相続土地国庫帰属制度の運用状況──帰属した土地・却下と不承認の理由に見る「引き取られる土地」

この記事の要点 法務省の統計(2026年8月31日現在・速報値)では、申請件数5,997件に対し、国に帰属した件数は3,119件。却下は85件、不承認は100件、取下げは1,139件です 却下の理由で最も多いのは「添付書類の提出がなかった」(37件)。土地そのものに関する理由では、境界が明らかでない土地(23件)、現に通路として使われている土地(22件)が続きます 不承認の理由で最も多いのは、管理や処分の妨げになる樹木・工作物・車両などが地上にある土地(46件)。次いで、国による追加の整備が必要な森林(37件)です 取下げのうち586件は、自治体や国の機関による活用、隣接地の所有者からの引き受けの申出など「有効活用の見込みが生じた」もの。405件は「却下・不承認であることが判明した」ものです 申請できるのは所有者本人か法定代理人だけで、専門家に申請を代理してもらうことはできません。申請書類の作成を仕事として代行できるのは、弁護士・司法書士・行政書士に限られます 相続した土地を、一定の要件のもとで国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」は、2023年(令和5年)4月27日に始まりました。根拠となる法律は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(以下「国庫帰属法」)です。対象になる人や費用、手続きの流れといった制度の基本は、相続で「いらない土地」が出てきたら──国に引き取ってもらう制度の基本で解説しています。この記事では、法務省が公表している統計をもとに、実際にどんな土地が国に帰属し、どんな理由で却下・不承認・取下げになっているのかを見ていきます。 ...

2026年9月24日 · ひぐらしさとし

夫・妻が亡くなった後、自宅にはいつまで住める?──配偶者短期居住権の「6か月」の数え方

この記事の要点 亡くなった方の自宅に無償で住んでいた配偶者は、一定の期間、無償で住み続けられます(配偶者短期居住権・民法1037条1項) 遺産分割で自宅の行き先を決める場合は「分割で行き先が決まった日」と「相続開始から6か月を経過する日」のいずれか遅い日まで。それ以外の場合は、自宅を取得した人から終了の申入れがあった日から6か月を経過する日まで 6か月は、初日(亡くなった日や申入れの日)を数に入れず、6か月後の初日と同じ日付の日が終わるまで、と数えるのが原則です(民法140条・143条2項) 結論から言うと、「いつまで住めるか」は遺産分割(遺産の分け方の話し合いなど)で自宅の行き先を決める必要があるかどうかで変わります。なお、本記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月22日 · ひぐらしさとし

遺体が見つからなくても戸籍に「死亡」と載る?──認定死亡のしくみと、失踪宣告との違い

この記事の要点 水難・火災その他の事変で亡くなった人がいる場合、取り調べをした官庁・公署が市町村長に死亡の報告をし、その報告に基づいて戸籍に死亡が記載される(戸籍法89条・15条)。一般に「認定死亡」と呼ばれる 失踪宣告は、家庭裁判所が利害関係人の請求で行うもので、法律上「死亡したものとみなす」(民法30条・31条)。認定死亡は、官公署の報告に基づく戸籍の記載であり、しくみも効果も異なる 相続人確定では、どちらも戸籍に記載された死亡の日(失踪宣告では死亡とみなされる時)が基準になる。特に失踪宣告は、宣告の日ではなく期間満了時・危難が去った時に死亡とみなされる点に注意する 報告によって戸籍に死亡が記載されるしくみ 結論から言うと、ご遺体が見つからない場合でも、戸籍に死亡が記載されることがあります。その根拠となるのが戸籍法89条です。 ...

2026年9月22日 · ひぐらしさとし

相続登記義務化の経過措置、期限まであと半年──2027年3月31日までにやること

この記事の要点 相続登記義務化の経過措置は2027年3月31日が期限。残り半年でやることを順番に整理する ①登記簿で今の名義を確認する→②戸籍を集めて相続人を確定する→③協議がまとまれば相続登記へ→④まとまらない・間に合わないなら相続人申告登記で期限を守る 相続人申告登記は義務を履行したことにはなるが、権利の登記ではないため、その後の遺産分割で不動産を取得した場合は、改めて相続登記が必要になる 相続登記の義務化には、2024年4月より前に発生していた相続(過去の相続)を対象とする経過措置があり、その期限は2027年3月31日です。経過措置そのものの内容はこちらの記事で、3年の期限の数え方(起算日)はこちらの記事で解説していますので、この記事では繰り返しません。 ...

2026年9月21日 · ひぐらしさとし

おひとりさまのお墓と死後事務──誰が納骨してくれるのか

この記事の要点 おひとりさまが亡くなった後の納骨を誰かに託すには、生前に永代供養墓・納骨堂を契約しておく方法と、死後事務委任契約で納骨を頼む相手を決めておく方法を組み合わせて備える考え方があります 死後事務委任契約は、葬儀や納骨などの死後の事務を第三者に頼んでおく契約で、こうした事務を委任する条項を入れておくことができる仕組みです 引き取る方がいないご遺体については、「墓地、埋葬等に関する法律」9条により、市区町村が火葬・埋葬を行う仕組みがあります(火葬後の遺骨の扱いは自治体の運用によります) 祭祀承継者(お墓や仏壇を引き継ぐ人)が決まっていない場合の備えについても、あわせて知っておくと安心です 次の一歩として、お近くの司法書士に相談してみましょう 「自分が亡くなったとき、誰が火葬や納骨の手続きをしてくれるのだろう」──配偶者や子どもがいない、頼れる親族が近くにいないという、いわゆるおひとりさまの方から、こうした不安の声を聞くことがあります。結論から言うと、この不安に備える方法は主に2つあります。ひとつは生前に永代供養墓・納骨堂を契約しておくこと、もうひとつは納骨を含む死後の事務を頼む相手を、死後事務委任契約で決めておくことです。この記事では、それぞれの制度の一般的な仕組みと、引き取り手のない遺骨がどう扱われるかを整理します。 ...

2026年9月20日 · ひぐらしさとし

相続税は金銭一括納付が原則──延納・物納という2つの例外のしくみ

この記事の要点 相続税は、申告書を提出した人が申告期限までに金銭で一括して納めるのが原則(相続税法33条・国税通則法34条) 一括納付が難しい一定の事情があるときに限り、分割で納める「延納」が認められる(同法38条) 延納によっても金銭で納めることが難しいときに限り、不動産などの財産そのもので納める「物納」が認められる(同法41条) 本文 相続税と聞くと「現金で払うもの」というイメージを持たれる方が多いと思いますが、これは制度上の原則です。相続税法33条は、申告書を提出した人はその相続税を、申告期限(10か月)までに納付しなければならないと定めており、国税は金銭で一括して納めるのが原則とされています(国税通則法34条、国税庁タックスアンサーNo.4211)。 ...

2026年9月19日 · ひぐらしさとし

祭祀承継者を遺言で指定する──「お墓は長男に」と書けるのか

この記事の要点 「お墓は長男に」といった祭祀承継者の指定は、民法897条1項ただし書により、遺言に書けば法的な効力を持たせることができます ただし、単なる希望を書いただけの「付言事項」と、法的効力のある「指定」とは扱いが異なるため、指定だと分かる書き方をする必要があります 指定の方法は遺言に限られず生前の書面・口頭でも可能とされていますが、証拠として残す観点からは遺言での指定が実務上安心です 指定を受けた人が承継を辞退できるかどうかは、民法に規定がなく、この点を直接判断した判例も確認できていない論点です 遺産分割協議書に祭祀承継者を書く場合とは、法的な位置づけが異なります 結論から言うと、「お墓は長男に」という一文を遺言に書くこと自体は可能で、書き方次第で法的な効力を持たせることができます。根拠となるのは民法897条1項ただし書です。同項は、系譜(家系図など)・祭具(仏壇・位牌など)・墳墓(お墓)といった「祭祀財産(さいしざいさん)」について、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するのが原則としつつ、ただし書で「被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」と定めています。つまり、慣習よりも被相続人本人の指定が優先されるという組み立てです。祭祀財産が相続財産とは別扱いで、誰がどう承継するかの決まり方については、お墓や仏壇は相続財産に入らない?祭祀財産の承継者の決まり方と引き継ぎの段取りで整理していますので、あわせてご覧ください。この記事では、そのうち「遺言で指定する」という場面に絞って、書き方と注意点を解説します。 ...

2026年9月19日 · ひぐらしさとし

家庭裁判所の審判はいつ「確定」する?──即時抗告の2週間と、登記で使う確定証明書

この記事の要点 家庭裁判所の審判は、審判書を受け取った日にすぐ確定するわけではありません。即時抗告ができる審判は、確定しなければ効力を生じないとされています(家事事件手続法74条2項ただし書) 即時抗告は「2週間の不変期間」内にしなければならず、その期間は、即時抗告をする人が審判の告知を受ける者であるときは、その人が告知を受けた日から進行します(同法86条1項・2項)。告知を受けた日が相続人ごとに違えば、期間が終わる日も人ごとにずれます 遺産分割の審判で不動産を取得した相続人が単独で相続登記を申請するときは、審判書に家庭裁判所の確定証明書を添えて使います なお、この記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月18日 · ひぐらしさとし

戸籍の「再製」とは?──作り直された戸籍に、前の記載が載らないことがある理由

この記事の要点 戸籍の「再製」には、滅失したとき・滅失のおそれがあるときの再製(戸籍法11条)と、本人の申出による再製(同法11条の2)の2種類がある 申出による再製では、訂正された事項の記載のない戸籍が作られるため、再製後の戸籍を見ても、そこに何が記載され、どう訂正されたのかは読み取れない 相続人を確定するときは、戸籍事項欄の再製の記載(戸籍法施行規則34条6号)を確認し、その戸籍だけで完結しない前提で出生まで遡る 「再製」は戸籍を作り直す手続き──2つの種類がある 戸籍の「再製」とは、すでにある戸籍を作り直す手続きのことです。戸籍法は、次の2つの場面を定めています。 ...

2026年9月18日 · ひぐらしさとし

離檀料とお寺とのやりとり──墓じまいで揉めないために

この記事の要点 「離檀料」は法律上の用語ではなく、その支払いを義務づける法律の規定は見当たりません。これまでの供養への謝礼(お布施・寄付)と同じ性質のものと説明されることが多い費用です ただし、檀家規約・墓地使用規則・寺院との契約書に費用の定めがある場合は、その内容によることになります 揉めないための順序は、①檀家規約や手元の書類を先に確認する ②家族・親族で先に合意しておく ③早めに住職へ相談し理由と感謝を伝える ④話し合いの記録を残す、の4つです 金額をめぐる交渉や、話し合いがまとまらない場合の相談先は弁護士です。墓じまいに伴う相続の手続き(祭祀承継者やお墓の名義、相続登記など)は、お近くの司法書士にご相談ください 墓じまいを考え始めた方が最初に不安になるのが、「お寺にいくら払うことになるのか」という点です。結論から申し上げると、「離檀料」という名前の費用について、支払いを義務づける法律の規定は見当たりません。もっとも、だからといって金額の話から入ってしまうと、かえってお寺との関係がこじれ、墓じまいそのものが前に進まなくなることがあります。この記事では、離檀料の位置づけについての一般的な説明と、お寺とのやりとりで揉めないための段取りを整理します。なお、この記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月18日 · ひぐらしさとし