会社を設立したとき、定款に「当会社の公告は、官報に掲載してする」と書いた──多くの中小企業がこのパターンで、その後ずっと見直さないまま、というケースがよくあります。
ところが、いざ決算公告を出そうとしたり、合併や減資の手続きで公告が必要になったりして初めて、「官報の掲載って意外とお金がかかる」「うちの公告方法、変えられるの?」と気づく経営者の方は少なくありません。
会社の公告方法は、官報のほかに、日刊新聞紙や電子公告(自社ホームページ等への掲載)を選ぶことができます。そして、公告方法を変えるには定款の変更と変更登記が必要です。
今回は、3つの公告方法の違い、見落とされがちな決算公告の義務、そして公告方法を変更するときの登記の流れと費用を、経営者の方向けに整理します。
そもそも「公告」とは何か
会社の公告とは、会社が法律で決められた事項を、広く一般に知らせるための手続きです。
会社法は、一定の場合に会社が公告をすることを義務づけています。代表的なものを挙げると、次のような場面です。
- 決算公告(貸借対照表などを毎年公告する。会社法440条1項)
- 資本金の額の減少(減資)の際の債権者保護手続き(会社法449条2項)
- 合併・会社分割などの組織再編の際の債権者保護手続き(会社法789条2項ほか)
- 解散・清算の際の債権者への公告(会社法499条1項)
これらの公告を「どの方法で行うか」を定めたものが、公告方法です。
公告方法は3種類
会社法は、株式会社が選べる公告方法を次の3つと定めています(会社法939条1項)。
| 公告方法 | 内容 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 官報 | 国が発行する機関紙に掲載 | 最もオーソドックス。1回ごとに掲載料がかかる |
| 日刊新聞紙 | 時事を掲載する日刊新聞に掲載 | 地域に知らせたい場合等。新聞広告料が高額になりがち |
| 電子公告 | 自社ホームページ等に掲載 | 掲載料はかからないが、別途ルールあり(後述) |
ここで大切なのが、定款に公告方法を定めていない会社は、自動的に「官報に掲載する方法」になるという点です(会社法939条4項)。
つまり、「特に決めた覚えがない」という会社も、法律上は官報が公告方法とされています。設立時の定款をあらためて確認してみると、官報になっていることがほとんどです。
公告方法は登記事項
公告方法は、登記簿(履歴事項全部証明書)に記載される登記事項です(会社法911条3項27号〜29号)。
- 定款で公告方法を定めているときは、その定め
- 電子公告を選んでいるときは、あわせて**ウェブページのアドレス(URL)**も登記されます(会社法911条3項28号イ)
登記簿を見れば、その会社がどの方法で公告するのかが誰にでも分かるようになっている、というわけです。
見落とされがちな「決算公告」の義務
ここで、経営者の方にあらためて知っておいてほしいのが決算公告です。
会社法は、株式会社に対して、定時株主総会の終結後、遅滞なく貸借対照表(大会社では貸借対照表と損益計算書)を公告しなければならないと定めています(会社法440条1項)。これは会社の規模を問わず、すべての株式会社が対象です。
「中小企業はやらなくていい」と思われがちですが、法律上は中小企業にも決算公告の義務があります。実際には公告していない会社が多いのが実情ですが、これは義務を免除されているわけではありません。
そして、公告を怠ると100万円以下の過料の対象になり得ます(会社法976条2号)。
なお、決算公告で公告するのは貸借対照表などの「決算の数字」ですが、その作成や税務処理は税理士の専門領域です。本記事では公告という手続きの面に絞って解説し、決算書の中身や税務については触れません。決算の数値・税務処理についてはお近くの税理士にご相談ください。
決算公告の負担(特に官報の掲載料)は、公告方法を見直すきっかけになることが多い論点です。
3つの公告方法、それぞれのメリットと注意点
官報
国が発行する機関紙で、最もオーソドックスな公告方法です。
- メリット:信頼性が高く、どの会社でも使える
- 注意点:公告1回ごとに掲載料がかかります。決算公告の場合、掲載する枠の大きさにもよりますが、1回あたり数万円程度の掲載料が必要になるのが一般的です
日刊新聞紙
時事に関する事項を掲載する日刊新聞に掲載する方法です(会社法939条1項2号)。
- メリット:地域や取引先に広く知らせたい場合に使われることがある
- 注意点:新聞広告の掲載料は官報よりさらに高額になりがちです。また「時事を掲載する日刊新聞」である必要があり、業界紙やフリーペーパーは原則として該当しません
電子公告
自社のホームページ等に掲載する方法です(会社法939条1項3号)。
- メリット:掲載のための料金がかからない(自社サイトに載せるため)
- 注意点:いくつか独自のルールがあります(次章で解説)
電子公告を選ぶときに知っておきたいこと
「掲載料がかからないなら電子公告にしたい」と考える経営者は多いのですが、電子公告には次のような独自のルールがあります。
1. 貸借対照表は「全文」を一定期間、継続掲載する必要がある
電子公告は「載せて終わり」ではなく、定められた期間、継続して掲載し続ける必要があります。たとえば決算公告を電子公告で行う場合は、定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで掲載を続けなければなりません(会社法940条1項2号)。途中でサイトを閉じたり、ページを消してしまったりすると、公告をしていないことになりかねません。
また見落とされやすいのですが、官報や日刊新聞紙であれば貸借対照表の**「要旨」**を公告すれば足りるのに対し(会社法440条2項)、電子公告の場合は貸借対照表の全文を掲載する必要があります。決算の内容をより詳しく開示することになるため、「官報のままで要旨だけ」を続けたい会社もあります。コストだけでなく、どこまで開示するかという観点も含めて検討するとよいでしょう。
2. 「電子公告調査」が必要な公告がある
電子公告で公告をする場合、原則として、公告期間中に内容がきちんと掲載され続けているかどうかについて、法務大臣の登録を受けた第三者機関(電子公告調査機関)の調査を受けなければなりません(会社法941条)。この調査には費用がかかります。
ただし、決算公告については、この電子公告調査は不要とされています(会社法941条かっこ書き)。合併や減資などの債権者保護手続きの公告を電子公告で行う場合には調査が必要、と整理しておくとよいでしょう。
3. URLが登記される/予備的な公告方法を定められる
電子公告を選ぶと、掲載先のウェブページのアドレス(URL)が登記されます(会社法911条3項28号イ)。
また、電子公告は事故やシステム障害で掲載できなくなるリスクがあるため、「電子公告ができない場合は官報(または日刊新聞紙)に掲載する」という予備的な公告方法をあわせて定めておくことができます(会社法939条3項)。定めた場合は、これも登記されます。
「決算公告だけ」をホームページで開示する方法もある
なお、公告方法そのものは官報のままにしておき、決算公告(貸借対照表の内容)だけを自社ホームページで継続開示するという方法もあります(会社法440条3項)。
この方法をとると、毎年の決算公告について官報掲載料をかけずに済みます。ただし、開示用ページのアドレス(URL)を登記する必要があるなど、電子公告とは別の手続き上のルールがあります。「公告方法を全面的に電子公告へ変える」のか「決算公告だけウェブで開示する」のかは、会社の事情によって向き不向きがありますので、どちらが適しているかは専門家に相談しながら決めると安心です。
公告方法を変更するときの登記の流れ
ここからが本題の登記手続きです。公告方法を変える場合、次の流れで進みます。
1. 株主総会の特別決議で定款を変更する
公告方法は定款で定める事項なので、これを変更するには定款の変更が必要です。定款変更は、株主総会の特別決議で行います(会社法466条、309条2項11号)。
特別決議とは、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定款で3分の1以上まで引き下げ可能)、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で可決される決議です。
株主が少人数の会社では、書面決議(会社法319条)の方法によることもできます。
2. 2週間以内に変更登記をする
定款変更を決議したら、その日から2週間以内に、本店所在地で公告方法の変更登記を申請します(会社法915条1項)。
登記期間を過ぎても登記自体はできますが、期間を過ぎると会社法上の過料の対象になり得ます(会社法976条1号)。早めに登記を済ませることが大切です。
