会社の実印(代表者印)と印鑑届は今も必要?──オンライン申請時代の取り扱いを整理

「会社の実印(代表者印)って、もう作らなくていいんですか」——起業を考えている方から、こう聞かれることが増えています。結論からいうと、登記所(法務局)への印鑑の届出(印鑑届)は、オンライン申請であれば任意になりました。ただし、書面申請では今も届出が必要で、融資や不動産取引などの場面では印鑑証明書そのものが実務上求められることが多く、「もう不要」と単純に言い切れる話ではありません。この記事では、制度の変遷と、現時点で会社の実印・印鑑届をどう考えればよいかを整理します。 ...

2026年7月26日 · ひぐらしさとし

資本金はいくらにする?──1円起業の現実と登記・信用への影響

この記事の要点 会社法上、株式会社の資本金は1円でも設立できる(最低資本金制度は廃止済み) ただし実際には運転資金・信用力の観点から、多くの会社が数十万円〜数百万円で設立している 資本金額は登記事項証明書(登記簿謄本)に記載され、取引先や金融機関から見える数字になる 税負担への具体的な影響は税理士へ相談を 「資本金1円で会社が作れる」は本当か 会社設立を検討する方から、よくこんな質問をいただきます。 ...

2026年7月25日 · ひぐらしさとし

個人事業から会社にする「法人成り」──設立登記の段取りと落とし穴

この記事の要点 「法人成り」とは、個人事業主が新たに会社を設立して事業を法人に引き継ぐことで、登記の手続きとしては通常の会社設立登記と同じ 資本金は現金だけでなく、車両・什器・在庫など事業用の財産を「現物出資」として組み込むこともできる 屋号をそのまま会社の商号にすることはできるが、契約・許認可・口座などの名義は別途ひとつずつ切り替える必要がある 会社の成立日は「登記を申請した日」。事業年度の初日や許認可の切替えタイミングとのズレが、思わぬ手続き漏れにつながる 税務上の損得(消費税・法人税の取扱いなど)は司法書士の業務範囲外。税理士にご相談ください 「個人事業を会社にしたい」と考えたとき、最後の仕上げになるのが会社の設立登記です。結論から言うと、法人成りの登記手続き自体は、これから起業する人がゼロから会社をつくるときの設立登記と変わりません。ただし、個人事業からの移行だからこそ気をつけたい論点──資産の引継ぎ方や名義の切替えなど──があります。ここでは、その段取りと見落としやすい点を整理します。 ...

2026年7月24日 · ひぐらしさとし

「株主リスト」とは──登記のたびに求められる書類と株主名簿との違い

「増資の登記なのに、なぜ株主全員の一覧のような書類を出すのですか」──商業登記の相談で、経営者からよくいただく疑問です。実はこの書類、会社が備え置く株主名簿そのものではなく「株主リスト」という、登記の添付書面としてまったく別の役割を持つ書類です。株主リストは、株主総会の決議や株主全員の同意が適法に成立したことを法務局に示すための証明書類であり、日常的に備え置く株主名簿とは作成目的も記載範囲も異なります。 ...

2026年7月23日 · ひぐらしさとし

監査役の任期は4年──取締役と違う任期ルールと変更登記

この記事の要点 監査役の任期は原則4年(取締役は原則2年)。任期の数え方は「選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」(会社法336条1項) 非公開会社(株式譲渡制限会社)は、定款の定めによって監査役の任期を最長10年まで伸長できる(会社法336条2項) 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社は、そもそも監査役を置くことができない(会社法327条4項) 同じ人がそのまま監査役を続ける場合も、任期満了のたびに「重任」の変更登記が必要 変更登記は変更が生じてから2週間以内(会社法915条1項)。放置すると過料の対象になり得る(会社法976条1号) 「監査役は特にすることがないから、任期も取締役と同じでいいだろう」——中小企業の経営の現場では、こうした思い込みをよく見かけます。しかし会社法上、監査役の任期は取締役の任期とは別のルールで決まっており、任期の長さも計算方法も異なります。取締役の任期管理はできていても、監査役の任期だけがうっかり見落とされ、登記懈怠(けたい=申請を怠ること)につながるケースは少なくありません。 ...

2026年7月22日 · ひぐらしさとし

取締役の辞任・解任の登記──辞めたのに登記簿に残ったままのリスクと必要書類

「取締役を辞めたはずなのに、登記簿を見るとまだ名前が載っている」——こうした相談は珍しくありません。取締役が辞任したり、株主総会で解任されたりしても、それだけでは登記簿の記載は自動的に変わりません。別途、法務局へ変更登記を申請して初めて、登記簿の記載も実態に追いつくのです。 ...

2026年7月21日 · ひぐらしさとし

代表取締役の交代の登記──就任・退任のパターン別 必要書類

「社長を交代することになったが、登記に何を用意すればいいのか分からない」——代表取締役の交代は、単に取締役を1人選ぶときとは必要書類の組み合わせが変わります。すでに取締役を新しく選んだときの添付書類については、取締役を新しく選んだときの登記──就任承諾書・本人確認証明書・印鑑証明書はどれが必要?で整理しました。この記事では、そこからさらに一歩進めて、代表取締役が交代する場面に絞り、辞任・任期満了・死亡というパターンごとに必要書類がどう変わるかを整理します。 ...

2026年7月20日 · ひぐらしさとし

株式交換・株式移転とは──持株会社化で会社をグループ化するときの登記手続き

この記事の要点 株式交換・株式移転は、会社の株式を100パーセント異動させて「完全親会社・完全子会社」の関係をつくる手続き 事業承継やグループ再編の受け皿として持株会社をつくる場面でよく使われる 手続きは株主総会の特別決議→契約書・計画書の作成→効力発生→2週間以内の変更登記という流れ(株式移転は設立登記そのものが効力発生日にあたります) 登記が必要になるのは主に完全親会社側で、完全子会社側は登記事項の変更がないことが多い 税務上の扱いや株主間の対立が絡む場合は、税理士・弁護士への相談が必要になる 「会社をグループ化したい」「複数の会社を1つの持株会社の傘下にまとめたい」というとき、よく使われるのが株式交換と株式移転という手続きです。名前が似ていて紛らわしいのですが、どちらも「ある会社の株式を100パーセント、別の会社(持株会社)に集める」という点で共通しています。この記事では、経営者の方向けに、それぞれの仕組みと登記手続きの流れを整理します。 ...

2026年7月12日 · ひぐらしさとし

事業承継とは──会社を後継者に引き継ぐときに必要な手続きの全体像

この記事の要点 事業承継の法務手続きは、大きく「株式(経営権)の承継」と「代表者変更登記」の2本柱 株式の承継方法には、相続・生前贈与・売買の3パターンがあり、それぞれ手続きと必要な準備が異なる 税制優遇(事業承継税制)を使えるかどうかは税理士への確認が必須。制度の存在を知っておくだけでも準備の選択肢が広がる 事業承継とは、会社の経営権(株式)と経営者の地位(代表取締役等の役職)を、現経営者から後継者へ引き継ぐことです。結論から言うと、法務面で必要になるのは主に「株式をどう後継者に移すか」と「代表者変更の登記」の2つです。 ...

2026年7月10日 · ひぐらしさとし

自己株式の取得(金庫株)とは?──手続きの流れと発行済株式総数の変更登記

この記事の要点 会社が自社の株式を買い取ることを「自己株式の取得」(通称・金庫株)といい、株主総会の決議と一定の手続きが必要 取得できる金額には「分配可能額」という上限があり、これを超えると役員が責任を問われることがある 取得しただけでは発行済株式総数は変わらないが、取得した株式を「消却」して発行済株式総数が減った場合は、2週間以内に変更登記が必要(怠ると過料の対象) 事業承継の準備や、株式の譲渡制限を含めた株主構成の整理を考えるとき、「会社が株主から自社の株式を買い取れないか」という相談が出ることがあります。これが自己株式の取得(実務では「金庫株」とも呼ばれます)です。 ...

2026年7月9日 · ひぐらしさとし