親が施設に入ったら実家はどうする?──売却を阻む「意思能力」の壁

この記事の要点 実家の名義人(親)の意思能力が失われると、本人が売買契約を結ぶことも登記手続きを委任することもできなくなり、実家は「売れない不動産」になる 意思能力を失ったあとに売却するには、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい、居住用不動産の処分については家庭裁判所の許可(民法859条の3)を別途得る必要がある 元気なうちに家族信託を設計しておけば、あらかじめ定めた範囲で受託者が実家を管理・売却でき、売却のたびに家庭裁判所の許可を得る手間がかからない 成年後見も家族信託も、選べるのは本人に意思能力があるうちだけ。判断能力が失われてからでは家族信託は組めない 制度ごとに費用・手続きの流れが異なるため、実家をどうするか迷ったら早めにお近くの司法書士にご相談ください 結論から言うと、親御さんが施設に入所したあと空き家になった実家を売ろうとしても、名義人である親御さん本人の「意思能力」が失われていると、そのままでは売却できません。意思能力とは、自分がしようとしている行為の内容や結果を理解し、判断できる能力のことです。不動産の売買は法律上の契約であり、契約を結ぶには意思能力が前提になります。 ...

2026年8月15日 · ひぐらしさとし

相続の初回相談、どれくらい時間を見ておけばいい?──当日の時間の使い方

この記事の要点 初回相談にどれくらい時間がかかるかは事務所や相談内容によって幅があり、共通の決まった時間はない 聞きたいことや持参できる書類を事前に整理しておくと、限られた時間を有効に使える 時間内に話が終わらなくても、その場で無理に結論を出す必要はなく、日をあらためて相談することもできる 「相続の相談に行きたいが、どれくらい時間を空けておけばいいか分からない」と、予約の前に迷う方は少なくありません。結論から言うと、初回相談にかかる時間は事務所や相談内容によって幅があり、決まった標準時間があるわけではありません。移動時間も含めて、その日の予定に余裕を持たせておくと安心です。 ...

2026年8月14日 · ひぐらしさとし

登録免許税はなぜ『固定資産税評価額』で計算されるの?──条文上の原則は『時価』という話

この記事の要点 登録免許税法10条1項は、課税標準を「登記の時における不動産等の価額」と定めており、この価額は一般に時価(その時点の客観的な価値)を指すと理解されている 附則7条の「当分の間」の特例により、実務では原則として固定資産課税台帳に登録された価格(固定資産税評価額)が用いられている 相続税評価額や実勢価格とは基準が異なるため、混同すると見積りや税額の見込みがずれる 相続登記や不動産の売買登記を依頼すると、司法書士から「固定資産税評価額を教えてください」と聞かれることがあります。実際に売買した金額(実勢価格)を伝えているのに、なぜ別の評価額を使うのか、疑問に思われる方は少なくありません。 ...

2026年8月14日 · ひぐらしさとし

未支給年金とは?亡くなった月の年金は誰が受け取れる――遺族の範囲と相続財産との違い

この記事の要点 亡くなった月分などまだ支払われていない年金は「未支給年金」として、一定範囲の遺族が請求できます(国民年金法19条1項、厚生年金保険法37条1項)。 未支給年金は遺産分割の対象になる相続財産ではなく、条文上「自己の名で」請求する、受け取る遺族固有の権利とされています。 亡くなった後は、市区町村への死亡届とあわせて年金の手続きが必要です。日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合、年金側の死亡届(報告書)は原則として提出不要ですが、未支給年金の請求は別に必要です。請求書の書き方や必要書類など具体的な手続きは、年金事務所・街角の年金相談センターが窓口です。 年金を受け取っていた方が亡くなると、「亡くなった月の年金はどうなるのか」という疑問が必ず出てきます。結論から言うと、年金は後払いの仕組みのため、亡くなった時点でまだ振り込まれていない分がほとんどの場合残ります。これが未支給年金です。相続財産に含めて遺産分割で分けるものではなく、一定範囲の遺族が請求すれば受け取れるお金として、法律上別枠で扱われています。 ...

2026年8月14日 · ひぐらしさとし

実家を兄弟の共有名義にしてはいけない理由──共有にする前に知っておきたい3つのリスク

この記事の要点 実家を「とりあえず」兄弟の共有名義にすると、①次の相続で共有者がねずみ算式に増える ②売却に共有者全員の同意が必要になる ③管理費・固定資産税の負担分担で揉めやすい、という3つのリスクを抱える 共有名義は一見「平等」に見えるが、名義を分けた時点で財産そのものは分かれておらず、権利関係が複雑なまま先送りされているだけの状態になる 共有名義にする前に、現物分割・代償分割・換価分割など他の分け方も検討したい。お近くの司法書士にご相談ください 親が亡くなり実家を相続するとき、「きょうだい3人で3分の1ずつ、共有名義にしておこう」という選択をする人は少なくありません。誰か一人だけが名義を持つより公平に見えますし、話し合いも「とりあえず全員の名前を登記簿に載せておく」だけで済むため、揉めずに済んだ気になりやすいからです。 ...

2026年8月14日 · ひぐらしさとし

法定相続情報一覧図の保管期間は5年──写しの再交付が無料でできる期限を確認する

この記事の要点 法定相続情報一覧図は、保管の申出をした日の翌年から起算して5年間、登記所(法務局)に保管される 保管期間内であれば、当初の申出書に申出人として名前を記載した人が、無料で写しの再交付を受けられる 5年を過ぎると再交付ができなくなるため、複数の手続きにまたがって使う予定がある案件ほど、期限を意識した管理が必要になる 法定相続情報一覧図は、戸籍の束を1枚にまとめて法務局の認証を受ける書類で、相続登記や預貯金の解約など複数の手続きに使い回せる点が便利です。ただしこの一覧図、登記所に「ずっと」保管されているわけではありません。保管期間には期限があります。 ...

2026年8月13日 · ひぐらしさとし

養子縁組があると戸籍はどう動く?──相続で実方の戸籍までさかのぼる理由

この記事の要点 養子縁組をすると、養子は原則として養親の戸籍に入り(戸籍法18条3項)、それまでいた実父母の戸籍からは除籍される 被相続人の戸籍を死亡から出生までさかのぼる作業で「養子」の記載に行き当たったら、その戸籍だけでは足りず、縁組前に在籍していた実方の戸籍も別途取得する必要がある 普通養子縁組は実方との親族関係が続くため実方の血族も相続人になりうるが、特別養子縁組では原則として実方との親族関係が終了し、相続人の範囲が変わる(連れ子を特別養子とした場合の例外あり) 結論から言うと、養子縁組があると戸籍は「乗り換え」が起きます。養子は養親の戸籍に入るのが原則で(戸籍法18条3項「養子は、養親の戸籍に入る。」)、氏も養親の氏を称します(民法810条本文)。戸籍は一人につき一つの籍に在籍する仕組みですから、養親の戸籍に入るということは、それまで在籍していた実父母の戸籍からは除籍される、ということでもあります。なお、これには例外があり、婚姻によって氏を改めた人は、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は養親の氏を称しません(民法810条ただし書)。戸籍はもともと、同じ氏を称する夫婦とその子を単位として編製される仕組みですから、縁組をしても氏が変わらないのであれば、養親の戸籍に入ることにもなりません。たとえば妻の氏を称して婚姻した夫が妻の父母の養子となる、いわゆる婿養子の縁組では、夫婦の戸籍に在籍したままとなり、縁組の事実はその戸籍の身分事項欄に記載されるだけで、戸籍の「乗り換え」は起きません。 ...

2026年8月13日 · ひぐらしさとし

亡くなった方の銀行口座を解約するには──凍結から相続手続き完了までの流れ

この記事の要点 銀行は名義人の死亡を知った時点で口座を凍結し、以後は相続人であっても自由に出金できなくなる 解約・払い戻しには戸籍一式や遺産分割協議書など複数の書類が必要で、金融機関への連絡から完了まで数週間から数か月かかることが多い 口座数が多い場合は法定相続情報証明制度を使うと、戸籍の束を出し直す手間を減らせる 銀行口座の名義人が亡くなると、口座は解約や払い戻しの手続きを経て初めて相続人が受け取れる状態になります。それまでの間、口座は「凍結」され、家族であっても自由に引き出すことはできません。ここでは、凍結が始まるタイミングから解約完了までの一般的な流れを整理します。 ...

2026年8月13日 · ひぐらしさとし

空き家を相続したら──『特定空家』に指定される前に知っておくこと

この記事の要点 空き家を放置すると、空家等対策特別措置法にもとづき「特定空家」または「管理不全空家」に指定されることがある 指定後は助言・指導→勧告→命令→行政代執行と段階が進む(命令・行政代執行まで進むのは特定空家のみ) 特定空家・管理不全空家のどちらも、勧告を受けると土地の固定資産税の軽減(住宅用地の特例)が受けられなくなる 相続登記をして名義を明確にしておくことが、放置状態を防ぐ第一歩になる 空き家をどうするか(売る・貸す・住む・手放す)は早めに方針を決めておくと選択肢が広い 実家を相続したものの誰も住まず、片付けも先延ばしにしている──というケースは珍しくありません。しかし空き家をそのまま放置していると、市区町村から「特定空家(とくていあきや)」や「管理不全空家(かんりふぜんあきや)」に指定されることがあります。指定されると、行政からの勧告や命令の対象になり、最終的には行政が代わって解体する「行政代執行(ぎょうせいだいしっこう)」に至ることもあります。この記事では、指定される前に知っておきたい制度の仕組みと、放置した場合に何が起きるかを整理します。 ...

2026年8月13日 · ひぐらしさとし

本人情報シートは誰が書く?──成年後見の申立てで使う診断書とのちがい

この記事の要点 「本人情報シート」を作成するのは、ケアマネジャー(介護支援専門員)や相談支援専門員など、本人を職務上の立場から支援している福祉関係者。「親族や本人が作成することは想定していません」と裁判所の手引に明記されている 「診断書(成年後見制度用)」を作成するのは医師。本人情報シートは、その医師が診断するときの「補助資料」という位置づけ 後見・保佐・補助のどの類型になるかを判断するのは家庭裁判所。後見・保佐では原則として鑑定が必要とされ、その要否を判断するのも家庭裁判所。補助は鑑定ではなく医師その他適当な者の意見を聴く仕組みで、いずれも書類を出す側が選べるものではない 成年後見の申立てを調べていくと、「診断書」と「本人情報シート」という2つの書類が出てきます。どちらも本人の状態を伝える書類なので混同されがちですが、書く人も、果たす役割も別の書類です。診断書は医師が書き、本人情報シートは本人を支えている福祉関係者が書きます。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし