「しなければならない」「することができる」「ものとする」の違い──条文の語尾で義務か任意かを読み分ける【相続登記の条文で解説】

この記事の要点 「〜しなければならない」は義務を課す書き方。相続登記の申請(不動産登記法76条の2第1項)のように、怠ると過料などの不利益がつながっていることがある 「〜することができる」は、するかどうかを本人が選べる(権利や裁量がある)書き方。相続人申告登記の申出(同法76条の3第1項)が例 「〜ものとする」は法律の中に定義がなく、原則や方針の宣言、行政側への義務付け、念押し、読み替えの指示など、いくつかの使われ方がある。読むときは「誰が主語か」「何を定めているか」を条文ごとに確かめる 法律の条文は、同じ「する」という動作でも、語尾の書き方で意味が大きく変わります。結論から言うと、「しなければならない」は義務、「することができる」は権利や選択の余地、「ものとする」は原則の宣言や念押しなどの複数の顔を持つ言い回しです。この3つを読み分けられると、「これは必ずやらなければいけないのか、やってもやらなくてもよいのか」が条文から直接読み取れるようになります。以下は、執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月8日 · ひぐらしさとし

登記が終わった後の書類は郵送してもらえる?──窓口受け取りと郵送での受け取り方

この記事の要点 登記が終わった後に返ってくる書類は、法務局の窓口で受け取るほかに、郵送で送ってもらうこともできる 郵送を希望するときは、申請の時点で申し出ておくのが条文の建て付け。登記識別情報の書面と登記完了証は「送付を求める旨」と「送付先」を申請情報の内容にしておく必要がある 登記識別情報を記載した書面は本人限定受取郵便など慎重な方法で送られ、郵送にかかる費用(郵便切手)は申請した人が負担する 不動産の登記が終わると、法務局から書類が返ってきます。遠方の法務局に申請したときなどに「受け取りのためにもう一度出向かないといけないのか」と気になる方は多いのですが、結論から言えば、郵送で送ってもらうことができます。ただし、そのためには申請のときにあらかじめ申し出ておく必要があります。 ...

2026年9月8日 · ひぐらしさとし

相続の話し合い、全部を一度に決めなくていい──『期限があること』と『保留していいこと』の分け方

この記事の要点 相続の話し合いは「その場で全部決める」ものではなく、期限があることと、時間をかけてよいことを分けると気持ちが楽になる 相続放棄(3か月)・相続税の申告(10か月)・相続登記の申請(3年)など、期限があることは優先して話す必要がある 実家をどうするか、遺品をどう分けるかなど期限のない話題は、期限のある手続きを先に進めたうえで「今回は保留」と決めてよい 家族が亡くなったあと、「早く話し合わなければ」という気持ちに追われて、実家の将来のことまで一度の集まりで結論を出そうとしてしまう方が少なくありません。しかし、相続の話し合いに必要なのは「全部を一度で決めること」ではなく、「何を先に決めるべきかを分けること」です。※執筆時点(2026年09月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月7日 · ひぐらしさとし

不動産取得税は登記原因で決まる──相続・遺贈・死因贈与・売買の違い

この記事の要点 不動産取得税がかかるかどうかは、名義変更の理由(登記原因)によって決まる 相続による取得は原則非課税だが、相続人以外の人が受け取る「特定遺贈」は原則課税になる 死因贈与は民法上「贈与契約」と整理され、不動産取得税では非課税規定にいう「相続」に当たらないものとして、原則課税として扱われている 不動産の名義を変えるとき、その理由(登記原因)が相続なのか、遺贈なのか、贈与なのかによって、不動産取得税がかかるかどうかが変わります。同じ「亡くなった方から不動産を受け継ぐ」場面でも、扱いが分かれる点に注意が必要です。※執筆時点(2026年09月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月7日 · ひぐらしさとし

相続登記の「3年」はいつから数える?──起算日がずれるケースを整理

この記事の要点 相続登記の申請義務の「3年」は、死亡日からではなく「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日」から数える(不動産登記法76条の2第1項) 遺言の存在を後から知った場合は、その遺言によって取得したと知った日が起算日になる 法定相続分どおりの相続登記をした後に、遺産分割協議で法定相続分を超える持分を取得した場合は、分割が成立した日から改めて3年のカウントが始まる(同条2項) 施行日(2024年4月1日)より前に開始していた相続にも義務は及び、この場合の起算日は「知った日」と施行日のいずれか遅い日になる(令和3年法律24号附則5条6項)。法務省は期限を令和9年(2027年)3月31日までと案内している 相続登記の申請義務化(2024年4月施行)については「3年以内に登記しないと過料の対象になる」という説明を目にする機会が増えました。ただ、この「3年」がいつから数え始まるのかは、実は一律ではありません。結論から言うと、起算日は死亡日ではなく「知った日」であり、しかも状況によって数え直しが生じる場合があります。 ...

