再転相続の熟慮期間はいつから?──相続放棄を決める前に相続人が亡くなったときの特別ルール

この記事の要点 相続放棄をするか承認するかを決める「3か月」の期間中に相続人本人が亡くなると、その選ぶ権利は亡くなった人の相続人へ引き継がれます(再転相続) 引き継いだ人の3か月は、最初の相続が起きたことを知った時からではなく、自分がその選ぶ権利を引き継いだ事実を知った時から数え直します(最高裁令和元年8月9日判決) 遺産分割が終わらないまま相続が重なる「数次相続」とは異なる、より限定された場面を指す言葉です 「再転相続」とは何か 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内に、相続を承認するか放棄するかを決めなければなりません(民法915条1項、熟慮期間)。ところが、この3か月の途中で、相続人本人が承認も放棄もしないまま亡くなってしまうことがあります。 ...

2026年8月9日 · ひぐらしさとし

分籍とは?──自分の意思で戸籍を分けると、相続の戸籍集めはどう変わるか

この記事の要点 分籍とは、成年に達した人が自分の意思で届け出て、それまでの戸籍から抜けて新しい戸籍を単独で作ること 分籍をすると、転籍や改製のときと同じく「戸籍が区切られる」。新しい戸籍に、それ以前の戸籍の記載がそのまま引き継がれるわけではない 被相続人が生前に分籍していた場合、死亡時の戸籍だけでは兄弟姉妹の有無が分からず、分籍前の戸籍まで遡って集める必要がある 本文 分籍をしたことがある方が亡くなった場合、相続の戸籍集めでは死亡時の戸籍だけでは足りません。分籍する前の戸籍まで、さらに遡って取り寄せる必要があります。 ...

2026年8月9日 · ひぐらしさとし

成年後見の『登記されていないことの証明書』とは?──後見登記の証明書2種類の違いと、請求できる人

この記事の要点 後見の登記に関する証明書は2種類。登記の記録が「ある」ことを示すのが登記事項証明書、「ない」ことを示すのが登記されていないことの証明書で、根拠となる条文は同じ 請求できる人は法律で限定されている。本人、本人の配偶者や四親等内の親族、後見人・後見監督人など、立場ごとに請求できる登記記録が決まっており、誰でも他人の分を取れる制度ではない 各種の資格・営業許可などの場面で提出を求められることがあるが、求められる書類は制度改正で変わっているため、提出先の最新の案内で確認が必要 令和8年(2026年)6月24日公布の改正法により、後見・保佐を廃止して補助に一元化する見直しが予定されており、後見登記もその対象に含まれる。ただし施行日は政令待ちで、確認時点ではまだ定まっていない 「後見の登記がされていない証明書を出してください」と言われて、はじめてこの書類の存在を知った、という方は少なくありません。名前が長いうえに、よく似た名前の「登記事項証明書」もあるため、どちらを取ればよいのか迷いやすい書類です。本記事は、執筆時点(2026年08月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月8日 · ひぐらしさとし

裁判所に納める費用はいくら|訴え提起手数料と予納郵便切手の基礎──令和8年5月21日の改正で変わった点

この記事の要点 裁判所に納めるお金は、もともと「申立ての手数料」と「郵便料金にあてるための費用(予納郵便切手)」の2本立てだった ただし令和8年(2026年)5月21日施行の改正により、民事訴訟の訴えの提起・支払督促の申立て・控訴の提起・上告の提起については、郵便費用が申立手数料に一本化され、郵便切手の予納は不要になった。手数料の納付方法も、これらについては原則として現金納付に変わっている 民事調停や家庭裁判所の手続などはこの改正の対象外で、従来どおり手数料は収入印紙、郵便料は予納が必要。予納する郵便切手の額や組合せは裁判所ごとに異なるため、必ず申立先の裁判所の案内で確認する必要がある 手数料の額は民事訴訟費用等に関する法律の別表で、請求する金額(訴額)に応じて決まる。収入印紙は納付の方法であって、契約書に貼る印紙税とは別の話 裁判所を使う手続きでは、申立ての際に一定のお金を納めることになっています。「印紙はいくら貼るのか」「切手も要るのか」は、実際に申立書を書き始めてから戸惑いやすいところです。ここでは、その基本的な仕組みを整理します。 ...

2026年8月8日 · ひぐらしさとし

「準用する」とは──条文でよく見る「準用」の意味と読み替えのしかた【相続の条文で解説】

この記事の要点 「準用する」は、ある事柄について定めた規定を、性質の似た別の事柄にあてはめて働かせる立法技術。同じ文章を何度も書かずに済ませるための工夫です 「適用する」は本来の対象にそのまま働かせること、「準用する」は別の対象に必要な読み替えをしたうえで働かせること 準用されるのは、条文で名指しされた条・項の範囲だけ。「〜とあるのは〜と読み替えるものとする」という一文があれば、その置き換えをしてから読みます 法律の条文を読んでいると、「〇〇の規定は、△△について準用する」という言い回しに何度も出会います。結論から言うと、準用とは、ある事柄について定めた規定を、性質の似た別の事柄にあてはめることです。同じ内容の条文をもう一度書き写す代わりに、「あちらの条文を借りてきます」と宣言する立法上の工夫だと考えると分かりやすくなります。 ...

