司法書士と行政書士はどう違う?──相続手続きで頼めることの線引き

この記事の要点 不動産の相続登記(名義変更)を代理できるのは司法書士のみで、行政書士が代理することはできません。 遺産分割協議書の作成自体は、司法書士・行政書士のどちらに依頼しても行えます。ただし、はじめから相続登記に用いる目的で作成する場合の扱いには、専門家の間で見解の分かれる部分があります。 自動車の名義変更や農地の届出など、行政書士が窓口となる相続関連の手続きもあります。 依頼したい内容に「登記を伴うかどうか」を軸に考えると、相談先を選びやすくなります。 相続の手続きは、司法書士と行政書士のどちらに相談すればよいか迷う場面が少なくありません。結論から言うと、不動産の相続登記を代理できるのは司法書士だけです。一方で、遺産分割協議書の作成のように、両方の資格者が対応できる手続きもあります。手続きの中身によって頼める窓口が変わるため、まずは違いを押さえておくと迷いにくくなります。 ...

2026年9月7日 · ひぐらしさとし

任意整理とは──裁判所を使わずに返済条件を見直す手続き

この記事の要点 任意整理は、債権者との話し合いによって返済条件を見直す私的な整理であり、法律上に手続きそのものを定めた規定があるわけではない 個人再生・自己破産は裁判所が関与する法的整理である点で、任意整理と異なる(それぞれ民事再生法・破産法に基づく手続き) 認定司法書士が交渉の代理人になれるのは、個々の債権ごとの紛争の目的の価額が140万円を超えない範囲に限られる(司法書士法3条1項7号。1社に複数の債務がある場合は債権ごとに判断される) どの手続きが状況に合っているかは負債の総額や財産の状況などによって異なるため、最終的には専門家への相談が必要 複数の借入先への返済が苦しくなったとき、選択肢の一つとして名前が挙がるのが「任意整理」です。結論から言うと、任意整理とは、裁判所の手続きを経ずに、債権者と直接話し合って利息のカットや返済期間の見直しなどの合意を目指す私的な整理であり、破産法や民事再生法のように手続きそのものを定めた法律があるわけではありません。この記事では、任意整理の位置づけと、個人再生・自己破産との違い、そして認定司法書士が関与できる範囲を一般向けに整理します。 ...

2026年9月7日 · ひぐらしさとし

離婚すると戸籍はどうなる?──復氏・新戸籍編製と、子の戸籍が残る理由

この記事の要点 離婚をして婚姻前の氏に戻る人(復氏する人)は、婚姻前の戸籍がまだ残っていればその戸籍に戻るが、その戸籍がすでに除かれているとき、または本人が新戸籍編製の申出をしたときは、新しい戸籍が編製される 子がいても、その子が未成年か成年かにかかわらず、離婚だけで子の氏や戸籍は当然には変わらない。子を親の戸籍に移すには、別途、家庭裁判所の許可を得て入籍の届出をする必要がある(令和8年4月1日施行の改正民法で離婚後の共同親権が選べるようになった後も同じ) 相続人調査では、離婚歴のある被相続人の戸籍を婚姻前・婚姻中・離婚後とたどり、子がどちらの戸籍に残っているかを追いかける視点が欠かせない 結論から言うと、離婚をすると、婚姻によって氏を改めた側の戸籍は動きますが、その動き方には「婚姻前の戸籍に戻る」パターンと「新しい戸籍が編製される」パターンの二通りがあり、しかも子がいる場合、その子の戸籍は離婚だけでは動きません。相続人を確定する作業でこの分かれ方を知らずにいると、被相続人の戸籍を遡っていく途中で、子の存在を見落としたり、逆に戸籍が変わった理由がわからず手が止まったりすることがあります。 ...

2026年9月6日 · ひぐらしさとし

時効援用の内容証明の書き方──自分で出す場合の注意点

この記事の要点 時効援用の内容証明には、①当事者、②援用する債権の特定、③時効を援用する意思表示、の3点を漏れなく書く 出すときは配達証明付きの内容証明郵便にするのが一般的 出す前に一部弁済や支払い猶予の申し出などをすると、時効期間の満了前なら時効が更新され、満了後なら時効を援用できなくなることがある 認定司法書士が代理できるのは、簡易裁判所の手続きで価額140万円以下のものに限られる(争いが激しいかどうかは、この範囲を決める基準ではない) 「自分の場合に時効が完成しているか」の個別判断はこの記事では行わない。お近くの司法書士にご相談ください 借金の消滅時効を援用するために送る内容証明は、①当事者の特定、②援用する債権の特定、③時効を援用する意思表示、の3点を漏れなく記載し、配達証明付きの内容証明郵便で出すのが基本です。ただし、出す前の行動ひとつで時効援用ができなくなることがあるため、書き方以上に「出す前の注意点」が重要になります。 ...

2026年9月6日 · ひぐらしさとし

借金の時効は5年?10年?──消滅時効のきほんと『時効の完成猶予・更新』

この記事の要点 借りたお金(貸金債権)の消滅時効は、原則として権利を行使できると知った時から5年、権利を行使できる時から10年のいずれか早い方で完成する(民法166条1項) 訴訟や調停などで確定した債権は、本来の時効期間が10年より短くても、時効期間が10年になる(民法169条) 時効の期間が過ぎても、それだけで自動的に借金が消えるわけではない(別途「援用」という手続きが必要) 催告・裁判上の請求・一部弁済などがあると、時効の完成が一時停止(完成猶予)されたり、進行がゼロからやり直しになったり(更新)する 実際の起算点の判断や個別の対応は事実関係によって変わるため、最終的には専門家への確認が必要 「借りたお金には時効がある」という話を聞いたことがある方は多いと思います。では実際には何年で時効になるのでしょうか。結論から言うと、民法上の原則は「権利を行使できると知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」のいずれか早い方です(民法166条1項)。この記事では、借りた側の立場から、消滅時効の期間の数え方と、時効の進行が止まったりリセットされたりする「完成猶予」「更新」という仕組みを一般向けに整理します。なお、貸した側から見た消滅時効の期間や止め方は貸したお金や未払い代金の時効で、時効は自動では成立しないという「援用」の仕組みは時効の援用のきほんで解説していますので、あわせてご覧ください。 ...

2026年9月5日 · ひぐらしさとし

相続の相談前に「家族構成メモ」を手書きで用意すると話が早い理由──書く項目と、分からなくてもいいこと

この記事の要点 相談前に用意すると役に立つのは、正式な図ではなく亡くなった方を中心に家族の名前を並べただけの手書きメモで十分 書く項目の目安は、配偶者/子/先に亡くなった人/(子がいなければ)親・兄弟姉妹/再婚・養子縁組・認知の有無/連絡が取れない人 分からないところは空欄のままでよい。戸籍を取り寄せて相続人を確定するのは司法書士側の仕事で、メモはその出発点になる 相続の相談に行く前に、紙一枚に家族の名前を書き出しておくと、初回相談の話は目に見えて早く進みます。用意するのは、きれいに整った図である必要はまったくありません。亡くなった方を真ん中に置いて、配偶者と子の名前を線でつないだだけの走り書きで十分です。 ...

2026年9月3日 · ひぐらしさとし

実家に同居してきた子の相続──住み続けたい相続人と他の相続人の調整

この記事の要点 親と実家に同居してきた子には、配偶者居住権にあたる法定の居住権制度はありません。配偶者居住権は、その名のとおり配偶者のための制度です ただし裁判例には、被相続人の許諾を得て同居していた相続人について、遺産分割が終わるまでの間は無償で使い続けられる関係が推認されると判断したものがあります 住み続けたい場合の調整は、遺産分割の話し合いの中で行うのが基本です(現物分割・代償分割・換価分割・共有) 代償金をどう用意するか、長年の同居や介護を寄与分(民法904条の2)としてどう位置づけるかが論点になりやすく、相続開始から10年の期間制限にも注意が必要です 相続人どうしで意見が対立している場合は弁護士へ。名義変更(相続登記)の手続きについては、お近くの司法書士にご相談ください 結論から──「同居していた」だけで住み続けられる権利は生じません まず結論です。実家に何十年同居していても、その事実だけで「その家に住み続ける権利」が法律上あたえられるわけではありません。実家(建物と土地)は相続財産に含まれ、他の相続人と分け合う対象になります。 ...

