「廃業しかない」と決める前に──M&A・事業譲渡という選択肢と、動く登記・動かない登記

この記事の要点 会社の出口は「たたむ(解散・清算)」だけではなく、株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割という第三者への引き継ぎ方がある 型によって登記の動き方がまったく違う。事業譲渡そのものは登記事項ではなく、会社の登記簿に「事業を譲渡した」とは記録されない 吸収合併・吸収分割は効力が生じた日から2週間以内、解散後の清算結了も承認の日から2週間以内と、登記に期限がある(会社法921条・923条・929条) 相手方探し・価格・条件交渉は弁護士やM&A支援機関、税金は税理士、登記は司法書士と、聞く相手が分かれる 「後継者がいない。もう会社をたたむしかないだろうか」 ...

2026年8月1日 · ひぐらしさとし

相続関係説明図の書き方──法定相続情報一覧図との違いと、戸籍を返してもらう仕組み

この記事の要点 相続関係説明図は、相続登記の申請書に添えて出す図です。これを出しておくと、一緒に提出した戸籍・除籍の原本を、登記の調査が終わった後に返してもらえると法務局が案内しています 法定相続情報一覧図は、法務局に申し出て登記官の認証文が付いた写しを無料で交付してもらう証明書です。戸籍の束そのものの代わりとして、他の法務局・金融機関・年金の手続にも使えます ひとことで言うと、相続関係説明図=戸籍を返してもらうための添え物/法定相続情報一覧図=戸籍の束の代わりになる証明です。似た形の図ですが、位置づけがまったく違います 相続関係説明図には決まった様式はなく、法務局が相続登記の申請書の記載例のなかで見本を公表しています(被相続人は住所・死亡年月日、相続人は住所・出生年月日を書く形) 一覧図そのものの書き方(様式・記載例・不備で戻される例)は法定相続情報一覧図の作り方にまとめています。**この記事は「2つの図の役割の違い」と「相続関係説明図の書き方」**を扱います 相続登記を自分で進めようとすると、「相続関係説明図」と「法定相続情報一覧図」という、名前も見た目も似た2つの図が出てきます。どちらも家系図のような形をしていて、亡くなった方と相続人を線でつないだものです。 ...

2026年8月1日 · ひぐらしさとし

外国籍になった相続人がいるとき──宣誓供述書と必要書類

この記事の要点 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、相続人としての地位は失われません。変わるのは、そろえる書類の中身です 日本人が外国籍を取得して日本国籍を失うことは「国籍喪失」(国籍法11条1項)または「国籍離脱」(同13条)と呼びます。「帰化」は逆方向、つまり外国人が日本国籍を取得する場合の言葉です(同4条) 在外公館(大使館・総領事館)の署名証明(サイン証明)・在留証明は、日本国籍を有する方向けの制度です。外国籍になった方は原則として発給の対象外とされています 印鑑証明書の代わりとして、現地の公証人などが認証した**宣誓供述書(せんせいきょうじゅつしょ/affidavit)**の提出を求められることがあります 求められる書類・記載事項は提出先によって違います。着手前に管轄の法務局へ事前照会するのが確実です 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、その方が相続人であることは変わりません。 「相続人の一人が、何年も前に外国の国籍を取得していて、いまは日本国籍ではない」というケースで、まず押さえておきたいのがこの点です。手続きで変わるのは、本人であることや住所をどう証明するか、つまり「そろえる書類」の中身だけです。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

任意後見契約の3つの型──将来型・移行型・即効型はどう違う?

この記事の要点 将来型・移行型・即効型は、任意後見契約を「いつ結び、いつ効力を生じさせるか」による使い方の呼び分けで、法律上の分類ではない どの型でも、契約は法務省令で定める様式の公正証書で結ぶ必要があり(任意後見契約に関する法律3条)、効力が生じるのは家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から(同法2条1号・4条1項) 移行型は判断能力があるうちから財産管理を任せられる一方、誰も監督人の選任を申し立てないまま委任契約の代理権だけが使われ続けることが、形の上では起こりえる構造になっている点に注意が必要 将来型・移行型・即効型の違いは、「契約を結ぶ時期」と「効力を生じさせる時期」の組み合わせの違いです。3つとも同じ任意後見契約であり、法律に3つの型が書かれているわけではなく、実務や文献で使われている呼び分けです。制度の全体像は任意後見契約とは──元気なうちに「将来の後見人」を自分で選ぶで解説していますので、この記事では「型の使い分け」に絞って整理します。本記事は、執筆時点(2026年07月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

認定司法書士に頼める「140万円以下」とは何の金額?|訴額の数え方の基礎

この記事の要点 「140万円」という数字は司法書士法の条文には書かれておらず、裁判所法33条1項1号の額を司法書士法が引用しているという関係にある 基準になる価額の呼び名は手続きごとに違い、訴訟なら「訴訟の目的の価額」、支払督促なら「請求の目的の価額」、民事調停なら「調停を求める事項の価額」と条文上書き分けられている 附帯請求は算入せず、一つの訴えで複数の請求をするときは合算するのが原則。遅延損害金は一般に附帯請求として扱われているが、価額をいくらと見るかは最終的に裁判所が判断する 司法書士に簡易裁判所の手続きを頼めるかどうかの目安として「140万円以下」という数字を見かけますが、これは「相手に請求する金額」そのものではなく、法律上の決まった算定方法で出す価額のことです。この記事では、その価額が何を指すのか、条文の枠組みだけを一般向けに整理します。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

