「過料」「科料」「罰金」の違い──同じ「かりょう」と読んでも、刑罰かどうかが分かれる

この記事の要点 「罰金」と「科料(かりょう)」は刑法9条が列挙する刑罰で、罰金は一万円以上(15条)、科料は千円以上一万円未満(17条)。科されれば、有罪とされたことになる 「過料(かりょう)」は刑法9条の刑の種類に入っていない、刑罰ではない金銭の制裁。相続登記を怠ったときの過料(不動産登記法164条1項)や会社の登記を怠ったときの過料(会社法976条)はこちら これらの過料は刑罰ではないので、刑罰を受けた経歴(いわゆる前科)にはならないが、法律上の義務に違反した結果として裁判所が科す制裁であることに変わりはない 「相続登記をしないと過料」「役員変更の登記を忘れると過料」という言い方を耳にしたとき、「かりょう」と読むのが「過料」なのか「科料」なのか、また罰金と何が違うのか、はっきり区別できる方は少ないと思います。結論から言うと、「罰金」と「科料」は刑罰、「過料」は刑罰ではないという点が、三つを読み分ける軸になります。 ...

2026年10月22日 · ひぐらしさとし

登記の書類に押すのは実印?認印?──印鑑証明書が要る人と、押印が要らない場面

この記事の要点 書面で登記を申請するときは、申請書や委任状に記名押印(名前を書いて印鑑を押すこと)をするのが原則です(不動産登記令16条1項・18条1項)。実印と印鑑証明書が要るのは、主に売買や贈与で名義を渡す側(登記義務者)になる所有権の登記名義人などです。 相続登記で名義を受け取る相続人は、申請書への押印は要りますが印鑑証明書は要らないため、法務省の案内では「認印で可」とされています。一方、遺産分割協議書には、実務上、相続人全員の実印の押印が求められ、印鑑証明書の添付も必要です。 名義を渡す側など印鑑証明書が要る立場でも、登記によって新しく登記識別情報を受け取る側でもない申請人などは、押印せずに署名だけで足りる場合があります(不動産登記規則47条・49条)。 「登記の書類には実印を押すもの」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。結論から言うと、実印が要るのは、その書類に印鑑証明書を付ける必要がある場合で、申請書や委任状では押す人の立場によって分かれます。 ...

2026年10月22日 · ひぐらしさとし

相談した専門家とは別の専門家にも意見を聞いてよい?──セカンドオピニオンの考え方と伝え方

この記事の要点 別の専門家に意見を聞くこと(セカンドオピニオン)自体は、依頼する前でも後でもできる。ただし依頼前と依頼後では考え方が少し違う 依頼する前なら、複数のところで話を聞いて比べてから決めてよい。依頼した後は、疑問をまず依頼先に尋ねるのが基本 別の専門家に聞くときは、最初に受けた説明・見積・経緯を整理して持っていくと、意見を聞く時間を有効に使える 「一度相談した専門家がいるのに、別のところにも話を聞くのは失礼ではないか」——こう感じて、聞きたいことがあっても言い出せずにいる、ということもあるかもしれません。結論から言うと、別の専門家に意見を聞くこと自体は、相談者が自分で決めてよいことです。ただ、まだ依頼していない段階か、すでに依頼して手続きが動いている段階かで、意識しておきたい点が変わります。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

住宅取得等資金の贈与の非課税とは──親から家の購入資金をもらったときの特例の基礎と、登記の持分の注意

この記事の要点 父母や祖父母などの直系尊属から、自分が住む家の新築・取得・増改築等に充てるお金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば、限度額までの金額には贈与税がかからない(租税特別措置法70条の2) 限度額は贈与を受けた人1人につき、省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外の住宅なら500万円。執筆時点の条文では、2026年(令和8年)12月31日までの贈与が対象 全額が非課税になる場合でも、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告をしないと特例は受けられない。資金の出し方と登記の持分がずれると、別に贈与の問題が生じ得る点にも注意 結論から言うと、この特例は「親などから、自分が住む家を手に入れるためのお金をもらった」ときに、一定額までの贈与税をかからないようにする制度で、使うには期限内の申告が欠かせません。順に整理します。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

相続放棄が受理されたら次の順位の人へ──誰が相続人になるか、その人の「3か月」はいつから数えるか

この記事の要点 先の順位の相続人が全員放棄すると、子→直系尊属(父母・祖父母など)→兄弟姉妹の順で、次の順位の人が相続人になります。放棄した人の子が代わりに相続人になることはありません 次の順位の人の「3か月」は、亡くなった日からではなく、先の順位の人の放棄によって自分が相続人になったことを知った時から数えるのが基本と考えられます(民法915条1項) 家庭裁判所からの受理の通知は、申述した人などに宛てたものです。次の順位の人に知らせるなら、先の順位の全員の受理を確かめたあとに、日付の残る形で伝えておくと、あとで確かめやすくなります 相続放棄が受理されると、放棄した人の手続きはひと区切りです。しかし、相続そのものは終わっていません。相続人が次の順位の人に移り、その人の期限がそこから動き出すことがあるからです。 ...

2026年10月20日 · ひぐらしさとし

戸籍の「従前本籍」「従前戸籍」の読み方──一つ前の戸籍をたどって出生までさかのぼる手順

この記事の要点 一つ前の戸籍の所在は、本籍を他の市区町村へ移した(転籍)なら戸籍事項欄の【従前本籍】、婚姻などで別の戸籍から入った人ならその人の身分事項欄の【従前戸籍】に書かれる 前の戸籍を取り寄せたら、そちら側に残る「出ていった記録」と日付・所在が合っているかを突き合わせる 出生の記載があるだけでは、出生時の戸籍とは限らない。出生に関する事項は新しい戸籍にも書き写されるため 一つ前の戸籍を探すときに見る2か所 結論から言うと、一つ前の戸籍を探すときに見る場所は2か所です。戸籍そのものがどこから移ってきたかは「戸籍事項欄」に、その人がどの戸籍から入ってきたかは、その人の「身分事項欄」に書かれています。 ...

2026年10月20日 · ひぐらしさとし

成年被後見人がした契約は取り消せる?──日用品の購入など日常生活の行為は例外【民法9条】

この記事の要点 成年被後見人(後見開始の審判を受けた本人)がした契約などの法律行為は、原則として取り消すことができます(民法9条本文) ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消しの対象から外れます(同条ただし書) 取り消すと契約は初めから無効だったものとみなされ、本人が返すのは「現に利益を受けている限度」にとどまります(民法121条・121条の2第3項) ※本記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月19日 · ひぐらしさとし

簡易裁判所の判決に納得できないとき|控訴の期限は2週間・控訴状は簡易裁判所へ

この記事の要点 簡易裁判所の判決に対する控訴は、判決書(電子判決書)などの送達を受けた日から2週間の不変期間内にしなければならない(民事訴訟法285条) 控訴審を担当するのは地方裁判所だが、控訴状は判決をした簡易裁判所に提出する(裁判所法24条3号、民事訴訟法286条1項) 少額訴訟の判決には控訴できず、同じ簡易裁判所への異議(期限は同じく2週間)だけが用意されている(民事訴訟法377条・378条1項) 簡易裁判所で判決が出たものの、その内容に納得できない──そうした場合に、上の裁判所に改めて判断を求める手続きが「控訴(こうそ)」です。結論からいえば、控訴には2週間という短い期限があり、提出先も間違えやすいため、判決を受け取ったらまず期限を確認することが先決です。 ...

2026年10月19日 · ひぐらしさとし

「代理」「代表」「使者」の違い──民法99条・会社法349条と登記の委任状で読み分ける

この記事の要点 「代理」は、代理人が自分で意思表示をし、その効果だけが本人に及ぶしくみです(民法99条1項)。登記の委任状に受任者として名前が載る司法書士は、登記の申請手続きについての代理人です この記事で取り上げる「代表」は、会社などの法人の代表です。会社法349条は取締役・代表取締役について株式会社を「代表する」と書き、支配人について「会社に代わって」と書く会社法11条とは言葉を使い分けています。委任状では「○○株式会社 代表取締役△△」として申請人の側に立ちます 「使者」は、本人が決めた内容を伝える・届けるだけの役割を指す講学上の言葉で、民法や会社法に定義した条文はありません。代理人との分かれ目は、内容を決めているのが誰かです 登記を司法書士に依頼するときの委任状には、「委任者 ○○株式会社 代表取締役△△」と「受任者 司法書士□□」という二つの肩書が並びます。似た言葉ですが、会社法や不動産登記令の条文では「代表」と「代理」が書き分けられています。さらに、書類を窓口へ届けるだけの人は、どちらにもあたらない「使者」として整理されます。三つの違いは、誰が内容を決めているか、誰の行為として扱われるかで読み分けると整理しやすくなります。なお、この記事は執筆時点(2026年10月)の条文に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月18日 · ひぐらしさとし

公図・地積測量図・建物図面の違いは?──法務局でもらえる3つの図面と取り方

この記事の要点 公図は「土地の並び方」、地積測量図は「1筆の土地を測った結果」、建物図面は「建物が敷地のどこに建っているか」を示す図面で、法律上の根拠もそれぞれ別です 3つとも、所有者でなくても請求でき、電子化された図面なら窓口(管轄外の最寄りの法務局を含む)・郵送・オンラインで取れます。手数料は窓口・郵送で500円、オンラインで440円または470円です 図面は登記の資料で、図面だけで現地の境界が決まるわけではありません。境界の確認や測量は土地家屋調査士の分野です 土地や建物の登記簿(登記事項証明書)は文字の記録なので、「隣はどの土地か」「建物は敷地のどこにあるか」といった位置関係は分かりません。それを補うのが法務局の図面です。結論から言うと、よく使われるのは公図・地積測量図・建物図面の3つで、取り方はほぼ共通ですが、何のための図面かはまったく違います。 ...

2026年10月18日 · ひぐらしさとし