後継者を決めないまま亡くなると何が起きるか──株式分散の実例と生前にできること

この記事の要点 会社に後継者がいないまま経営者が死亡すると、株式が複数の相続人に分散し、取締役の選任すら決議できなくなることがある 一人会社では取締役がゼロになり、経営者保証・役員貸付金・死亡退職金といった「お金」の整理も同時に降りかかる 生前にできる備えとして、遺言での株式承継先の指定・計画的な生前贈与・種類株式の活用があり、事業承継税制という税の優遇制度も存在する(適用可否は税理士へ) 株式分散の実例は一般化した典型パターンの紹介にとどめる。個別の紛争解決は専門家への相談が必要 「後継者を決めないまま社長に万一のことがあったら、会社はどうなるのか」──多くの中小企業経営者が漠然と抱えながら、後回しにしがちな問いです。 ...

2026年8月30日 · ひぐらしさとし

一人会社の社長が亡くなったら──後継者がいない会社はどうなる?

この記事の要点 取締役1名・株主1名の「一人会社」で社長が亡くなると、会社には取締役も代表者も誰もいない状態が生じる 緊急の対応策として、裁判所に一時取締役・一時代表取締役の選任を申し立てる方法がある(会社法346条2項・351条2項)。申立ての代理は弁護士、裁判所へ提出する書類の作成は司法書士という役割分担がある 株式は相続人に引き継がれるため、相続人が株主として新しい取締役を選ぶ道筋もある 誰も引き継がない場合は解散・清算という選択肢になるが、清算人も自動的には決まらない点に注意が必要 放置すると役員変更登記の懈怠で過料の対象になり、最終的には休眠会社として強制的に解散させられることもある 「社長がすべてを兼ねている」会社は、中小企業では珍しくありません。取締役が1人だけで、その人がほぼ全部の株式も持っている──いわゆる一人会社です。効率的に経営できる反面、その1人に万一のことがあったとき、会社の意思決定を担う人が文字どおり誰もいなくなるという弱点を抱えています。 ...

2026年8月26日 · ひぐらしさとし

自社株の相続と議決権──株式が分散すると会社が動かなくなる理由

この記事の要点 経営者が亡くなって自社株が複数の相続人に分散すると、普通決議(過半数)・特別決議(3分の2以上)の数字が揃わず、役員選任や定款変更が進められなくなることがある 遺産分割がまとまるまでの株式は相続人全員の準共有(共同で持ち合う状態)となり、権利行使者を1人定めて会社に通知しなければ、原則として議決権を行使できない(会社法106条) 会社側の対応策として「相続人等に対する売渡請求」(会社法174条)があるが、定款の定め・特別決議・1年の期限・価格の協議という条件と限界がある 最も確実なのは、経営者が元気なうちに株式を後継者へ集約しておくこと 中小企業の経営者が亡くなったとき、会社にとって最も深刻な影響のひとつが、自社株(経営者が持っていた自社の株式)の分散です。株式が複数の相続人に分かれて承継されると、株主総会で必要な賛成の数が揃わなくなり、役員の選任すら決められない──つまり「会社が動かなくなる」事態が現実に起こりえます。 ...

2026年8月25日 · ひぐらしさとし

代表取締役が亡くなったときの登記──会社が最初にすべき手続きの順番

この記事の要点 代表取締役が亡くなったときは、「登記の書類をそろえる」より先に後任を決められる状態をつくることが出発点になる 後任の決め方は機関設計(取締役会があるか)で変わり、取締役の人数が足りなくなった場合は裁判所に一時取締役・一時代表取締役の選任を申し立てる方法がある(会社法346条2項・351条2項) 亡くなった方が株主でもあった場合、その株式について議決権を行使してもらうには、原則として相続人側で権利を行使する人を決めてもらう必要がある 登記に必要な書類と2週間の期限は別記事にまとめてあるので、この記事は順番と段取りに絞る 代表取締役が亡くなると、会社には「登記」と「日々の意思決定」の二つの課題が同時に降ってきます。ただ、実際に困るのは書類の名前ではなく、何から手をつけるのかという順番のほうです。 ...

2026年8月24日 · ひぐらしさとし

商業登記を放置するとどうなるか──「過料」の根拠条文(会社法976条)を確認する

この記事の要点 商業登記の懈怠に対する過料の根拠条文は会社法976条で、同条は第1号から第35号まで過料事由を列挙する包括規定であり、「登記を怠ったとき」は第1号に規定されている 過料の対象は「登記を怠ったとき」全般であり、商号変更・本店移転・目的変更・役員変更など、会社法915条1項が定める変更登記義務(原則2週間以内)を怠れば、いずれもこの条文の対象になり得る 過料の上限は百万円で、刑事罰ではなく行政上の秩序罰。対象になるのは会社そのものではなく、発起人・取締役・清算人など登記義務を負う個人 「役員変更登記を怠ると過料になる」という話は聞いたことがあっても、その根拠条文が何かまで意識する機会は少ないかもしれません。実はこの過料は役員変更に限った規定ではなく、商業登記全般にかかわる一本の条文(会社法976条)に根拠があります。今回は、条文の構造そのものを確認します。 ...

