成年後見開始の申立てはどう進む?──誰が申し立てられる?審判までの流れ

この記事の要点 後見開始の申立ては誰でもできるわけではなく、本人・配偶者・四親等内の親族・市区町村長など、法律で決まった人に限られる 申立て先は本人の住所地の家庭裁判所で、法律上は原則として「鑑定」を経て審判が行われる(明らかにその必要がないと認められるときは省略される) 審判が確定すると、家庭裁判所からの嘱託によって法務局の後見登記に記録される(本人や後見人が自分で登記申請するわけではない) 「親の物忘れが進んできたので後見人をつけたい」と思っても、思い立った人が誰でも家庭裁判所に申し立てられるわけではありません。本記事は、執筆時点(2026年08月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月4日 · ひぐらしさとし

民事調停とは|話し合いで解決を目指す手続きの仕組みと注意点

この記事の要点 民事調停は、裁判官と調停委員による「調停委員会」が間に入り、話し合いで紛争の解決を図る簡易裁判所の手続き 合意が成立して調書に記載されると、判決と同じように強制執行の根拠になる効力を持つ 合意ができなくても「調停に代わる決定」という仕組みがあり、異議が出なければ確定するが、異議が出ると効力を失う これまでの記事では、金銭トラブルの解決手段として支払督促・少額訴訟を単独で取り上げてきました。今回は、話し合いによる解決を図る「民事調停」そのものの仕組みに絞って整理します。 ...

2026年8月4日 · ひぐらしさとし

「時」「とき」「場合」の使い分け──漢字とひらがなで意味が変わる条文の読み方【相続の条文で解説】

この記事の要点 法令では、漢字の「時」はその出来事が起きた時点(タイミング)を、ひらがなの「とき」は「もし〜なら」という仮定の条件を表すように書き分けられている 「場合」も仮定の条件を表す言葉で、条件が二重になるときは、**大きい条件に「場合」、小さい条件に「とき」**を使うのが一般的な書き方とされる ただしこれは法令を作るときの用語法の慣行であり、使い分けそのものを定めた法令があるわけではない 条文を読んでいると、漢字の「時」とひらがなの「とき」の両方が出てきます。同じ文の中に両方が並んでいることさえあります。これは誤記でも気まぐれでもなく、法令では意味によって書き分けられています。結論から言うと、漢字の「時」は時点、ひらがなの「とき」は条件です。本記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月3日 · ひぐらしさとし

不動産の登記はどこの法務局に出す?──管轄のきまりと、間違えたときの扱い

この記事の要点 不動産の登記の申請は、その不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に出すのが原則 離れた場所に不動産が複数あるときは、管轄する法務局ごとに分けて申請することになる 管轄に属しない申請は却下の対象で、実際には取り下げて出し直すという取扱いが一般的とされる 「相続した実家の名義を変えたいのですが、近所の法務局でできますか」。窓口でよく出る質問です。結論から言えば、登記の申請を出す先は、申請する人の住まいではなく、その不動産がある場所で決まります。 ...

2026年8月3日 · ひぐらしさとし

相続の相談で、親の判断能力が気になるとき──家族が迷わず伝えるためにできること

この記事の要点 気になる様子に気づいたときに大切なのは「疑うこと」ではなく、気づいた事実をそのまま家族や相談先と共有すること 症状を決めつけたり診断したりせず、医学的な判断は医師など医療の専門家に委ねる 早めに気づきを共有しておくことが、本人の意思を大切にしながら相続の相談を進める力になる 相続の相談に行こうとしたとき、「最近、親の様子が前と少し違う気がする」と感じても、それを誰にどう伝えればいいか分からず、一人で抱え込んでしまう家族は少なくありません。こうした場面で大切なのは、様子の変化を「疑い」として詮索することではなく、気づいたことをそのまま家族や相談先と共有することです。 ...

2026年8月2日 · ひぐらしさとし

相続税の配偶者の税額軽減とは──「1億6,000万円」の意味と、税額ゼロでも申告が必要な理由

この記事の要点 相続税には「配偶者に対する相続税額の軽減」という制度があり、配偶者が取得した遺産の額が「配偶者の法定相続分相当額」と「1億6,000万円」のいずれか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかからない(相続税法19条の2第1項) この軽減の適用を受けるには相続税の申告書(または更正の請求書)を提出することが法律上の要件であり(同条3項)、軽減の結果として納税額がゼロになる場合でも申告書の提出は省略できない 贈与税の「おしどり贈与」(贈与税の配偶者控除)とは、かかる税目も要件も別の制度なので混同しないよう注意が必要 相続税には、亡くなった方の配偶者が遺産を受け取るときに税負担を大きく軽くする「配偶者に対する相続税額の軽減」という制度があります(相続税法19条の2)。よく耳にする「1億6,000万円」という金額の意味を、正しく理解している方は意外と多くありません。 ...

2026年8月2日 · ひぐらしさとし

未支給年金・葬祭費・埋葬料の請求期限──亡くなった後に請求できるお金には時効がある

この記事の要点 亡くなった方について請求できる公的なお金のうち、未支給年金は条文上の時効が五年、葬祭費・埋葬料は二年です(国民年金法102条1項、厚生年金保険法92条1項、健康保険法193条1項、国民健康保険法110条1項、高齢者の医療の確保に関する法律160条1項)。 これらは遺産分割の結論を待って動くものではありません。請求しないまま期間が過ぎれば、その請求権は時効によって消滅すると条文に定められています。 給付ごとに根拠となる法律も窓口も違います。年金は年金事務所、国民健康保険・後期高齢者医療の葬祭費は市区町村、健康保険の埋葬料は協会けんぽ・健康保険組合です。 本記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月1日 · ひぐらしさとし

戸籍の「身分事項欄」の読み方──婚姻・養子縁組・認知の記載から相続人を読み取る

この記事の要点 続柄欄が「その人の立ち位置」を示すのに対し、身分事項欄は「その人にいつ何が起きたか」という出来事の記録を示す欄 認知は父と子の双方、普通養子縁組は養親と養子の双方、婚姻・離婚は夫と妻の双方の身分事項欄に記載される(戸籍法施行規則35条) そのため、被相続人自身の戸籍の身分事項欄をたどることで、認知した子・養子縁組した子・前の婚姻の存在といった相続人確定に直結する事実を拾える 本文 結論から言うと、相続人を確定する作業では、続柄欄と身分事項欄を役割分担で読み分けるのが基本です。戸籍の「続柄」欄の読み方で扱ったとおり、続柄欄はその人が父母や筆頭者から見てどの続き柄にあたるかという「立ち位置」を示す欄です。これに対して身分事項欄は、出生・婚姻・離婚・養子縁組・離縁・認知・死亡といった「その人の身の上に起きた出来事」を、日付とともに記録していく欄です。相続人の範囲を左右する事実の多くは、続柄欄ではなく身分事項欄に現れます。 ...

2026年8月1日 · ひぐらしさとし

任意後見契約の3つの型──将来型・移行型・即効型はどう違う?

この記事の要点 将来型・移行型・即効型は、任意後見契約を「いつ結び、いつ効力を生じさせるか」による使い方の呼び分けで、法律上の分類ではない どの型でも、契約は法務省令で定める様式の公正証書で結ぶ必要があり(任意後見契約に関する法律3条)、効力が生じるのは家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から(同法2条1号・4条1項) 移行型は判断能力があるうちから財産管理を任せられる一方、誰も監督人の選任を申し立てないまま委任契約の代理権だけが使われ続けることが、形の上では起こりえる構造になっている点に注意が必要 将来型・移行型・即効型の違いは、「契約を結ぶ時期」と「効力を生じさせる時期」の組み合わせの違いです。3つとも同じ任意後見契約であり、法律に3つの型が書かれているわけではなく、実務や文献で使われている呼び分けです。制度の全体像は任意後見契約とは──元気なうちに「将来の後見人」を自分で選ぶで解説していますので、この記事では「型の使い分け」に絞って整理します。本記事は、執筆時点(2026年07月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

認定司法書士に頼める「140万円以下」とは何の金額?|訴額の数え方の基礎

この記事の要点 「140万円」という数字は司法書士法の条文には書かれておらず、裁判所法33条1項1号の額を司法書士法が引用しているという関係にある 基準になる価額の呼び名は手続きごとに違い、訴訟なら「訴訟の目的の価額」、支払督促なら「請求の目的の価額」、民事調停なら「調停を求める事項の価額」と条文上書き分けられている 附帯請求は算入せず、一つの訴えで複数の請求をするときは合算するのが原則。遅延損害金は一般に附帯請求として扱われているが、価額をいくらと見るかは最終的に裁判所が判断する 司法書士に簡易裁判所の手続きを頼めるかどうかの目安として「140万円以下」という数字を見かけますが、これは「相手に請求する金額」そのものではなく、法律上の決まった算定方法で出す価額のことです。この記事では、その価額が何を指すのか、条文の枠組みだけを一般向けに整理します。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし