個人事業から会社にする「法人成り」──設立登記の段取りと落とし穴

この記事の要点 「法人成り」とは、個人事業主が新たに会社を設立して事業を法人に引き継ぐことで、登記の手続きとしては通常の会社設立登記と同じ 資本金は現金だけでなく、車両・什器・在庫など事業用の財産を「現物出資」として組み込むこともできる 屋号をそのまま会社の商号にすることはできるが、契約・許認可・口座などの名義は別途ひとつずつ切り替える必要がある 会社の成立日は「登記を申請した日」。事業年度の初日や許認可の切替えタイミングとのズレが、思わぬ手続き漏れにつながる 税務上の損得(消費税・法人税の取扱いなど)は司法書士の業務範囲外。税理士にご相談ください 「個人事業を会社にしたい」と考えたとき、最後の仕上げになるのが会社の設立登記です。結論から言うと、法人成りの登記手続き自体は、これから起業する人がゼロから会社をつくるときの設立登記と変わりません。ただし、個人事業からの移行だからこそ気をつけたい論点──資産の引継ぎ方や名義の切替えなど──があります。ここでは、その段取りと見落としやすい点を整理します。 ...

2026年7月24日 · ひぐらしさとし

相続人が海外在住のとき──サイン証明・在留証明と遺産分割協議書への調印

この記事の要点 相続人の中に海外在住の方がいても、遺産分割協議書は他の相続人と同じように作成できる 海外在住者は住民登録がないため印鑑証明書を取得できず、代わりに在外公館(大使館・総領事館)で「サイン証明(署名証明)」を取得する 住民票の代わりには「在留証明書」を使う 在外公館での手続きは予約制・本人出頭が原則で、日本国内より時間がかかることを見込んでおく 協議内容そのものでもめている場合は、司法書士の対応範囲を超えるため弁護士へ相談する場面になる 「相続人の一人が海外に住んでいて、日本の実印も印鑑証明書も持っていない」──こうした相続は珍しくありません。結論から言うと、相続人に海外在住者がいても、遺産分割協議書を作ること自体はできます。ただし、日本国内にいる相続人と同じ方法(実印+印鑑証明書)は使えないため、代わりの手続きが必要になります。この記事では、その代わりの手続きである「サイン証明(署名証明)」と「在留証明」を中心に、海外在住の相続人がいるときの進め方を整理します。 ...

2026年7月24日 · ひぐらしさとし

成年後見人になったら何をする?財産管理と家庭裁判所への報告の流れ

この記事の要点 成年後見人になったら、まず本人の財産を調べて「財産目録」を作ることから始まる 財産目録ができるまでの間は、急を要する行為を除き代理権の行使が制限される その後は日常の財産管理を行いながら、家庭裁判所へ定期的に事務の状況を報告する 「成年後見人に選ばれたら、すぐに本人の財産を自由に動かせるのだろうか」——制度を調べ始めた方から、こうした疑問を伺うことがあります。実際には、就任後すぐに自由な財産管理が始まるわけではなく、まず財産を確定させる手続きを経てから、家庭裁判所の目が届く形で事務が続いていきます。本記事は、執筆時点(2026年07月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年7月23日 · ひぐらしさとし

内容証明郵便の使い方|貸したお金や未払い代金の督促でできること・できないこと

この記事の要点 内容証明郵便は、日本郵便が「いつ・誰が・誰に・どんな内容の文書を送ったか」を証明する郵便の仕組みで、それ自体に相手へ支払いを強制する法的効力はない 消滅時効が迫っている債権では、内容証明郵便による催告で時効の完成を6か月間だけ先延ばしできるが、その間に訴訟等の法的手続きに進まなければ効力は失われる 相手が任意に支払わない場合は、支払督促・少額訴訟・通常訴訟・民事調停など次の法的手続きを検討する必要がある 貸したお金や取引先の未払い代金を回収したいとき、まず内容証明郵便を送ろうと考える方は少なくありません。ですが、内容証明郵便がどこまでの効果を持つ手続きなのかは、意外と正確には知られていません。この記事では、内容証明郵便の法律上の位置づけと、金銭トラブルで使われる場面、そして送っただけでは解決しない限界を整理します。 ...

2026年7月23日 · ひぐらしさとし

「株主リスト」とは──登記のたびに求められる書類と株主名簿との違い

「増資の登記なのに、なぜ株主全員の一覧のような書類を出すのですか」──商業登記の相談で、経営者からよくいただく疑問です。実はこの書類、会社が備え置く株主名簿そのものではなく「株主リスト」という、登記の添付書面としてまったく別の役割を持つ書類です。株主リストは、株主総会の決議や株主全員の同意が適法に成立したことを法務局に示すための証明書類であり、日常的に備え置く株主名簿とは作成目的も記載範囲も異なります。 ...

