実質的支配者リストとは──法務局が保管・写しを交付する制度と、銀行から求められる場面

この記事の要点 実質的支配者リストは、株式会社が作成した「実質的支配者(会社を実質的に支配する個人)」の一覧を、本店所在地を管轄する法務局が添付書面と照らし合わせて確認・保管し、登記官の認証文付きの写しを交付する制度です(令和4年1月31日開始) 株式会社の場合、原則として議決権の2分の1(50%)を超えて持つ個人、そのような人がいなければ4分の1(25%)を超えて持つ個人が、この制度の対象となる実質的支配者です 手数料は無料で、窓口のほか郵送でも申出ができます。株主名簿の写しなど、リストの内容を裏付ける書面の添付が必要です 銀行などは法人口座の開設時などに「取引時確認」として実質的支配者を確認します。リストの写しはその場面で使える資料の一つですが、受け付けるかどうかや、どの書類を求めるかは金融機関ごとに異なるため、提出先に確認しましょう 制度の利用は義務ではなく、会社の任意です(執筆時点・2026年10月の制度) 実質的支配者リストとは、会社の「本当の持ち主」に当たる人を会社自身が一覧にまとめ、それを法務局が確認したうえで保管し、写しを出してくれる仕組みです。結論からいうと、会社に利用が義務づけられている制度ではありませんが、銀行で法人口座を開くときなどに実質的支配者を説明する資料の一つとして使える場合があります。以下、制度の中身、誰が実質的支配者に当たるのか、申出の方法、銀行で求められる場面の順に整理します。 ...

2026年10月6日 · ひぐらしさとし

数次相続の登記申請書の書き方──祖父名義のまま父も亡くなったとき「中間省略」で1件にできる場合・できない場合

この記事の要点 祖父名義の不動産について、相続登記をしないうちに父も亡くなった場合でも、途中の相続(祖父から父への相続)で取得した人が1人に決まっていれば、父名義の登記を省いて、1件の申請で最終の相続人名義にできます(いわゆる中間省略)。 途中の相続で2人以上が取得している場合は、1件にはできず、「祖父から相続人たちへ」「父の持分を父の相続人へ」の2件に分けて申請します。 1件で申請するときは、原因欄に「祖父が亡くなった日と父の氏名」「父が亡くなった日」の2つの相続を併記します。 2026年10月5日以降の申請は、「国籍等」の欄などが加わった新しい様式を使います。 1件にできるかどうかは家族関係と書類しだいで決まります。当てはめに迷ったら、お近くの司法書士にご相談ください。 この記事は、祖父(または祖母)名義のままの不動産について、ご自身で相続登記の申請書を作ろうとしている方に向けて、数次相続(すうじそうぞく)のときの申請書の組み立て方に絞って説明します。数次相続とはどういう状態で、放置すると何が厄介になるのかは、数次相続の落とし穴で解説しています。また、申請書の各欄(登記の目的・課税価格・不動産の表示など)の基本的な書き方は、相続登記申請書の書き方で説明していますので、ここでは繰り返しません。 ...

2026年10月6日 · ひぐらしさとし

家族を亡くしたばかりで気持ちが追いつかないときの相続相談──つらさを伝えてよいこと、一度に全部話さなくていいこと

この記事の要点 気持ちの整理がつかないまま相続の相談に行ってもかまいません。つらさや「今日はあまり話せないかもしれない」ことは、最初に伝えてよいことです 一度に全部を話したり決めたりする必要はありません。ただし、相続放棄の3か月のように期限のある手続きがあるかどうかだけは、早めに確かめておきたいところです 家族に代わりに話してもらう方法もありますが、手続きを正式に依頼するときは、原則として相続人本人の意思確認が欠かせません 家族を亡くしてまだ日が浅いうちは、手続きの話を聞くだけで涙が出たり、説明が頭に入ってこなかったりすることがあります。「こんな状態で相談に行ってよいのだろうか」とためらう方もいるかもしれません。結論からいえば、気持ちが追いついていないまま相談に行くことは、少しもおかしなことではありません。 ...

2026年10月5日 · ひぐらしさとし

相続税の未成年者控除・障害者控除とは──相続人が18歳未満や障害のある人のときに、税額から差し引かれる仕組み

この記事の要点 相続人が18歳未満のときは「未成年者控除」、85歳未満の障害者のときは「障害者控除」として、その人の相続税額から一定額が差し引かれる(相続税法19条の3・19条の4) 控除額は、18歳または85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円)で決まり、本人の税額から引ききれない分は扶養義務者の税額から差し引ける 以前の相続ですでに控除を受けている人は、今回差し引ける額が制限される 相続税には、財産を受け取った人の年齢や障害の有無に着目して、税額を軽くする仕組みがあります。相続人が未成年の場合の「未成年者控除」と、障害のある場合の「障害者控除」です。 ...

2026年10月5日 · ひぐらしさとし

印鑑カードを紛失したら?──会社の印鑑証明書の取り方と、廃止届・再発行・改印の手続き

この記事の要点 会社の印鑑証明書は、法務局が発行する「印鑑カード」がないと取れません(窓口・郵送・証明書発行請求機ではカードを使い、オンライン請求で窓口受取を選んだ場合も受取時に提示します。オンライン請求で送付を選ぶ場合は、カードの提示に代えて印鑑カード番号を送信します) 印鑑カードを紛失したら、本店所在地を管轄する法務局へ「印鑑カードの廃止届」と「新しい印鑑カードの交付申請」を出します。カードそのものの再発行という手続きはありません 代表者印(会社の実印)を変える・なくしたときは「改印届」。代表者個人の実印と、市区町村が発行した作成後3か月以内の印鑑証明書が必要です 印鑑証明書の手数料は、書面請求で1通500円、オンライン請求なら送付450円・窓口受取420円です(令和7年4月1日改定) 窓口では、印鑑カードがあれば委任状なしで代理人でも印鑑証明書を請求できるしくみのため、紛失に気づいたら早めに廃止の届出をしておくのが安全です 会社の印鑑証明書を取るときに欠かせないのが、法務局(登記所)が発行する印鑑カードです。結論からいうと、印鑑カードを紛失したときは「廃止届」と「新しいカードの交付申請」をセットで、本店所在地を管轄する法務局に出すのが基本の流れです。代表者印そのものを変える・なくした場合は、これとは別に改印届が必要になります。 ...

2026年10月5日 · ひぐらしさとし

相続登記の「不動産の表示」の書き方──登記事項証明書のどこを写す?持分・敷地権・私道の落とし穴

この記事の要点 申請書の「不動産の表示」は、登記事項証明書の表題部を、下線の引かれていない最新の記載のとおりに写す欄です。ふだんの住所(住居表示)や固定資産税の通知書から写すのではありません。 亡くなった方が持分(共有の割合)だけを持っていた場合でも、不動産の表示には土地全体の所在・地番・地目・地積を書きます。持分は、登記の目的や相続人の欄など、別の欄で表します。 建物の附属建物(物置・車庫など)、マンションの敷地権、家の前の私道は、書き漏れが起きやすい三大ポイントです。 書き終えたら、登記事項証明書・遺産分割協議書と1か所ずつ突き合わせます。判断に迷う点は、お近くの司法書士にご相談ください。 相続登記の申請書で、いちばん「写し間違い」と「書き漏れ」が起きやすいのが「不動産の表示」の欄です。結論からいうと、この欄は自分で考えて書く欄ではなく、登記事項証明書の表題部を、そのまま写し取る欄です。迷いが生じるのは、どの欄をどこへ写すのか、持分や私道はどう扱うのか、という対応関係が見えにくいためです。 ...

2026年10月5日 · ひぐらしさとし

家族が亡くなったら健康保険の届出は14日以内?──国保・後期高齢者医療・介護保険の手続きと保険証・資格確認書の扱い

この記事の要点 亡くなった方が国民健康保険に入っていた場合、世帯主が14日以内に市区町村へ資格喪失の届出をするのが基本です(国民健康保険法9条、同法施行規則12条・13条)。 後期高齢者医療と介護保険にも省令に「14日以内」の定めがありますが、亡くなった場合の運用は自治体ごとに違い、「死亡届で足りる」とする案内も、被保険者証などの返却を求める案内もあります。 従来の健康保険証は2025年12月1日で有効期限が終わっており、手元に残っている可能性があるのは資格確認書などです。返却のしかたは自治体の案内に従います。会社の健康保険に入っていた場合は、窓口が市区町村ではありません。 本記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。期限や必要書類は、制度や自治体によって異なります。 ...

2026年10月4日 · ひぐらしさとし

胎児は相続人になれる?──生まれる前の相続権と、手続で気をつけること

この記事の要点 胎児は、相続については「すでに生まれたもの」とみなされます(民法886条1項)。被相続人が亡くなった時にまだ生まれていない子も、相続の場面では子として扱われます ただし、胎児が死体で生まれたときは、このみなしは適用されません(同条2項)。生きて生まれるか、死体で生まれるかで、相続人の顔ぶれが変わります 胎児のうちは出生の届出がなく、戸籍にもまだ子の記載がないのが通常です。相続人を確認するときは、戸籍だけでは見えない子がいないかにも注意が必要です 執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。個別の事案の相続人や相続分の判断は、ここでは行いません。 ...

2026年10月4日 · ひぐらしさとし

発行可能株式総数とは──増資で足りなくなったときの定款変更と登記

この記事の要点 発行可能株式総数とは、その会社が発行できる株式の数の上限のことです。定款で定め、登記簿にも載ります(会社法37条1項・911条3項6号) 増資で新しい株式を出したいのに上限の空きが足りないときは、増資の手続の前に、上限を広げる定款変更(株主総会の特別決議)が必要です 上限を変えたら、変更が生じたときから2週間以内に、本店所在地の法務局で変更登記をします。登録免許税は1件3万円で、増資の登記と同じ申請書で出すときは増資分と合算されます 「発行済株式の総数の4倍まで」という制限は、公開会社(株式に譲渡制限がない会社)に関する規制です。株式の全部に譲渡制限がある会社が上限を増やす場合には、この制限は課されません(ただし、譲渡制限をやめるなどして公開会社になる定款変更をするときは、4倍以内に収める必要があります。会社法113条3項) 個別の会社の手続は、お近くの司法書士にご相談ください(増資に伴う税務は税理士へ) 結論から言うと、発行可能株式総数とは「その会社が発行できる株式の数の上限」のことです。増資で新しく株式を発行すれば、発行済みの株式の数は増えていきます。その数が上限に届きそうなとき、あるいはもう届いているときは、増資の手続を進める前に、上限そのものを広げる定款変更と、その変更登記が必要になります。 ...

2026年10月4日 · ひぐらしさとし

相続登記の添付書類チェックリスト──戸籍・住民票・協議書・印鑑証明書は、パターン別に誰の分が何通いるか

この記事の要点 相続登記の添付書類は、「①遺産分割協議で相続」「②法定相続分どおりに登記」「③遺言で相続」の3パターンで変わります。違いが出るのは、おもに戸籍の集め方、遺産分割協議書と印鑑証明書、遺言書の3か所です。 新しい所有者の住民票の写しと、固定資産課税明細書(申請する年度のもの)は、3パターンに共通して必要になります。 通数について、法務局の公開資料が「各1通」と明記しているのは印鑑証明書です。ほかの書類は「誰の分」までが示されていて、戸籍の通数は家族の状況で大きく変わります。この記事の通数は、一般的なパターン別の目安です。 戸籍の束は、法定相続情報一覧図の写しで置き換えられます。提出した戸籍の原本は、相続関係説明図を付けると返してもらえます。 必要な戸籍の範囲は家族関係で変わり、法務局の資料にも「上記以外にも必要な書類がある場合があります」と書かれています。申請前に、申請先の法務局へ事前に確認してください。 相続登記の必要書類は、「戸籍、住民票、印鑑証明書……と、結局どれが何通いるのか」が分かりにくいところです。この記事は、3つのパターンを一覧表で並べ、どの書類が、どのパターンで要るか、誰の分が何通かを一目で確認できるチェックリストにしたものです。 ...

2026年10月4日 · ひぐらしさとし