この記事の要点

  • おひとりさまが亡くなった後の納骨を誰かに託すには、生前に永代供養墓・納骨堂を契約しておく方法と、死後事務委任契約で納骨を頼む相手を決めておく方法を組み合わせて備える考え方があります
  • 死後事務委任契約は、葬儀や納骨などの死後の事務を第三者に頼んでおく契約で、こうした事務を委任する条項を入れておくことができる仕組みです
  • 引き取る方がいないご遺体については、「墓地、埋葬等に関する法律」9条により、市区町村が火葬・埋葬を行う仕組みがあります(火葬後の遺骨の扱いは自治体の運用によります)
  • 祭祀承継者(お墓や仏壇を引き継ぐ人)が決まっていない場合の備えについても、あわせて知っておくと安心です
  • 次の一歩として、お近くの司法書士に相談してみましょう

「自分が亡くなったとき、誰が火葬や納骨の手続きをしてくれるのだろう」──配偶者や子どもがいない、頼れる親族が近くにいないという、いわゆるおひとりさまの方から、こうした不安の声を聞くことがあります。結論から言うと、この不安に備える方法は主に2つあります。ひとつは生前に永代供養墓・納骨堂を契約しておくこと、もうひとつは納骨を含む死後の事務を頼む相手を、死後事務委任契約で決めておくことです。この記事では、それぞれの制度の一般的な仕組みと、引き取り手のない遺骨がどう扱われるかを整理します。

生前に永代供養墓・納骨堂を契約しておく

永代供養墓や納骨堂は、契約者本人が生前のうちに契約しておくことができます。契約後は、寺院や霊園などの管理者が遺骨の管理・供養を引き継ぐため、跡を継ぐ親族がいない場合でも供養を続けてもらえる仕組みになっています。ただし、個別に安置される期間や、その後合祀(ごうし)に移されるタイミングなど、契約内容によって条件が異なる点には注意が必要です。永代供養・樹木葬・散骨それぞれの確認ポイントについては、永代供養・樹木葬・散骨の法律知識──「お墓を持たない」という選択肢で詳しく解説しています。

もっとも、永代供養墓・納骨堂を契約しておくだけでは、「誰が火葬場や納骨堂とのやりとりをして、実際に遺骨を届けるか」という「人の手」の部分は解決しません。おひとりさまの場合、この役割を誰に頼むかが次の課題になります。

納骨を頼む相手を決めておく──死後事務委任契約という仕組み

この「人の手」の部分に備える仕組みが、死後事務委任契約です。死後事務委任契約は、葬儀の手配や医療費の精算、遺品整理などとあわせて、火葬・納骨に関する手続きを第三者(受任者)に頼んでおく契約で、こうした事務を委任する条項を入れておくことができる仕組みとして知られています。契約しておけば、永代供養墓や納骨堂を運営する施設との連絡、遺骨の引き渡し、納骨の立ち会いといった手続きを、受任者に任せることができます。死後事務委任契約そのものの基本的な仕組みは、自分が亡くなった後の事務、誰に頼む?──死後事務委任契約とはで解説しています。

判断能力が低下する前の見守りや財産管理まで含めて備えたい場合は、見守り契約・財産管理委任契約とあわせて検討する方法もあります。詳しくは見守り契約・財産管理委任・死後事務委任──「後見の手前」を支える3つの契約をご覧ください。

引き取り手のない遺骨はどうなるか──墓地、埋葬等に関する法律9条

では、生前に何も備えないまま亡くなり、遺骨の引き取り手がいなかった場合はどうなるのでしょうか。「墓地、埋葬等に関する法律」9条は、死体の埋葬または火葬を行う者がないとき、またはその者が判明しないときは、死亡地の市町村長(東京23区などの特別区では区長)がこれを行わなければならないと定めています。つまり、引き取る方がいないご遺体については、市区町村(行政)が火葬・埋葬を行う仕組みが法律上用意されています。ただし、同条が定めているのは「埋葬又は火葬」を行うところまでであり、火葬後の遺骨をどこにどのように納めるかまでを直接定めた規定ではありません。

