法テラスとは──収入要件と立替制度、利用の流れ

この記事の要点 法テラス(日本司法支援センター)は、総合法律支援法にもとづいて国が設立した「法的トラブル解決のための総合案内所」です。相続・借金・離婚などの民事の困りごとについて、収入と資産が一定の基準以下の方は、無料の法律相談(同じ問題につき3回まで・1回30分)と、弁護士・司法書士の費用の「立替え」を利用できます 立替えは「無料」ではありません。法テラスがいったん費用を支払い、利用者は原則として分割で法テラスに返済します(利息はかかりません) 利用の目安は、たとえば単身の方で手取り月収182,000円以下(東京都特別区・大阪市などは200,200円以下)、現金・預貯金180万円以下(2026年9月時点の法テラス公式サイトの数値) 相談は電話(法テラス・サポートダイヤル)またはWebで予約し、法テラスの地方事務所か、法テラスと契約している弁護士・司法書士の事務所で受けます。費用の立替えは、申込み後に法テラスの審査(通常2週間程度)を経て始まります 司法書士が法テラスの制度で担えるのは、簡易裁判所で扱う140万円以下の事件の代理と、裁判所に提出する書類の作成、およびこれらに関する法律相談です。地方裁判所の訴訟や140万円を超える事件の代理は弁護士の領域で、この線引きは法テラスを使う場合も変わりません 「弁護士や司法書士に相談したいけれど、費用が心配で踏み出せない」。そんなときに知っておきたいのが、法テラスの制度です。この記事では、法テラスとは何か、誰が使えるのか、何をどこまで頼めるのかを、相続の相談を念頭に整理します。なお、この記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。金額などの基準は改定されることがあるため、実際に利用する際は法テラスの公式サイトや窓口で最新の情報を確認してください。 ...

2026年9月11日 · ひぐらしさとし

遺贈の「放棄」に期限はある?──特定遺贈と包括遺贈で異なるルール

この記事の要点 特定の財産を譲る「特定遺贈」の放棄には、原則として期限がない(民法986条)。ただし利害関係人から相当の期間を定めた催告を受けた場合は、期間内に答えないと承認したものとみなされる(民法987条) 遺産の全部または割合で譲られる「包括遺贈」の受遺者は「相続人と同一の権利義務」を持つとされ(民法990条)、放棄には相続放棄と同じ3か月の熟慮期間・家庭裁判所への申述が必要になる 「遺贈だから期限なし」と思い込むと、包括遺贈のケースで3か月を過ぎてしまい、放棄したくてもできなくなる落とし穴がある 「遺言で財産を譲ると書かれていたが、事情があって受け取りたくない」というケースがあります。相続放棄には「3か月以内」という期限があることはよく知られていますが、遺贈の放棄にはどのようなルールがあるのでしょうか。実は、遺贈の種類によって扱いがまったく異なります。 ...

2026年9月10日 · ひぐらしさとし

代襲相続の原因、戸籍でどこまでわかる?──死亡・廃除は載るが、放棄・欠格は載らない

この記事の要点 代襲相続が起こる原因は「死亡・相続欠格・廃除」の3つで、相続放棄は原因に含まれない 死亡と廃除は戸籍の身分事項欄に記載されるため戸籍で確認できるが、相続欠格と相続放棄は戸籍に記載が残らない 「戸籍を見ても代襲相続が起きているかどうか判断できない」ケースがあり、その場合は証明書や家庭裁判所への照会など戸籍以外の資料で確認する必要がある 戸籍を読み進めていると、「この人は代襲相続の対象になっているのだろうか」と立ち止まる場面があります。結論から言うと、戸籍だけを見れば代襲相続の有無がすべてわかる、というわけではありません。代襲相続の原因のうち、戸籍に記載が残るものと、まったく記載が残らないものがあるためです。 ...

2026年9月10日 · ひぐらしさとし

亡くなった親に借金があるか調べる方法──信用情報機関への開示請求

この記事の要点 親が亡くなった後の借金調べは、CIC・JICC・全銀協(KSC)という3つの信用情報機関に、法定相続人が開示請求することで一定範囲がわかる ただし信用情報機関に載るのは金融機関・貸金業者・クレジット会社との取引が中心。個人間の借金や税金の滞納は載らず、連帯保証債務も記録に表れないことが一般的 相続放棄には原則3ヶ月の期限(熟慮期間)があるため、借金の調査は早めに動く必要がある 「父が亡くなった。遺品を整理していたら消費者金融のカードが出てきた──借金はどのくらいあるのだろうか」。相続が始まると、プラスの財産だけでなく、亡くなった方(被相続人)の負債の有無も確認しておく必要があります。負債を調べる代表的な方法のひとつが、信用情報機関への開示請求です。 ...

2026年9月10日 · ひぐらしさとし

司法書士と税理士の役割分担──相続で「登記の人」と「税金の人」

この記事の要点 相続の手続きでは、不動産の名義変更(相続登記)は司法書士、相続税の申告・税額相談は税理士と、法律で担当する業務が分かれている 相続の場面で司法書士が案内できる税金は、登記を受けるためにかかる「登録免許税」に限られるという例外がある 相続税がかかるかどうか、いくらになるかという個別の税務相談・申告代理は税理士の業務であり、司法書士は扱えない どちらに相談すればよいか迷ったときは、まず窓口となった専門家に聞けば、必要に応じてもう一方につないでもらえる 相続の手続きを進めていると、「この件は司法書士と税理士のどちらに聞けばよいのか」と迷う場面が出てきます。結論から言うと、相続の場面では大きく分けて「登記の人(司法書士)」と「税金の人(税理士)」に役割が分かれており、それぞれが法律で担当できる業務の範囲を定められています。この記事では、その役割分担の考え方を整理します。 ...

2026年9月9日 · ひぐらしさとし

過払い金とは──いまさら聞けない仕組みと時効の話

この記事の要点 過払い金とは、利息制限法の上限金利を超えて支払っていた利息について、貸金業者に返還を求められる権利のこと(民法上は不当利得返還請求権) 2010年6月18日に貸金業法改正が完全施行され、上限を超える支払いを有効な弁済とみなす規定が廃止された結果、「グレーゾーン金利」と呼ばれた状態は解消された 過払い金の返還請求権にも時効があり、継続的な取引については最終取引日を起点として説明されるのが一般的 認定司法書士が代理できるのは、1つの請求(債権)あたり140万円以下の場合に限られる(司法書士法3条1項6号・7号。実際には1社あたりの請求額がこれにあたることが多い) 具体的に自分に過払い金があるかどうかは取引履歴を精査しないと分からないため、判断は専門家への相談が前提になる 「過払い金」という言葉は聞いたことがあっても、その仕組みまで正確に説明できる方は多くありません。結論から言うと、過払い金とは、利息制限法という法律が定める上限金利を超えて支払っていた利息のうち、払いすぎた分を貸金業者に返してもらえる権利のことです。この記事では、過払い金がなぜ生まれたのかという制度の背景と、時効についての一般的な考え方、相談先の分かれ目を整理します。 ...

2026年9月9日 · ひぐらしさとし

相続の相談は弁護士?司法書士?──「もめているか」で分かれる相談先

この記事の要点 相続の相談先を選ぶ大きな目安は「相続人どうしがもめているかどうか」。ただしこれはあくまで目安で、最終的な判断は個別の事案の内容によります 訴訟事件その他の法律事件について、報酬を得る目的で代理などの法律事務を取り扱うことは、弁護士法72条により原則として弁護士の職域です 司法書士は相続登記や裁判所提出書類の作成に加え、認定を受けた司法書士に限り、140万円以下の簡易裁判所の手続きの代理と、140万円以下の民事の紛争についての相談・裁判外の和解の代理までを担当できます まず司法書士に相談し、途中で対立が深刻になった段階で弁護士へ引き継ぐという流れが、実務ではよく見られます 相続の相談先を「弁護士か司法書士か」で迷ったとき、最初の目安になるのは相続人どうしがもめているかどうかです。話し合いがまとまりそうな段階であれば司法書士に相談できる範囲は広く、話し合いが決裂し裁判所での対立に発展しそうな段階では弁護士の領域が中心になります。もっとも、これはあくまで一般的な目安であり、個々の事案では財産の内容や相続人の人数、対立の深さによって当てはまり方が変わるため、最終的な判断は必ず個別の事情に照らして行う必要があります。 ...

