登記簿に「差押」と書いてあったら──税金の滞納・強制執行・競売の入口を読み解く

この記事の要点 登記簿(登記事項証明書)の甲区にある「差押」は、所有者が申請した登記ではなく、差押えをした税務署・自治体や裁判所の側が法務局に頼んで(嘱託して)入れる登記です 誰が差し押さえたかは、「原因」欄と「債権者」などの欄で読み分けます。裁判所の強制競売なら原因欄に「何地方裁判所(支部)強制競売開始決定」と記録され(担保不動産競売も裁判所の開始決定にもとづく差押えです)、税金の滞納処分なら、国税は財務省、地方税は差押えをした都道府県・市区町村が登記上の権利者になります 差押えの登記が入っても、それだけで所有者が変わるわけではありません。ただし放置すると、公売(税金)や競売(裁判所)で売却される手続に進むことがあります 記載が消える道筋は、①税金の完納などによる差押えの解除、②競売の取下げ・取消し、③競売での売却、④公売での売却の4つが代表的で、原則として差押えや売却の手続をした税務署・自治体や裁判所の側の嘱託で抹消されます 登記簿に「差押」の文字を見つけたら、まず確かめたいのは「誰が、何を理由に差し押さえたのか」です。結論からいうと、その答えは甲区の「権利者その他の事項」欄に書かれている原因と債権者などの名前を見ればおおよそ分かります。差押えの主体は大きく分けて、国(国税)、都道府県や市区町村(地方税)、裁判所(強制競売・担保不動産競売)の3つで、主体によってその後の流れも、記載が消えるまでの道筋も変わります。 ...

2026年10月27日 · ひぐらしさとし

相続登記の遺産分割協議書や遺言書は法務局で見られる?──相続人による「登記簿の附属書類」の閲覧

この記事の要点 相続登記のときに法務局へ出された遺産分割協議書や遺言書は「登記簿の附属書類」として保存されており、その相続の相続人が相続の経緯などを確かめるためであれば、争いが起きていなくても閲覧を請求できる扱いです(令和5年3月28日民二第537号通達)。 閲覧の請求では、その相続の当事者であることを示す戸籍関係の書類と、本人確認書類を見せます。手数料は1事件に関する書類につき500円です(登記手数料令5条1項)。 申請書と添付書類の保存期間は、受付の日から30年間です(不動産登記規則28条)。ウェブ会議での閲覧が認められる場合もあります。 「祖父が亡くなったとき、どんな遺産分割協議書で父の名義になったのか確かめたい」。こうしたときに使えるのが、法務局に保存されている登記の申請書や添付書類(登記簿の附属書類)の閲覧です。結論から言うと、その相続の相続人が相続の経緯などを確かめるためであれば、その相続に関する附属書類の閲覧を請求できる扱いになっています。ただし、見られる範囲には限りがあり、手続きにも決まりがあります。 ...

2026年10月26日 · ひぐらしさとし

登記簿の「信託目録」の読み方──家族信託された不動産を売る・相続するときに見る欄

この記事の要点 信託目録とは、信託された不動産について、委託者・受託者・受益者や、信託の目的・管理方法・終了の事由などを記録した登記簿の一部です 登記事項証明書は、請求のときに信託目録の証明を求めないと、信託目録の記載が省かれます(手数料は窓口・郵送の書面請求で1通600円) 受託者から不動産を買う・担保に取るときは、受託者の処分の権限にかかわる定め(信託財産の管理方法・その他の信託の条項)を見ます 受益者や委託者が亡くなったときは、信託の終了の事由・受益者の定め・残余財産を受け取る人の定めを順に見ます 読み方に迷うときや、目録の記録が今の状況と合わないときは、お近くの司法書士に確認しましょう 信託目録とは、家族信託などで信託財産になった不動産について、「誰が、誰のために、どんな目的で、どう管理し、いつ終わるのか」を記録した、登記簿の一部です。甲区(所有者の欄)を見ると名義人は受託者になっていて、その名義が信託によるものであることは甲区の記録から分かりますが、信託の中身は、信託目録を見て初めて分かります。 ...

2026年10月26日 · ひぐらしさとし

登記の「抹消」と「更正」はどう違う──消す・直す・戻す、3つの手段の使い分け

この記事の要点 登記が終わった後に誤りや無効が分かったときの直し方は、主に抹消(消す)・更正(直す)・真正な登記名義の回復(本当の持ち主へ名義を戻す)の3つです。 見分けの軸は、①誤りが登記した時点からあったか、②直した後も同じ登記といえるかの2つです。名前の字や持分の割合のように一部だけ直せば足りるなら更正、登記そのものが成り立たないなら抹消が基本です。 抹消には、抵当権を持つ銀行など登記上の利害関係を有する第三者の承諾が必要です(不動産登記法68条)。承諾が得られない場合などに、名義を移す形で直す「真正な登記名義の回復」が使われることがあります。 登録免許税は、抹消が不動産1個につき1,000円、名前・住所の更正も1個につき1,000円です。真正な登記名義の回復は、不動産の価額の1000分の20で扱われると考えられます。 相手が協力しない、権利が誰のものかで争いがある、という場合は訴訟が必要になることがあり、弁護士への相談が必要です。 登記簿を見たら名義や内容が事実と違っていた──そんなとき、「登記を直す」方法は一つではありません。結論から言うと、登記が終わった後の直し方は、次の3つに分かれます。 ...

2026年10月25日 · ひぐらしさとし

登記名義人の氏名変更登記──結婚・離婚・改名で登記簿の名前を変える手続き(住所変更とセットで)

この記事の要点 結婚・離婚・改名などで名前が変わったら、不動産の所有者は、変更の日から2年以内に登記簿の氏名を変える「氏名変更登記」を申請する義務があります(2026年4月1日より前の変更は2028年3月31日まで)。 添付書類の中心は、変更前の氏名・変更後の氏名・変更の日がわかる戸籍の証明書と、本籍の記載がある住民票の写しです。 住所も変わっているときは、住所と氏名の変更を1つの申請書でまとめて申請できます。登録免許税は不動産1個につき1,000円で、法務局の記載例では、住所と氏名をまとめて変更する場合も土地1筆・建物1棟で2,000円とされています。 検索用情報の申出をしておけば、法務局が職権で氏名を書き換える仕組みも使えます。ただし反映は法務省の決めたスケジュールどおりなので、売却などを控えている方はご自身で申請するのが確実です。迷ったらお近くの司法書士にご相談ください。 結論から言うと、結婚などで名字や名前が変わっても、不動産の登記簿の名前は自動では変わりません。登記簿の名前を今の名前に合わせるには、所有者本人が法務局に「所有権登記名義人氏名変更」の登記を申請するか、法務局の職権による変更(スマート変更登記)を利用する必要があります。 ...

2026年10月24日 · ひぐらしさとし

真正な登記名義の回復とは──本当の持ち主に名義を戻す登記と、贈与・売買との違い

この記事の要点 「真正な登記名義の回復」とは、登記簿の名義が本当の持ち主と違っているときに、間違った名義を消すのではなく、本当の持ち主へ名義を移す形で直す登記の原因(登記の理由)です。 本来は間違った登記を消す(抹消する)のが基本ですが、抹消には登記上の利害関係のある人(抵当権を持つ銀行など)の承諾が必要です。その承諾が得られない場合などに使われる方法です。 贈与や売買は「権利が新しく移った」ことを記録する登記です。真正な登記名義の回復は「もともと本当の持ち主の権利だった」ことを前提に、名義だけを正しい人に合わせる登記である点が違います。 登録免許税は、相続の税率(1000分の4)ではなく、「その他の原因による移転」の区分として不動産の価額の1000分の20で扱われると考えられます。 権利が実際に順番に移っている(元の持ち主→中間の人→いまの持ち主)のに登記名義が元の持ち主のまま残っている場合に、中間の人を飛ばしてこの方法を使うことは、最高裁判決で認められていません。 真正な登記名義の回復(しんせいなとうきめいぎのかいふく)とは、登記簿に載っている名義が本当の持ち主と食い違っているときに、その名義を本当の持ち主へ移す「所有権の移転の登記」の形で直すときに使われる登記の原因です。登記簿の甲区(所有者の欄)には「原因 真正な登記名義の回復」と記録されます。 ...

