「その他」と「その他の」の違い──「の」一文字で条文の読み方が変わる【相続の条文で解説】

この記事の要点 法令では「A、B その他の C」と「A、B その他 C」は書き分けられており、「の」が付くと、前に並んだ言葉は後ろの言葉の例示(代表例)になる 「の」が付かない場合は、前に並んだ言葉と後ろの言葉が対等な列挙で、後ろの言葉は「それ以外のもの」を受け止める役割になる ただしこれは法令を作るときの一般的な用語法であり、最終的な意味はその条文ごとの解釈で決まる 条文を読んでいると、「〇〇その他の□□」という言い回しと、「〇〇その他□□」という言い回しの両方が出てきます。日常の文章なら気に留めない「の」一文字ですが、法令ではこの2つは使い分けられています。本記事は執筆時点(2026年7月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年7月30日 · ひぐらしさとし

登記に使う印鑑証明書に有効期限はある?──3か月以内が要る場面・要らない場面

この記事の要点 不動産登記で「作成後3か月以内」の印鑑証明書が求められるのは、売買や贈与、抵当権の抹消のように、不動産の名義人が「渡す側(登記義務者)」として申請する場面などで、その名義人が出す分です(不動産登記令16条3項・18条3項)。 相続登記で遺産分割協議書に添える相続人の印鑑証明書について、不動産登記令は3か月以内という制限を置いていません。 ただし銀行の相続手続や他の窓口では、それぞれの決まりで期限を求められることがあります。登記の話とは別枠です。 「印鑑証明書は3か月以内のものを」——手続きの案内でよく見かける言い方です。ところが相続登記では「何年も前の印鑑証明書でも大丈夫」と言われることがあり、どちらが本当なのか混乱しやすいところです。結論から言えば、どちらも正しく、場面が違います。 ...

2026年7月30日 · ひぐらしさとし

亡くなった方の財産がどこにあるか分からない|手がかりになる書類と、そこから分かること

この記事の要点 財産の所在は「手元の書類」と「亡くなった方あての郵便物」からたどれることが多い 通帳の引き落とし記録は、保険や不動産など別の財産の存在に気づく手がかりになる 手がかりが少なくても、不動産については一覧で調べられる制度がある 「親が亡くなったが、どこに何があるのか分からない」という状態から相続手続きが始まることは珍しくありません。結論から言えば、まずは手元にある書類と、亡くなった方あてに届く郵便物を種類ごとに分けてみるところからで十分です。以下は、ご自身の手元でできる範囲の確認方法です。 ...

2026年7月29日 · ひぐらしさとし

相続税の基礎控除とは──「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の意味と数え方

この記事の要点 相続税には「遺産に係る基礎控除額」という枠があり、その額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される(相続税法15条1項) 人数の数え方には独自のルールがあり、相続放棄をした人も「放棄がなかったもの」として数に含める 養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか人数に算入できない 「うちは相続税がかかるのか」を考えるときの入口が基礎控除という枠です。相続税は、亡くなった方の財産すべてにいきなり課される税金ではなく、一定額までは課税されない部分が設けられています。相続税法ではこれを「遺産に係る基礎控除額」と呼びます。 ...

2026年7月29日 · ひぐらしさとし

遺留分侵害額請求の「1年」はいつから数える?──起算日と期限の数え方

この記事の要点 遺留分侵害額請求の期限は、「相続の開始」と「遺留分を侵害する贈与または遺贈があったこと」の両方を知った時から1年です(民法1048条前段) それを知らないままでも、相続開始の時から10年を経過すると同じく消滅します(民法1048条後段) 期間は初日を数に入れず、1年後の応当する日の前日に満了します(民法140条・143条2項) 期限を過ぎると、請求できなくなります 遺留分(いりゅうぶん=一定の相続人に保障された最低限の取り分)が侵害されているとき、その分に相当するお金の支払いを請求できる権利があります(民法1046条1項)。2019年7月1日以降に開始した相続からは、財産そのものを取り戻す「遺留分減殺請求」ではなく、金銭の支払いを求める「遺留分侵害額請求」という形に改められました(制度の全体像はこちらの記事で整理しています)。 ...

