問題:
建物の表題部の変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 建物の家屋番号について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
イ. 共用部分である旨の登記がある建物について、その建物の種類に変更があったときは、当該建物の所有者は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
ウ. 建物の床面積について変更があった後にその建物の所有権の登記名義人となった者は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。
エ. 表題登記がある建物(区分建物を除く。)に接続して区分建物が新築されて一棟の建物となったことにより当該表題登記がある建物が区分建物になった場合における当該表題登記がある建物についての表題部の変更の登記の申請は、当該新築に係る区分建物についての表題登記の申請と併せてしなければならない。
オ. エの場合において、当該新築に係る区分建物の所有者は、当該表題登記がある建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人に代わって、当該表題登記がある建物についての表題部の変更の登記を申請することができる。
答え:
誤っているものは、ア・ウ・オの3つである。
解説:
アは誤りである。不動産登記法51条1項は、変更の登記の申請義務の対象を「第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項」と定めている。同法44条1項2号は家屋番号であるから、家屋番号は51条1項の対象から明文で除かれている。家屋番号については同法45条が「登記所は、法務省令で定めるところにより、一個の建物ごとに家屋番号を付さなければならない」と定めており、当事者の申請による変更の登記の対象として51条1項には掲げられていない。なお同項が併せて除外する6号は「建物が共用部分又は団地共用部分であるときは、その旨」であり、この登記については同法58条が申請権者や規約廃止後の手続を別に定めている。
イは正しい。51条1項は義務者を「表題部所有者又は所有権の登記名義人」としたうえで、かっこ書で「共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者」と定める。同法58条4項は「登記官は、共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記をするときは、職権で、当該建物について表題部所有者の登記又は権利に関する登記を抹消しなければならない」と定めているから、この登記がある建物では登記記録上の表題部所有者や所有権の登記名義人を義務者の基準にすることができない。そこで義務者を「所有者」とする書き分けがされている。同様の書き分けは、58条5項が1項各号の登記事項についての変更の登記又は更正の登記の申請権者を「所有者」に限っている点にも表れている。建物の種類は44条1項3号であり、51条1項の除外(2号・6号)に当たらないから、申請義務の対象である。
ウは誤りである。起算点を取り違えさせる肢である。51条2項は「前項の登記事項について変更があった後に表題部所有者又は所有権の登記名義人となった者は、その者に係る表題部所有者についての更正の登記又は所有権の登記があった日から一月以内に」申請しなければならないと定める。すなわち起算点は「変更があった日」ではなく「所有権の登記があった日」である。同様の構造は51条3項(変更後に共用部分である旨の登記があった場合は、その登記がされた日から一月以内)、4項(共用部分である旨の登記がある建物について変更後に所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内)にも置かれており、いずれも「その者が義務を負うべき地位に就いた日」を起算点としている。
エは正しい。52条1項がそのまま定めている。表題登記がある建物に区分建物が接続して一棟の建物となると、従前の建物は単独の建物ではなく一棟の建物に属する区分建物になる。このとき従前建物の登記記録には、44条1項1号かっこ書の一棟の建物の所在や同項7号の一棟の建物の構造及び床面積といった、新築区分建物と共通する登記事項が新たに生じる。条文はこの二つの登記の申請を切り離さず、併せてしなければならないものとしている。
オは誤りである。代位して申請できる者と申請できる登記の向きが、いずれも条文と逆になっている。52条2項は「当該表題登記がある建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人は、当該新築に係る区分建物の所有者に代わって、当該新築に係る区分建物についての表題登記を申請することができる」と定める。すなわち、代位できるのは従前建物の側の者であり、代位して申請できるのは新築区分建物の表題登記である。エのとおり両者は併せて申請しなければならないから、この規定は、従前建物側の者が相手方の協力を得られない場合にも申請を完結できるようにする働きを持つ。
なお52条3項・4項は、いずれも表題登記がある二以上の建物(区分建物を除く。)が増築その他の工事により相互に接続して区分建物になった場合について、変更の登記の申請を一括してしなければならないこと(3項)、及び一の建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人が他の建物の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの者の相続人その他の一般承継人に代わって表題部の変更の登記を申請することができること(4項)を定めている。1項2項の場合と異なり、4項では代位して申請する対象が「表題部の変更の登記」である点に注意したい。
問題:
土地家屋調査士法人に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 土地家屋調査士法人は、土地家屋調査士法3条1項1号から6号までに規定する業務を行うほか、定款で定めるところにより、法令等に基づきすべての土地家屋調査士が行うことができるものとして法務省令で定める業務の全部又は一部を行うことができる。
イ. 民間紛争解決手続代理関係業務は、社員のうちに土地家屋調査士法3条2項に規定する土地家屋調査士がある土地家屋調査士法人であれば、その法人が土地家屋調査士会の会員であるかどうかにかかわらず、行うことができる。
ウ. 土地家屋調査士法人の社員は、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う。ただし、民間紛争解決手続代理関係業務を行うことを目的とする土地家屋調査士法人におけるその業務については、特定社員のみが業務を執行する権利を有し、義務を負う。
エ. 土地家屋調査士法人を代表する社員の権限に加えた制限は、その旨を登記したときは、善意の第三者に対抗することができる。
オ. 土地家屋調査士法人が社員の欠亡により解散したときは、解散の日から二週間以内に、その旨を、主たる事務所の所在地の土地家屋調査士会及び土地家屋調査士会連合会に届け出なければならない。また、土地家屋調査士法人の清算人は、土地家屋調査士でなければならない。
答え:
誤っているものは、イ・エの2つである。
解説:
アは正しい。土地家屋調査士法29条1項柱書は、調査士法人が「第三条第一項第一号から第六号までに規定する業務を行うほか、定款で定めるところにより、次に掲げる業務を行うことができる」と定め、同項1号に「法令等に基づきすべての調査士が行うことができるものとして法務省令で定める業務の全部又は一部」を掲げる。柱書本体の業務(3条1項1号から6号まで)は定款の定めを要しないのに対し、1号・2号の業務は「定款で定めるところにより」行い得るものとされている点が対比のポイントである。
イは誤りである。29条1項2号は民間紛争解決手続代理関係業務を掲げるが、同条2項が「民間紛争解決手続代理関係業務は、社員のうちに第三条第二項に規定する調査士がある調査士法人(調査士会の会員であるものに限る。)に限り、行うことができる」と定めている。かっこ書の「調査士会の会員であるものに限る。」が要件から落ちているため誤りとなる。特定社員がいることだけでは足りず、法人自身が調査士会の会員であることが重ねて必要である。
ウは正しい。35条1項が「調査士法人の社員は、すべて業務を執行する権利を有し、義務を負う」と定め、同条2項が「民間紛争解決手続代理関係業務を行うことを目的とする調査士法人における民間紛争解決手続代理関係業務については、前項の規定にかかわらず、第三条第二項に規定する調査士である社員(以下「特定社員」という。)のみが業務を執行する権利を有し、義務を負う」と定める。この35条2項が「以下『特定社員』という。」として当該用語を定義している。
エは誤りである。35条の2第4項は「前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」と定めるのみであり、登記をすれば対抗できるとする例外は置かれていない。混同しやすいのが30条2項で、こちらは「前項の規定により登記をしなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない」と定める。30条2項は「登記事項」一般についての対抗要件の規定であり、35条の2第4項は代表社員の代表権限への制限についての規定であるから、規律の対象が異なる。なお35条の2第1項は社員が各自法人を代表することを原則としつつ、定款又は総社員の同意によって代表社員を定めることを妨げないとし、同条3項は代表社員が法人の業務(民間紛争解決手続代理関係業務を除く。)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有すると定める。
オは正しい。39条1項は解散事由として、定款に定める理由の発生(1号)、総社員の同意(2号)、他の調査士法人との合併(3号)、破産手続開始の決定(4号)、解散を命ずる裁判(5号)、43条1項3号の規定による解散の処分(6号)、社員の欠亡(7号)を掲げる。同条2項は「前項第三号の事由以外の事由により解散したときは、解散の日から二週間以内に」届け出なければならないと定めるから、合併(3号)以外の事由である社員の欠亡(7号)による解散は届出の対象である。なお合併については、40条3項が別に届出の規定を置いている。また39条3項は「調査士法人の清算人は、調査士でなければならない」と定める。
