしまうわけではありません。ただし、10年以上取引のない預金は「休眠預金」として預金保険機構に移管されることがあり、払い戻すために窓口での手続きが必要になるなど、手間と時間が余計にかかるようになります。相続手続きの段取りとしては、口座を早めに洗い出して解約まで済ませておくことが大切です。 ...

2026年8月21日 · ひぐらしさとし

戸籍謄本と戸籍抄本の違い──相続の手続きで「抄本では足りない」と言われる理由

この記事の要点 戸籍謄本は「その戸籍に載っている全員分の写し」、戸籍抄本は「その戸籍のうち一部の人だけの写し」です 相続の手続きでは、誰が相続人かを戸籍全体で確認する必要があるため、原則として謄本(全部事項証明書)が必要です コンピュータ化後の正式名称は「全部事項証明書」「個人事項証明書」ですが、窓口では今も「謄本」「抄本」で通じます 結論からいうと、相続の手続きで使う戸籍は、原則として謄本(全部事項証明書)をそろえます。抄本を取ってしまい、あとで取り直しになるのはよくあるつまずきです。なお、本記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月21日 · ひぐらしさとし

成年後見人・任意後見監督人の報酬はどう決まる?──家庭裁判所への報酬付与の申立て

この記事の要点 成年後見人・保佐人・補助人・任意後見監督人の報酬は、本人が自由に決めるものではなく、家庭裁判所への申立てと審判によって定まる 報酬は本人(被後見人等)の財産の中から支払われ、家庭裁判所は本人の資力その他の事情を考慮して判断する 具体的な金額は事案ごとに家庭裁判所が個別に判断するため、本記事では目安額は示さない 「後見人になったら、報酬はいつ、どうやってもらえるのか」——制度を調べ始めた方から、こうした質問を伺うことがあります。成年後見人等は本人のために重い責任を負う立場ですが、報酬は自動的に支払われるものではなく、また後見人等が自分で金額を決めてよいものでもありません。本記事は、執筆時点(2026年08月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月20日 · ひぐらしさとし

示談はできているのに不安が残るとき|即決和解(訴え提起前の和解)の基礎知識

この記事の要点 当事者どうしで話し合いがつき「分割で返す」等の約束はできていても、口約束や私文書のままでは相手が守らない場合の備えが弱い 簡易裁判所の「即決和解(訴え提起前の和解)」を使うと、合意内容を裁判所の調書に残すことができる 和解調書は確定判決と同じ効力を持ち、これを通じて強制執行の基礎となる文書(債務名義)になるため、相手が約束を守らなかったときに改めて訴訟を起こす必要がない 本文 貸したお金や未払いの代金について、相手との間で「分割で返す」「いつまでに支払う」という合意(示談)自体はできている――というケースは少なくありません。ただし、その合意を口約束や当事者間の合意書だけにとどめている場合、相手が約束を守らなかったときにどうするかという不安が残ります。 ...

2026年8月20日 · ひぐらしさとし