取締役になれない人とは?──会社法の欠格事由と、在任中に成年後見が始まった取締役の扱い

この記事の要点 取締役になれない人(欠格事由)は会社法331条1項に定められています。現在の条文に挙がっているのは「法人」と「一定の罪を犯して刑に処せられた人」で、成年被後見人・被保佐人は含まれていません 成年被後見人が取締役に就任するには、成年後見人が本人の同意を得たうえで、本人に代わって就任を承諾する必要があります(会社法331条の2第1項) 一方、在任中の取締役が後見開始の審判を受けると、会社との委任の関係が終わり、取締役を退任します(会社法330条・民法653条3号)。保佐・補助の開始では退任しません 退任したら2週間以内に退任の登記が必要です(会社法915条1項)。この退任は「後任が決まるまで務め続ける」仕組みの対象外なので、人数が足りなくなるなら後任選びを急ぐ必要があります 成年後見制度を見直す改正法が公布されていますが、成年後見の見直しの部分は2026年10月時点では未施行です。この記事は現在の条文で説明しています 経営者の方に知っておいてほしいのは、「取締役になれない人」と「取締役を続けられなくなる場面」は、条文上は別の話だということです。 ...

2026年10月13日 · ひぐらしさとし

途中で入れ替えた取締役の任期はいつまで?──任期10年の会社で起きる「任期のずれ」と、そろえる定款の定め

この記事の要点 任期の途中で選ばれた取締役(増員・辞めた人の後任)の任期は、原則としてその人自身が選ばれた時から数えます(会社法332条1項)。前の人の任期の残りを引き継ぐわけではありません 定款で任期を10年にしている会社では、このずれが大きくなりやすく、取締役ごとに改選と登記の時期がばらばらになりがちです 定款や、選任する株主総会の決議で任期を短くすれば、ほかの取締役と満了の時期をそろえられます(会社法332条1項ただし書) 役員変更の登記は変更から2週間以内(会社法915条1項)。登録免許税は資本金1億円以下の会社で1件1万円です まずは自社の定款に「任期をそろえる定め」があるかと、各取締役が選ばれた時期を確かめましょう 結論からお伝えします。会社の取締役を任期の途中で増やしたり、辞めた人の代わりを選んだりした場合、新しく加わった取締役の任期は、ほかの取締役の任期の残りではなく、その人が選ばれた時から改めて数え始めます。 ...

2026年10月11日 · ひぐらしさとし

平取締役が亡くなった──死亡による退任登記と、員数が足りなくなるとき

この記事の要点 代表取締役ではない取締役(いわゆる平取締役)が亡くなったときも、会社は死亡による退任の登記を、変更が生じてから2週間以内に申請する必要がある(会社法915条1項) 添付するのは死亡の事実を証する書面。法務局の記載例では、ご遺族などから会社にあてた「死亡届」か、法定相続情報一覧図の写しが挙げられている 登録免許税は資本金1億円以下の会社で1万円、1億円を超える会社で3万円。後任の就任の登記とあわせて申請すれば1件分で済む 辞任や任期満了と違い、死亡の場合は「後任が就任するまで前の取締役が権利義務を持ち続ける」仕組み(会社法346条1項)が働かない。取締役の人数が足りなくなれば、その時点で欠員になる 欠員になったら、株主総会で後任を選ぶのが基本。すぐに選べないときの裁判所への申立ては別記事で整理している 代表取締役ではない取締役が亡くなったときも、会社は2週間以内に「死亡による退任」の登記を申請しなければなりません。あわせて確認したいのが、亡くなったことで取締役の人数が、法律や定款で決めた最低人数(員数=いんずう)を下回っていないかという点です。下回った場合、辞任のときのように「後任が決まるまで前の取締役が役目を続ける」仕組みは働かないため、会社が自分で欠員を埋める必要があります。 ...