もっとも、これはあくまで行政による一般的な対応の枠組みであり、実際にどのような手続き・タイミングで進むかは個別の事情や自治体の運用によって異なります。具体的な取扱いは、お住まいの市区町村や個別のケースによって確認が必要になる点にご留意ください。

祭祀承継者がいない場合の扱い

お墓や仏壇、位牌などの「祭祀財産」は、遺産分割の対象とは別枠で、祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)と呼ばれる人が引き継ぐものとされています。おひとりさまの場合、この祭祀承継者を誰にするかが決まっていないケースも少なくありません。祭祀承継者は遺言であらかじめ指定しておくことができ、指定の方法については祭祀承継者を遺言で指定する──「お墓は長男に」と書けるのかで解説しています。承継者が決まっていない場合の一般的な決まり方は、祭祀財産の承継者の決まり方をご覧ください。

まとめ

おひとりさまが亡くなった後の納骨に備えるには、永代供養墓・納骨堂を生前に契約しておくことと、死後の事務を頼む相手を死後事務委任契約で決めておくことを組み合わせるのが一般的な考え方です。引き取る方がいない場合に市区町村が対応する仕組みもありますが、自分の意思どおりに進めたい場合は、生前の備えが重要になります。どこから手を付ければよいか迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 永代供養墓の契約や死後事務委任契約の費用はどれくらいかかりますか?

費用は、永代供養墓・納骨堂の種類や規模、死後事務委任契約で依頼する事務の範囲によって大きく異なり、一律の相場を示すことは難しいものです。契約前には、個別に見積もりを取り、内容を書面で確認することをおすすめします。

Q. 何も備えないまま放置すると、どうなりますか?

生前に契約や委任をしていない場合、引き取る方がいなければ、「墓地、埋葬等に関する法律」9条に基づき市区町村が火葬・埋葬を行う仕組みがあります。火葬後の遺骨の扱いは、自治体の運用によります。また、この場合は自分の希望どおりの供養方法が実現するとは限りません。誰にどのように弔ってほしいかを実現したい場合は、生前のうちに備えておくことが重要です。

Q. こうした契約は自分で進められますか?どこに相談すればよいですか?

永代供養墓・納骨堂の契約は、本人が直接施設と契約することができます。死後事務委任契約についても契約自体は当事者間で結ぶことができますが、内容の整理や書面化には専門的な視点が役立つ場面もあります。進め方に迷ったときは、お近くの司法書士にご相談ください。

【さらに深掘り】死後事務委任契約・遺言・任意後見契約の役割分担と祭祀承継の調整

ご注意 以下は執筆時点(2026年09月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

死後事務委任契約・遺言・任意後見契約は「効力を持つ場面」が異なる

おひとりさまの備えとして死後事務委任契約・遺言・任意後見契約の3つを組み合わせて検討する場合、まず押さえておきたいのは、それぞれの契約が効力を持つ場面が異なるという点です。

任意後見契約は、本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力を生じ(任意後見契約に関する法律2条1号)、生前の財産管理・身上保護を担う仕組みです。本人の死亡によって当然に終了するとされており、死後の事務まではカバーしません。

なお、この任意後見契約に関する法律2条1号は、「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号。2026年6月24日公布)により、契約の効力が生じる時点が「任意後見監督人が選任された時」から「任意後見開始の審判がされた時」に改められます。施行日は公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされており、本記事執筆時点(2026年9月)では未施行です。任意後見契約を検討する際は、施行時期と経過措置の取扱いを、お近くの司法書士にご確認ください。

これに対して遺言は、遺言者の死亡の時から効力を生じます(民法985条1項)。財産の帰属(相続分の指定・遺贈)や祭祀承継者の指定(民法897条1項ただし書)を定めることができますが、葬儀の方法や火葬・納骨の手続きそのものを遺言に書いても、これは法的な効力を持つ遺言事項には当たらず、遺言者の希望を伝える「付言事項」にとどまるとされています。付言事項には法的な強制力がないため、実際に火葬・納骨の手続きを進めてもらうには別の手立てが必要になります。