2026年7月23日 · ひぐらしさとし

内縁の妻・事実婚パートナーに相続権はない──遺言・生命保険・生前贈与でできる備え

この記事の要点 内縁の妻・事実婚のパートナーには、法律上の相続権が一切ない(民法890条の「配偶者」は法律上の婚姻届を出した夫婦に限られる) 何も対策をしないまま亡くなると、財産は法律上の相続人(子・親・兄弟姉妹など)に渡り、内縁パートナーには当然には一切渡らない 遺言(遺贈)・死因贈与契約・生命保険の受取人指定・生前贈与など、生前にできる備えは複数ある どの方法にも一長一短があり、ほかの相続人の遺留分や税負担も考えたうえで選ぶ必要がある まずは今の家族関係を整理し、お近くの司法書士に相談して備えを検討するのが第一歩 長年連れ添っていても、婚姻届を出していない「内縁の妻・夫」「事実婚のパートナー」には、法律上の相続権がありません。これは、同居期間の長さや生計をともにしてきた実態とは関係なく決まるルールです。 ...

2026年7月23日 · ひぐらしさとし

「以上・以下」と「超える・未満」の違い──境界の数字を含むか含まないかで読み分ける【会社法の条文で解説】

この記事の要点 「以上」「以下」は、境界となる数字(基準の数)そのものを含む 「超える」「未満(=満たない)」は、基準の数を含まない 「過半数」は「半数を超える」という意味で、ちょうど半分では足りない 法律の条文には、「〜以上」「〜以下」「〜を超える」「〜未満」といった数の区切りがよく登場します。日常会話ではどれもあいまいに使いがちですが、条文では基準となる数そのものを含むか含まないかがきっちり決まっています。結論から言うと、「以上」「以下」は基準の数を含み、「超える」「未満」は含みません。 ...

2026年7月22日 · ひぐらしさとし

登記申請の『取下げ』と『却下』はどう違う?──不備が直せないときの二つの道

この記事の要点 登記の名義変更などで不備が見つかり、補正でも直せないときは、手続きが「取下げ」か「却下」に分かれる 取下げは申請した人が自分から引っ込めること、却下は法務局が「この申請は受け付けられない」と判断すること どちらになるかで、納めた登録免許税の扱いなどが変わることがある 不動産や会社の登記を申請したあと、書類の不備が見つかることがあります。多くはその場での訂正(補正)で直せますが、なかには補正では直しきれない不備もあります。そのときに登場するのが「取下げ(とりさげ)」と「却下(きゃっか)」です。結論から言うと、取下げは申請した側から引っ込めること、却下は法務局が受け付けを認めないと判断することで、同じ「登記できなかった」でも中身が違います。 ...

2026年7月22日 · ひぐらしさとし

監査役の任期は4年──取締役と違う任期ルールと変更登記

この記事の要点 監査役の任期は原則4年(取締役は原則2年)。任期の数え方は「選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」(会社法336条1項) 非公開会社(株式譲渡制限会社)は、定款の定めによって監査役の任期を最長10年まで伸長できる(会社法336条2項) 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社は、そもそも監査役を置くことができない(会社法327条4項) 同じ人がそのまま監査役を続ける場合も、任期満了のたびに「重任」の変更登記が必要 変更登記は変更が生じてから2週間以内(会社法915条1項)。放置すると過料の対象になり得る(会社法976条1号) 「監査役は特にすることがないから、任期も取締役と同じでいいだろう」——中小企業の経営の現場では、こうした思い込みをよく見かけます。しかし会社法上、監査役の任期は取締役の任期とは別のルールで決まっており、任期の長さも計算方法も異なります。取締役の任期管理はできていても、監査役の任期だけがうっかり見落とされ、登記懈怠(けたい=申請を怠ること)につながるケースは少なくありません。 ...

2026年7月22日 · ひぐらしさとし

再婚家庭の相続──前婚の子・連れ子・養子縁組で相続人の範囲はどう変わる?

この記事の要点 前婚の子(前の配偶者との間に生まれた子)は、同居の有無や交流の有無に関わらず、法律上当然に相続人になる 連れ子(再婚相手が前の関係で授かった子)は、養子縁組をしない限り、どれだけ長く同居していても相続人にはならない 養子縁組(普通養子縁組)をすると、連れ子は実子と同じ割合で相続人になる。ただし実親側の相続権も残る「二重の相続権」を持つ 前婚の子・現在の配偶者との間の子・養子縁組をした連れ子は、原則としてすべて頭割りで法定相続分を分け合う 相続人の範囲があいまいなまま放置せず、確定作業に不安があれば早めにお近くの司法書士にご相談ください 再婚をしている家庭の相続では、「誰が相続人になるのか」の見極めが、初婚同士の家庭よりも複雑になりがちです。結論から言うと、判断の基準は血のつながり、または法律上の親子関係の有無であり、一緒に暮らしていたかどうかではありません。この記事では、前婚の子・連れ子・養子縁組それぞれについて、相続人になるかどうかの制度上の違いを整理します。 ...

2026年7月22日 · ひぐらしさとし