2026年10月10日 · ひぐらしさとし

代表取締役が引っ越した──代表者の住所変更登記と非表示措置との関係

この記事の要点 株式会社の代表取締役の住所は、会社の登記簿に載る事項です。引っ越したら、住所が変わった日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ住所変更の登記を申請します(会社法915条1項) 登録免許税(登記にかかる国の税金)は、資本金1億円以下の会社なら1万円、1億円を超える会社なら3万円です 法務局の記載例では、会社自身が申請するなら添付書類は不要で、住民票の添付も要らないとされています(代理人に頼む場合は委任状が必要) 住所を登記簿に表示しない措置(住所非表示措置)を受けている会社でも、新しい住所を非表示にしたいなら、住所変更の登記と同時に改めて申出が必要です 代表取締役が個人で持っている土地・建物の住所変更登記(期限2年)とは別の手続きで、どちらか一方で済むことはありません 代表取締役が自宅を引っ越したときは、会社の登記簿(商業登記簿)に載っている代表取締役の住所も書き換える必要があります。手続き自体は比較的シンプルですが、期限が「2週間」と短いこと、そして代表取締役の住所を登記簿で見えなくする制度(代表取締役の住所非表示措置)を使っている会社では一手間増えることが、見落としやすいポイントです。 ...

2026年10月9日 · ひぐらしさとし

取締役が結婚して姓が変わった──役員の氏名変更登記と「旧氏の併記」

この記事の要点 取締役・監査役などの氏(姓)が結婚で変わったら、会社は変わった日から2週間以内に役員の氏名変更登記を申請します(会社法915条1項) 法務局の記載例では、添付書類は代理人に頼むときの委任状だけ。登録免許税は資本金1億円以下の会社で1万円、1億円を超える会社で3万円です 婚姻前の氏(旧氏)を登記簿に併記したいときは、会社の代表者から「旧氏の記録の申出」ができます。申し出るかどうかは任意で、登記の申請と同時でも、後から単独でも申し出られます 併記をやめたいときは「旧氏の記録を希望しない旨の申出」をします 経営者の方に知っておいてほしいのは、役員が結婚して姓が変わったときも、会社の登記を直す必要があるという点です。役員の顔ぶれが変わっていなくても、登記簿に載っている「氏名」が変わった以上、変更の登記が必要になります。 ...

2026年10月8日 · ひぐらしさとし

定款・議事録・株主名簿はどこにある?──会社が備え置くべき書類と保存期間

この記事の要点 会社法は、株式会社に対して、定款・議事録・株主名簿・計算書類などを本店(一部は支店にも)に備え置くことを求めています 期間は書類ごとに違います。株主総会議事録と取締役会議事録は10年(本店)、計算書類等は5年(本店)、定款・株主名簿・新株予約権原簿は期間の定めがなく、常に備え置きます 支店を置いている会社では、定款、株主総会議事録の写し(5年)、計算書類等の写し(3年)を支店にも置きます(電子データで作成し、一定の措置をとっている場合は不要) 株主や債権者は、書類ごとに定められた範囲で閲覧などを請求できます。取締役会議事録は、監査役の有無などで請求の仕方が変わります まずは下の一覧表で、自社の書類がそろっているかを確かめるところから始めましょう 「定款を出してくださいと言われたが、どこにしまったかわからない」「議事録はいつまで取っておけばいいのか」──会社の書類について、こうした疑問を持つ経営者の方は少なくありません。結論からいうと、会社法は、主な書類についてどこに(本店・支店)、いつまで(何年)置いておくかを、書類ごとに決めています。 ...

2026年10月7日 · ひぐらしさとし

実質的支配者リストとは──法務局が保管・写しを交付する制度と、銀行から求められる場面

この記事の要点 実質的支配者リストは、株式会社が作成した「実質的支配者(会社を実質的に支配する個人)」の一覧を、本店所在地を管轄する法務局が添付書面と照らし合わせて確認・保管し、登記官の認証文付きの写しを交付する制度です(令和4年1月31日開始) 株式会社の場合、原則として議決権の2分の1(50%)を超えて持つ個人、そのような人がいなければ4分の1(25%)を超えて持つ個人が、この制度の対象となる実質的支配者です 手数料は無料で、窓口のほか郵送でも申出ができます。株主名簿の写しなど、リストの内容を裏付ける書面の添付が必要です 銀行などは法人口座の開設時などに「取引時確認」として実質的支配者を確認します。リストの写しはその場面で使える資料の一つですが、受け付けるかどうかや、どの書類を求めるかは金融機関ごとに異なるため、提出先に確認しましょう 制度の利用は義務ではなく、会社の任意です(執筆時点・2026年10月の制度) 実質的支配者リストとは、会社の「本当の持ち主」に当たる人を会社自身が一覧にまとめ、それを法務局が確認したうえで保管し、写しを出してくれる仕組みです。結論からいうと、会社に利用が義務づけられている制度ではありませんが、銀行で法人口座を開くときなどに実質的支配者を説明する資料の一つとして使える場合があります。以下、制度の中身、誰が実質的支配者に当たるのか、申出の方法、銀行で求められる場面の順に整理します。 ...

2026年10月6日 · ひぐらしさとし

印鑑カードを紛失したら?──会社の印鑑証明書の取り方と、廃止届・再発行・改印の手続き

この記事の要点 会社の印鑑証明書は、法務局が発行する「印鑑カード」がないと取れません(窓口・郵送・証明書発行請求機ではカードを使い、オンライン請求で窓口受取を選んだ場合も受取時に提示します。オンライン請求で送付を選ぶ場合は、カードの提示に代えて印鑑カード番号を送信します) 印鑑カードを紛失したら、本店所在地を管轄する法務局へ「印鑑カードの廃止届」と「新しい印鑑カードの交付申請」を出します。カードそのものの再発行という手続きはありません 代表者印(会社の実印)を変える・なくしたときは「改印届」。代表者個人の実印と、市区町村が発行した作成後3か月以内の印鑑証明書が必要です 印鑑証明書の手数料は、書面請求で1通500円、オンライン請求なら送付450円・窓口受取420円です(令和7年4月1日改定) 窓口では、印鑑カードがあれば委任状なしで代理人でも印鑑証明書を請求できるしくみのため、紛失に気づいたら早めに廃止の届出をしておくのが安全です 会社の印鑑証明書を取るときに欠かせないのが、法務局(登記所)が発行する印鑑カードです。結論からいうと、印鑑カードを紛失したときは「廃止届」と「新しいカードの交付申請」をセットで、本店所在地を管轄する法務局に出すのが基本の流れです。代表者印そのものを変える・なくした場合は、これとは別に改印届が必要になります。 ...

2026年10月5日 · ひぐらしさとし

発行可能株式総数とは──増資で足りなくなったときの定款変更と登記

この記事の要点 発行可能株式総数とは、その会社が発行できる株式の数の上限のことです。定款で定め、登記簿にも載ります(会社法37条1項・911条3項6号) 増資で新しい株式を出したいのに上限の空きが足りないときは、増資の手続の前に、上限を広げる定款変更(株主総会の特別決議)が必要です 上限を変えたら、変更が生じたときから2週間以内に、本店所在地の法務局で変更登記をします。登録免許税は1件3万円で、増資の登記と同じ申請書で出すときは増資分と合算されます 「発行済株式の総数の4倍まで」という制限は、公開会社(株式に譲渡制限がない会社)に関する規制です。株式の全部に譲渡制限がある会社が上限を増やす場合には、この制限は課されません(ただし、譲渡制限をやめるなどして公開会社になる定款変更をするときは、4倍以内に収める必要があります。会社法113条3項) 個別の会社の手続は、お近くの司法書士にご相談ください(増資に伴う税務は税理士へ) 結論から言うと、発行可能株式総数とは「その会社が発行できる株式の数の上限」のことです。増資で新しく株式を発行すれば、発行済みの株式の数は増えていきます。その数が上限に届きそうなとき、あるいはもう届いているときは、増資の手続を進める前に、上限そのものを広げる定款変更と、その変更登記が必要になります。 ...

2026年10月4日 · ひぐらしさとし

定款をなくした──原始定款の謄本・再作成・「現行定款」の作り方

この記事の要点 定款には、設立のときに公証人の認証を受けた原始定款と、その後の変更をすべて反映した現行定款があります。手続で求められるのは、多くの場合「いまの内容」である現行定款です 書面で作った原始定款は、認証した公証人が1通を保存しています。認証を頼んだ人(嘱託人)やその承継人、利害関係のある人は、謄本を請求できます(手数料は1枚250円)。保存期間は、現行の規則では20年です 電子定款は、認証のときに保存の請求をしていれば、あとから同一の情報の提供(700円。書面で受け取るときは1枚20円加算)を受けられます 現行定款は、公証役場では出してもらえません。原始定款に、株主総会の決議などによる変更を時系列で反映して、会社自身が作り直します 会社には定款を本店と支店に備え置く義務があります。見つからないときは、まず原始定款の確保から始めます 「銀行から定款を出してくださいと言われたが、どこにあるかわからない」「設立のときの書類が一式見当たらない」──会社を続けていると、こうした場面に出会うことがあります。定款は、会社の目的や機関の形など、会社の基本的なルールを定めたものです。なくした場合でも、手がかりを順にたどれば、内容を整え直すことができます。 ...

2026年10月3日 · ひぐらしさとし