2026年7月28日 · ひぐらしさとし

転籍があると戸籍の記載は引き継がれない──相続で古い戸籍まで必要になる理由

この記事の要点 転籍とは本籍地を移すことで、他の市町村に移すと転籍先で新しい戸籍が作られる 新しい戸籍には、すでにその戸籍から抜けている人(除籍された人)の記載が引き継がれない そのため、転籍後の戸籍だけを見ても相続人が分からず、出生まで遡って戸籍を集める必要がある 本文 他の市町村へ転籍すると、その戸籍からすでに抜けた人の記載は、新しく作られる戸籍に引き継がれません。相続手続きで「いま手元にある戸籍だけでは足りない」と言われるのは、これが理由のひとつです。 ...

2026年7月28日 · ひぐらしさとし

成年後見制度支援信託とは──本人の財産を守るためのもうひとつの仕組み

この記事の要点 後見制度支援信託・支援預貯金は、本人の財産のうち普段使わない金銭を信託銀行等や金融機関に預け、後見人の手元管理を最小限にする仕組み 対象は「成年後見」と「未成年後見」に限られ、保佐・補助・任意後見では利用できない 信託・預貯金からお金を動かすときは、家庭裁判所が発行する指示書が必要になる 「後見人になると、本人の財産をすべて自分の口座や手元で管理するのだろうか」——そう思われがちですが、実際には財産の額によって、家庭裁判所がもう一つの仕組みを提案することがあります。それが後見制度支援信託・後見制度支援預貯金です。本記事は、執筆時点(2026年07月)の制度・運用に基づく一般的な解説です。 ...

2026年7月27日 · ひぐらしさとし

少額訴訟とは|60万円以下・原則1回の期日で終わる手続きの仕組みと注意点

この記事の要点 少額訴訟は、60万円以下の金銭請求に限って利用できる、簡易裁判所の特別な訴訟手続き 原則として1回の期日で審理が終わり、その日のうちに判決が言い渡される仕組み 反訴ができない・同じ簡易裁判所で年10回までしか使えないといった制約があり、相手の対応次第で通常訴訟に移ることもある 以前の記事で、敷金トラブルの解決手段として「少額訴訟・支払督促・民事調停」を比較しましたが、今回は少額訴訟そのものの仕組みに絞って整理します。少額訴訟(しょうがくそしょう)は、貸したお金や未払いの代金など、比較的少額の金銭を請求する場面で使われることが多い手続きです。 ...

2026年7月27日 · ひぐらしさとし

「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」の違い──法令の時間表現を条文例で読み分ける

この記事の要点 一般には「直ちに」がもっとも急ぎ、「速やかに」「遅滞なく」の順にゆるやかになると説明される ただしこれは一般的な用語法であり、実際の意味はその条文の解釈で決まる 「三年以内」のように数字で区切る期限の定めとは、性質の異なる書き方である 法律の条文は、いつまでにやるべきかを「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」という言葉で示すことがあります。日常では似た意味ですが、法令では書き分けられており、急ぎの度合いが異なるとされています。 ...

2026年7月26日 · ひぐらしさとし

登記の『受付番号』とは?──同じ日に複数の申請が出たときの順番の決まり方

この記事の要点 受付番号は、法務局が登記の申請を受け付けた順に付ける番号で、1年ごとに振り直される 同じ不動産について複数の権利の登記の申請があったときは、受付番号の順序に従って登記が行われる 申請の前後が明らかでないときは同時に申請されたものとみなされ、同じ受付番号が付けられる 登記事項証明書(登記簿)には「令和〇年〇月〇日受付第〇〇号」という記載が並んでいます。この「第〇〇号」が受付番号です。結論から言えば、受付番号は法務局が申請を受け付けた順に付ける通し番号で、同じ不動産に複数の申請があったときの処理の順番を決める目印になります。 ...

2026年7月26日 · ひぐらしさとし