土地家屋調査士試験 試験対策 第99回──建物の表題部の更正の登記/調査士会の報告義務・注意勧告と連合会/所有者不明土地管理命令及び管理不全土地管理命令/垂線の足の座標計算/図面の閉鎖及び訂正の申出

問題: 建物の表題部の更正の登記に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。 ア. 建物の表題部に記録された登記原因及びその日付についての更正の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

法定相続情報一覧図の作り方──書式・記載例・やり直しになりやすい例

この記事の要点 一覧図に必ず書くのは「亡くなった方の氏名・生年月日・最後の住所・死亡年月日」と「相続開始のときの同順位の相続人の氏名・生年月日・続柄」(不動産登記規則247条1項1号・2号。このほか作成の年月日と記名が必要)。相続人の住所や被相続人の最後の本籍は、任意で記載できる項目です(ただし住民票の除票が市区町村で廃棄されていて最後の住所を確認できないときは、住所に代えて最後の本籍を記載します) 様式は法務局が公表しているひな型から、相続人の組み合わせに合うものを選べばよい(配偶者と子/子のみ/配偶者と父母/配偶者と兄弟姉妹/代襲相続/旧民法下の相続/養子を含む場合/列挙形式) 相続分や遺産分割の結論は記載事項に入っていないので、書き込まない やり直しになりやすいのは「戸籍が出生時までそろっていない」「続柄を『子』とだけ書いた」「住所を書いたのに住所を証する書面を付けていない」の3つ 制度そのもののしくみ・申出先・メリットは法定相続情報証明制度をやさしく解説にまとめています。この記事は「図を実際にどう書くか」の実践編です 法定相続情報一覧図は、書く項目が法令で決まっている書面です。家系図のように見えますが、自由に情報を足していい図ではありません。不動産登記規則247条1項各号に挙げられた項目を正確に書き、そこに挙げられていない事情(相続分や遺産分割の結論)は足さないのが基本です。相続人の住所や被相続人の最後の本籍、作成者の住所のように、法務局の様式・記載例が記載を認めている(または求めている)項目は別です。各号の項目を外すと、登記官から直すよう求められて出し直しになります。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

セットバック・位置指定道路とは──建て替えのとき効いてくる「道路」の話

この記事の要点 セットバックとは、幅4メートル未満の道のうち特定行政庁が指定したものに接する敷地で、道の中心線から2メートルの線を「道路の境界線」とみなす建築基準法の扱いのこと(同法42条2項) 位置指定道路は、私人がつくった道が特定行政庁の位置の指定を受けて建築基準法上の「道路」として扱われるもの(同法42条1項5号) 目の前の道がどの種別かは、市区町村の建築指導課などに道路種別を照会すれば確認できる 建て替えができるかどうかの判断は特定行政庁と建築士の領域。登記の側では、私道持分が相続登記から漏れていないかの確認が要点になる まず取り寄せるのは、登記事項証明書・公図・地積測量図・名寄帳の4点 セットバックとは、幅4メートル未満の道のうち特定行政庁が指定したものについて、その道の中心線から水平距離2メートルの線を「道路の境界線」とみなす、建築基準法の扱いのことです(同法42条2項)。幅が4メートルに足りない道であれば当然にこの扱いになるというものではなく、条文は特定行政庁の指定を要件としています。つまり、登記簿に載っている自分の土地の一部が、建築基準法の世界では道路として扱われる、ということです。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

「その他」と「その他の」の違い──「の」一文字で条文の読み方が変わる【相続の条文で解説】

この記事の要点 法令では「A、B その他の C」と「A、B その他 C」は書き分けられており、「の」が付くと、前に並んだ言葉は後ろの言葉の例示(代表例)になる 「の」が付かない場合は、前に並んだ言葉と後ろの言葉が対等な列挙で、後ろの言葉は「それ以外のもの」を受け止める役割になる ただしこれは法令を作るときの一般的な用語法であり、最終的な意味はその条文ごとの解釈で決まる 条文を読んでいると、「〇〇その他の□□」という言い回しと、「〇〇その他□□」という言い回しの両方が出てきます。日常の文章なら気に留めない「の」一文字ですが、法令ではこの2つは使い分けられています。本記事は執筆時点(2026年7月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年7月30日 · ひぐらしさとし

登記に使う印鑑証明書に有効期限はある?──3か月以内が要る場面・要らない場面

この記事の要点 不動産登記で「作成後3か月以内」の印鑑証明書が求められるのは、売買や贈与、抵当権の抹消のように、不動産の名義人が「渡す側(登記義務者)」として申請する場面などで、その名義人が出す分です(不動産登記令16条3項・18条3項)。 相続登記で遺産分割協議書に添える相続人の印鑑証明書について、不動産登記令は3か月以内という制限を置いていません。 ただし銀行の相続手続や他の窓口では、それぞれの決まりで期限を求められることがあります。登記の話とは別枠です。 「印鑑証明書は3か月以内のものを」——手続きの案内でよく見かける言い方です。ところが相続登記では「何年も前の印鑑証明書でも大丈夫」と言われることがあり、どちらが本当なのか混乱しやすいところです。結論から言えば、どちらも正しく、場面が違います。 ...

2026年7月30日 · ひぐらしさとし