この記事の要点

  • リバースモーゲージは、自宅を担保に入れて老後資金を借り入れ、存命中は利息のみを支払う仕組み
  • 登記簿上は所有権を自分名義のまま維持し、担保として抵当権(または根抵当権)の設定登記が入る
  • 借入金の元本は、死亡後に自宅を売却するか、相続人が一括返済するかたちで清算される
  • 所有権が移転する「リースバック」とは、担保に入れるだけか売ってしまうかという根本的な違いがある
  • 借入条件の有利不利や商品選びの相談は、取扱金融機関に確認する必要がある

リバースモーゲージとは、自宅(主に持ち家)を担保に金融機関から老後資金を借り入れ、契約者が存命の間は利息だけを支払い、借入金の元本は契約者の死亡後にまとめて清算するしくみです。年金収入だけでは心もとない老後資金を、住み慣れた自宅に住み続けながら確保する手段の一つとして知られています。

どういう仕組みか

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 自宅(土地・建物)を担保として金融機関に提供する
  2. 借入枠の範囲内で、一括または必要に応じて資金を受け取る
  3. 存命中は、借入残高に対する利息のみを毎月(または一定周期で)支払う
  4. 契約者が死亡した時点で、元本の返済期限が到来する

存命中の返済負担が利息分だけで済む点が、通常の住宅ローンとの大きな違いです。ただし借入枠の上限や利用できる年齢、対象となる不動産の条件は契約ごとに異なり、この記事では特定の金融機関や商品の条件・有利不利には立ち入りません。借入枠や金利、対象不動産の条件を具体的に検討する場合は、取扱金融機関に直接確認してください。

登記簿はどう変わるか

リバースモーゲージを利用しても、契約者の自宅の所有権(登記簿の甲区)は動きません。契約者が引き続き所有者として登記され続けます。

動くのは登記簿の乙区です。乙区とは、所有権以外の権利(抵当権や地上権など)が記録される欄をいいます。借入の担保として、自宅に抵当権(または根抵当権)の設定登記が入ります。これは、住宅ローンを組んだときに抵当権設定登記が入るのと同じ性質の手続きで、「借入の担保として不動産に権利を設定した」ことを示す登記です。

死亡後はどうなるか(一般的な構造)

契約者が死亡すると、借入金の元本を清算する段階に入ります。一般的には次のいずれかの方法がとられます。

  • 自宅を売却して返済する:売却代金を元本の返済に充て、残りがあれば相続人に引き継がれる。この場合、買主への所有権移転登記とあわせて、担保となっていた抵当権の抹消登記が行われる
  • 相続人が一括返済して自宅を引き継ぐ:相続人が現金で元本を返済し、契約に基づいて担保を外す手続き(抵当権抹消登記)を行ったうえで、自宅は通常の相続登記により相続人の名義に移る

どちらの方法をとるかは契約内容や相続人の意向によって決まる話であり、この記事ではその判断基準や個別家庭でのあてはめには立ち入りません。ここで押さえておきたいのは、契約者が亡くなった時点で「自宅を担保に入れたまま借入が続いている」という状態を、相続人が何らかのかたちで清算する必要がある、という一般的な構造です。相続人にどのような影響が生じるかは家庭の事情によって異なるため、具体的な対応は契約している金融機関に確認し、登記手続きについてはお近くの司法書士にご相談ください。

リースバックとの違い

自宅を活用して老後資金を確保する方法として、リバースモーゲージとよく比較されるのがリースバックです。両者の根本的な違いは、所有権が移転するかどうかにあります。

  • リバースモーゲージ:所有権は自分のまま。自宅に担保(抵当権)を設定して借り入れ、元本は死亡後に清算する
  • リースバック:自宅の所有権はいったん買主に移り、その後は賃借人として賃料を払いながら住み続ける

どちらが自分に適しているかという比較・推奨は、この記事の範囲外です。老後の資金確保の方法としては、ほかにも家族信託(民事信託)のように、判断能力が低下する前に財産の管理方法を家族の中で決めておく仕組みもあります。家族信託は資金を借り入れる制度ではなく財産管理の枠組みという点で目的が異なりますが、老後の自宅活用を考える際にあわせて検討されることがあります。

まとめ

リバースモーゲージは、自宅を担保に入れて老後資金を借り入れ、存命中は利息のみを支払い、死亡後に自宅の売却または相続人の一括返済で元本を清算する仕組みです。登記簿上は所有権を維持したまま抵当権の設定登記が入る点で、所有権が移転するリースバックとは根本的に異なります。借入条件の具体的な内容や商品選びは取扱金融機関に確認し、登記手続きに関する疑問はお近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 費用はどれくらいかかりますか? 抵当権の設定登記には登録免許税や司法書士報酬などの費用がかかりますが、具体的な金額は借入額や取扱金融機関によって異なります。事務手数料や保証料などの契約条件も金融機関ごとに異なるため、正確な費用は借入を検討している金融機関に確認してください。

Q. 死亡後の手続きを放置するとどうなりますか? 契約者の死亡後、担保となっている自宅の清算(売却または一括返済)を進めないままにしておくと、契約に基づく返済期限との関係で対応が必要になる場合があります。清算の具体的な手順や期限は契約内容によって異なるため、相続人は契約している金融機関に速やかに連絡し、状況を確認することが重要です。

Q. 自分で手続きできますか?どこに相談すればいいですか? 借入条件や商品の選定に関する相談は取扱金融機関が窓口になります。担保設定の登記や、死亡後の抵当権抹消登記・相続登記などの登記手続きについては、お近くの司法書士にご相談ください。

【さらに深掘り】担保設定・抹消登記における実務上の留意点

ご注意 以下は執筆時点(2026年09月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

抵当権か、根抵当権か

リバースモーゲージは、契約時に全額を一括で受け取るのではなく、あらかじめ定めた借入枠(極度額)の範囲内で必要に応じて資金を受け取る契約設計が用いられることがあります。このような借入枠型の契約では、担保として、被担保債権を特定しない「根抵当権」の設定登記が入る場合があります。根抵当権の登記簿には、個別の借入額ではなく、担保される上限額である「極度額」が記載される点が、通常の抵当権(債権額を登記する)との大きな違いです。設定される担保が抵当権か根抵当権かは契約内容によって異なるため、登記簿の乙区でどちらの権利が設定されているかを確認することが、その後の手続きを考えるうえでの出発点になります。

契約者死亡後の登記識別情報(権利証)の扱い

抵当権(根抵当権)の抹消登記は、登記権利者を所有者の側(所有者が亡くなっている場合はその相続人)、登記義務者を担保権者(金融機関)として申請する登記です。この登記で登記識別情報(または登記済証)を提供するのは登記義務者である担保権者の側であり、金融機関が担保設定時に取得したものを用います。所有者側が被相続人の登記識別情報を提供することは、通常は求められません。この点は、相続人が「被相続人の権利証が見当たらないと抹消登記ができないのではないか」と誤解しやすい部分であり、実際には金融機関側の書類(弁済証書・抵当権解除証書等の登記原因証明情報、登記識別情報、委任状など)が整えば抹消登記の申請が可能です。

根抵当権の場合の元本確定

担保が根抵当権であるケースでは、被担保債権は元本確定前は変動する枠組みになっており、担保される債権が特定されていません。そのため、個々の借入れを返済しただけで根抵当権が当然に消滅するという関係にはなく、抹消の前提を整えるには、元本の確定や契約の解除など、契約内容に応じた手続きを経ることになるのが一般的です。民法上、根抵当権の担保すべき元本は、あらかじめ定めた確定期日の到来(民法398条の6)、根抵当権設定者または根抵当権者からの確定請求(同法398条の19)、根抵当権者による競売等の申立てや債務者・根抵当権設定者の破産手続開始の決定(同法398条の20第1項各号)などの事由が生じたときに確定するしくみになっています。また、元本確定前に債務者について相続が開始した場合、相続人が引き続き借入れを続けるための合意の登記を相続開始後6か月以内にしないときは、担保すべき元本は相続開始の時に確定したものとみなされます(同法398条の8第2項・第4項)。契約者(債務者)の死亡後に元本が確定したものとして扱えるかどうか、また元本確定の登記を別途申請する必要があるかどうかは、契約内容や合意の登記の有無、金融機関から交付される登記原因証明情報の記載によって異なるため、書類の内容を個別に確認する必要があります。

相続登記との順序関係

抵当権(根抵当権)の抹消登記は、所有権の登記名義を相続人に改めることを申請の要件としているわけではありません。登記実務では、被相続人名義のまま抹消登記だけを先行させる取扱いも、相続登記を先に済ませてから抹消登記を行う取扱いも行われています(被相続人名義のまま申請する場合は、相続があったことを証する情報の提供が必要になります)。ただし、これは条文が順序を定めているという話ではなく登記実務上の取扱いであり、どちらの順序で進められるかは、金融機関から交付される書類の内容や登記所が求める添付情報によっても左右されます。実際の順序は、事案ごとに登記所やお近くの司法書士に確認しておくのが確実です。

もっとも、相続人が自宅を第三者に売却する場合は、被相続人名義のままでは売買による所有権移転登記を申請できないため、売買の登記の前提として相続登記(被相続人→相続人)を済ませておく必要があります。抵当権抹消登記をその前後どちらのタイミングで行うかは事案によりますが、いずれにしても「相続登記」「抵当権抹消登記」「売買による所有権移転登記」の3つを整える流れになります。なお、相続によって取得した不動産については、相続登記の申請義務化(令和6年4月1日施行)に伴い、原則として自己のために相続の開始があったことを知り、かつ当該不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。担保の清算とは別に、この期限も踏まえた手続きの計画が必要です。

登記簿上の住所が古いままの場合(住所等変更登記も義務化されています)

相続登記の義務化に続き、令和8年(2026年)4月1日からは、所有権の登記名義人の氏名・名称または住所に変更があったときも、その変更があった日から2年以内に変更の登記を申請することが義務づけられています(不動産登記法76条の5)。正当な理由がないのに申請を怠った場合は、5万円以下の過料の対象とされています(同法164条2項)。施行日より前に住所等を変更していた場合も義務の対象で、法務省は令和10年(2028年)3月31日までに変更登記をする必要があると案内しています(法務省「住所等変更登記の義務化について」)。

リバースモーゲージは高齢期に利用される仕組みであり、契約後に転居や施設への入所などで住所が変わることも想定されます。登記簿上の住所が現在の住所と異なる状態のままだと、その後の抵当権(根抵当権)抹消登記や相続登記を進める際に、登記名義人の表示を整える手続きが別途必要になる場合があります。担保の清算に着手する前の段階で、登記簿の記載が現況と合っているかを確認しておくことが実務上は無難です。

登録免許税の考え方

登記手続きにかかる登録免許税は、登記の種類によって課税標準・税率の考え方が異なります。抵当権(根抵当権)の設定登記は債権額(根抵当権の場合は極度額)を課税標準として原則0.4%、抵当権の抹消登記は不動産1個につき原則1,000円の定額、相続による所有権移転登記は固定資産税評価額を課税標準として原則0.4%です(一定の要件を満たす場合の軽減・免税措置の有無を含め、実際の税額は物件・時期によって異なるため、申請時点の制度を個別に確認する必要があります)。登録免許税は登記申請の一部であり、司法書士が申請手続きとあわせて算定・案内する事項です。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月・いずれも一次情報です)。

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