この記事の要点

  • 市区町村の無料法律相談は、多くが予約制・1回20〜30分程度という時間の制約がある制度です
  • その日担当する専門職(弁護士・司法書士・行政書士など)は自治体側の日程で決まっており、相談者側が選べないことが多いです
  • 同じ相談を何度も継続して受けられるとは限らず、1回で聞きたいことを整理しておく準備が効果を左右します
  • 持ち物や書類の詳細な準備は別記事にゆずり、この記事では「制度としてどう使うか」に絞って解説します

相続や家族間のトラブルで「誰かに相談したい」と思ったとき、まず思い浮かぶ窓口のひとつが市区町村(お住まいの自治体)が開いている無料法律相談です。この制度は「予約制」「1回20〜30分程度」「担当する専門職を選べない」「同じ相談を何度も続けて受けられるとは限らない」という共通の特徴を持っていることが多く、この仕組みを知らずに行くと、聞きたいことの半分も聞けないまま時間切れになってしまうことがあります。

この記事では、市区町村の無料法律相談がどういう制度なのか、限られた時間をどう使えば無駄にならないかを整理します。持ち物のチェックリストなど事前準備の詳細は、相談前の準備についての記事にゆずり、ここでは「制度の使い方」に的を絞ります。

市区町村の無料法律相談とは、どんな制度か

多くの市区町村では、月に数回〜週に数回程度の頻度で、無料の法律相談窓口を設けています。運営の形は自治体によって異なり、市区町村が直接運営している場合もあれば、地元の弁護士会・司法書士会・行政書士会などと連携して専門職を派遣してもらっている場合もあります。

共通して見られる特徴は、次のようなものです。

  • 予約制であることが多い:当日の飛び込みではなく、電話や窓口での事前予約が必要な自治体がほとんどです。人気の高い枠は数日〜数週間先まで埋まっていることもあります
  • 1回あたりの相談時間は20〜30分程度が一般的:自治体や実施回によって幅がありますが、次の相談者が控えているため、時間を延長してもらうのは難しいのが通常です
  • その日担当する専門職を相談者側で選べないことが多い:曜日ごとに「今日は弁護士の日」「今日は司法書士の日」と担当が決まっている運用が一般的で、相談者が「この人に頼みたい」と指名することは基本的にできません
  • 同じ相談を継続して受けられるとは限らない:1回きりの相談として運用している自治体が多く、次回また同じ専門職に続きを相談できるとは限りません。これは、法テラスの民事法律扶助(同一の問題について原則3回まで無料相談を利用できる制度)とは仕組みが異なる点です。法テラスについては法テラスとは──収入要件と立替制度、利用の流れで詳しく解説しています

なお、無料相談はあくまで「その場で一般的な見通しを聞く」場です。相談したその場で契約や依頼の話に進むとは限りませんし、進める義務もありません。

担当する専門職によって、答えられる範囲が変わる

無料相談は、弁護士・司法書士・行政書士など、資格ごとに扱える業務の範囲が法律で定められた専門職が持ち回りで担当していることが一般的です。たとえば不動産の名義変更(相続登記など)の相談であれば司法書士、遺産分割で話し合いがまとまらず代理人を立てて交渉したい場合であれば弁護士、というように、担当する専門職の資格によって案内できる内容の深さが変わってきます。

このため、「今日担当している専門職の対応範囲では、その先の手続きまでは案内できない」という場面も起こり得ます。その場合は、担当する専門職から「この内容は〇〇の資格者に相談を」と案内があるのが通常です。どの資格者が何を扱えるかの詳細な線引きまでは、この記事では扱いません。窓口で聞きたいことがはっきりしている場合は、予約の際に「相続登記について相談したい」など内容を伝えておくと、担当日を確認してもらいやすくなります。

限られた時間を無駄にしないための考え方

20〜30分という時間は、状況を一から説明しているとあっという間に過ぎてしまいます。当日の進み方を左右するのは、事前にどれだけ論点を絞れているかです。

  • 聞きたいことを1〜2点に絞ってメモしておく:「相続登記の手続きの流れを知りたい」「遺産分割で意見が割れていて、次に何をすればいいか知りたい」など、優先順位をつけて用意しておくと、時間内に核心へたどり着きやすくなります
  • 家族構成や経緯を簡単なメモにしておく:口頭で説明すると時間がかかる内容ほど、紙に書いて持って行くと早く伝わります。相続がらみの相談であれば、家族構成メモの作り方も参考になります
  • その場で結論を出そうとしない:20〜30分では、詳しい資料を見ないと答えられない論点も出てきます。「今日聞いたことを持ち帰って考える」というつもりで臨むと、無理に急いで判断せずに済みます
  • 相談時間の見積もりに余裕を持たせる:そもそも初回相談にどれくらいの時間を見ておくべきか迷う方は、相続の初回相談、どれくらい時間を見ておけばいい?も参考にしてください

まとめ

市区町村の無料法律相談には、予約制・1回20〜30分程度・担当する専門職を選べない・同じ相談を継続して受けられるとは限らない、といった特徴が見られることが多く、あらかじめ押さえておくと当日の時間を有効に使えます。聞きたいことを事前に絞り、簡単なメモを用意しておくだけでも、限られた時間の中で得られる情報は変わってきます。個別の状況でどう進めればよいか迷う場合は、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 無料相談は本当に無料ですか? 自治体が実施する無料法律相談は、相談自体の費用はかからないのが一般的です。ただし、その後に書類作成や登記手続きなどを正式に依頼する場合は、別途費用がかかります。無料相談の場でその場で契約に進む義務はありません。

