お墓の名義変更──墓地使用権の承継手続き

この記事の要点 お墓の名義変更で引き継ぐのは土地の所有権ではなく、「永代使用権」という墓地を使う権利です 手続きの窓口・必要書類は、公営墓地・寺院墓地・民営霊園のどれかによって異なります 一般的には「使用許可証」と「承継者であることが分かる戸籍」が必要になりますが、詳細は管理者ごとの確認が欠かせません 承継者が決まらないときは、最終的に家庭裁判所が関わる仕組みもあります お墓の名義を変更する手続きは、不動産の相続登記とは性質が異なります。土地や建物の相続登記が「所有権」の移転を登記するのに対し、お墓の名義変更で引き継ぐのは、多くの場合「永代使用権(えいたいしようけん)」と呼ばれる、墓地を使わせてもらう権利です。この違いを押さえておくと、手続き先や必要書類の見当がつきやすくなります。 ...

2026年9月16日 · ひぐらしさとし

マンションを相続したら管理組合へ届出を──放置すると起きる実務トラブル

この記事の要点 マンションを相続したときの「区分所有者変更届」は、原則として法律上の義務ではなく、管理規約(マンション標準管理規約では第31条)に基づく手続き 届出をしないと、総会の招集通知や管理費・修繕積立金の請求が、亡くなった元の所有者宛のまま届き続けることがある なお、これとは別に、相続した方が国内に住所・居所を持たない場合に「国内管理人」を選任したときは、管理者等への通知が法律上必要(区分所有法第6条の2第3項。2026年〔令和8年〕4月1日施行) 相続登記(名義変更)が終わる前でも、管理組合への届出は行える 管理規約の内容は物件ごとに異なるため、実際の届出の要否・様式・必要書類はお手元の管理規約または管理組合に確認する マンションを相続したら、管理組合への届出も忘れずに マンションを相続すると、多くの方は「相続登記(不動産の名義変更)」に意識が向きます。見落とされがちなのが、管理組合への届出です。 ...

2026年9月16日 · ひぐらしさとし

相談中にメモを取っても録音してもいい?──面談を記録するときの心得

この記事の要点 相談中にメモを取ること自体は基本的に問題なく、「メモを取らせていただいてよいですか」と一言添えれば失礼にはあたりません 録音・録画は、無断で行わず事前に確認するのが一般的なマナーとされています 司法書士には秘密保持義務がありますが、これは司法書士側が負う義務であり、相談者自身が記録した内容の管理にも気を配ると安心です 初回相談では、「言われたことを覚えていられるだろうか」「あとで家族にきちんと説明できるだろうか」という不安から、メモを取っておきたい、あるいは録音しておきたいと考える方が少なくありません。ただ、面談の場でどこまでしてよいのか迷う声もよく聞きます。この記事では、相談を記録するときの一般的な心得を整理します。 ...

2026年9月15日 · ひぐらしさとし

相続税の『連帯納付義務』とは──自分の分を払っても、他の相続人の分の責任が残ることがある仕組み

この記事の要点 同じ被相続人から相続・遺贈で財産を取得した人は全員、自分が受け取った財産の価額を限度に、互いに他の相続人の相続税を連帯して納付する責任を負う(相続税法34条1項) 自分の申告・納税を済ませても、他の相続人が滞納すれば、この連帯納付義務にもとづいて税務署から納付を求められることがある ただし無期限の責任ではなく、申告期限から5年を経過する日までに税務署長から納付通知書による通知が発せられていなければ、その相続税については連帯納付義務が及ばなくなる(平成24年度税制改正) 相続人が複数いる相続では、「自分に割り当てられた相続税を、自分の申告期限までに納めれば、それで自分の責任は終わり」と考えている方が少なくありません。しかし相続税法には、これとは別に「連帯納付義務」という仕組みがあります。 ...

2026年9月15日 · ひぐらしさとし

分筆・合筆とは──土地を分ける・まとめる登記のきほん

この記事の要点 分筆=1筆の土地を登記簿上、複数の土地に分ける登記。合筆=複数の土地を登記簿上、1筆にまとめる登記 合筆には条件があり、地目や所有者が違う土地、抵当権などが付いている土地は原則として合筆できない(不動産登記法41条) 分筆をするには測量が前提になり、登記の申請にあわせて地積測量図を提出する必要がある 分筆・合筆の登記手続きを代理して行うのは、実務上、土地家屋調査士。司法書士はこの手続きの代理を行わない 分筆・合筆は土地家屋調査士へ、名義変更など権利部の登記やその他の不動産登記のご相談はお近くの司法書士へ 「1筆の土地を2つに分けて、子どもたちにそれぞれ相続させたい」「隣り合う2筆の土地をまとめて1つの敷地として使いたい」――相続や土地活用の場面で、こうした希望を実現するために登場するのが「分筆(ぶんぴつ)」と「合筆(ごうひつ)」という登記です。どちらも名前は似ていますが、やることは正反対です。 ...

2026年9月15日 · ひぐらしさとし

マンション建替え決議が成立したら──反対した区分所有者はどうなるのか

この記事の要点 マンションの建替え決議が成立しても、反対した区分所有者がその場で退去や名義変更を迫られるわけではなく、まず「建替えに参加するか」を尋ねる催告の手続きが挟まります。 催告を受けた日から2か月以内(区分所有法63条3項)に回答しないと、法律上「参加しない」旨を回答したものとみなされます。 参加しない区分所有者に対しては、建替えに参加する側が区分所有権・敷地利用権を時価で買い取るよう求める「売渡請求」という制度が用意されています。 売渡請求によって権利が移った場合、実際に登記簿の名義を変更するには、通常の所有権移転登記と同様の手続きが必要です。 買い取り価格を巡って意見が食い違う場合は、この記事の範囲を超える個別交渉になるため、早めに弁護士へ相談することが実務上のポイントです。 マンションの建替え決議は、区分所有者及び議決権の各5分の4以上(一定の要件を満たす建物では4分の3以上)の賛成で成立します。決議が成立すると、次に問題になるのは「賛成しなかった区分所有者はどうなるのか」という点です。決議の瞬間にその人の権利が失われるわけではなく、法律上は段階を踏んだ手続きが用意されています。決議そのものの要件緩和(5分の4から4分の3への緩和など)については、区分所有法が変わった──2026年4月施行の改正で管理組合ができるようになったことで扱っていますので、この記事では決議が成立した後に焦点を絞って整理します。 ...

2026年9月15日 · ひぐらしさとし

相続税の申告期限『10か月』──何を、いつまでに済ませておく必要があるか

この記事の要点 相続税の申告が必要になる場合、その申告・納付期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」(申告期限は相続税法27条1項、納付期限は同法33条) 10か月は申告書を作成するための期間ではなく、財産調査・遺産分割協議・申告書作成という性質の異なる工程を配分すべき期間 相続放棄(3か月)・準確定申告(4か月)と時期が重なるため、単独の期限として捉えず全体の時系列の中に位置づける必要がある 本文 相続税の申告が必要になる場合、その申告・納付期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」と定められています(申告期限は相続税法27条1項、納付期限は同法33条)。起算点が死亡日そのものではなく「相続の開始があったことを知った日」を基準にしている点は、相続放棄の3か月や準確定申告の4か月と共通する考え方です。 ...

2026年9月14日 · ひぐらしさとし

数次相続が起きると戸籍はどこまで増える?──亡くなった相続人にも『出生から死亡まで』が必要になる理由

この記事の要点 数次相続とは、一次相続の遺産分割が終わらないうちに相続人の一人が亡くなり、二次相続が発生している状態 亡くなったその相続人についても、本来の被相続人と同じく「出生から死亡まで」の戸籍一式を追加で集める必要がある 理由は、その人自身の相続人(二次相続人)が誰であるかを確定するため。亡くなった人数が増えるほど、収集範囲は大きく膨らむ 令和6年3月1日から始まった戸籍証明書等の「広域交付」は、直系にあたらない方の戸籍・コンピュータ化されていない戸籍・代理人による請求には使えないため、数次相続では負担の軽減が限定的 本文 相続登記や遺産分割協議のために戸籍を集めるとき、子が相続人になる一般的なケースであれば、亡くなった方(被相続人)の「出生から死亡まで」の戸籍一式をひとそろい集めるのが基本の範囲になります(相続人が兄弟姉妹になる場合など、被相続人の分だけでは足りないケースもあります)。ところが数次相続が絡むと、この「ひとそろい」が何セットにも増えていきます。今回は、その増え方の仕組みを戸籍収集の実務という切り口から整理します。 ...

2026年9月14日 · ひぐらしさとし

墓じまいの手続き──「改葬許可」の流れと必要書類

この記事の要点 墓じまい(改葬)をするときは、「墓地、埋葬等に関する法律」に基づき、市区町村長の許可(改葬許可)を受ける行政手続きが必要です 許可の申請先は、これから移す先ではなく「現在お墓がある市区町村」です 必要書類は「受入証明書」「埋蔵(埋葬)証明書」「改葬許可申請書」が基本的な組み合わせです 詳しい様式や必要な部数は市区町村ごとに異なるため、着手前に窓口へ確認しておくと手戻りを防げます 「墓じまい」をするとき、お墓の引っ越し先を決めるだけでは手続きは終わりません。今のお墓に納められているご遺骨を別の場所(新しいお墓や納骨堂、樹木葬など)に移すには、「墓地、埋葬等に関する法律」(以下「墓埋法」)に基づいて、市区町村長の許可(改葬許可)を受ける必要があります。これは家族や寺院・霊園との話し合いだけで完結するものではなく、公的な許可を要する行政手続きです。 ...

2026年9月14日 · ひぐらしさとし

登記簿の面積と実測が違う──「縄伸び・縄縮み」と地積更正登記

この記事の要点 登記簿に記載された土地の面積(地積)と、実際に測った面積(実測)が食い違うことは珍しくない 主な原因は明治時代の地租改正までさかのぼる測量誤差で、こうした食い違いは「縄伸び・縄縮み」と呼ばれる 登記簿の地積を実測に合わせて直す手続きが「地積更正登記」で、土地家屋調査士が担当する分野 地積測量図が法務局に備え付けられているかどうかで、売買時の実務対応が変わる 地積更正登記の相談先は土地家屋調査士。登記や名義に関わるその他の相談は、お近くの司法書士へ 登記簿(登記事項証明書)に書かれている土地の面積と、実際にメジャーや測量機器で測った面積が一致しない――このようなケースは、決して珍しいものではありません。原因の多くは、今から100年以上前の測量にさかのぼります。 ...

2026年9月14日 · ひぐらしさとし