死後事務委任契約は、この「死亡直後から死後にかけての事実行為」を担う仕組みです。委任契約は本来、委任者の死亡によって終了するのが原則です(民法653条1号)。もっとも、この規定は当事者の合意で変更できる任意規定と解するのが一般的で、委任者の死亡後も委任事務を継続させる旨の合意は有効であるとされています。この理解を前提に、葬儀・火葬・納骨や医療費の精算、遺品整理などの事務を委任しておく契約として実務上用いられています。

ただし、契約そのものが有効であることを前提としても、なお議論のある点があります。ひとつは、委任者の地位を引き継いだ相続人が、委任契約を解除できるかという点です(民法651条1項)。契約の目的に照らして相続人による解除は制限されるべきだとする考え方がある一方で、解除権は相続人にそのまま引き継がれるとする考え方もあり、扱いは一様ではありません。もうひとつは、本来は遺言によるべき事項を、契約の形で実現することにならないかという指摘です。とくに財産の処分に関わる内容を盛り込む場合には、この批判が当てはまりやすいとされています。契約書を作成する際は、委任する事務の範囲・報酬や費用の負担を明確にし、相続人との関係で疑義が生じにくい内容にしておくことが実務上の留意点として挙げられます。

このように3つの契約は、「生前の財産管理・身上保護(任意後見)」「死亡直後から死後にかけての事実行為(死後事務委任)」「死後の財産帰属・祭祀承継者の指定(遺言)」という異なる場面を担っています。それぞれの効力が発生するタイミングが重ならず、かつ空白も生じないように組み合わせて設計する視点が重要になります。

祭祀承継者の指定と死後事務委任契約の受任者が別人の場合

祭祀承継者(民法897条)と死後事務委任契約の受任者は、法律上、同一人物である必要はありません。実際には、火葬・納骨の実務を担う死後事務委任契約の受任者と、その後の位牌・仏壇・墓の管理を引き継ぐ祭祀承継者とが別人になる設計も考えられます。

この場合、納骨堂・永代供養墓の契約者名義や納骨後の管理費用の支払い名義を誰にするか、遺骨や位牌の引き渡しをどのように行うかといった点で、両者の間で調整が必要になる場面があります。受任者と承継者が生前に顔を合わせたことがない、あるいは疎遠であるといった事情がある場合は、それぞれの役割と、引き継ぎの際に連絡を取り合う必要があることを、本人の生前にあらかじめ伝えておくことが実務上の留意点として指摘できます。

相続財産と祭祀財産が別枠で扱われることの留意点

系譜・祭具・墳墓といった祭祀財産は、民法897条により、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するのが原則ですが、被相続人の指定があるときはその指定に従い(同条1項ただし書)、慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定めます(同条2項)。祭祀財産は遺産分割の対象となる相続財産には含まれず、別枠で承継が決まる点に注意が必要です。

このため、祭祀承継者は必ずしも相続人である必要はなく、相続放棄をした人であっても祭祀承継者になることは妨げられないと解されています(相続と祭祀承継は別の制度であるため)。同じことの裏返しとして、相続分や遺産分割の話し合いの中で祭祀承継者が自動的に決まるわけではなく、別途、指定または話し合いが必要になります。

実務では、遺産分割協議書に祭祀財産の帰属を記載する例も見られます。祭祀財産はそもそも遺産分割の対象ではないため、この記載によって遺産分割の効力として祭祀財産の帰属が確定するわけではない、という整理が一般的です。

もっとも、この記載の意味づけについては見方が分かれています。相続人全員の合意がある場合には、遺産分割とは別に祭祀承継者を定める合意として扱ってよいとする考え方がある一方で、民法897条が承継者の決まり方(被相続人の指定・慣習・家庭裁判所の審判)を定めていることを重く見て、相続人の話し合いだけで同条にいう承継が確定したとまでは言えず、争いが生じたときは家庭裁判所の判断によることになるとする考え方もあります。いずれにしても、祭祀承継者を明確にしたい場合は、遺産分割の手続きとは別に、遺言による指定や生前の意思表示など、祭祀承継者の指定に関する手続きを個別に検討しておくことが望ましいといえます。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年09月)。

※ 次の資料は一次情報ではなく、解説・評釈などの二次資料ですが、内容確認の参考にしたため一次情報と区別して掲載しています。

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