2026年8月7日 · ひぐらしさとし

登記が完了するまでどれくらいかかる?──登記完了予定日と処理期間の見方

この記事の要点 申請から完了までの見込みは、各法務局がホームページで「登記完了予定日」として公表している 予定日はあくまで目安で、申請が集中したときや申請に不備(補正)があるときは、翌日以降にずれることがある 完了までの間は、登記識別情報通知や登記完了証はまだ手元に届かない 法務局に登記を申請すると、その場で登記簿が書き換わるわけではありません。申請を受け付けたあと、登記官が内容を審査して、はじめて登記が完了します。では、どれくらい待つのか。結論から言えば、その見込みは各法務局が「登記完了予定日」として公表しており、自分の管轄の法務局のホームページで確認できます。 ...

2026年8月7日 · ひぐらしさとし

相談したら必ず依頼しないといけない?──相談と依頼の違い、その場で決めないための準備

この記事の要点 相談と依頼は別のもので、相談したからといってその場で依頼を決めなければならないわけではない 一般には、相談で見通しと費用の説明を受け、納得したうえで委任契約(仕事をお願いする約束)を結んで初めて依頼になる 「持ち帰って考えます」と伝えてよい。そのために聞いておくとよいことがいくつかある 「一度相談に行ったら、そのまま頼まないといけない雰囲気になるのではないか」——相談をためらう理由として、これはとても多いものです。結論から言うと、相談と依頼は別のものです。相談しただけで手続きが始まるわけではなく、その場で結論を出さずに持ち帰ることもできます。 ...

2026年8月6日 · ひぐらしさとし

空き家を取り壊すと土地の固定資産税が上がるのはなぜ?──住宅用地の特例のしくみ

この記事の要点 建物が建っている土地は「住宅用地の特例」によって固定資産税の課税標準(税率をかける前の土台になる金額)が下げられている。建物を取り壊すとこの特例から外れるため、土地の固定資産税が上がることがある 軽減の割合は、200平方メートル以下の部分が価格の6分の1、それを超える部分が3分の1(地方税法349条の3の2第1項・第2項)。都市計画税にも同様の特例があるが割合は3分の1・3分の2で異なる(同法702条の3) 「更地にすると6倍になる」という言い方は正確とはいえない。負担調整措置があり、評価額も取扱いも土地ごと・市町村ごとに違うため、実際の金額はその不動産のある市町村の窓口で確かめる必要がある 結論から書きます。建物を取り壊すと土地の固定資産税が上がることがあるのは、「住宅用地の特例」という税負担を軽くする仕組みが、その土地が住宅の敷地として使われていることを前提にしているからです。建物がなくなれば前提が失われ、原則として特例の適用から外れます。 ...

2026年8月6日 · ひぐらしさとし

相続放棄の「3か月」に間に合わないときは?──家庭裁判所への期間伸長の申立て

この記事の要点 相続放棄・限定承認を選ぶための3か月の熟慮期間は、家庭裁判所に申し立てれば伸ばせる場合があります(民法915条1項ただし書) 申立てができるのは利害関係人(相続人を含む)と検察官(民法915条1項ただし書)、申立先は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です(家事事件手続法201条1項) 「期間を伸ばす」ための申立ても、もとの3か月が満了する前に済ませておく必要があります 「3か月」は動かせない期限ではない 相続が始まると、相続人は単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に選ばなければならないとされています(民法915条1項本文)。この3か月は「熟慮期間」と呼ばれ、いつから数えるかという起算点の考え方はこちらの記事で整理しています。 ...

2026年8月5日 · ひぐらしさとし

「除籍謄本」とは?──戸籍謄本との違いと、相続登記で必要になる理由

この記事の要点 除籍謄本とは、記載されていた人が全員その戸籍から抜けて閉鎖された戸籍の写し 「今も誰かが在籍している戸籍」の写しである戸籍謄本とは別の書類で、保存の仕方も呼び方も異なる 相続登記では、被相続人の死亡から出生までを切れ目なくたどる必要があり、その過程で除籍謄本や改製原戸籍が必要になる 本文 相続の手続きを進めていると、市区町村の窓口や案内文で「戸籍謄本」だけでなく「除籍謄本」という言葉に出会います。結論から言うと、除籍謄本とは、記載されていた人が全員その戸籍から抜けて、戸籍としての役目を終えたものの写しです。 ...

2026年8月5日 · ひぐらしさとし