Q. 予約はどこでできますか? 多くの自治体では、市区町村役場の窓口や電話、ホームページ上の予約システムで受け付けています。実施日・時間・予約方法は自治体ごとに異なるため、お住まいの市区町村の広報やホームページで確認するのが確実です。

Q. 1回で解決しない場合はどうすればいいですか? 自治体の無料相談は1回ごとの相談として運用されることが多く、必ずしも同じ専門職に継続して相談できるとは限りません。継続的なサポートが必要な内容であれば、無料相談で得た見通しをもとに、お近くの司法書士など専門職に依頼を検討する流れになります。

【さらに深掘り】身近な金銭トラブルの相談は、無料相談でどこまで案内が受けられるか

ご注意 以下は執筆時点(2026年09月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

市区町村の無料法律相談には、相続以外にも「貸したお金が返ってこない」「敷金が返還されない」「未払いの代金がある」といった、身近な金銭トラブルの相談も多く持ち込まれます。この種の相談で、無料相談の場でどこまで案内が受けられるかを、手続き選択の観点から整理します。

司法書士が代理できる範囲には金額の上限がある

司法書士のうち、法務大臣の認定を受けた認定司法書士は、請求金額が140万円以下の民事事件について、簡易裁判所での訴訟の代理(司法書士法第3条第1項第6号)と、裁判外での相談・和解の代理(同項第7号)を行うことができます(いずれも同条第2項の認定を受けた司法書士に限られます)。この「140万円」という金額は、司法書士法がそれぞれの号で引用している裁判所法第33条第1項第1号の額です。無料相談の場で「相手と直接交渉してほしい」「訴訟を起こしたい」という話になった場合、まず請求金額が140万円以下かどうかが手続き選択の出発点になります。140万円を超える請求について、代理人として相手方との交渉や訴訟を進めてもらいたい場合は、認定司法書士の代理権の範囲外となるため、弁護士への相談が必要になります。

「140万円」の数え方は、かつて考え方が分かれていた

もっとも、この「140万円」を何を基準に数えるのかについては、かつて専門家の間でも考え方が分かれていました。とくに借入先が複数ある債務整理のような場面で、債権者ごとに分けて数えるのか、全部を合計して数えるのか(個別額説と総額説)、また、和解によって債務者が得られる経済的利益の額で数えるのか、債権者が主張している債権の額で数えるのか(受益額説と債権者主張額説)といった対立があり、下級審の判断も一致していませんでした。

この点について最高裁は、平成28年6月27日の判決(民集70巻5号1306頁)で、債務整理を依頼された認定司法書士は「当該債務整理の対象となる個別の債権の価額」が司法書士法第3条第1項第7号に規定する額(140万円)を超える場合には、その債権に係る裁判外の和解について代理することができない、と判断しました。合計額ではなく個別の債権ごとに見る、という基準が示されたことになります。日本司法書士会連合会も、判決翌日の会長談話で、この判断を受け止めて裁判外の和解代理権の範囲を会員に周知すると表明しており、この判決以降、これを前提とした運用が定着しています。

そのため、借入先が複数ある債務整理の場面では、借入総額だけを見て「140万円を超えているから司法書士には頼めない」と決まるわけではありません。この判決が示したのは、債務整理の対象となる個別の債権について裁判外の和解を代理できるかどうかの基準であり、どの債権まで対応してもらえるかは個別の債権の額によって変わります。無料相談の場でも、借入先ごとの金額がわかるメモがあると話が早くなります。

手続きには複数の選択肢がある

金額や事案の内容によって、支払督促(簡易裁判所に申し立てる督促手続き)、少額訴訟(60万円以下の金銭請求について原則1回の期日で審理する手続き)、通常の訴訟、民事調停など、複数の手続きが選択肢になります。どの手続きが適しているかは、相手方が争う姿勢を示しているか、証拠がどの程度そろっているか等によって変わるため、無料相談の20〜30分だけで手続きまで確定させるのは難しいことが一般的です。

2026年5月から、民事訴訟の手続はデジタル化されている

なお、手続きの進め方そのものにも直近で大きな変化がありました。令和4年の民事訴訟法改正(令和4年法律第48号)が2026年(令和8年)5月21日に全面施行され、インターネットを利用して訴えの提起や主張書面の提出ができるようになっています。訴訟記録も原則として電子データで保管され、インターネットを通じて裁判所のサーバにアクセスする方法で閲覧できます。

オンラインでの提出が原則として義務づけられるのは、弁護士・司法書士などが訴訟代理人となる場合です。ご本人が自分で手続きをする場合は、この義務の対象とはされていません。また、全面施行より前に提起された訴えについては、引き続き書面で審理や送達が行われます。民事執行の手続きは、別の法律(令和5年法律第53号)により、公布から5年以内=遅くとも令和10年6月までに全面デジタル化される予定ですが、2026年5月21日の全面施行の時点では対象に含まれていません。

無料相談の場で「訴訟を起こすとしたら、どう進むのか」を尋ねるときは、この点も含めて現在の運用を確認しておくと、その後の見通しが立てやすくなります。

無料相談は「見通しを聞く場」、代理は別途の依頼が必要

無料相談の場でできるのは、一般的な制度の説明や、大まかな見通しの提示までであることが多く、その場で正式に代理人として動いてもらう(相手に連絡を取ってもらう、書類を作成して提出してもらう)ためには、あらためて依頼の手続きが必要になります。継続的な交渉や書面のやり取りが必要な段階に進んだ場合は、その時点で正式な依頼を検討することになります。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。

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