電子公告に変更する場合は、登記申請の際にウェブページのアドレス(URL)もあわせて登記します。
期間と費用
公告方法の変更登記にかかる費用と期間の目安は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 登録免許税 | 30,000円(登録免許税法別表第一第二十四号(一)ツ) |
| 司法書士報酬 | 事務所により異なります(数万円程度) |
| 登記完了までの期間 | 法務局の混雑状況によりますが、申請から1〜2週間程度 |
| 登記期限 | 株主総会決議の日から2週間以内(会社法915条1項) |
電子公告に変更した場合、その後の決算公告には掲載料がかからなくなる(電子公告調査も決算公告は不要)ため、毎年の官報掲載料と比べてランニングコストを抑えられる可能性があります。一度の登記費用と、毎年の公告コストの両方を見比べて判断するとよいでしょう。
まとめ
会社の公告方法には、官報・日刊新聞紙・電子公告の3つがあり、定款に定めがなければ官報になります。
- すべての株式会社に決算公告の義務があり、怠ると過料の対象になり得る(会社法440条1項、976条2号)
- 公告方法は登記事項で、変更には株主総会の特別決議による定款変更と2週間以内の変更登記が必要(会社法466条、309条2項11号、915条1項)
- 変更登記の登録免許税は3万円
- 電子公告は掲載料がかからない一方、継続掲載・電子公告調査(決算公告は不要)・URL登記といった独自ルールがある
「官報の掲載料を抑えたい」「決算公告をどうすればいいか分からない」といったお悩みは、公告方法の見直しと変更登記で解決できる場合があります。手続きの段取りや、電子公告と決算公告のウェブ開示のどちらが自社に向いているかも含めて、お近くの司法書士にご相談ください。なお、決算書の内容や税務処理は税理士、株主間のもめごとなど紛争にかかわる事柄は弁護士と、それぞれ専門の士業との連携が必要になる場面もあります。
【さらに深掘り】公告方法の変更登記の申請実務と、電子公告・決算公告ウェブ開示の使い分け
ご注意 以下は執筆時点(2026年6月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お近くの司法書士にご相談ください。
ここからは、公告方法の変更登記を申請する際の実務上の留意点を整理します。公告方法の変更は、まず現在の定款にどう定められているかを確認し、全面的に電子公告へ変えるのか、決算公告だけをウェブ開示するのかを切り分けるところから始まります。
株主総会議事録の記載
公告方法は定款の定めですので、変更登記の申請には、定款変更を決議した株主総会議事録の添付が必要です(商業登記法46条2項)。議事録には、次の事項を明記します。
- 株主総会の日時・場所
- 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、定足数を満たしたこと(会社法309条2項柱書)
- 議案として「公告方法変更の件(定款第○条の改正)」が提出されたこと
- 出席株主の議決権の3分の2以上の賛成で可決されたこと(同項本文)
- 議長の氏名(会社法施行規則72条3項5号)、及び議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名(同項6号)
電子公告に変更する場合は、議案(変更後の定款の条項)の中に、掲載先のウェブページのアドレス(URL)と、必要に応じて予備的公告方法(後述)まで含めて決議しておくと、登記すべき事項との整合がとりやすくなります。
書面決議(会社法319条)による場合は、議決権を行使することができる株主の全員が決議事項に同意したことを証する書面の添付が必要です(商業登記法46条3項)。
添付書類(株主リスト)
公告方法の変更は株主総会の決議を要する登記事項ですので、申請には株主リストの添付が必要です(商業登記規則61条3項)。株主リストには次の事項を記載します。
- 議決権数上位10名の株主、又は議決権割合が3分の2に達するまでの株主(いずれか少ない方)
- 各株主の氏名又は名称・住所
- 各株主の保有株式数・議決権数・議決権割合
- 代表者による証明
代理人が申請する場合は委任状も添付します。
電子公告に変更する場合の「登記すべき事項」
公告方法を電子公告に変更する場合、登記すべき事項として、公告方法の定めに加えて**ウェブページのアドレス(URL)**を登記します(会社法911条3項28号イ)。登記簿には、おおむね次のような形で記録されます。
公告をする方法
電子公告の方法により行う。
https://www.example.co.jp/koukoku/
ただし、事故その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることが
できない場合は、官報に掲載してする。
令和○年○月○日変更
URLは、実際に公告を掲載するページのアドレスを正確に登記する必要があります。サイトをリニューアルしてアドレスが変わった場合は、あらためてURLの変更登記が必要になる点に注意してください。
予備的公告方法を定めておく意味
上の記録例の「ただし……官報に掲載してする」の部分が予備的公告方法です(会社法939条3項)。
電子公告はサーバー障害などで一時的に掲載できなくなるリスクがあります。予備的公告方法を定めておけば、そうした場合に官報(または日刊新聞紙)で公告でき、公告ができなくなるリスクに備えられます。定めるかどうかは任意ですが、実務では定めておくのが一般的です。定めた場合はその内容も登記されます。
「決算公告だけウェブ開示」は電子公告とは別の手続き
本文でも触れたとおり、公告方法は官報のままにして、決算公告(貸借対照表の内容)だけを自社サイトで継続開示する方法があります(会社法440条3項)。これは公告方法を電子公告に変えるのとは別の制度で、実務では混同しやすいので整理しておきます。
| 公告方法を電子公告に変更 | 決算公告だけウェブ開示(440条3項) | |
|---|---|---|
| 公告方法そのもの | 電子公告に変わる | 官報のまま |
| 対象になる公告 | 決算公告も含めすべての公告 | 決算公告(貸借対照表)のみ |
| 登記する内容 | 公告方法=電子公告+URL(911条3項28号イ) | 貸借対照表に係る情報提供のためのURL(911条3項26号) |
| 合併・減資等の公告 | 電子公告(電子公告調査が必要) | 従前どおり官報 |
つまり、「合併や減資の公告まで電子化したい」のであれば公告方法そのものを電子公告に変更し、「毎年の決算公告の官報掲載料だけ抑えたい」のであれば440条3項のウェブ開示を選ぶ、という整理になります。いずれもURLの登記を伴うため、どちらを選ぶかは会社の今後の予定(組織再編の有無など)も踏まえて決めるとよいでしょう。
登記申請書の主な記載事項
公告方法の変更登記の申請書には、次の事項を記載します。
- 商号・本店
- 登記の事由(「公告をする方法の変更」)
- 登記すべき事項(変更後の公告方法、電子公告の場合はURL・予備的公告方法、変更年月日)
- 登録免許税額(定額3万円。登録免許税法別表第一第二十四号(一)ツ)
- 添付書類(株主総会議事録、株主リスト、代理申請の場合は委任状)
- 申請人(会社代表者)の記名押印(書面申請の場合)または電子署名(オンライン申請の場合)
公告方法の変更登記の登録免許税は1件3万円の定額のため、申請書に課税標準金額を記載する必要はありません。決算公告のウェブ開示(440条3項)に伴うURLの登記も、変更登記として登録免許税3万円が必要です。
なお、電子公告調査機関に支払う調査費用は登録免許税とは別で、合併・減資など電子公告調査が必要な公告をする都度かかります。決算公告については調査が不要です(会社法941条かっこ書き)。
変更後に備えておくこと
公告方法を電子公告に変更したら、登記したURLのページを実際に公告を掲載できる状態で維持しておく必要があります。決算公告を電子公告で行う場合、定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで掲載を継続しなければならない(会社法940条1項2号)ため、サイトの移転・閉鎖の際は掲載の継続に十分注意してください。
登記が完了したら、変更後の内容を反映した**登記事項証明書(履歴事項全部証明書)**を取得しておくと、取引先や金融機関への説明の際に役立ちます。
決算公告の対象となる貸借対照表など決算書の作成・税務処理は税理士の領域です。本記事は登記手続きの観点からの整理ですので、決算の数値や税務の取扱いについてはお近くの税理士に、株主間の意見の対立など紛争にかかわる事柄については弁護士にご相談ください。