隣の木の枝が越境してきたら──2023年民法改正で「自分で切れる」ようになった条件

この記事の要点 令和5年(2023年)4月1日施行の民法改正で、一定の条件を満たせば隣地の木の枝を自分で切除できるようになった 条件は「催告しても切除されない」「所有者が分からない」「急迫の事情がある」の3つのうちいずれか一つ 木の根は改正前から変わらず自分で切り取れる。実際にもめている場合は弁護士にご相談ください 切るために隣地に立ち入る必要があるときは、あらかじめ隣地の所有者などへの通知が必要(民法209条) 「隣の家の木の枝が、うちの敷地にどんどん伸びてきている」「柿の実が越境した枝になっていて、落ち葉の掃除も負担」――こうした境界をまたぐ木の枝のトラブルは、昔からよくある近隣間のもめごとの一つです。 ...

2026年8月22日 · ひぐらしさとし

登記事項証明書の『全部事項』『現在事項』の違いは?──窓口・オンライン請求で選ぶときの目安

この記事の要点 登記事項証明書には「全部事項証明書」「現在事項証明書」「一部事項証明書」「閉鎖事項証明書」など複数の種類があり、記載される範囲が異なる 銀行融資や登記申請の添付書類では、抹消済みの権利まで載る「全部事項証明書」を求められることが多い 種類の選び方より間違いが多いのは不動産の特定で、住所(住居表示)ではなく地番・家屋番号で請求しないと、目的の不動産の証明書にならない 本文 不動産の登記事項証明書を法務局の窓口やオンラインで請求すると、申請書に証明書の「種類」を選ぶ欄がある。ここで何を選べばよいか迷う人は多いが、結論から言うと、用途がはっきりしない場合や提出先の指定がない場合は「全部事項証明書」を選んでおくのが無難である。 ...

2026年8月19日 · ひぐらしさとし

都市計画税とは何か──固定資産税とセットで課税される理由

この記事の要点 都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業の費用にあてるための市町村の「目的税」で、固定資産税とは別の税金(地方税法702条) 課税できる区域は都市計画区域の中に限られ、区域区分(線引き)がある都市計画区域では「市街化区域」内の土地・家屋、線引きがない都市計画区域では条例で定める区域が対象になる(地方税法702条1項)。税率は0.3%が上限(地方税法702条の4)。課税するかどうかや実際の税率は市町村ごとに異なる 固定資産税評価額を課税標準とする点や、毎年1月1日時点の所有者に課税される点は固定資産税と共通しているため、1枚の納税通知書にまとめて記載されることが多い 固定資産税の納税通知書を見ると、「固定資産税」の欄の隣に「都市計画税」という欄が並んでいて、合計額が請求されていることがあります。この2つは名前が並んでいるため同じ税金の一部だと思われがちですが、法律上は別の税金です。 ...

2026年8月18日 · ひぐらしさとし

空き家の3,000万円特別控除──売る前に知る制度の入口(詳細は税理士へ)

この記事の要点 相続した空き家を売って利益が出たとき、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります(通称「空き家の3,000万円特別控除」、租税特別措置法35条3項) 耐震改修や取り壊し、売却の期限、自治体の確認書など複数の要件があり、当てはまるかどうかの判定・控除額の計算・申告は税理士の分野です 制度を使うかどうかにかかわらず、売る前にはまず相続登記(名義を相続人へ移す手続き)が前提になります 制度の詳しい要件確認や申告については、お近くの税理士にご相談ください 実家などを相続したものの誰も住まず、「そろそろ売却を考えたい」というとき、税金の話でよく耳にするのが「空き家の3,000万円特別控除」です。この記事では、制度がどのようなものかという大枠と、売却に進む前に押さえておきたいポイントを整理します。**要件に当てはまるかどうかの個別判定や、控除額・税額の計算は行いません。**それらは税理士の専門分野であり、実際に売却を検討する段階で必ず税理士にご確認ください。 ...

2026年8月16日 · ひぐらしさとし

実家の相続登記に権利証は必要?──「上申書」が登場するのは住所がつながらないとき

この記事の要点 相続による所有権移転の登記は相続人が単独で申請できる登記なので、亡くなった方の権利証(登記済証)は原則として添付書類にならない 実務で上申書が使われるのは「権利証が見つからないから」ではなく、登記簿上の住所と戸籍の本籍がつながらず、戸籍上の被相続人と登記上の所有者が同じ人だと示せないとき 上申書は法令に定められた添付書類ではなく登記官の判断を補う書面で、何をどこまで求めるかは登記所によって差がある 古い実家の名義を相続人に変えようとして、「権利証が見つからないのですが、登記できますか」とご心配になる方は少なくありません。結論から申し上げると、相続登記の場面では、亡くなった方の権利証は原則として必要ありません。それでも実務で「上申書(じょうしんしょ)」という書面が登場することがあるのですが、それは権利証の紛失そのものが理由ではありません。 ...

2026年8月15日 · ひぐらしさとし

親が施設に入ったら実家はどうする?──売却を阻む「意思能力」の壁

この記事の要点 実家の名義人(親)の意思能力が失われると、本人が売買契約を結ぶことも登記手続きを委任することもできなくなり、実家は「売れない不動産」になる 意思能力を失ったあとに売却するには、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい、居住用不動産の処分については家庭裁判所の許可(民法859条の3)を別途得る必要がある 元気なうちに家族信託を設計しておけば、あらかじめ定めた範囲で受託者が実家を管理・売却でき、売却のたびに家庭裁判所の許可を得る手間がかからない 成年後見も家族信託も、選べるのは本人に意思能力があるうちだけ。判断能力が失われてからでは家族信託は組めない 制度ごとに費用・手続きの流れが異なるため、実家をどうするか迷ったら早めにお近くの司法書士にご相談ください 結論から言うと、親御さんが施設に入所したあと空き家になった実家を売ろうとしても、名義人である親御さん本人の「意思能力」が失われていると、そのままでは売却できません。意思能力とは、自分がしようとしている行為の内容や結果を理解し、判断できる能力のことです。不動産の売買は法律上の契約であり、契約を結ぶには意思能力が前提になります。 ...

2026年8月15日 · ひぐらしさとし

登録免許税はなぜ『固定資産税評価額』で計算されるの?──条文上の原則は『時価』という話

この記事の要点 登録免許税法10条1項は、課税標準を「登記の時における不動産等の価額」と定めており、この価額は一般に時価(その時点の客観的な価値)を指すと理解されている 附則7条の「当分の間」の特例により、実務では原則として固定資産課税台帳に登録された価格(固定資産税評価額)が用いられている 相続税評価額や実勢価格とは基準が異なるため、混同すると見積りや税額の見込みがずれる 相続登記や不動産の売買登記を依頼すると、司法書士から「固定資産税評価額を教えてください」と聞かれることがあります。実際に売買した金額(実勢価格)を伝えているのに、なぜ別の評価額を使うのか、疑問に思われる方は少なくありません。 ...

2026年8月14日 · ひぐらしさとし

実家を兄弟の共有名義にしてはいけない理由──共有にする前に知っておきたい3つのリスク

この記事の要点 実家を「とりあえず」兄弟の共有名義にすると、①次の相続で共有者がねずみ算式に増える ②売却に共有者全員の同意が必要になる ③管理費・固定資産税の負担分担で揉めやすい、という3つのリスクを抱える 共有名義は一見「平等」に見えるが、名義を分けた時点で財産そのものは分かれておらず、権利関係が複雑なまま先送りされているだけの状態になる 共有名義にする前に、現物分割・代償分割・換価分割など他の分け方も検討したい。お近くの司法書士にご相談ください 親が亡くなり実家を相続するとき、「きょうだい3人で3分の1ずつ、共有名義にしておこう」という選択をする人は少なくありません。誰か一人だけが名義を持つより公平に見えますし、話し合いも「とりあえず全員の名前を登記簿に載せておく」だけで済むため、揉めずに済んだ気になりやすいからです。 ...

2026年8月14日 · ひぐらしさとし

空き家を相続したら──『特定空家』に指定される前に知っておくこと

この記事の要点 空き家を放置すると、空家等対策特別措置法にもとづき「特定空家」または「管理不全空家」に指定されることがある 指定後は助言・指導→勧告→命令→行政代執行と段階が進む(命令・行政代執行まで進むのは特定空家のみ) 特定空家・管理不全空家のどちらも、勧告を受けると土地の固定資産税の軽減(住宅用地の特例)が受けられなくなる 相続登記をして名義を明確にしておくことが、放置状態を防ぐ第一歩になる 空き家をどうするか(売る・貸す・住む・手放す)は早めに方針を決めておくと選択肢が広い 実家を相続したものの誰も住まず、片付けも先延ばしにしている──というケースは珍しくありません。しかし空き家をそのまま放置していると、市区町村から「特定空家(とくていあきや)」や「管理不全空家(かんりふぜんあきや)」に指定されることがあります。指定されると、行政からの勧告や命令の対象になり、最終的には行政が代わって解体する「行政代執行(ぎょうせいだいしっこう)」に至ることもあります。この記事では、指定される前に知っておきたい制度の仕組みと、放置した場合に何が起きるかを整理します。 ...

2026年8月13日 · ひぐらしさとし

実家じまいの進め方──売る・貸す・住む・手放すの4択と登記

この記事の要点 実家じまいの選択肢は「売る・貸す・住む・手放す」の4つ。どれを選んでも、相続登記で名義を相続人に移すことが出発点になります 相続登記は義務です。取得を知った日から3年以内に申請しなければならず(不動産登記法76条の2第1項)、正当な理由がないのに怠ると10万円以下の過料の対象になります(同法164条1項) 「手放す」=相続土地国庫帰属制度は土地だけの制度で、建物が建ったままでは申請できません(相続土地国庫帰属法2条3項1号)。承認申請そのものを専門家に代理してもらうことはできないとされています 「貸す」には期間を区切る「定期借家」という選択肢があります(借地借家法38条)。ただし賃料の設定や契約内容の設計は不動産の専門家の領域です 「何もしない」は5つ目の選択肢に見えて、実際には登記の義務も空き家の管理責任も残ったままになります 親が住んでいた家をこの先どうするか。いわゆる「実家じまい」で最初に決めるのは、売る・貸す・住む・手放すのどれを選ぶか、という4択です。そして4つのどれを選んだ場合でも、共通して先にやることが1つだけあります。相続登記で名義を親から相続人に移すことです。名義が親のままでは、買主への所有権移転登記を入れることも、貸主として誰が契約するのかをはっきりさせることもできません。国に引き取ってもらう場合も、名義を整える義務そのものは別に残ります。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし