簡易裁判所はどこに申し立てる?|被告の住所地・義務履行地で決まる土地管轄の基本

この記事の要点 「どこの裁判所に出すか」は土地管轄の問題で、「いくらまでが簡易裁判所の担当か」という事物管轄とは別の物差しです 訴えの原則は、被告(訴えられる側)の住所などで決まる普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所です(民事訴訟法4条) 財産権上の訴えは義務履行地に、不動産に関する訴えは不動産の所在地にも起こせます(同5条1号・12号)。管轄を誤って出しても、原則は却下ではなく管轄裁判所への移送です(同16条1項) 訴えを起こすとき、書類をどこに出すかは、2つの物差しの組み合わせで決まります。1つは「どの種類の裁判所か」(事物管轄)、もう1つは「全国のどの地の裁判所か」(土地管轄)です。この記事で扱うのは後者の土地管轄です。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし

準確定申告とは──誰が、どこの税務署へ出すのか(亡くなった方の所得税・詳細は税理士へ)

この記事の要点 準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)のその年の所得税について、相続人が代わりに行う確定申告のことです 申告する義務を負うのは相続人で、包括受遺者(遺言で遺産の全部または割合で財産を受け取る人)も同じ立場に立ちます 相続人が2人以上いるときは、付表を添えて全員が連署した1通を出すのが原則で、他の相続人の氏名を付記して各別に出すこともできます 提出先は「被相続人の死亡当時の納税地」を所轄する税務署です。相続人自身の住所地の税務署ではありません 相続放棄をした人は、民法939条により初めから相続人でなかったものとみなされるため、相続人としての申告義務を負いません 申告が必要かどうかの判断・税額の計算・申告書の作成は税理士の専門分野です。具体的な内容は税理士にご相談ください 結論から言うと、準確定申告で最初につまずきやすいのは「4か月」という期限そのものよりも、誰が申告する立場なのかとどこの税務署に出すのかという2点です。とくに提出先は、相続人が住んでいる場所の税務署ではなく、亡くなった方が亡くなった当時の納税地を所轄する税務署になります。ここを取り違えると、期限を意識していても手続きが空回りしてしまいます。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし

実家じまいの進め方──売る・貸す・住む・手放すの4択と登記

この記事の要点 実家じまいの選択肢は「売る・貸す・住む・手放す」の4つ。どれを選んでも、相続登記で名義を相続人に移すことが出発点になります 相続登記は義務です。取得を知った日から3年以内に申請しなければならず(不動産登記法76条の2第1項)、正当な理由がないのに怠ると10万円以下の過料の対象になります(同法164条1項) 「手放す」=相続土地国庫帰属制度は土地だけの制度で、建物が建ったままでは申請できません(相続土地国庫帰属法2条3項1号)。承認申請そのものを専門家に代理してもらうことはできないとされています 「貸す」には期間を区切る「定期借家」という選択肢があります(借地借家法38条)。ただし賃料の設定や契約内容の設計は不動産の専門家の領域です 「何もしない」は5つ目の選択肢に見えて、実際には登記の義務も空き家の管理責任も残ったままになります 親が住んでいた家をこの先どうするか。いわゆる「実家じまい」で最初に決めるのは、売る・貸す・住む・手放すのどれを選ぶか、という4択です。そして4つのどれを選んだ場合でも、共通して先にやることが1つだけあります。相続登記で名義を親から相続人に移すことです。名義が親のままでは、買主への所有権移転登記を入れることも、貸主として誰が契約するのかをはっきりさせることもできません。国に引き取ってもらう場合も、名義を整える義務そのものは別に残ります。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし

「対抗することができない」とは──「登記がないと主張できない」の意味を条文で読む【不動産登記の条文で解説】

この記事の要点 条文の「対抗することができない」は、「無効になる」という意味ではない 「当事者の間では有効だが、当事者以外の一定の人(第三者)に向かっては権利を主張できない」という意味 不動産について定める民法177条では、登記が「第三者に対抗する」ための条件(対抗要件)とされている 法律の条文には、「第三者に対抗することができない」という言い回しがくり返し出てきます。日常語の「対抗」は、張り合う・対決するといったイメージですが、法律の世界では意味が違います。結論から言うと、「対抗する」は「権利や出来事を、相手に向かって主張して認めさせる」という意味で、「対抗することができない」は「当事者の間では有効だが、当事者以外の人(第三者)には主張できない」ことを表します。これを「無効」と読み違えると、条文の意味を大きく取り違えてしまいます。 ...

2026年8月11日 · ひぐらしさとし

登記の『連件申請』とは?──同じ不動産で複数の登記を続けて出すしくみ

この記事の要点 連件申請とは、同じ不動産について二つ以上の登記を、前後の順番がわかるようにして同時に申請する扱いの実務上の呼び名 前の登記で名義人になる人が後の登記で権利を渡す側になるときは、後の登記に必要な登記識別情報を「提供されたものとみなす」定め(不動産登記規則67条)があり、前の登記の完了を待たずに申請できる 前の申請が取下げ・却下になると、後の申請もそのままでは登記できなくなるため、書類は最初に一度でそろえておく必要がある 不動産の売買や相続の手続きで、司法書士から「この登記とこの登記を連件(れんけん)で出します」と言われることがあります。結論から言えば、「連件申請」とは、同じ不動産について複数の登記の申請を、どちらが先でどちらが後かをはっきりさせたうえで同時に法務局へ出す扱いのことです。なお、これは実務で使われている呼び名で、不動産登記法・不動産登記令・不動産登記規則の条文に「連件」という言葉が出てくるわけではありません。 ...