2026年9月8日 · ひぐらしさとし

自己破産すると持ち家はどうなる──登記簿から見た破産手続きの流れ

この記事の要点 自己破産をしても、持ち家の名義はすぐには変わらない。所有権移転登記が入るのは、破産管財人による任意売却または競売が実際に成立した時点 財産がほとんどない「同時廃止」では破産管財人が選任されず、不動産を売却する手続き自体が生じないことが多い(管財事件になるかどうかは個別事情による) 住宅ローンの残高が不動産の評価額を上回る「オーバーローン」の場合、破産財団としての価値がないと判断され、破産管財人の手を離れて抵当権者による競売に委ねられることがある 破産法258条1項2号にもとづき、裁判所書記官が破産財団に属する不動産の登記があることを知ったときは「破産手続開始」の登記が嘱託されるが、これは所有権移転そのものではなく処分に注意を促す公示にとどまる 破産手続の代理は弁護士の業務であり、司法書士が関われるのは裁判所提出書類の作成援助まで 自己破産をすると、持ち家は必ずすぐに人手に渡ってしまう──そう思われがちですが、結論から言うと、破産手続開始の決定が出た時点で登記簿の名義がただちに書き換わるわけではありません。破産手続開始の決定によって生じるのは、破産者の財産を管理し処分する権限が破産管財人の手に移ることであって、所有権そのものが破産管財人や債権者に移るわけではないからです。名義(所有権)が移転する登記が入るのは、破産管財人による任意売却、または競売によって、その不動産が実際に買主・買受人へ売却された段階です。この記事では、自己破産の手続きが登記簿の上でどのように現れるのかを、一般的な流れとして整理します。 ...

2026年9月8日 · ひぐらしさとし

相続の話し合い、全部を一度に決めなくていい──『期限があること』と『保留していいこと』の分け方

この記事の要点 相続の話し合いは「その場で全部決める」ものではなく、期限があることと、時間をかけてよいことを分けると気持ちが楽になる 相続放棄(3か月)・相続税の申告(10か月)・相続登記の申請(3年)など、期限があることは優先して話す必要がある 実家をどうするか、遺品をどう分けるかなど期限のない話題は、期限のある手続きを先に進めたうえで「今回は保留」と決めてよい 家族が亡くなったあと、「早く話し合わなければ」という気持ちに追われて、実家の将来のことまで一度の集まりで結論を出そうとしてしまう方が少なくありません。しかし、相続の話し合いに必要なのは「全部を一度で決めること」ではなく、「何を先に決めるべきかを分けること」です。※執筆時点(2026年09月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月7日 · ひぐらしさとし

不動産取得税は登記原因で決まる──相続・遺贈・死因贈与・売買の違い

この記事の要点 不動産取得税がかかるかどうかは、名義変更の理由(登記原因)によって決まる 相続による取得は原則非課税だが、相続人以外の人が受け取る「特定遺贈」は原則課税になる 死因贈与は民法上「贈与契約」と整理され、不動産取得税では非課税規定にいう「相続」に当たらないものとして、原則課税として扱われている 不動産の名義を変えるとき、その理由(登記原因)が相続なのか、遺贈なのか、贈与なのかによって、不動産取得税がかかるかどうかが変わります。同じ「亡くなった方から不動産を受け継ぐ」場面でも、扱いが分かれる点に注意が必要です。※執筆時点(2026年09月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月7日 · ひぐらしさとし