親の土地に家を建てるとき──「使用貸借」のままだと相続で何が起きるか

この記事の要点 親の土地を無償で借りて家を建てる関係は「使用貸借(しようたいしゃく)」といい、貸主(親)が亡くなっても、それだけで契約が当然に終わるわけではないとされています ただし「終わらない」は「ずっと続く」ではなく、使い道に従って使用・収益をするのに足りる期間が経過すれば、貸主の側から契約を解除できるとされています(民法598条1項) また、貸主が亡くなれば土地そのものは相続財産となり、きょうだいなど他の相続人との遺産分割の対象になり得ます 自分の家が建っている土地を、自分以外の相続人が取得する事態も制度上はあり得るため、早い段階で家族間の話し合いを始めておくことが大切です 「親の土地に家を建てさせてもらっている。地代も家賃も払っていない」——こうした関係は、法律上は「使用貸借(しようたいしゃく)」と呼ばれる契約にあたります。契約書を交わしていなくても、口約束や暗黙の了解だけで成り立っている使用貸借は少なくありません。 ...

2026年8月30日 · ひぐらしさとし

親子間売買はなぜ住宅ローンが通りにくい?──売買・贈与・相続の分かれ道

この記事の要点 親子間の不動産売買は、金融機関の住宅ローン審査で慎重に扱われる傾向があるとされている 売買・贈与・相続は、登記の原因も必要書類も登録免許税の税率もそれぞれ異なる 時価に比べて著しく低い価格での売買は、その差額部分が「贈与」とみなされる可能性があるため、価格の決め方には注意が必要 税額の計算や個別の判断は税理士へ相談するのが基本 親から子へ、あるいは子から親へ不動産を譲るとき、「売買にするか、贈与にするか、それとも将来の相続まで待つか」で迷う方は少なくありません。とくに売買を選んだ場合、「住宅ローンを組もうとしたら金融機関から難色を示された」という声を聞くことがあります。この記事では、親子間売買で住宅ローンが通りにくいと言われる一般的な背景と、売買・贈与・相続で登記や税金の扱いがどう変わるのかを整理します。 ...

2026年8月29日 · ひぐらしさとし

境界標と塀の費用負担──「筆界」の話は土地家屋調査士へ

この記事の要点 境界標の設置・保存の費用は、隣どうしが等しい割合で負担する(=折半)のが民法の原則です(民法224条本文) ただし測量の費用だけは折半ではなく、土地の広さ(面積)に応じて分担します(民法224条ただし書) 境界の塀(囲障)も、所有者の異なる2棟の建物の間に空き地があるときは共同の費用で設置でき、協議がまとまらないときは「板塀・竹垣など、高さ2メートル」が基準になります(民法225条) もっと良い材料・もっと高い塀にしたい側は、その増加分の費用を自分で負担します(民法227条) 費用の話の前に「そもそも境界(筆界)がどこか分からない」ときは、まず筆界特定制度や土地家屋調査士への相談が先です お隣との境界に目印(境界標)を置くときや、境界に塀を作るときの費用は、原則としてお隣との折半──これが民法の答えです。ただし例外もあり、測量の費用は面積に応じた分担になりますし、立派な塀にしたい側はその分を余計に負担します。 ...

2026年8月28日 · ひぐらしさとし

登記申請は窓口・郵送・オンラインのどれで出す?──3つの出し方と受付のタイミング

この記事の要点 法律が定める申請の方法は「オンライン」と「書面の提出」の2つ。書面の提出には窓口への持参と郵送があるため、実際の出し方は3通りになる 受付は、申請の情報が法務局(登記所)に届いたときにされる。オンラインで送信できる時間帯と、登記所で受付がされる時間帯は別物 郵送は書留郵便など記録が残る方法で送り、封筒の表面に不動産登記の申請書が入っている旨を明記する決まりがある 不動産の登記申請書は、どこにどうやって出せばよいのでしょうか。結論から言えば、法律が定める申請の方法は「オンライン」と「書面を提出する方法」の2つで、書面を提出する方法の中に窓口への持参と郵送があります。つまり実際の出し方は3通りです。 ...

2026年8月27日 · ひぐらしさとし

隣の空き家が倒れそうなとき、苦情はどこに?──相談先と使える制度の整理

この記事の要点 隣の空き家が危険な状態のとき、最初の相談先は市区町村の空き家担当窓口です。空家等対策特別措置法にもとづき、市区町村が所有者への助言・指導や勧告などを行う仕組みがあります 空き家の所有者(名義人)は、法務局で登記事項証明書を取れば手がかりがつかめます。手数料を払えば誰でも取得できます 所有者が分からない場合や、分かっていても管理してもらえない場合には、裁判所に管理人を選んでもらう民法上の管理制度(所有者不明建物管理制度・管理不全建物管理制度)が使える可能性があります 実際に被害が出た・出そうな場合の損害賠償請求や差止め、所有者との交渉は、弁護士に相談するのが確実です 「どの窓口に何を相談するか」をまず整理するのが、解決への近道です 台風のたびに、隣の空き家の屋根材が飛んでこないか不安になる。壁が傾いてきて、いつ倒れてもおかしくない──。そんなとき、「苦情はどこに言えばいいのか」「そもそも誰に言えばいいのか」が分からず、悩んでいる方は少なくありません。 ...

2026年8月27日 · ひぐらしさとし

管理不全土地・建物管理制度とは──荒れ放題の隣地に裁判所から管理人

この記事の要点 持ち主は分かっているのに管理が行き届かず、他人の権利・利益が侵害されている(またはそのおそれがある)とき、裁判所に管理人を選んでもらえる制度があります(民法264条の9・264条の14。2023年4月1日施行) 申立てができるのは「利害関係人」。被害を受けている(受けるおそれのある)隣地の所有者などが該当し得ます 管理人が処分(売却など)を行うには、裁判所の許可に加えて所有者本人の同意が必要です。所有者が分からない場合の制度とは、この点が大きく異なります 裁判所は原則として、対象となる土地・建物の所有者の言い分(陳述)を聴いたうえで判断します 申立てにあたっては、管理費用に充てるお金(予納金)を納めるのが通常です 隣の土地が何年も手入れされず、雑草や枝が敷地にはみ出し、建物は今にも崩れそう。持ち主が誰かは分かっている、あるいは連絡もつく。それでも管理をしてもらえない──そのような場合に使える可能性があるのが、この記事で解説する「管理不全土地・建物管理制度」です。 ...

2026年8月26日 · ひぐらしさとし

所有者不明土地管理制度とは──持ち主がわからない隣の土地に管理人を付けてもらう方法

この記事の要点 持ち主がわからない土地について、裁判所に「所有者不明土地管理人」という管理人を選んでもらえる制度があります(民法264条の2。2023年4月1日施行) 申立てができるのは「利害関係人」。管理されないことで不利益を受けるおそれのある隣地の所有者も、事案によっては該当し得ます 管理人は、土地の保存や、性質を変えない範囲での利用・改良にあたる行為を行うことができ、売却などの処分には裁判所の許可が必要です 申立先は、その土地の所在地を管轄する地方裁判所。申立てにあたっては、管理費用に充てるお金(予納金)を納めるのが通常です 「人」ではなく「土地」の単位で管理人が付く点が、従来からある不在者財産管理人との大きな違いです 隣の土地が長年放置されていて、草木が伸び放題、塀は崩れかけ。何とかしたくても、登記簿を調べても持ち主にたどり着けない──。そのようなときに使える可能性があるのが、この記事で解説する「所有者不明土地管理制度」です。裁判所が土地の管理人を選び、その管理人が持ち主に代わって土地を管理してくれる、2023年4月に始まった比較的新しい制度です。 ...

2026年8月25日 · ひぐらしさとし

ライフラインを隣地に通せる「設備設置権」──水道・電気・ガスの導管と民法改正

この記事の要点 他人の土地に設備を通すか、他人の設備を使わなければ電気・ガス・水道の供給を受けられない土地の所有者は、必要な範囲でそれができる(民法213条の2第1項) 場所と方法は「相手にとって損害がいちばん少ないもの」を選び、あらかじめ目的・場所・方法を相手に通知しなければならない(同条2項・3項) 他の土地に設備を設置したときは土地の損害に対する償金、他人の設備を使うときはその使用を開始するために生じた損害に対する償金と、利益を受ける割合に応じた設置・維持費用の負担が必要(同条5項〜7項) 土地を分けた(分筆・一部譲渡した)ことでライフラインを引けない土地が生じた場合は、分割の相手方の土地だけに設備を設置でき、土地の損害に対する償金は不要(民法213条の3) 話し合いがまとまらない、償金の額でもめる、工事を止められた──といった争いになった段階では弁護士へ。制度の位置づけや登記の関わりはお近くの司法書士にご相談ください 家を建てようとしたら、水道の本管が前面道路まで来ておらず、隣の土地の下を通さないと引き込めない。あるいは、隣家がすでに引いている給水管に分岐させてもらわないと水が来ない。こうした「ライフラインが自分の土地まで届かない」場面のために、民法には設備設置権・設備使用権という規定が置かれています(民法213条の2)。 ...

2026年8月24日 · ひぐらしさとし

登記書類の「捨印」って何?押す・押さないの実務の傾向

この記事の要点 捨印(すていん)とは、書類の欄外にあらかじめ押しておく訂正用の印のことで、法令が押印を義務づけている制度ではなく、実務上の慣行として広まったもの 登記の委任状などで求められる場面があるのは、軽微な字句の誤りをその都度作成者に押印し直してもらわずに直せるようにするため 捨印を求めるかどうか・どこまで訂正の範囲を認めるかは、事務所や場面によって扱いに差があり、近年はオンライン申請の広がりで紙の書類そのものが減ってきた面もある 登記の委任状や契約書に署名押印するとき、「念のため、こちらにも捨印をお願いします」と言われた経験がある方は少なくないと思います。捨印とは、書類の欄外にあらかじめ押しておく、訂正のための印のことです。誤字や記載漏れが見つかったとき、その捨印を使って二字削除・三字加入のように訂正すれば、作成者に改めて押印をもらいに行かなくても直せる、という便宜のための仕組みです。 ...

2026年8月23日 · ひぐらしさとし

隣地使用権とは──工事や測量で「お隣の土地に入る」ときのルール

この記事の要点 隣地使用権は、境界標の調査・測量や、塀・建物の築造・修繕などのために、必要な範囲でお隣の土地を使わせてもらえる民法上の権利 使える目的は限定されており、あらかじめ目的・日時・場所・方法を通知する必要がある 住まいとして使われている建物に立ち入るときは、居住者の承諾が別途必要 隣地の所有者や使用者が損害を受けたときは、償金(金銭による償い)を請求できる 「境界標の調査で測量士さんがお隣の土地に立ち入ると言っている」「塀を建て替えるのに、どうしてもお隣側から作業しないといけない」――こうした場面で出てくるのが「隣地使用権」です。 ...

2026年8月23日 · ひぐらしさとし