なお、39条1項7号の「社員の欠亡」は、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律(令和元年法律第29号。令和2年8月1日施行)によって加えられたものである。改正前の39条は、1項に1号から6号までの解散事由を掲げたうえで、2項で「調査士法人は、前項の規定による場合のほか、社員が一人になり、そのなつた日から引き続き六月間その社員が二人以上にならなかつた場合においても、その六月を経過した時に解散する」と定めていた。この2項が削られたことにより、社員が一人になっても六月の経過によって当然に解散することはなくなり、代わりに社員が皆無となる場合が1項7号として解散事由に加えられている。届出について定める規定が改正前は3項、改正後は2項であり、項番号がずれている点にも注意したい。
関連して、定款の変更は、定款に別段の定めがある場合を除き総社員の同意によってすることができ、変更したときは変更の日から二週間以内に届け出なければならない(34条1項・2項)。合併は総社員の同意があるときにすることができ(40条1項)、合併後存続する法人又は合併により設立する法人が主たる事務所の所在地において登記することによって効力を生じ(同条2項)、消滅する法人の権利義務は承継される(同条4項)。合併をする法人の債権者は合併について異議を述べることができ、法人は所定の事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別にこれを催告しなければならない(40条の2第1項・2項)。もっとも同条3項は、この公告を官報のほか定款の定めに従って時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法又は電子公告によってもするときは、各別の催告を要しないとしているから、催告が常に必要になるわけではない。届出の期間がいずれも二週間である点は、まとめて押さえておきたい。
問題:
地上権に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合については、永小作権に関する民法274条から276条までの規定が準用される。
イ. 相隣関係の規定は地上権者間又は地上権者と土地の所有者との間について準用されるが、境界線上に設けた境界標等の共有の推定に関する民法229条の規定は、境界線上の工作物が地上権の設定後に設けられた場合に限り、地上権者について準用される。
ウ. 設定行為で地上権の存続期間を定めなかった場合において、別段の慣習がないときは、地上権者は、地代を支払うべきときであっても、何らの予告をすることなく、いつでもその権利を放棄することができる。
エ. 地下又は空間は、工作物又は竹木を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。
オ. 地上権が消滅した時に、土地の所有者が時価相当額を提供して工作物及び竹木を買い取る旨を通知したときは、地上権者は、正当な理由があるときであっても、これを拒むことができない。
答え:
誤っているものは、ウ・エ・オの3つである。
解説:
アは正しい。民法265条は「地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する」と定める。地上権の目的物が「工作物又は竹木」の両方である点は、後述する269条の2との対比で重要である。また266条1項は「第二百七十四条から第二百七十六条までの規定は、地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する」と定め、同条2項は「地代については、前項に規定するもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する」と定める。265条は地上権の内容を定めるにあたって地代に触れておらず、266条1項も「支払わなければならない場合について」と条件を付した書き方をしている。この二つを合わせると、地代の支払は条文上、地上権の成立に不可欠な要素としては定められていないことが読み取れる。
イは正しい。267条本文は「前章第一節第二款(相隣関係)の規定は、地上権者間又は地上権者と土地の所有者との間について準用する」と定め、同条ただし書が「第二百二十九条の規定は、境界線上の工作物が地上権の設定後に設けられた場合に限り、地上権者について準用する」と定める。229条は境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀を相隣者の共有と推定する規定である。267条は相隣関係の規定を包括的に準用しながら、229条についてだけ「地上権の設定後に設けられた場合に限り」という時的な限定を付している。相隣関係の規定のうちこの一箇条だけに限定が付いていることが出題の中心である。
ウは誤りである。268条1項は「設定行為で地上権の存続期間を定めなかった場合において、別段の慣習がないときは、地上権者は、いつでもその権利を放棄することができる」としつつ、ただし書で「地代を支払うべきときは、一年前に予告をし、又は期限の到来していない一年分の地代を支払わなければならない」と定める。したがって、地代を支払うべきときは何らの予告なく放棄できるわけではない。「一年前の予告」と「一年分の地代の支払」は選択的である。なお同条2項は、地上権者が1項の規定により権利を放棄しないときは、裁判所が当事者の請求により、二十年以上五十年以下の範囲内において、工作物又は竹木の種類及び状況その他地上権の設定当時の事情を考慮して存続期間を定めると規定する。数字を「二十年以上五十年以下」と正確に押さえておきたい。
エは誤りである。269条の2第1項前段は「地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる」と定めており、目的として掲げられているのは「工作物」のみで、竹木は含まれていない。265条が「工作物又は竹木」としているのと文言が異なる。同項後段は「この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる」と定める。また同条2項前段は「前項の地上権は、第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる」と定め、同項後段は、その場合において土地の使用又は収益をする権利を有する者はその地上権の行使を妨げることができないとする。既に他の用益権が設定されている土地であっても、承諾があれば区分地上権を設定できる点も併せて確認しておきたい。
オは誤りである。269条1項本文は「地上権者は、その権利が消滅した時に、土地を原状に復してその工作物及び竹木を収去することができる」と定め、ただし書で「土地の所有者が時価相当額を提供してこれを買い取る旨を通知したときは、地上権者は、正当な理由がなければ、これを拒むことができない」と定める。この条は、本文で地上権者に工作物及び竹木を収去することができるものとしたうえで、買取りの通知があった場合について、ただし書がその収去を貫くことを制限する、という構造をとっている。そして、ただし書が制限を及ぼすのは「正当な理由がなければ」という限度であるから、正当な理由があるときはただし書による制限が及ばず、本文が認める地位に従って買取りを拒むことができる。「正当な理由があるときであっても拒むことができない」とする本肢は、正当な理由があるときにまでただし書の制限が及ぶとするものであり、ただし書の適用範囲を条文より広く取っている点で誤りである。なお同条2項は「前項の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う」と定め、慣習が優先することを明らかにしている。
問題:
登記記録、地図及び登記簿の附属書類の公開に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、地図、建物所在図又は地図に準ずる図面の全部又は一部の写しの交付を請求することができ、また、これらの閲覧を請求することもできる。
イ. 登記簿の附属書類のうち、土地所在図、地積測量図、地役権図面、建物図面及び各階平面図については、何人も、登記官に対し、手数料を納付して、その写しの交付を請求することができ、また、その閲覧を請求することもできる。
ウ. 登記簿の附属書類のうちイに掲げる図面以外のものについては、何人も、正当な理由があるときは、登記官に対し、手数料を納付して、その正当な理由があると認められる部分に限り、写しの交付又は閲覧を請求することができる。
エ. 登記を申請した者が、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求する場合には、正当な理由があることを要する。
オ. 登記事項証明書の交付の請求は、法務省令で定める場合を除き、請求に係る不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる。
答え:
誤っているものは、ウ・エの2つである。
解説:
アは正しい。不動産登記法120条1項は、何人も、手数料を納付して、地図、建物所在図又は地図に準ずる図面(同条において「地図等」という。)の全部又は一部の写し(地図等が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面)の交付を請求することができると定め、同条2項が地図等の閲覧の請求について定める。地図等については、交付・閲覧のいずれについても請求権者の限定がない。
イは正しい。121条1項が「登記簿の附属書類(電磁的記録を含む。以下同じ。)のうち政令で定める図面」の写しの交付について、同条2項がその図面の閲覧について、いずれも「何人も」請求できると定める。ここでいう「政令で定める図面」は不動産登記令21条1項により、土地所在図、地積測量図、地役権図面、建物図面及び各階平面図とされている。調査士業務で日常的に用いる図面は、この5種類がまとめて公開の対象になっていると整理しておくとよい。
ウは誤りである。121条3項は、これらの図面以外の登記簿の附属書類について「何人も、正当な理由があるときは、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、(中略)全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る。)の閲覧を請求することができる」と定めている。条文が定めているのは閲覧の請求のみであり、写しの交付を請求できるとする規定は置かれていない。「正当な理由」「正当な理由があると認められる部分に限る」という限定はいずれも本肢の記述どおりであるが、請求できる行為の種類が条文より広くなっているために誤りとなる。なお、令和5年3月31日まで施行されていた121条は3項までの構成で、閲覧について定める当時の2項はただし書で「前項の図面以外のものについては、請求人が利害関係を有する部分に限る」としていた。これが令和3年法律第24号による改正で改められ、令和5年4月1日から現在の「正当な理由」を要件とする3項の文言になっている。改正の前後で要件の語が変わっている点は押さえておきたい。
エは誤りである。121条4項は「前項の規定にかかわらず、登記を申請した者は、登記官に対し、法務省令で定めるところにより、手数料を納付して、自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類の閲覧を請求することができる」と定める。冒頭の「前項の規定にかかわらず」という文言により、3項の「正当な理由があるとき」という要件は、この場合には課されていない。あわせて、3項が「その正当な理由があると認められる部分に限る」と閲覧の範囲を限定しているのに対し、4項にはそのような範囲の限定が置かれていない点も対比しておきたい。
オは正しい。119条5項は「第一項の交付の請求は、法務省令で定める場合を除き、請求に係る不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる」と定める。この規定は120条3項により地図等について、121条5項により登記簿の附属書類について、それぞれ準用される。ただし、準用の対象となる119条5項が定めているのは「第一項の交付の請求」であり、閲覧の請求について同様の規定が置かれているわけではない点に注意したい。
なお、119条6項は、登記記録に記録されている自然人の住所が明らかにされることにより人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合等において、その者からの申出があったときは、登記官は、法務省令で定めるところにより、登記事項証明書等に当該住所に代わるものとして法務省令で定める事項を記載しなければならないと定める。この項は民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)により追加され、令和6年4月1日から施行されている。ウで触れた121条の改正と同じ改正法によるものであるが、施行日は121条が令和5年4月1日、119条6項が令和6年4月1日と分かれている。
問題:
測量法に規定する測量標及び測量成果に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア. 測量法にいう「測量標」とは、永久標識及び一時標識をいい、標旗及び仮杭はこれに含まれない。
イ. 何人も、国土地理院の長の承認を得ないで、基本測量の測量標を移転し、汚損し、その他その効用を害する行為をしてはならない。
ウ. 基本測量の永久標識又は一時標識の汚損その他その効用を害するおそれがある行為を当該標識の敷地又はその付近でしようとする者は、理由を記載した書面をもって国土地理院の長にその移転を請求することができ、この請求に基づく移転に要した費用は、国土地理院が負担する。
エ. 基本測量以外の測量を実施しようとする者は、国土地理院の長の承認を得て、基本測量の測量標を使用することができる。
オ. 基本測量の測量成果を使用して基本測量以外の測量を実施しようとする者は、あらかじめ、国土地理院の長の承認を得なければならず、国土地理院の長は、申請手続が法令に違反していること及び当該測量成果を使用することが当該測量の正確さを確保する上で適切でないことのいずれにも該当しないと認めるときは、その承認をしなければならない。
答え:
誤っているものは、ア・イ・ウの3つである。
解説:
アは誤りである。測量法10条1項は、この法律において「測量標」とは永久標識、一時標識及び仮設標識をいうと定めており、仮設標識を含む3分類である。同項1号は永久標識として三角点標石、図根点標石、方位標石、水準点標石、磁気点標石、基線尺検定標石、基線標石及びこれらの標石の代りに設置する恒久的な標識(験潮儀及び験潮場を含む。)を、2号は一時標識として測標及び標杭を、3号は仮設標識として標旗及び仮杭を挙げる。標旗及び仮杭は仮設標識として測量標に含まれるから、本肢は誤りである。なお同条3項は「基本測量の測量標には、基本測量の測量標であること及び国土地理院の名称を表示しなければならない」と定める。
イは誤りである。22条は「何人も、国土地理院の長の承諾を得ないで、基本測量の測量標を移転し、汚損し、その他その効用を害する行為をしてはならない」と定めており、条文の語は「承認」ではなく「承諾」である。本問で取り上げた各条を並べると、測量標の保全(22条)だけが「承諾」であり、測量標の使用(26条)、測量成果の複製(29条)、測量成果の使用(30条1項)はいずれも「承認」である。同じく国土地理院の長に対する手続でありながら語が使い分けられているので、条文を読むときに印を付けておきたい。
ウは誤りである。24条1項は、基本測量の永久標識又は一時標識の汚損その他その効用を害するおそれがある行為を当該標識の敷地又はその付近でしようとする者が、理由を記載した書面をもって国土地理院の長に移転を請求することができると定める。ここまでは本肢のとおりであるが、同条4項は「前項の規定による永久標識又は一時標識の移転に要した費用は、移転を請求した者が負担しなければならない」と定めており、費用を負担するのは請求者である。国土地理院が負担するとする規定は置かれていない。
関連して、24条2項は、この請求(国又は都道府県が行うものを除く。)が当該標識の所在地の都道府県知事を経由して行われ、都道府県知事が意見を付して国土地理院の長に送付するものとすると定める。同条3項は、国土地理院の長が請求に理由があると認めるときは移転し、理由がないと認めるときはその旨を請求した者に通知しなければならないとする。他方、仮設標識については25条が別に置かれ、「国土地理院の長は、基本測量の仮設標識の移転の請求があつた場合において、その請求に理由があると認めたときは、当該仮設標識を移転しなければならない」と定めるにとどまる。都道府県知事の経由、理由がない場合の通知、費用負担のいずれについても、24条のような規定は25条には置かれていない。永久標識・一時標識と仮設標識とで条文の手当てが異なる点は、対比の形で問われやすい。
エは正しい。26条は「基本測量以外の測量を実施しようとする者は、国土地理院の長の承認を得て、基本測量の測量標を使用することができる」と定める。イの22条が測量標の効用を害する行為を承諾なく行うことを禁ずる規定であるのに対し、26条は測量標を測量に利用する場合の承認の規定であり、対象となる行為が異なる。
オは正しい。30条1項は、基本測量の測量成果を使用して基本測量以外の測量を実施しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、あらかじめ、国土地理院の長の承認を得なければならないと定める。同条2項は「国土地理院の長は、前項の承認の申請があつた場合において、次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その承認をしなければならない」とし、1号に「申請手続が法令に違反していること」、2号に「当該測量成果を使用することが当該測量の正確さを確保する上で適切でないこと」を掲げる。「しなければならない」という文言から、この承認について国土地理院の長に広い裁量を認める形にはなっていないことが読み取れる。なお同条3項は、承認を得て測量を実施した者はその測量成果に基本測量の測量成果を使用した旨を明示しなければならないと定め、29条は、基本測量の測量成果のうち地図その他の図表、成果表、写真等を測量の用に供し、刊行し、又は国土交通省令で定める電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置く措置をとるために複製しようとする者について、あらかじめ国土地理院の長の承認を得なければならないと定めている。29条が「複製」の場面、30条が「使用」の場面である点を区別しておきたい。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 不動産登記法(表示に関する登記) | 建物の表題部の変更の登記の申請義務の対象から除かれる登記事項、共用部分である旨の登記がある建物の義務者、変更後に登記名義人となった者の期間の起算点、区分建物になった場合の併せてする申請と代位申請の向き | 不動産登記法51条1項〜4項、52条1項〜4項(44条1項2号・3号・6号、45条、58条4項・5項) |
| 第2問 | 土地家屋調査士法 | 調査士法人の業務の範囲と定款の要否、民間紛争解決手続代理関係業務を行うための二重の要件、業務の執行と特定社員、代表社員の権限に加えた制限の対抗、解散事由と届出・清算人の資格 | 土地家屋調査士法29条1項・2項、30条2項、34条1項・2項、35条1項・2項、35条の2第1項・3項・4項、39条1項各号・2項・3項、40条1項〜4項、40条の2第1項・2項 |
| 第3問 | 民法(用益物権) | 地上権の内容と地代の位置づけ、相隣関係の規定の準用と229条に付された限定、存続期間を定めなかった場合の放棄と予告、区分地上権の目的が工作物に限られること、工作物等の収去と買取通知に対する拒絶 | 民法265条、266条1項・2項、267条、268条1項・2項、269条1項・2項、269条の2第1項・2項 |
| 第4問 | 不動産登記法(登記情報・地図等の公開) | 地図等の写しの交付及び閲覧、政令で定める図面の範囲、図面以外の附属書類について認められるのが閲覧に限られること、自己を申請人とする登記の附属書類の閲覧、遠隔地の登記所への交付請求 | 不動産登記法119条1項〜6項、120条1項〜3項、121条1項〜5項、不動産登記令21条1項 |
| 第5問 | 測量法 | 測量標の3分類と仮設標識、測量標の保全における「承諾」と使用・複製・使用承認における「承認」の書き分け、移転の請求と費用負担、永久標識等と仮設標識の手続の非対称、測量成果の使用の承認 | 測量法10条1項・3項、22条、24条1項〜4項、25条、26条、29条、30条1項〜3項 |