2026年10月23日 · ひぐらしさとし

登記の書類に押すのは実印?認印?──印鑑証明書が要る人と、押印が要らない場面

この記事の要点 書面で登記を申請するときは、申請書や委任状に記名押印(名前を書いて印鑑を押すこと)をするのが原則です(不動産登記令16条1項・18条1項)。実印と印鑑証明書が要るのは、主に売買や贈与で名義を渡す側(登記義務者)になる所有権の登記名義人などです。 相続登記で名義を受け取る相続人は、申請書への押印は要りますが印鑑証明書は要らないため、法務省の案内では「認印で可」とされています。一方、遺産分割協議書には、実務上、相続人全員の実印の押印が求められ、印鑑証明書の添付も必要です。 名義を渡す側など印鑑証明書が要る立場でも、登記によって新しく登記識別情報を受け取る側でもない申請人などは、押印せずに署名だけで足りる場合があります(不動産登記規則47条・49条)。 「登記の書類には実印を押すもの」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。結論から言うと、実印が要るのは、その書類に印鑑証明書を付ける必要がある場合で、申請書や委任状では押す人の立場によって分かれます。 ...

2026年10月22日 · ひぐらしさとし

遺産分割をやり直したら登記はどうなる──「錯誤」による抹消と、再協議で動く税金の注意(税理士へ)

この記事の要点 遺産分割の「やり直し」には、①相続人全員の合意で最初の協議を解消して改めて協議する場合と、②最初の協議にそもそも無効・取消しの原因があった場合の2種類があり、登記の直し方が違います。 相続人全員の合意で協議を解消し、改めて協議することは、最高裁判所の判例で認められています。一方、ほかの相続人が協議で約束したことを守らないという理由で、一方的に協議を解除することはできないとされています。 最初の協議が無効だった場合は、登記した時点から登記が事実と合っていなかったことになるため、「錯誤」を原因として登記を消す(抹消)か直す(更正)のが基本です。抹消の登録免許税は不動産1個につき1,000円です(更正の登録免許税は、課税の区分を申請前に確認します)。 全員の合意によるやり直しは、登記の後に事情が変わったものなので「錯誤」にはなじまないと考えられ、どの形で登記するかによって登録免許税が大きく変わります(相続による移転なら固定資産評価額の0.4%、相続以外の原因による移転なら2%)。申請の前に確認が必要です。 やり直しで財産の行き先が変わると、贈与税や所得税(譲渡所得)が問題になる可能性があります。再協議の前に税理士にご相談ください。 いったんまとまった遺産分割協議を、後から「やり直したい」と考えることがあります。結論から言うと、やり直しの登記は、なぜやり直すのかによって直し方が分かれます。 ...

2026年10月22日 · ひぐらしさとし

住宅取得等資金の贈与の非課税とは──親から家の購入資金をもらったときの特例の基礎と、登記の持分の注意

この記事の要点 父母や祖父母などの直系尊属から、自分が住む家の新築・取得・増改築等に充てるお金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば、限度額までの金額には贈与税がかからない(租税特別措置法70条の2) 限度額は贈与を受けた人1人につき、省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外の住宅なら500万円。執筆時点の条文では、2026年(令和8年)12月31日までの贈与が対象 全額が非課税になる場合でも、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告をしないと特例は受けられない。資金の出し方と登記の持分がずれると、別に贈与の問題が生じ得る点にも注意 結論から言うと、この特例は「親などから、自分が住む家を手に入れるためのお金をもらった」ときに、一定額までの贈与税をかからないようにする制度で、使うには期限内の申告が欠かせません。順に整理します。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

登記の「更正登記」とは──名前の字・住所・持分を間違えて登記してしまったときの直し方

この記事の要点 更正登記(こうせいとうき)とは、登記した時点ですでにあった誤りや書き漏らしを直す登記です。登記した後に事実が変わったときの「変更登記」とは区別されます。 名前の字や住所の誤りは、登記名義人(登記簿に所有者などとして載っている人)が単独で申請できます(不動産登記法64条1項)。誤りがあったことを示す住民票の写しなどの公的な書類を添付します。 持分など権利の内容の誤りは、持分が増える人と減る人が共同で申請するのが原則です(同法60条)。その不動産に抵当権を持つ銀行など「登記上の利害関係を有する第三者」がいるときは、その承諾が必要になります(同法66条、不動産登記令 別表25項。詳しくは後半の【さらに深掘り】で補足します)。 名前・住所の更正登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(登録免許税法 別表第一・1号(十四))。持分など権利の内容の更正は、税額を申請前に確認してください。 土地の面積(地積)や建物の床面積など「表示の登記」の誤りを直すのは、土地家屋調査士の業務です。 登記簿を見たら、名前の漢字が違っていた、住所の番地が間違っていた、夫婦の持分が契約と違う割合で載っていた──このように、登記した時点から内容に誤りがあったときに使うのが「更正登記」です。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし