遺言の書き直し・撤回のルール──新しい遺言と古い遺言、どちらが有効?

この記事の要点 遺言はいつでも書き直せる。ただし撤回は法律で定められた遺言の方式に従って行う必要がある(民法1022条) 新しい遺言の内容が古い遺言と食い違う部分は、新しい遺言が優先し古い遺言のその部分は撤回されたとみなされる。食い違わない部分は両方とも有効(民法1023条) 遺言書を故意に破棄すれば撤回とみなされるが(民法1024条)、公正証書遺言や保管制度を使った自筆証書遺言は、遺言者が原本を直接破棄できない点に注意が必要 2026年6月に遺言制度を見直す改正法が公布されたが(令和8年法律第45号)、施行日はまだ未確定。撤回の基本ルール(1022条・1023条)に変更はなく、いま書き直すなら現行のルールがそのまま当てはまる 書き直し方や効力に迷ったら、お近くの司法書士へ相談を 一度書いた遺言でも、気が変わったり家族の状況が変わったりすれば、何度でも書き直すことができます。ただし「新しく遺言を書けば、前の遺言は自動的に全部なかったことになる」というのは正確ではありません。実際には、新しい遺言の内容と食い違う(抵触する)部分だけが撤回されたとみなされ、食い違わない部分はそのまま残ります。この記事では、遺言を書き直すときの基本ルール(民法1022条〜1024条)を、撤回の方式・新旧遺言の抵触・遺言書の破棄という3つの場面に分けて整理します。 ...

2026年8月5日 · ひぐらしさとし

遺言書に書けること・書いても効力がないこと──付言事項の使い方

この記事の要点 遺言書の内容は、法律上の効力が認められる「法定遺言事項」と、効力のない「付言事項」に分かれる 遺留分(一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分)などの法律のルールは、付言事項でお願いしても変えられない 付言事項に何を書けるか迷ったら、お近くの司法書士にご相談ください 遺言書には、法律上の効力が認められる内容と、認められない内容があります。結論から言うと、財産の配分方法などを定める部分(法定遺言事項)には法的な効力がありますが、「付言事項(ふげんじこう)」と呼ばれる、家族へのメッセージや理由を書く部分には法的な効力はありません。書いたからといって相続人を法的に拘束するものではなく、あくまで気持ちを伝えるための文章です。 ...

2026年8月3日 · ひぐらしさとし

相続の相談で、親の判断能力が気になるとき──家族が迷わず伝えるためにできること

この記事の要点 気になる様子に気づいたときに大切なのは「疑うこと」ではなく、気づいた事実をそのまま家族や相談先と共有すること 症状を決めつけたり診断したりせず、医学的な判断は医師など医療の専門家に委ねる 早めに気づきを共有しておくことが、本人の意思を大切にしながら相続の相談を進める力になる 相続の相談に行こうとしたとき、「最近、親の様子が前と少し違う気がする」と感じても、それを誰にどう伝えればいいか分からず、一人で抱え込んでしまう家族は少なくありません。こうした場面で大切なのは、様子の変化を「疑い」として詮索することではなく、気づいたことをそのまま家族や相談先と共有することです。 ...

2026年8月2日 · ひぐらしさとし

相続税の配偶者の税額軽減とは──「1億6,000万円」の意味と、税額ゼロでも申告が必要な理由

この記事の要点 相続税には「配偶者に対する相続税額の軽減」という制度があり、配偶者が取得した遺産の額が「配偶者の法定相続分相当額」と「1億6,000万円」のいずれか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかからない(相続税法19条の2第1項) この軽減の適用を受けるには相続税の申告書(または更正の請求書)を提出することが法律上の要件であり(同条3項)、軽減の結果として納税額がゼロになる場合でも申告書の提出は省略できない 贈与税の「おしどり贈与」(贈与税の配偶者控除)とは、かかる税目も要件も別の制度なので混同しないよう注意が必要 相続税には、亡くなった方の配偶者が遺産を受け取るときに税負担を大きく軽くする「配偶者に対する相続税額の軽減」という制度があります(相続税法19条の2)。よく耳にする「1億6,000万円」という金額の意味を、正しく理解している方は意外と多くありません。 ...

2026年8月2日 · ひぐらしさとし

死亡後の手続きスケジュール全体像──7日・14日・3か月・4か月・10か月で何をすべきか

この記事の要点 死亡後の手続きには、7日・14日・3か月・4か月・10か月と、期限が段階的にやってきます 準確定申告・相続税申告は税理士、年金関係の届出は年金事務所・社会保険労務士が窓口で、相続登記(3年以内・義務化)は司法書士の業務範囲です 「未支給年金」「葬祭費」など請求しないと受け取れないお金は、ここで挙げる期限とは別枠で動いています 何から手をつければよいか迷ったら、まず全体の時系列をつかみ、期限が近いものから順に確認するのが次の一歩です 身内が亡くなると、悲しみに向き合う間もなく、さまざまな届出や手続きに追われることになります。しかも、それぞれに「いつまでに」という期限がついており、その長さはバラバラです。短いものは死亡から7日、長いものは10か月、不動産があればさらに3年という期限まで存在します。 ...

2026年8月2日 · ひぐらしさとし

未支給年金・葬祭費・埋葬料の請求期限──亡くなった後に請求できるお金には時効がある

この記事の要点 亡くなった方について請求できる公的なお金のうち、未支給年金は条文上の時効が五年、葬祭費・埋葬料は二年です(国民年金法102条1項、厚生年金保険法92条1項、健康保険法193条1項、国民健康保険法110条1項、高齢者の医療の確保に関する法律160条1項)。 これらは遺産分割の結論を待って動くものではありません。請求しないまま期間が過ぎれば、その請求権は時効によって消滅すると条文に定められています。 給付ごとに根拠となる法律も窓口も違います。年金は年金事務所、国民健康保険・後期高齢者医療の葬祭費は市区町村、健康保険の埋葬料は協会けんぽ・健康保険組合です。 本記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月1日 · ひぐらしさとし

戸籍の「身分事項欄」の読み方──婚姻・養子縁組・認知の記載から相続人を読み取る

この記事の要点 続柄欄が「その人の立ち位置」を示すのに対し、身分事項欄は「その人にいつ何が起きたか」という出来事の記録を示す欄 認知は父と子の双方、普通養子縁組は養親と養子の双方、婚姻・離婚は夫と妻の双方の身分事項欄に記載される(戸籍法施行規則35条) そのため、被相続人自身の戸籍の身分事項欄をたどることで、認知した子・養子縁組した子・前の婚姻の存在といった相続人確定に直結する事実を拾える 本文 結論から言うと、相続人を確定する作業では、続柄欄と身分事項欄を役割分担で読み分けるのが基本です。戸籍の「続柄」欄の読み方で扱ったとおり、続柄欄はその人が父母や筆頭者から見てどの続き柄にあたるかという「立ち位置」を示す欄です。これに対して身分事項欄は、出生・婚姻・離婚・養子縁組・離縁・認知・死亡といった「その人の身の上に起きた出来事」を、日付とともに記録していく欄です。相続人の範囲を左右する事実の多くは、続柄欄ではなく身分事項欄に現れます。 ...

2026年8月1日 · ひぐらしさとし

相続関係説明図の書き方──法定相続情報一覧図との違いと、戸籍を返してもらう仕組み

この記事の要点 相続関係説明図は、相続登記の申請書に添えて出す図です。これを出しておくと、一緒に提出した戸籍・除籍の原本を、登記の調査が終わった後に返してもらえると法務局が案内しています 法定相続情報一覧図は、法務局に申し出て登記官の認証文が付いた写しを無料で交付してもらう証明書です。戸籍の束そのものの代わりとして、他の法務局・金融機関・年金の手続にも使えます ひとことで言うと、相続関係説明図=戸籍を返してもらうための添え物/法定相続情報一覧図=戸籍の束の代わりになる証明です。似た形の図ですが、位置づけがまったく違います 相続関係説明図には決まった様式はなく、法務局が相続登記の申請書の記載例のなかで見本を公表しています(被相続人は住所・死亡年月日、相続人は住所・出生年月日を書く形) 一覧図そのものの書き方(様式・記載例・不備で戻される例)は法定相続情報一覧図の作り方にまとめています。**この記事は「2つの図の役割の違い」と「相続関係説明図の書き方」**を扱います 相続登記を自分で進めようとすると、「相続関係説明図」と「法定相続情報一覧図」という、名前も見た目も似た2つの図が出てきます。どちらも家系図のような形をしていて、亡くなった方と相続人を線でつないだものです。 ...

2026年8月1日 · ひぐらしさとし

外国籍になった相続人がいるとき──宣誓供述書と必要書類

この記事の要点 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、相続人としての地位は失われません。変わるのは、そろえる書類の中身です 日本人が外国籍を取得して日本国籍を失うことは「国籍喪失」(国籍法11条1項)または「国籍離脱」(同13条)と呼びます。「帰化」は逆方向、つまり外国人が日本国籍を取得する場合の言葉です(同4条) 在外公館(大使館・総領事館)の署名証明(サイン証明)・在留証明は、日本国籍を有する方向けの制度です。外国籍になった方は原則として発給の対象外とされています 印鑑証明書の代わりとして、現地の公証人などが認証した**宣誓供述書(せんせいきょうじゅつしょ/affidavit)**の提出を求められることがあります 求められる書類・記載事項は提出先によって違います。着手前に管轄の法務局へ事前照会するのが確実です 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、その方が相続人であることは変わりません。 「相続人の一人が、何年も前に外国の国籍を取得していて、いまは日本国籍ではない」というケースで、まず押さえておきたいのがこの点です。手続きで変わるのは、本人であることや住所をどう証明するか、つまり「そろえる書類」の中身だけです。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

法定相続情報一覧図の作り方──書式・記載例・やり直しになりやすい例

この記事の要点 一覧図に必ず書くのは「亡くなった方の氏名・生年月日・最後の住所・死亡年月日」と「相続開始のときの同順位の相続人の氏名・生年月日・続柄」(不動産登記規則247条1項1号・2号。このほか作成の年月日と記名が必要)。相続人の住所や被相続人の最後の本籍は、任意で記載できる項目です(ただし住民票の除票が市区町村で廃棄されていて最後の住所を確認できないときは、住所に代えて最後の本籍を記載します) 様式は法務局が公表しているひな型から、相続人の組み合わせに合うものを選べばよい(配偶者と子/子のみ/配偶者と父母/配偶者と兄弟姉妹/代襲相続/旧民法下の相続/養子を含む場合/列挙形式) 相続分や遺産分割の結論は記載事項に入っていないので、書き込まない やり直しになりやすいのは「戸籍が出生時までそろっていない」「続柄を『子』とだけ書いた」「住所を書いたのに住所を証する書面を付けていない」の3つ 制度そのもののしくみ・申出先・メリットは法定相続情報証明制度をやさしく解説にまとめています。この記事は「図を実際にどう書くか」の実践編です 法定相続情報一覧図は、書く項目が法令で決まっている書面です。家系図のように見えますが、自由に情報を足していい図ではありません。不動産登記規則247条1項各号に挙げられた項目を正確に書き、そこに挙げられていない事情(相続分や遺産分割の結論)は足さないのが基本です。相続人の住所や被相続人の最後の本籍、作成者の住所のように、法務局の様式・記載例が記載を認めている(または求めている)項目は別です。各号の項目を外すと、登記官から直すよう求められて出し直しになります。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし