登記の委任状が2枚以上になったら?──「契印」をめぐる実務の傾向

この記事の要点 契印(けいいん)とは、2枚以上に分かれた書類を一体のものとして扱うため、ページのつなぎ目にまたがるように押す印のことで、委任状や登記原因証明情報が複数枚にわたる場面などで求められることがある 「契印」という語は不動産登記規則46条(契印等)にあり、申請書が2枚以上のときの契印は同条が明文で義務づけている。もっとも同条が対象としているのは申請書(と信託目録に記録すべき情報を記載した書面)で、委任状の契印を直接義務づける規定は見当たらない 誰の印を使うか、代理人がまとめて押してよいかといった扱いには幅があり、求められた際は用途を確認しておくと安心 登記の委任状が2枚、3枚になったとき、「ここに契印をお願いします」と言われた経験がある方もいらっしゃると思います。契印とは、2枚以上にわたる書類が一続きのものであることを示すため、ページのつなぎ目にまたがるように押す印のことです。1枚に収まらない委任状や、契約書の形式で作られた登記原因証明情報などで登場します。 ...

2026年9月16日 · ひぐらしさとし

マンションを相続したら管理組合へ届出を──放置すると起きる実務トラブル

この記事の要点 マンションを相続したときの「区分所有者変更届」は、原則として法律上の義務ではなく、管理規約(マンション標準管理規約では第31条)に基づく手続き 届出をしないと、総会の招集通知や管理費・修繕積立金の請求が、亡くなった元の所有者宛のまま届き続けることがある なお、これとは別に、相続した方が国内に住所・居所を持たない場合に「国内管理人」を選任したときは、管理者等への通知が法律上必要(区分所有法第6条の2第3項。2026年〔令和8年〕4月1日施行) 相続登記(名義変更)が終わる前でも、管理組合への届出は行える 管理規約の内容は物件ごとに異なるため、実際の届出の要否・様式・必要書類はお手元の管理規約または管理組合に確認する マンションを相続したら、管理組合への届出も忘れずに マンションを相続すると、多くの方は「相続登記(不動産の名義変更)」に意識が向きます。見落とされがちなのが、管理組合への届出です。 ...

2026年9月16日 · ひぐらしさとし

分筆・合筆とは──土地を分ける・まとめる登記のきほん

この記事の要点 分筆=1筆の土地を登記簿上、複数の土地に分ける登記。合筆=複数の土地を登記簿上、1筆にまとめる登記 合筆には条件があり、地目や所有者が違う土地、抵当権などが付いている土地は原則として合筆できない(不動産登記法41条) 分筆をするには測量が前提になり、登記の申請にあわせて地積測量図を提出する必要がある 分筆・合筆の登記手続きを代理して行うのは、実務上、土地家屋調査士。司法書士はこの手続きの代理を行わない 分筆・合筆は土地家屋調査士へ、名義変更など権利部の登記やその他の不動産登記のご相談はお近くの司法書士へ 「1筆の土地を2つに分けて、子どもたちにそれぞれ相続させたい」「隣り合う2筆の土地をまとめて1つの敷地として使いたい」――相続や土地活用の場面で、こうした希望を実現するために登場するのが「分筆(ぶんぴつ)」と「合筆(ごうひつ)」という登記です。どちらも名前は似ていますが、やることは正反対です。 ...

2026年9月15日 · ひぐらしさとし

マンション建替え決議が成立したら──反対した区分所有者はどうなるのか

この記事の要点 マンションの建替え決議が成立しても、反対した区分所有者がその場で退去や名義変更を迫られるわけではなく、まず「建替えに参加するか」を尋ねる催告の手続きが挟まります。 催告を受けた日から2か月以内(区分所有法63条3項)に回答しないと、法律上「参加しない」旨を回答したものとみなされます。 参加しない区分所有者に対しては、建替えに参加する側が区分所有権・敷地利用権を時価で買い取るよう求める「売渡請求」という制度が用意されています。 売渡請求によって権利が移った場合、実際に登記簿の名義を変更するには、通常の所有権移転登記と同様の手続きが必要です。 買い取り価格を巡って意見が食い違う場合は、この記事の範囲を超える個別交渉になるため、早めに弁護士へ相談することが実務上のポイントです。 マンションの建替え決議は、区分所有者及び議決権の各5分の4以上(一定の要件を満たす建物では4分の3以上)の賛成で成立します。決議が成立すると、次に問題になるのは「賛成しなかった区分所有者はどうなるのか」という点です。決議の瞬間にその人の権利が失われるわけではなく、法律上は段階を踏んだ手続きが用意されています。決議そのものの要件緩和(5分の4から4分の3への緩和など)については、区分所有法が変わった──2026年4月施行の改正で管理組合ができるようになったことで扱っていますので、この記事では決議が成立した後に焦点を絞って整理します。 ...

2026年9月15日 · ひぐらしさとし

登記簿の面積と実測が違う──「縄伸び・縄縮み」と地積更正登記

この記事の要点 登記簿に記載された土地の面積(地積)と、実際に測った面積(実測)が食い違うことは珍しくない 主な原因は明治時代の地租改正までさかのぼる測量誤差で、こうした食い違いは「縄伸び・縄縮み」と呼ばれる 登記簿の地積を実測に合わせて直す手続きが「地積更正登記」で、土地家屋調査士が担当する分野 地積測量図が法務局に備え付けられているかどうかで、売買時の実務対応が変わる 地積更正登記の相談先は土地家屋調査士。登記や名義に関わるその他の相談は、お近くの司法書士へ 登記簿(登記事項証明書)に書かれている土地の面積と、実際にメジャーや測量機器で測った面積が一致しない――このようなケースは、決して珍しいものではありません。原因の多くは、今から100年以上前の測量にさかのぼります。 ...

2026年9月14日 · ひぐらしさとし

所在が分からない区分所有者がいても集会決議を進められる制度とは──マンション管理組合の新しい選択肢

この記事の要点 区分所有者の所在等が分からない場合に、裁判所の手続を経て、その区分所有者を集会決議の母数(分母)から除外できる制度が、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)の改正(令和7年法律第47号・2025年〔令和7年〕5月30日公布)で新設され、2026年(令和8年)4月1日から施行されています。 対象になるのは「所在等が分からない」区分所有者に限られます。連絡がつきにくい・返事がないというだけでは足りません。 似た場面の制度として、土地そのものを対象にする「所有者不明土地管理制度」がありますが、対象や仕組みが異なります。 具体的な申立ての進め方や、自分の管理組合で使えるかどうかの判断は個別事情によって変わるため、検討段階になったらお近くの司法書士にご相談ください。 マンションの管理組合の集会決議は、原則として区分所有者全員を母数(分母)にして、賛成した人数・議決権の割合で成立・不成立が決まります。しかし、相続や転居が繰り返されるうちに「誰が今の区分所有者か分からない」「区分所有者は分かっているが連絡が取れない」という住戸が出てくると、その人も母数に含めたままでは、賛成の割合が事実上どうやっても足りなくなってしまうことがあります。この状態に対応するため、区分所有者の所在等が不明な場合に、裁判所の手続を経て、その区分所有者を集会決議の母数から除外できる制度が新しく設けられました。 ...

2026年9月13日 · ひぐらしさとし

登記の『更正』と『変更』はどう違う?──窓口で見分けるときの実務の目安

この記事の要点 「更正登記」と「変更登記」はどちらも登記の内容を直す手続きだが、直す理由がまったく違う。登記した時点ですでに誤りや抜けがあった場合が更正登記、登記した後に事実が変わった場合が変更登記 登記名義人の氏名・住所についての更正登記・変更登記は、どちらも登記名義人本人が単独で申請できる 権利の内容にかかわる更正登記・変更登記は、利害関係を持つ第三者の承諾が取れるかどうかで、登記のされ方(付記登記か主登記か)が変わる 登記の内容を直す手続きというと、「更正登記」と「変更登記」のどちらの言葉を使えばよいのか迷う方は少なくありません。結論から言うと、この二つは法律上、直す理由によってはっきり区別されています。不動産登記法2条は、変更の登記を「登記事項に変更があった場合に当該登記事項を変更する登記」(15号)、更正の登記を「登記事項に錯誤又は遺漏があった場合に当該登記事項を訂正する登記」(16号)と定義しています。 ...

2026年9月12日 · ひぐらしさとし

区分所有法が変わった──2026年4月施行の改正で管理組合ができるようになったこと

この記事の要点 マンションの管理・建替え等を定める「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)が、令和7年法律第47号として2025年(令和7年)5月30日に公布され、2026年(令和8年)4月1日から施行されています。 集会の決議の多くが「区分所有者全員」ではなく「出席した区分所有者」を母数とする方式に改められ、建替え決議についても、耐震性の不足など一定の事由があるマンションでは5分の4から4分の3に要件が緩和されました。 区分所有者の所在等が分からない場合に、その人を集会決議の母数(分母)から除外できる制度、専有部分(住戸)を管理する管理人を裁判所が選任できる制度が新設されました。 改正後の規定は、原則として施行前に生じた事項にも適用されます。ただし、施行日(2026年4月1日)より前に招集の手続が始まっていた集会については、改正前のルールで進めることになります。 制度は管理組合の意思決定を進めやすくするための枠組みで、個別の管理組合運営をめぐる具体的なもめ事の解決までを保証するものではありません。紛争になっている案件は弁護士への相談が必要です。 マンションの管理組合の運営や建替えを定める区分所有法(正式名称は建物の区分所有等に関する法律)が改正され、多数決の要件緩和、所在が分からない区分所有者の扱い、住戸(専有部分)の管理人制度という3つの柱が新しく設けられました。老朽化したマンションが増えるなかで、「区分所有者の一部と連絡が取れない」「決議に必要な人数が集まらない」といった理由で管理組合の意思決定が止まってしまう事態に対応するための改正です。 ...

2026年9月12日 · ひぐらしさとし

マンションを相続したときの登記──敷地権付き区分建物は何が違う?

この記事の要点 敷地権付きのマンションは、お部屋(専有部分)について相続登記を申請すれば、土地の権利(敷地権)にもその登記の効力が及ぶ。土地について別に申請する必要は原則としてない 申請書の「不動産の表示」は、一棟の建物・専有部分の建物・敷地権の3つを書く三段構え。登記事項証明書の表題部を写し取るのが基本 登録免許税は、建物の評価額と「土地全体の評価額×敷地権の割合」を足した金額に税率0.4%をかけて計算する 敷地権のない古いマンションでは、建物とは別に土地の共有持分についても相続登記を申請する必要がある 必要書類(戸籍・住民票・遺産分割協議書など)は一戸建ての相続登記と同じ。期限は取得を知った日から3年以内 結論:建物の相続登記を申請すれば、土地の持分も一緒に動く 親が住んでいたマンションを相続した方から、「建物だけでなく、土地の持分の登記も別にしなければならないのか」という疑問がよく聞かれます。 ...

2026年9月11日 · ひぐらしさとし

土地家屋調査士と司法書士──同じ『登記』でも表題部と権利部で分かれる

この記事の要点 不動産の登記記録は「表題部」と「権利部(甲区・乙区)」に分かれており、担当する専門家も制度上分かれている 表題部(土地の所在・地積、建物の種類・構造・床面積など)に関する登記は土地家屋調査士が担当する 権利部(所有権・抵当権などの権利関係)に関する登記は司法書士が担当する 土地の境界(筆界)に関する調査・測量も土地家屋調査士の職務の範囲に含まれる 手続きの中身によって窓口が異なるため、登記簿のどの欄に関する話かを確認すると迷いにくい 「登記」とひとくくりに言っても、実際に手続きを担当する専門家は、内容によって分かれています。この記事では、土地家屋調査士と司法書士がそれぞれどの部分を担っているのか、制度上の分担を整理します。 ...

2026年9月10日 · ひぐらしさとし