2026年8月15日 · ひぐらしさとし

株主総会議事録の作り方──登記で使える議事録の要件と記載例

この記事の要点 株主総会の議事録は、会社が自分で作る社内の文書です。作成に資格は要りません。 何を書くかは法律で決まっています。会社法318条1項が作成義務を定め、具体的な記載事項は会社法施行規則72条3項が6つ挙げています。 登記の場面では、登記すべき事項について株主総会の決議が必要なとき、申請書に議事録を添付します(商業登記法46条2項)。 議事録だけでは足りず、株主リストなど別の書面も必要になる場合があります。 議事録は株主総会の日から10年間、本店に備え置く義務があります(会社法318条2項)。 次の一歩:①決議の内容と定款を確認 → ②6つの記載事項を漏れなく書く → ③その登記に必要な添付書面をあわせて確認する。 この記事が扱う範囲 株主総会の議事録には、いろいろな役割があります。社内の記録として残す、株主や取引先に説明する、後から決議の内容を確認する——どれも大切ですが、この記事は「登記の添付書面として使えるか」という一点に絞って、書き方を整理します。 ...

2026年8月8日 · ひぐらしさとし

種類株式とは──「拒否権付株式(黄金株)」を事業承継で使うときの基本と注意点

この記事の要点 種類株式とは、剰余金の配当や議決権など「権利の内容が違う株式」を、1つの会社の中で複数のタイプ発行できるしくみです。 事業承継の場面では、重要事項に「待った」をかけられる拒否権付株式(通称・黄金株)や、議決権のない株式がよく話題になります。 導入するには定款を変更する必要があり、原則として株主総会の特別決議と、2週間以内の変更登記が必要です。 拒否権付株式には、持っている人の判断能力が下がったときや、相続で株式が分散したときに、会社の意思決定が止まってしまうという裏側のリスクがあります。 どの種類株式をどう組み合わせるかは会社ごとの事情で大きく変わります。検討する段階で、お近くの司法書士にご相談ください。 種類株式とは──「権利の中身が違う株式」を作れる制度 種類株式とは、権利の内容が異なる2つ以上のタイプの株式を発行できるしくみのことです。 ...

2026年8月6日 · ひぐらしさとし

NPO法人と登記──設立の流れと、『資産の総額』登記廃止後に注意したい変更登記

この記事の要点 NPO法人(特定非営利活動法人)は、所轄庁の設立認証を受けたあと、法務局で設立の登記をすることによって法人として成立します(特定非営利活動促進法13条1項)。 認証申請に必要な定款・設立趣旨書・事業計画書等の書類作成の代行は行政書士の業務です。司法書士が担うのは、認証を受けたあとの設立登記・変更登記の手続です。 「資産の総額」はかつてNPO法人の登記事項で、忘れず変更登記をする必要がありましたが、2018年10月1日から登記事項ではなくなり、現在は毎年の貸借対照表の公告義務に置き換わっています。 設立登記の登録免許税は非課税(0円)です。ただし代表者の氏名・住所変更などの変更登記は、変更が生じてから2週間以内に必要です。 認証手続そのものについてのご相談は、所轄庁または行政書士へ。 「NPOを立ち上げたいが、認証と登記でどこまでが司法書士の仕事なのか分からない」という声をよく耳にします。結論から言うと、NPO法人の設立は「所轄庁による設立の認証」と「法務局での設立の登記」という2つの手続きからなり、司法書士が担うのは後者(登記)です。この記事では、NPO法人の設立登記までの流れと業務の境界線、そして「かつて忘れやすいと言われていた資産の総額の変更登記」が現在どうなっているかを整理します。 ...

2026年8月4日 · ひぐらしさとし

一般社団法人の設立登記──株式会社との違いと使いどころ

この記事の要点 一般社団法人も、株式会社と同じく「設立の登記」をすることで法人として成立します。根拠になる法律は会社法ではなく「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(一般法人法)です。 株式会社の「株主」「株主総会」「取締役」にあたるのが、一般社団法人では「社員」「社員総会」「理事」です。理事は必ず置きますが、理事会・監事・会計監査人は定款で任意に設置できます。 定款に社員への利益(剰余金)の分配を認める定めを置いても無効とされる点が、株式会社との最大の制度上の違いです。 出資・資本金の払込みという手続きがなく、設立登記の登録免許税は定額6万円です。 この記事は登記手続き・機関設計の違いという制度面の整理にとどめます。税務上どちらが有利かという比較や、事業判断としてどちらを選ぶべきかの助言は範囲外です。 「一般社団法人」という名前を目にする機会が増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。業界団体や同窓会、地域の任意団体などが、法人格を持つために一般社団法人を選ぶ例が増えています。 ...

2026年8月2日 · ひぐらしさとし

「廃業しかない」と決める前に──M&A・事業譲渡という選択肢と、動く登記・動かない登記

この記事の要点 会社の出口は「たたむ(解散・清算)」だけではなく、株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割という第三者への引き継ぎ方がある 型によって登記の動き方がまったく違う。事業譲渡そのものは登記事項ではなく、会社の登記簿に「事業を譲渡した」とは記録されない 吸収合併・吸収分割は効力が生じた日から2週間以内、解散後の清算結了も承認の日から2週間以内と、登記に期限がある(会社法921条・923条・929条) 相手方探し・価格・条件交渉は弁護士やM&A支援機関、税金は税理士、登記は司法書士と、聞く相手が分かれる 「後継者がいない。もう会社をたたむしかないだろうか」 ...

2026年8月1日 · ひぐらしさとし