境界がはっきりしない土地の相続・売却──筆界と所有権界、土地家屋調査士の出番

この記事の要点 土地の境界がわからなくても、相続登記そのものは申請できる。境界を確定させてからでないと名義が変えられない、という仕組みにはなっていない ただし相続登記には期限がある。取得を知った日から3年以内(不動産登記法第76条の2第1項)、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料(同法第164条第1項) 境界の問題が表に出るのは売るとき。測量や筆界特定は土地家屋調査士、隣地の方との争いは弁護士、名義変更は司法書士と、相談先が分かれる 親から受け継いだ土地について「どこまでが自分の土地なのかはっきりしない」というご相談は珍しくありません。塀の位置と登記簿の面積が合わない、境界を示す杭が見当たらない、そもそも測量図が見つからない——こうした状況は各地で生じています。 ...

2026年7月30日 · ひぐらしさとし

リゾートマンション・別荘を相続したら──「いらない不動産」に残された現実的な選択肢

この記事の要点 リゾートマンションや別荘は、使わなくても管理費・修繕積立金・固定資産税が毎年かかり続けるため、「もらっても困る不動産」になりやすい それでも相続登記は義務で、取得を知った日から3年以内に申請しないと過料の対象になり得る(不動産登記法第76条の2、第164条第1項) 亡くなった方が管理費を滞納していた場合、その支払義務は原則として相続人に引き継がれる。売買などで部屋を取得した人にも請求できる仕組みがある(建物の区分所有等に関する法律第8条) 「いらない土地を国に引き取ってもらう制度」は土地だけの制度で、建物であるリゾートマンションは対象にならない リゾートマンションや別荘を相続することになったとき、多くの方が最初に直面するのは「使う予定がないのに、費用だけが出ていく」という現実です。結論から言えば、受け取らないという判断(相続放棄)をしない限り、名義を引き継いだ人が、手放すまで費用を負担する立場になります。そして相続登記は義務であり、「使わないから放っておく」という選択は、法律上は用意されていません。 ...

2026年7月29日 · ひぐらしさとし

山林を相続したら──90日以内の森林法の届出、管理の負担、そして手放すという選択肢

この記事の要点 山林を相続すると、期限の異なる2つの手続きが並行して走ることがある。相続登記は3年以内(不動産登記法第76条の2第1項)、森林法の届出は相続開始の日から90日以内(届出義務の根拠は森林法第10条の7の2第1項、90日という期限を定めているのは同法施行規則第7条第1項) 森林法の届出先は「市町村の長」。ただし対象は地域森林計画の対象となっている民有林に限られ、相続した山林がすべて届出の対象になるわけではない。まず市町村の林務担当窓口で対象かどうかを確認する 届出をせず、または虚偽の届出をすると10万円以下の過料(森林法第213条)。相続登記を怠った場合の10万円以下の過料(不動産登記法第164条第1項)とは別の制度 固定資産税は課税標準額が30万円未満なら課されないのが原則(地方税法第351条)。ただし「税金がかからない」ことと「管理の責任がなくなる」ことは別 手放す方法は国庫帰属・売却・自治体への寄付だが、いずれもハードルがある。特に境界が明らかでない土地は国庫帰属の申請そのものができない(相続土地国庫帰属法第2条第3項第5号) 親から山林を相続した、という相談は珍しくありません。ここで最初に押さえておきたいのは、山林の相続には、宅地の相続にはない別ルートの手続きが加わることがあるという点です。法務局への相続登記とは別に、市町村への届出が必要になる場合があり、しかもその期限は相続登記よりずっと短い90日です。 ...

2026年7月28日 · ひぐらしさとし

農地を相続したら──農業委員会への届出と相続登記、そのあと『売る・貸す・転用する』の壁

この記事の要点 農地を相続しても、相続そのものには農地法の許可は不要(別に農業委員会への届出は必要) 許可がいらないのは「相続で取得する」ときだけで、その農地をあとで売る・貸す・転用しようとすると、あらためて農地法の許可が必要になる 農地転用の許可申請書類の作成代行は行政書士の業務、売買の仲介は宅地建物取引業者の業務であり、相続登記を担う司法書士とは役割が分かれる 無許可で転用すると、原状回復命令や罰則の対象になり得る 農地を相続すると、法務局への相続登記に加えて、農業委員会への届出という手続きが控えています。ここで押さえておきたいのは、相続そのものには農地法の許可が不要という点です。ただし、これは「相続で農地を受け取るとき」に限った話であり、届出を済ませたあとにその農地を売る・貸す・転用しようとすると、話は変わってきます。 ...

2026年7月27日 · ひぐらしさとし

登記の『受付番号』とは?──同じ日に複数の申請が出たときの順番の決まり方

この記事の要点 受付番号は、法務局が登記の申請を受け付けた順に付ける番号で、1年ごとに振り直される 同じ不動産について複数の権利の登記の申請があったときは、受付番号の順序に従って登記が行われる 申請の前後が明らかでないときは同時に申請されたものとみなされ、同じ受付番号が付けられる 登記事項証明書(登記簿)には「令和〇年〇月〇日受付第〇〇号」という記載が並んでいます。この「第〇〇号」が受付番号です。結論から言えば、受付番号は法務局が申請を受け付けた順に付ける通し番号で、同じ不動産に複数の申請があったときの処理の順番を決める目印になります。 ...

2026年7月26日 · ひぐらしさとし

土地の「地目」とは?田・畑・宅地・雑種地で何が変わる?相続・売買の登記への影響

この記事の要点 地目(ちもく)とは、登記簿に記録される「土地の主な用途の区分」のこと。田・畑・宅地・雑種地など23種類ある 地目が「田」「畑」(農地)だと、権利を動かしたり別の用途に変えたりする際に農地法の許可・届出が必要になる場合がある 地目や現況(実際の使われ方)によって固定資産税の評価が変わる仕組みがあるが、税額の計算や有利不利の比較は税理士の領域 地目そのものを変更する登記は土地家屋調査士の業務で、司法書士が扱う相続登記・売買登記(権利部の登記)とは担当が異なる まずは登記簿(登記事項証明書)で自分の土地の地目を確認することが、相続や売買を考えるときの最初の一歩 地目とは何か──登記簿に記録された「土地の用途」 地目とは、登記簿上でその土地が主にどのような用途に使われているかを示す区分です。不動産登記規則第99条では、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、雑種地の23種類に区分すると定められています。 ...

2026年7月26日 · ひぐらしさとし

不動産の売買契約書に貼る収入印紙、金額はどう決まる?──印紙税の基礎

この記事の要点 不動産の売買契約書は印紙税の課税対象文書で、契約金額に応じて税額が段階的に決まる 印紙税は登録免許税・不動産取得税とは別の税金で、契約書という「文書」に対して課される 電子データでやり取りする電子契約は、課税文書に該当しないとされている 不動産の売買契約を結ぶとき、契約書に収入印紙を貼っている場面を見たことがある方は多いと思います。これは「印紙税」という税金で、登録免許税や不動産取得税とは別物です。印紙税は不動産そのものを取得したことにではなく、契約書という「文書」を作成したことに対して課される国税です(印紙税法別表第一)。 ...

2026年7月25日 · ひぐらしさとし

私道の相続登記を忘れずに──宅地だけ登記して私道持分が漏れる典型パターン

この記事の要点 家と敷地の相続登記が済んでいても、進入路の私道持分だけ別地番で漏れていることがよくある 私道持分も相続登記の義務化(令和6年4月〜)の対象で、放置すると過料10万円のリスクもある 名寄帳・公図・購入時の重要事項説明書を確認すれば、たいてい見つけられる 「実家の名義変更は終わったから、もう相続登記は大丈夫」──そう思っていたら、家の前の道路(私道)の持分だけ、亡くなった親の名義のまま何十年も残っていた。こうした見落としは、決して珍しいケースではありません。 ...

2026年7月25日 · ひぐらしさとし

登記申請の『取下げ』と『却下』はどう違う?──不備が直せないときの二つの道

この記事の要点 登記の名義変更などで不備が見つかり、補正でも直せないときは、手続きが「取下げ」か「却下」に分かれる 取下げは申請した人が自分から引っ込めること、却下は法務局が「この申請は受け付けられない」と判断すること どちらになるかで、納めた登録免許税の扱いなどが変わることがある 不動産や会社の登記を申請したあと、書類の不備が見つかることがあります。多くはその場での訂正(補正)で直せますが、なかには補正では直しきれない不備もあります。そのときに登場するのが「取下げ(とりさげ)」と「却下(きゃっか)」です。結論から言うと、取下げは申請した側から引っ込めること、却下は法務局が受け付けを認めないと判断することで、同じ「登記できなかった」でも中身が違います。 ...

2026年7月22日 · ひぐらしさとし

登録免許税は誰に相談する税金?──税理士ではなく司法書士が案内できる理由

この記事の要点 登録免許税は登記を受けるために納める国税で、司法書士が登記手続きの一環として計算・案内できる税金 所得税や相続税のような「申告」を前提とする税金とは仕組みが異なる ただし相続税・贈与税・不動産取得税など、他の税金の具体的な税額計算は税理士の業務範囲 不動産の名義変更や抵当権設定の登記を依頼した際、司法書士から登録免許税の金額を案内されて「なぜ税理士ではなく司法書士が税金の話をするのか」と疑問に思われる方がいます。結論から言うと、登録免許税は登記を受けるために納める国税であり、その計算・案内は登記手続きの一環として司法書士が行うことができる税金です。 ...

2026年7月21日 · ひぐらしさとし