2026年9月3日 · ひぐらしさとし

戸籍に出てくる「戸主」とは?──家督相続と、いまの相続との違い

この記事の要点 古い戸籍には「戸主」「前戸主」という記載が出てくることがあり、これは家制度のもとで一家の代表者とされた人を指す かつては「家督相続」という制度があり、戸主の地位や財産は、原則として一人の相続人に単独で引き継がれる仕組みだった 家督相続は、昭和22年(1947年)5月3日=日本国憲法の施行日以降に開始した相続には適用されなくなっており、相続がいつ開始したかによって適用される制度が変わる(ただし、切り替わりの前後については経過規定による例外も置かれている) 本文 数次相続が絡む案件で、被相続人の出生まで戸籍を遡っていくと、明治・大正・昭和初期に編製された戸籍にたどり着くことがあります。そこに記載されている「戸主(こしゅ)」「前戸主」という文字を見て、いまの戸籍にはない言葉に戸惑う方は少なくありません。この記事では、戸主とは何か、そして戸主制度と結びついていた「家督相続」という古い相続の仕組みについて整理します。 ...

2026年9月2日 · ひぐらしさとし

公益信託とは──2026年4月スタートの新制度で、財産を社会貢献に活かす

この記事の要点 公益信託とは、自分の財産を奨学金・助成・文化振興などの「公益目的」のために使ってもらう信託の仕組みです 2026年(令和8年)4月1日に新しい「公益信託に関する法律」が施行され、約100年ぶりに制度が全面的に生まれ変わりました 行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)の認可制になり、公益法人やNPO法人なども受託者(財産を託される側)になれることが明確になりました 信託財産は金銭だけでなく、不動産や美術品なども託せるようになりました 財団法人を作るほどの規模ではないけれど社会貢献に財産を役立てたい、という方の新しい選択肢です 公益信託とは、ひとことで言えば「自分の財産を、特定の誰かのためではなく、社会のために使ってもらう信託」です。たとえば「亡くなった後、遺産の一部を地元の学生の奨学金に役立ててほしい」「長年集めた美術品を文化振興のために活かしてほしい」──そんな希望を形にするための制度で、2026年(令和8年)4月1日から新しい法律のもとで運用が始まっています。 ...

2026年9月1日 · ひぐらしさとし

相続の初回相談、聞いた話を同席しなかった家族にどう伝える?──言った言わないを防ぐ共有のしかた

この記事の要点 面談で聞いた「まだ条件付きの話」は、伝言を重ねるうちに「もう決まったこと」に変わってしまいやすい メモは「聞いた要点」「今後すべきこと」「まだ未確定の点」の3つを分けて書き留めると、伝えるときの誤解を減らせる 口頭だけに頼らず資料をそのまま見せる、その場で答えを作らずに持ち帰る、という2つの姿勢が役に立つ 相続の相談に、家族の代表者だけで、あるいは一部の家族だけで行くことは珍しくありません。誰と一緒に行くかを決めた後、実は同じくらい大事なのが、聞いてきた内容を同席しなかった家族へどう伝えるかです。結論から言うと、ここで工夫をしておかないと、「言った」「言っていない」という行き違いが起きやすくなります。この記事では、紛争になったときの言い分の話ではなく、あくまで正確に情報を共有するためのコツとして整理します。 ...

2026年8月30日 · ひぐらしさとし