この記事の要点

  • 「離檀料」は法律上の用語ではなく、その支払いを義務づける法律の規定は見当たりません。これまでの供養への謝礼(お布施・寄付)と同じ性質のものと説明されることが多い費用です
  • ただし、檀家規約・墓地使用規則・寺院との契約書に費用の定めがある場合は、その内容によることになります
  • 揉めないための順序は、①檀家規約や手元の書類を先に確認する ②家族・親族で先に合意しておく ③早めに住職へ相談し理由と感謝を伝える ④話し合いの記録を残す、の4つです
  • 金額をめぐる交渉や、話し合いがまとまらない場合の相談先は弁護士です。墓じまいに伴う相続の手続き(祭祀承継者やお墓の名義、相続登記など)は、お近くの司法書士にご相談ください

墓じまいを考え始めた方が最初に不安になるのが、「お寺にいくら払うことになるのか」という点です。結論から申し上げると、「離檀料」という名前の費用について、支払いを義務づける法律の規定は見当たりません。もっとも、だからといって金額の話から入ってしまうと、かえってお寺との関係がこじれ、墓じまいそのものが前に進まなくなることがあります。この記事では、離檀料の位置づけについての一般的な説明と、お寺とのやりとりで揉めないための段取りを整理します。なお、この記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。

「離檀」とは何か──墓じまいで話題になる理由

「離檀(りだん)」とは、これまで所属していたお寺の檀家(だんか)をやめることをいいます。檀家とは、特定のお寺に所属し、葬儀や法要をそのお寺にお願いし、お布施などを通じて寺院を支える立場のことです。

墓じまいの相談で離檀の話が出るのは、寺院の境内にあるお墓(寺院墓地)を使っていること自体が、多くの場合その寺院の檀家であることを前提としているためです。ご遺骨を別の場所(新しいお墓・納骨堂・樹木葬など)へ移せば、そのお寺との関係も区切りを迎えることが多く、結果として「墓じまい=離檀」という流れになりやすいといえます。だからこそ、墓じまいの話を切り出すと、離檀の話、そして離檀料の話がついてくるわけです。

見落とされやすいのは、墓じまいには行政の手続きがついてくるという点です。ご遺骨を別の墓地・納骨堂へ移すには市区町村長の許可(改葬許可)が必要で(墓地、埋葬等に関する法律5条1項)、その申請書には、現在の墓地(納骨堂の場合はその納骨堂)の管理者が作成した「埋葬若しくは埋蔵又は収蔵の事実を証する書面」(いわゆる埋蔵証明書)を添えることとされています(同法施行規則2条2項1号)。手続きの全体像は墓じまいの手続き──「改葬許可」の流れと必要書類で解説しています。つまり、お寺とのやりとりは気持ちの問題にとどまらず、書類の面でも関わってくるということです。

離檀料の支払義務を定めた法律の規定は見当たらない

「離檀料」は法律上の用語ではありません。法令を調べても「離檀料」という言葉は出てこず、離檀にあたって一定の金銭を支払わなければならないと定めた規定も見当たりません。一般には、これまでの供養に対する感謝を示すお布施・寄付と同じ性質のもの(宗教上の謝礼)と説明されることが多く、税金や手数料のように法律で金額や支払い義務が決まっているものではない、と整理されています。

そのため、この記事では金額の目安や相場には触れません。宗教上の謝礼という性質上、一律の基準というものがなく、「いくらが普通か」という形で線を引くことができないためです。

ただし、次の点には注意が必要です。檀家規約・墓地使用規則・寺院との契約書に、離檀や墓地の返還にあたっての費用の定めがある場合は、その内容によることになります。たとえば「使用をやめる場合の手続きと費用」について規約に書かれていれば、それがまず基準になります。金額の話に入る前に、お手元の書類(墓地使用許可証、規約、入檀のときに取り交わした書面など)を確認しておくことが出発点です。

逆に、「法律に定めがないのだから払わなくてよい」と決めつけて話を進めるのも避けたほうがよいでしょう。そもそもこの費用は、支払い義務の有無を争うための性質のものではなく、これまでの供養への謝意を形にするものとして説明されてきたものです。どうするかを決めるのは最終的にご家族ですが、決める前に規約を確認し、お寺の説明を聞いてからにする、という順序をおすすめします。

揉めないための段取り

離檀の話し合いは、一般的には次の順序で進めると行き違いが起きにくくなります。

  • まず手元の書類と規約を確認する:墓地使用許可証、檀家規約、墓地使用規則、入檀のときの書面を先に確認します。費用や手続きについての定めがあれば、話し合いの前提が変わります
  • 家族・親族の間で先に合意しておく:墓じまいをすること自体に反対の親族がいる状態でお寺に話を持ち込むと、話が二重にこじれます。誰がお墓を引き継ぐ立場なのか(祭祀承継者)もあわせて整理しておきます。承継者の決まり方はお墓や仏壇は相続財産に入らない?祭祀財産の承継者の決まり方と引き継ぎの段取りをご覧ください
  • 早めに住職へ相談する:墓じまいの日程や移転先まで決めてから事後報告のように伝えると、心情的な反発を招きやすくなります。「決めてしまったので」ではなく「相談したい」という段階で伝えるのが基本です
  • 改葬の理由をきちんと伝える:遠方で墓参りに行けない、承継する人がいない、といった事情は、率直に伝えたほうが理解を得やすい事柄です
  • これまでの供養への感謝を伝える:離檀は関係を終える手続きですが、そこまでの供養があった事実は変わりません。感謝を言葉にすることは、実際上もっとも効果のある準備です
  • 話し合いの記録を残す:いつ、誰と、どんな話をしたかをメモに残し、金額や手続きの説明を受けたときは書面やメールで確認しておきます。後で認識が食い違ったときに、事実関係を確かめる手がかりになります

なお、お墓そのものは残し、承継する人を変えるだけであれば、墓じまいではなく名義変更(使用権の承継)の手続きになります。その場合の流れはお墓の名義変更──墓地使用権の承継手続きで解説しています。離檀まで踏み切るかどうかを決める前に、この選択肢も検討しておくとよいでしょう。

埋蔵証明書の発行を断られたときは

話し合いが折り合わず、墓地の管理者から埋蔵証明書の発行を断られてしまった、というご相談があります。この場合、当事者だけで押し問答を続けるのではなく、改葬許可を所管する市区町村の担当窓口に相談してください。

改葬許可の申請書に添える書類について、墓地、埋葬等に関する法律施行規則2条2項1号は、墓地等の管理者が作成した埋葬・埋蔵・収蔵の事実を証する書面を挙げたうえで、かっこ書きで「これにより難い特別の事情のある場合にあつては、市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」と定めています。もっとも、どのような場合が「特別の事情」にあたるのか、どんな書面が「これに準ずる書面」として認められるのかは、条文からは一義的に決まりません。条文が「市町村長が必要と認める」ものとしている以上、実際の取扱いは窓口に確認することになります。

いずれにしても、改葬許可は市区町村の手続きです。書類がそろわないまま手続きが止まってしまったときは、まず窓口に事情を伝えて、どう進めればよいかを確認するのが先決です。

高額な請求を受けた場合・話し合いがまとまらない場合

提示された金額に納得できない、あるいは話し合いがまとまらないという段階になったときは、弁護士にご相談ください。金銭の支払いをめぐる交渉や紛争の解決は、弁護士の業務です。司法書士は、法律で認められた限られた場合を除き、お寺との間に入って金額の交渉をすることができません。

また、離檀料をめぐる相談は、国民生活センターが公表している「墓・葬儀サービス」の相談事例にも取り上げられており、お住まいの自治体の消費生活センターも相談先の一つになります。どの窓口が適しているかは事情によって変わりますので、まずは相談先を確かめるところから始めるとよいでしょう。

まとめ

「離檀料」は法律上の用語ではなく、その支払いを義務づける法律の規定は見当たりません。ただし、檀家規約や墓地使用規則、寺院との契約書に定めがある場合は、その内容によることになります。揉めないためには、①手元の書類と規約を確認する ②家族・親族で先に合意する ③早めに住職へ相談し、改葬の理由とこれまでの供養への感謝を伝える ④話し合いの記録を残す、という順序が有効です。埋蔵証明書の発行を断られたときは、改葬許可を所管する市区町村の窓口に相談してください。

金額をめぐる交渉や、話し合いがまとまらない場合の相談先は弁護士です。一方で、墓じまいに伴って出てくる相続の手続き(祭祀承継者の整理、お墓の名義、不動産の相続登記など)については、お近くの司法書士にご相談ください。

よくある質問

Q. 離檀料は払わなければならないのですか?

「離檀料」という名前の費用について、支払いを義務づける法律の規定は見当たりません。一般には、これまでの供養への謝礼(お布施・寄付)と同じ性質のものと説明されることが多い費用です。ただし、檀家規約・墓地使用規則・寺院との契約書に費用の定めがある場合は、その内容によることになりますので、まずお手元の書類を確認してください。金額に納得できない場合の相談先は弁護士です。

Q. 離檀の話し合いを先延ばしにすると、どうなりますか?

離檀そのものに法律上の期限が定められているわけではありません。ただし、墓じまいを決めているのに話し合いを先延ばしにすると、その間も管理料などの負担が続くことが多く、改葬許可の申請に必要な書類もそろわないため、手続き全体が止まったままになります。また、お墓を引き継ぐ方が高齢である場合、判断や手続きができる時期を逃してしまうこともあります。早めに相談を始めるほうが選択肢は広く残ります。

Q. お寺とのやりとりは自分でできますか?どこに相談すればいいですか?

お寺への相談や改葬許可の申請は、ご自身で進められることが多い手続きです。改葬許可の書類や進め方は、今お墓がある市区町村の窓口で案内を受けられます。金額をめぐる交渉や、話し合いがまとまらない場合は弁護士にご相談ください。墓じまいにあわせて、お墓の名義や祭祀承継者、不動産の相続登記といった相続手続き全体を整理したい場合は、お近くの司法書士にご相談ください。


【さらに深掘り】離檀・改葬を決める権限と費用の位置づけ

ご注意 以下は執筆時点(2026年9月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。

墓じまいを決める立場は「相続人の多数決」では決まらない

遺産の分け方は相続人全員の協議で決めるのが原則ですが、お墓については別の規定が置かれています。民法897条1項は、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」と定めています。ここでいう「前条」とは、相続人が被相続人の権利義務を一般的に承継することを定めた民法896条です。つまりお墓は、相続財産として分け合うものではなく、祭祀を主宰すべき者が承継する、という組み立てになっています。

ここから実務上の順序が見えてきます。墳墓の所有権が祖先の祭祀を主宰すべき者に帰属するという組み立てである以上、改葬や離檀に踏み切るかどうかも、まずはお墓を承継した方が判断する事柄と考えられ、相続人の頭数で決まるものとは整理されていません。承継者がはっきりしないまま「親族の多数がそう言っているから」という理由で話を進めると、後から権限の所在を問われる余地が残ります。

もっとも、その判断がどこまで自由なのかについては、整理が一様ではありません。民法897条は誰が承継するかを定めた規定であって、承継した方に供養を続ける法律上の義務まで負わせるものではない、と説明されるのが一般的です。他方で、承継者の権限は祖先の祭祀を主宰するという目的と切り離せないものであり、その目的による制約を受けると整理する考え方も示されており、この点は見解が分かれています。どちらの立場に立つとしても、親族の心情を置き去りにしたまま改葬に踏み切れば紛争のもとになりますので、先に話し合っておくという段取り自体は変わりません。

なお、墓地の使用関係そのものは墓地管理者との使用規則・使用契約によって定まる部分が大きく、名義人の変更手続きが別に必要になることもあります。

承継者が決まっていないときの決め方と、話し合いの順序

民法897条1項ただし書は、「被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」としています。指定がなければ慣習により、慣習が明らかでないときは家庭裁判所が定めます(同条2項)。この審判は、家事事件手続法190条1項にいう「相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判事件」(同法別表第二の十一の項)にあたり、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄とされています。

注意したいのは順序です。承継者が未確定のまま寺院との話し合いに入ると、誰の意思として離檀を申し出ているのかが定まりません。改葬許可の申請書には、申請者と「墓地使用者又は焼骨収蔵委託者」(墓地使用者等)との関係を記載することとされています(墓地、埋葬等に関する法律施行規則2条1項7号)。さらに、墓地使用者等以外の方が申請する場合には、墓地使用者等の改葬についての承諾書などを添えることとされています(同条2項2号)。誰が墓地使用者等の立場にあるのかが整理できていないと、書類の面でも行き詰まるということです。親族の間で承継者を先に固めてから寺院へ相談する、という段取りには、こうした手続き上の裏づけもあります。

墓じまいの費用は「相続債務」とは別に考える

費用の負担者も、遺産分割とは切り分けて考えることになります。民法896条により相続人が承継するのは、相続開始の時に被相続人の財産に属していた権利義務です。墓じまいに伴う費用は、被相続人の死亡後に改葬へ踏み切ったことで発生するものですから、被相続人から承継する相続債務とは性質が異なると考えられます。民法885条は「相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する」と定めていますが、祭祀財産は前述のとおり相続財産とは別の枠に置かれており、この規定をそのまま当てはめてよいかは個別の検討を要します。

そもそも、葬儀や埋葬といった死亡後の葬送に要する費用を誰が負担するかについては、葬儀を主宰した方(喪主)が負担するという整理と、相続人が分担するという整理の双方が示されており、裁判所の判断も事案によって分かれています。墓じまいの費用も、この延長線上で議論されることがあり、一律の答えがあるわけではありません。

一律の答えがないからこそ、実務では、遺産分割協議の中で費用の分担をあわせて取り決めておくことがあります。これは有効な合意ですが、効力はあくまで協議に加わった当事者の間にとどまります。寺院や石材店といった第三者に対して、その合意を理由に支払いを求めたり拒んだりできる性質のものではありません。取り決めておく意味は、後になって親族間で蒸し返しが起きるのを防ぐ点にあります。

遺言や死後事務委任で「墓じまいを頼む」ときの限界

ご自身の代で墓じまいまで済ませたいと考え、遺言にその希望を書く方がいます。ここは分けて考える必要があります。「墓じまいをしてほしい」という希望そのものは、法律が遺言事項として定めたものには含まれておらず、付言事項(遺言に書き添える事項)として記しても、それ自体で誰かに実行義務を生じさせるものではありません。他方、民法897条1項ただし書による祭祀承継者の指定は遺言でもできると説明されており、こちらは承継者を定める効果を持ちます。希望を形にしたいのであれば、承継者の指定と希望の記載を組み合わせ、指定する相手に生前に意向を伝えておくのが現実的です。

死後事務委任契約で改葬や離檀の手続きを託す設計もあります。ただし民法653条1号は、委任者の死亡を委任の終了事由として挙げています。この規定については、当事者の合意で別の定めをすることができる性質のもの(任意規定)と解し、委任者が亡くなっても委任を終了させない合意は有効である、という理解が一般的で、実務もこれを前提にしています。もっとも、委任者の相続人の側から委任を解除できるかについては考え方が分かれており、契約の趣旨に照らして自由な解除は認められないとする整理が示される一方、通常の委任と同じように解除できるとする立場もあります。託す事務の内容と、死亡後も事務を継続させる意思は、後から争いにならないよう、書面ではっきりさせておくのが確実です。

さらに、受任者は祭祀承継者そのものではありません。改葬許可の申請では、先にみたとおり墓地使用者等以外の方が申請する場合に承諾書などが必要になりますし、墓地使用者としての意思表示が承継した方の立場で求められる場面もあります。そのため、誰が承継者で誰が事務を代行するのかを、設計の段階で分けておくことになります。

なお、以上は制度の枠組みの話です。離檀料の金額や支払うかどうかをめぐる交渉は、この整理の外にあります。話し合いがまとまらない場合の相談先は弁護士です。

参考資料

この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年9月・いずれも一次情報です)。

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