2026年8月11日 · ひぐらしさとし

遺言書保管制度の「通知」を使いこなす──関係遺言書保管通知と指定者通知のちがい

この記事の要点 法務局に預けた遺言書についての通知は2種類。「関係遺言書保管通知」と「指定者通知(遺言者が指定した方への通知)」で、届くきっかけがまったく違う 関係遺言書保管通知は、相続人などの誰か1人が閲覧や証明書の取得をしたときに、ほかの関係者へ届く。特別な申込みは不要 指定者通知は、遺言者が生前にあらかじめ指定した人へ届く。執筆時点(2026年8月)で3名まで指定でき、遺言者が希望した場合にだけ実施される どちらの通知にも、遺言書の「中身」は書かれていない。届いたら遺言書保管所で閲覧か遺言書情報証明書の請求をする 誰も動かなければ関係遺言書保管通知は届かない。だからこそ、保管申請のときに指定者通知を申し込んでおく意味がある 法務局に遺言書を預けたあと、その遺言書の存在は家族にどうやって伝わるのでしょうか。答えは「2種類の通知」です。ひとつは相続人などの誰かが動いたときに届くもの、もうひとつは遺言者が生前に指名した人へ届くもの。この2つは、届くきっかけも、事前の手続の要否もまったく違います。 ...

2026年8月11日 · ひぐらしさとし

実家の登記簿を取ってみよう──帰省中にできる「実家の健康診断」5つのチェック

この記事の要点 帰省中に実家の登記事項証明書(登記簿)を1通取れば、名義・共有・担保は短時間で点検できる(私道の持分とほかの不動産の有無は、別に証明書を取って確かめます) 見るのは5か所──①名義は今も親のままか ②いつの間にか共有になっていないか ③完済した抵当権が残っていないか ④私道の持分が漏れていないか ⑤ほかにも名義の不動産がないか 名義が親や祖父母のままなら、相続で取得したことを知った日から3年以内に登記を申請する義務があります(不動産登記法76条の2第1項) 費用は登記事項証明書が1通600円(オンライン申請なら490円から)、所有不動産記録証明書が1通1,600円(オンライン申請なら1,470円から。いずれも登記手数料令) 気になる点が見つかったら、名義のことは司法書士、境界や面積のことは土地家屋調査士へ 帰省で実家に戻る機会があるなら、登記事項証明書(登記簿)を取って、5か所だけ目を通しておくことをおすすめします。名義・共有・担保という、あとになって手続きが必要だと分かりやすいポイントは、実家の宅地・建物の証明書1通でおおよその見当がつきます。残る私道の持分とほかの不動産の有無は、別に証明書を取ることになりますが、その必要に気づくきっかけになるのも、やはりこの1通です。 ...

2026年8月11日 · ひぐらしさとし

相続した実家が借地権だった──慌てないための手続きと地主への対応

この記事の要点 借地権(土地を借りて建物を建てる権利)は相続財産として当然に引き継がれ、地主の承諾は不要。承諾料(名義書換料)を支払う法律上の義務もない 土地の名義変更は不要だが、建物の相続登記は必要。相続で取得を知った日から3年以内の申請が義務(怠ると10万円以下の過料の対象) 地代の支払いはそのまま相続人が引き継ぐ。滞納すると契約解除のリスクがあるので、支払方法の確認を最優先に 借地契約書を探して、契約の種類(普通借地権か定期借地権か)と特約を確認する 売却や建て替えなど「次の一手」には地主の承諾が必要になる場面がある。もめたときの交渉・紛争対応は弁護士の分野 親が亡くなり、実家の登記簿(登記事項証明書)を取ってみたら、土地の所有者欄に知らない人の名前が載っていた——。実は、実家は「借地」の上に建っていた、というケースは珍しくありません。 ...

2026年8月10日 · ひぐらしさとし

相続の初回相談では何を聞かれる?──聞き取りの一般的な流れ

この記事の要点 初回相談では、家族構成・これまでの経緯・分かっている財産の状況・困りごとや希望、といった項目を順に聞かれるのが一般的な流れ 答えられない項目があっても相談は成立する。「分からない」とそのまま伝えてよい 聞く順番や項目は事務所や相談内容によって多少異なる。ここで紹介するのはあくまで一般的な目安 「相談に行ったら、いきなり難しいことを聞かれるのではないか」——初めて相談する方の不安として、これはよくあるものです。結論から言うと、初回相談は事実を一つずつ確認しながら状況を把握していく聞き取りが中心で、事前に完璧な答えを用意しておく必要はありません。一般的な流れの目安を知っておくだけで、当日の身構えはかなり軽くなります。 ...

2026年8月10日 · ひぐらしさとし

相続で共有名義にした不動産の固定資産税、誰が払う?──連帯納税義務と『代表者』のしくみ

この記事の要点 共有名義の不動産の固定資産税は、持分の割合にかかわらず共有者全員が全額について連帯して納める義務を負う(地方税法10条の2) 納税義務者は毎年1月1日(賦課期日)時点の所有者(同法343条1項・2項、359条)。登記簿や課税台帳上の所有者が賦課期日より前に亡くなっているときは、相続登記が済んでいなくても、その日に不動産を現に所有している相続人が納税義務者とされる(同法343条2項後段) 実務上は共有者の中から「代表者」が定められ、その代表者あてに納税通知書がまとめて送られるが、代表者だけが法的な納税義務を負うわけではない 相続で不動産を兄弟姉妹などと共有名義にすると、「持分に応じて、それぞれ別々に納税通知書が届いて、自分の持分の分だけ払えばいい」と考えている方が少なくありません。しかし、固定資産税に関する限り、この理解は正確ではありません。 ...

2026年8月10日 · ひぐらしさとし