2026年9月6日 · ひぐらしさとし

離婚すると戸籍はどうなる?──復氏・新戸籍編製と、子の戸籍が残る理由

この記事の要点 離婚をして婚姻前の氏に戻る人(復氏する人)は、婚姻前の戸籍がまだ残っていればその戸籍に戻るが、その戸籍がすでに除かれているとき、または本人が新戸籍編製の申出をしたときは、新しい戸籍が編製される 子がいても、その子が未成年か成年かにかかわらず、離婚だけで子の氏や戸籍は当然には変わらない。子を親の戸籍に移すには、別途、家庭裁判所の許可を得て入籍の届出をする必要がある(令和8年4月1日施行の改正民法で離婚後の共同親権が選べるようになった後も同じ) 相続人調査では、離婚歴のある被相続人の戸籍を婚姻前・婚姻中・離婚後とたどり、子がどちらの戸籍に残っているかを追いかける視点が欠かせない 結論から言うと、離婚をすると、婚姻によって氏を改めた側の戸籍は動きますが、その動き方には「婚姻前の戸籍に戻る」パターンと「新しい戸籍が編製される」パターンの二通りがあり、しかも子がいる場合、その子の戸籍は離婚だけでは動きません。相続人を確定する作業でこの分かれ方を知らずにいると、被相続人の戸籍を遡っていく途中で、子の存在を見落としたり、逆に戸籍が変わった理由がわからず手が止まったりすることがあります。 ...

2026年9月6日 · ひぐらしさとし

成年後見人には誰がなれる?──親族後見人・専門職後見人・市民後見人のちがい

この記事の要点 成年後見人は、申立ての際に候補者を挙げることはできても、最終的に誰を選ぶかを決めるのは家庭裁判所です(民法843条) 後見人には大きく分けて「親族後見人」「専門職後見人(弁護士・司法書士・社会福祉士など)」「市民後見人」「法人後見」という選択肢があります 「市民後見人」という呼び方は法律で定義された用語ではなく、研修を受けた市民が家庭裁判所に後見人候補として推薦される仕組みを指す、行政施策上の呼び方です 結論から言うと、成年後見人に「誰がなるか」は、申立人の希望どおりに決まるとは限りません。申立ての際に候補者を挙げることはできますが、実際に選ぶのは家庭裁判所であり、本人の状況によっては親族以外の人や法人が選ばれることもあります。 ...

2026年9月5日 · ひぐらしさとし

判決や支払督促で勝っても払ってもらえないとき|財産開示手続と第三者からの情報取得手続の基礎

この記事の要点 判決や支払督促などで「勝っても」、裁判所が自動的に相手の財産を探して回収してくれるわけではありません 相手の財産が分からないときのために、裁判所を通じて財産を調べる「財産開示手続」と「第三者からの情報取得手続」という制度があります(民事執行法196条以下) どちらも窓口は地方裁判所です。このうち財産開示手続では、債務者が正当な理由なく出頭を拒んだり嘘の陳述をしたりすると刑事罰の対象になります 執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月5日 · ひぐらしさとし

「ただし書」「本文」「前段・後段」「柱書」とは──条文の一つの項の中を読み分ける言葉【相続の条文で解説】

この記事の要点 条文の一つの項の中は、さらに細かく呼び分けられます。「ただし、」で始まる文が「ただし書」、その手前が「本文」。二つの文が並ぶときは「前段」と「後段」。「一、二、三…」の号を束ねる冒頭の部分が「柱書(はしらがき)」です 見分け方は、文の始まりと終わりの言葉でほぼ機械的に決まります。「ただし、」「この限りでない」ならただし書、「この場合において、」「〜も、同様とする」なら後段です これらの呼び名は、条文自身が別の条文を指すときにも使われます(「第十一条本文」「第九条ただし書」「前項前段」など)。読めるようになると、条文の中の「あの部分を見よ」という指示が追えるようになります 「条」「項」「号」という階層の話は、姉妹編の条・項・号の読み方と枝番号で整理しました。今回はその一段下、一つの項の内側の呼び名です。相続の条文を例に、実際の文言で見ていきます(執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です)。 ...

2026年9月4日 · ひぐらしさとし

登記の委任状に有効期限はある?──本人が亡くなっても代理権が消えないという特別なきまり

この記事の要点 登記の委任状そのものについて、有効期限を定めた規定は置かれていません。「3か月以内」という期限があるのは、委任状に添える印鑑証明書のほうです(不動産登記令18条3項) 登記の申請を委任した本人が亡くなっても、委任による代理人の権限は消滅しません(不動産登記法17条1号)。「本人の死亡で代理権は消滅する」という民法の原則に対する例外です ただし、代理権が残ることと、その登記をそのまま進められるかどうかは別の話です。相続がからむ場面の可否はお近くの司法書士にご確認ください 不動産の登記を司法書士に依頼すると、委任状に署名・押印を求められます。「いつまで有効なのか」「日付が古いと使えないのか」と気になるところですが、結論から言うと、委任状の有効期限を定めた規定は置かれていません。なお、この記事は執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月4日 · ひぐらしさとし