この記事の要点

  • リースバックは「自宅を売って現金を得る売買契約」と「売った家を借りて住み続ける賃貸借契約」の2つの契約を同時に結ぶ仕組み
  • 登記簿の甲区は所有者が買主に書き換わり、自分は賃借人という扱いになる。賃借人であること自体は登記簿に載らないのが通常
  • 住み続けられる期間は、賃貸借契約が定期借家か普通借家かで大きく変わる
  • 買戻し特約の有無・賃料の見直しルールなど、契約書で確認すべき事項がある
  • 個別の契約条件の有利不利や「契約すべきか」の判断は、この記事では扱わない

リースバックとは、自宅などの不動産を売却して代金を受け取りながら、売却先から改めてその家を借りて住み続ける仕組みです。「売る」と「借りる」という性質の異なる2つの契約を組み合わせている点が特徴で、まとまった現金を得たいが住み続けたいというニーズに応える方法として知られています(国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」令和4年6月24日公表)。

住宅ローンの返済が難しくなった場面で、競売や任意売却と並んで資金化の選択肢に挙がることがありますが、リースバックは売却後も同じ家に住み続けられる点に独自の特徴があります。

二つの契約でできている仕組み

リースバックは次の2つの契約から成り立ちます。

  1. 売買契約(民法555条):自宅の所有者が買主に所有権を移転し、買主が代金を支払う契約
  2. 賃貸借契約(民法601条):売却した家を、今度は買主から借りて住み続ける契約。対価を支払わない使用貸借ではなく、賃料を支払う賃貸借にあたる

売買契約と賃貸借契約は別々の契約であり、それぞれに契約書が作成されます。代金の額・賃料の額・契約期間などは、この2つの契約書に個別に定められます。

登記簿はどう変わるか

自宅の所有権が買主に移ると、法務局に所有権移転登記を申請することになります。登記簿の甲区(所有権に関する事項が記録される部分)を見ると、これまで自分の名前だった所有者欄が買主の名前に書き換わります。

一方で、自分が賃借人として住み続けるという事実そのものは、通常は登記簿に記載されません。建物の賃借権を登記する制度自体はありますが、建物の引渡しを受けていれば、登記がなくても、その後にその建物の所有権など物権を取得した人に対して賃借権を主張できるとされているため、リースバックの場面で賃借権を登記することは一般的ではなく、登記簿を見ただけでは「元の所有者が賃借人として住み続けている」ことは分かりません。

住み続けられる期間はどう決まるか

住み続けられる期間は、結んだ賃貸借契約の内容によって大きく変わります。

  • 定期建物賃貸借(定期借家)(借地借家法38条):契約で定めた期間が満了すると更新されず契約が終了する賃貸借。公正証書等の書面(または一定の電磁的記録)による契約が必要で(同条1項・2項)、契約前に貸主から「更新がなく期間満了で終了する」旨を記載した書面の交付を受けて説明を受ける必要があります(同条3項)。この説明がなければ、更新なしとする定めは無効になります(同条5項)。なお、2022年5月18日に施行された改正(デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律・令和3年法律第37号)により、この説明書面についても、政令で定めるところにより借主の承諾を得たときは、電磁的方法で提供することができるものとされています(借地借家法38条4項)
  • 普通借家:期間が満了しても、貸主に正当事由がない限り更新されるのが原則の賃貸借

定期借家であれば、期間満了後にさらに住み続けられるかどうかは、貸主との再契約に委ねられます。なお、契約期間が1年以上の定期借家では、貸主は期間満了の1年前から6か月前までの間に賃借人へ期間満了により終了する旨の通知をしなければ、その終了を賃借人に対抗することができないとされています(借地借家法38条6項。この期間を過ぎてから通知した場合は、通知の日から6か月を経過した後は対抗できます)。契約時点で「何年住めるのか」「更新はできるのか、それとも定期借家で期限があるのか」を必ず確認しておく必要があります。

買戻し特約の有無も確認事項

売買契約に買戻し特約(民法579条)が付けられている場合、決められた期間内であれば、売主が、買主の支払った代金等を返還して売買契約を解除し、所有権を取り戻せる可能性があります。買戻し特約の有無・期間・条件は契約書ごとに異なるため、契約書の記載を確認することが欠かせません。

離婚を機に住まいを整理する場面でペアローンの整理と合わせて資金化の方法が検討されることもありますが、個別の事情による有利不利の判断はこの記事では扱いません。

なお、自宅を担保にしたまま資金を借り入れる「リバースモーゲージ」という別の制度もありますが、リースバックとは所有権が移転するかどうかという根本的な違いがあります。両者の違いは別の記事で取り上げます。

契約書で確認すべき事項(一般論)

  • 賃貸借契約が定期借家か普通借家か、定期借家であれば契約期間
  • 賃料の額と、契約期間中に賃料が見直される条件の有無
  • 買戻し特約の有無・期間・買戻し代金の算定方法
  • 契約終了時(退去時)の原状回復・敷金等の扱い

これらは契約書ごとに条件が異なるため、契約前に書面で確認することが重要です。個別の契約条件が有利かどうかの判断や、特定の事業者・商品の評価はこの記事では行いません。

なお、国民生活センターは2026年8月4日に「自宅の『リースバック』トラブルにご注意!」を公表し、売却後もずっと住み続けられるとは限らないこと、住む期間が長くなると家賃の支払総額が売却金額を上回る場合があること、消費者が不動産業者に自宅を売却する場合には宅地建物取引業法に定めるクーリング・オフが適用されないことなどを挙げて、注意を呼びかけています。契約内容に不安や疑問があるときは、消費生活センター等に相談することもできます。

まとめ

リースバックは、自宅の売買契約と賃貸借契約を組み合わせて、まとまった資金を得ながら同じ家に住み続けられる仕組みです。登記簿の所有者欄(甲区)は買主に書き換わり、住み続けられる期間は賃貸借契約が定期借家か普通借家かで変わります。契約内容によって権利関係が大きく変わるため、契約前に書面の内容をよく確認し、登記簿の変化や手続きについて疑問があれば、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. リースバックの利用に費用はかかりますか? 所有権移転登記の際には登録免許税や司法書士報酬などの登記費用がかかります。売買代金・賃料・契約に伴う諸費用は契約ごとに異なるため、この記事では具体的な金額には触れません。税金の取り扱いは税理士にご確認ください。

Q. 賃貸借契約の期間が終わったらどうなりますか? 定期借家であれば契約は更新されず、期間の満了によって終了します(契約期間が1年以上の場合は、貸主から期間満了の1年前から6か月前までの間に終了する旨の通知を受けることが必要とされています)。引き続き住み続けたい場合は貸主との再契約が必要になり、再契約できる保証はありません。普通借家であれば、貸主に正当事由がない限り更新されるのが原則です。放置すると住まいを失うリスクにつながるため、契約時点でどちらの契約かを必ず確認してください。

Q. 契約内容を自分で判断できますか?どこに相談すればいいですか? 売買契約と賃貸借契約が組み合わさっており、権利関係が複雑になりやすいため、契約書の内容を自分だけで判断するのは容易ではありません。契約条件についてトラブルが生じた場合は弁護士や消費生活センターに、登記簿の内容や手続きについてはお近くの司法書士にご相談ください。

【さらに深掘り】リースバックの登記──所有権移転・抵当権の抹消・買戻し特約

ご注意 以下は執筆時点(2026年9月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

所有権移転登記と抵当権抹消登記の関係

リースバックで自宅を売却したときの登記は、登記原因を「売買」とする所有権移転登記です。権利に関する登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者と登記義務者が共同して申請します(不動産登記法60条)。所有権移転登記であれば、登記権利者が買主、登記義務者が売主(元の所有者)にあたります。

問題になりやすいのは、売却する自宅に住宅ローンの抵当権が残っている場合です。抵当権の登記が乙区に残ったままでは、買主は担保の付いた状態で所有権を取得することになります。そのため、売買代金で住宅ローンを完済したうえで、抵当権の抹消登記と所有権の移転登記を同じ機会にまとめて申請する形をとることになります。

このとき、抵当権の抹消登記も共同申請です(不動産登記法60条)。抹消登記の登記権利者は抵当権を設定した所有者、登記義務者は抵当権者(金融機関等)ですから、所有権が買主に移る前、まだ元の所有者が登記名義人であるうちに抹消登記を申請するのが通常の段取りです。所有権が移転した後に、新しい登記名義人となった買主を登記権利者として抹消登記を申請する形も制度上は考えられますが、その場合は買主がいったん抵当権の付いた状態で所有権を取得することになるため、リースバックの決済では上記の順序によるのが通常です。抹消登記に必要な書類は完済を受けて抵当権者から交付されるため、完済の時期と書類の受領時期、申請の段取りが噛み合わないと、決済の日に手続きが揃わないという事態が起こり得ます。

買戻し特約は「登記されているか」で意味が変わる

買戻しの特約は、不動産の売主が、売買契約と同時にした特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合はその合意により定めた金額)および契約の費用を返還して売買を解除できるという制度です(民法579条)。

なお、契約書に「買い戻すことができる」という趣旨の定めがあっても、それが民法579条の買戻しの特約にあたるのか、再売買の予約など別の法律構成によるものなのかは、契約の内容によって異なります。以下は、民法579条の買戻しの特約にあたる場合の整理です。

登記実務との関係で重要なのは、次の点です。

  • 対抗力:売買契約と同時に買戻しの特約を登記したときは、買戻しを第三者に対抗することができます(民法581条1項)。逆にいえば、対抗力の根拠は登記に置かれています。契約書に買戻しの合意が書かれていることと、それが登記簿に記録されていることは別の事柄です
  • 登記の形式:買戻しの特約の登記は、付記登記によってするものとされています(不動産登記規則3条10号)。所有権移転登記に付記される形で甲区に記録されるため、登記事項証明書を見れば買戻しの特約の有無を確認できます
  • 登記事項:買戻しの特約の登記の登記事項は、不動産登記法59条各号に掲げるもののほか、買主が支払った代金(民法579条の別段の合意をした場合はその合意により定めた金額)および契約の費用、ならびに買戻しの期間の定めがあるときはその定めとされています(不動産登記法96条)。つまり、いくら返して買い戻せるのかという金額が登記簿に記録されます
  • 期間の上限:買戻しの期間は10年を超えることができず、特約でこれより長い期間を定めたときはその期間は10年とされます。期間を定めたときは、その後に伸長することはできません。期間を定めなかったときは、5年以内に買戻しをしなければならないとされています(民法580条1項〜3項)

なお、買戻しの特約の登記がされた後に民法605条の2第1項に規定する対抗要件を備えた賃借人の権利は、その残存期間中1年を超えない期間に限り売主に対抗することができる、という規定があります(民法581条2項。ただし売主を害する目的で賃貸借をしたときを除く)。リースバックでは賃借人が売主本人であることが通常ですが、賃借人が売主以外である場合も含めて、条文上はこうした調整規定が置かれています。

賃借権は登記されるのか──借地借家法31条の位置づけ

本文でも触れたとおり、賃借人として住み続けている事実は、通常は登記簿に表れません。制度としては、不動産の賃貸借は登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができるとされています(民法605条)。ただし賃借権の設定登記も権利に関する登記ですから、共同申請となり、賃貸人(買主)の関与が必要です(不動産登記法60条)。もっとも、賃借人の側から賃貸人に対して当然に登記手続を求められるのかについては、古くから議論があります。賃借権は債権であることから、特約がない限り賃借人に登記を請求する権利はないとするのが判例・通説と整理されている一方、契約の解釈によって賃貸人に登記への協力義務を認める余地を説く見解もあります。賃借権を登記しておきたい場合には、その旨を契約書に定めておくことが実務上の対応になります。

そのうえで、建物の賃貸借については、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対しその効力を生ずるとされています(借地借家法31条)。リースバックでは、売却前から住んでいる建物にそのまま住み続けるという形になるため、この引渡しによる対抗力が問題になる場面です。もっとも、リースバックでは売主が占有を続けたまま賃借人になるため、買主から改めて建物を現実に引き渡す場面があるとは限りません。この場合に借地借家法31条の「引渡し」があったと評価できるかは、契約の内容や引渡しの態様の見方によるところがあり、一律に決まるものではありません。賃借権の登記が一般的でないことの背景には、この条文があります。

買主側が抵当権を設定する場合の一般論

買主が購入資金を借り入れ、取得した建物に抵当権を設定することがあります。この場合、賃借人の立場から見て意味を持つのは、抵当権の登記と賃借権の対抗要件の先後です。借地借家法31条は、建物の引渡しがあったときは「その後」その建物について物権を取得した者に対し効力を生ずる、という書き方をしています。もっとも、この文言だけから個別の事案の優劣が決まるわけではなく、建物の引渡しと抵当権の設定登記のどちらが先かという評価は、契約と登記の経過によります。

賃借権を抵当権者に対抗できない場合については、次の規定があります。抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物を使用または収益する者のうち、競売手続の開始前から使用または収益をする者などは、その建物の競売における買受人の買受けの時から6か月を経過するまでは、建物を買受人に引き渡すことを要しないとされています(民法395条1項)。ただし、買受けの時より後の使用の対価について、買受人が相当の期間を定めて1か月分以上の支払を催告し、その期間内に履行がない場合には適用されません(同条2項)。

抵当権が設定されればその登記は乙区に記録されますので、売却後であっても、登記事項証明書を取得すれば所有者が誰か、どのような担保が付いているかを確認することができます。個別の契約についてどう評価するかはここでは扱いませんが、登記簿から読み取れる事実と、契約書に書かれている事項を突き合わせて確認しておくことには意味があります。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月)。

※ 次の資料は一次情報ではなく、解説・評釈などの二次資料ですが、内容確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。

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