上場株式・投資信託の相続手続き──証券口座の移管と「準共有」の注意点

この記事の要点 亡くなった方の証券口座にある上場株式・投資信託は、遺産分割が確定するまで相続人全員の準共有という状態になります。 証券会社での相続手続きは、原則として相続人名義の証券口座に株式や投資信託そのものを移す移管が基本で、証券会社が代わりに売却して現金で分けてくれるわけではありません。 移管を受けるには、相続人自身が同じ証券会社(または別の証券会社)に口座を新たに開設する必要がある場合が多くなります。 単元未満株・端株は通常の市場では売買できず、発行会社や特別口座の管理機関への買取請求など、別ルートでの現金化になります。 遺産分割協議書の作成や、預貯金口座の解約とあわせて進めると効率的です。 本記事は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。実際の必要書類や手続き方法は証券会社ごとに異なるため、詳細は各証券会社にご確認ください。 ...

2026年8月17日 · ひぐらしさとし

実家を兄弟の共有名義にしてはいけない理由──共有にする前に知っておきたい3つのリスク

この記事の要点 実家を「とりあえず」兄弟の共有名義にすると、①次の相続で共有者がねずみ算式に増える ②売却に共有者全員の同意が必要になる ③管理費・固定資産税の負担分担で揉めやすい、という3つのリスクを抱える 共有名義は一見「平等」に見えるが、名義を分けた時点で財産そのものは分かれておらず、権利関係が複雑なまま先送りされているだけの状態になる 共有名義にする前に、現物分割・代償分割・換価分割など他の分け方も検討したい。お近くの司法書士にご相談ください 親が亡くなり実家を相続するとき、「きょうだい3人で3分の1ずつ、共有名義にしておこう」という選択をする人は少なくありません。誰か一人だけが名義を持つより公平に見えますし、話し合いも「とりあえず全員の名前を登記簿に載せておく」だけで済むため、揉めずに済んだ気になりやすいからです。 ...

2026年8月14日 · ひぐらしさとし

相続した実家が借地権だった──慌てないための手続きと地主への対応

この記事の要点 借地権(土地を借りて建物を建てる権利)は相続財産として当然に引き継がれ、地主の承諾は不要。承諾料(名義書換料)を支払う法律上の義務もない 土地の名義変更は不要だが、建物の相続登記は必要。相続で取得を知った日から3年以内の申請が義務(怠ると10万円以下の過料の対象) 地代の支払いはそのまま相続人が引き継ぐ。滞納すると契約解除のリスクがあるので、支払方法の確認を最優先に 借地契約書を探して、契約の種類(普通借地権か定期借地権か)と特約を確認する 売却や建て替えなど「次の一手」には地主の承諾が必要になる場面がある。もめたときの交渉・紛争対応は弁護士の分野 親が亡くなり、実家の登記簿(登記事項証明書)を取ってみたら、土地の所有者欄に知らない人の名前が載っていた——。実は、実家は「借地」の上に建っていた、というケースは珍しくありません。 ...

2026年8月10日 · ひぐらしさとし

外国籍になった相続人がいるとき──宣誓供述書と必要書類

この記事の要点 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、相続人としての地位は失われません。変わるのは、そろえる書類の中身です 日本人が外国籍を取得して日本国籍を失うことは「国籍喪失」(国籍法11条1項)または「国籍離脱」(同13条)と呼びます。「帰化」は逆方向、つまり外国人が日本国籍を取得する場合の言葉です(同4条) 在外公館(大使館・総領事館)の署名証明(サイン証明)・在留証明は、日本国籍を有する方向けの制度です。外国籍になった方は原則として発給の対象外とされています 印鑑証明書の代わりとして、現地の公証人などが認証した**宣誓供述書(せんせいきょうじゅつしょ/affidavit)**の提出を求められることがあります 求められる書類・記載事項は提出先によって違います。着手前に管轄の法務局へ事前照会するのが確実です 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、その方が相続人であることは変わりません。 「相続人の一人が、何年も前に外国の国籍を取得していて、いまは日本国籍ではない」というケースで、まず押さえておきたいのがこの点です。手続きで変わるのは、本人であることや住所をどう証明するか、つまり「そろえる書類」の中身だけです。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

遺産分割協議書と遺産分割協議証明書──1通に全員が押すか、1人1通ずつ出すか

この記事の要点 中身の合意は同じ。違いは「1通の紙に全員が署名押印する(協議書)」か、「相続人が1人1通ずつ同じ内容を証明する(協議証明書)」かという書面の作り方だけ 相続登記では、相続人全員分がそろえば、どちらの方式でも使えるのが実務の扱い 相続人が多い・遠方に散っている・郵送で持ち回ると何か月もかかる、というときは協議証明書が向いている ただし全員分そろわないと使えない点は両方式で同じ。1人でも欠ければ、その分け方どおりの登記も預貯金の解約もできない 相続の手続きを進めていると、「遺産分割協議書」という言葉と並んで、「遺産分割協議証明書」という書類が出てくることがあります。名前がよく似ていて、司法書士から「今回は協議証明書の形で作りましょう」と言われても、何がどう違うのか分かりにくいものです。 ...

2026年7月29日 · ひぐらしさとし

相続人が海外在住のとき──サイン証明・在留証明と遺産分割協議書への調印

この記事の要点 相続人の中に海外在住の方がいても、遺産分割協議書は他の相続人と同じように作成できる 海外在住者は住民登録がないため印鑑証明書を取得できず、代わりに在外公館(大使館・総領事館)で「サイン証明(署名証明)」を取得する 住民票の代わりには「在留証明書」を使う 在外公館での手続きは予約制・本人出頭が原則で、日本国内より時間がかかることを見込んでおく 協議内容そのものでもめている場合は、司法書士の対応範囲を超えるため弁護士へ相談する場面になる 「相続人の一人が海外に住んでいて、日本の実印も印鑑証明書も持っていない」──こうした相続は珍しくありません。結論から言うと、相続人に海外在住者がいても、遺産分割協議書を作ること自体はできます。ただし、日本国内にいる相続人と同じ方法(実印+印鑑証明書)は使えないため、代わりの手続きが必要になります。この記事では、その代わりの手続きである「サイン証明(署名証明)」と「在留証明」を中心に、海外在住の相続人がいるときの進め方を整理します。 ...

2026年7月24日 · ひぐらしさとし

甥・姪が相続人になったときの手続き──代襲相続で戸籍集めと遺産分割協議が大変な理由

この記事の要点 甥・姪が代襲相続人になると、被代襲者(先に亡くなった伯父・伯母の子である自分の親)の出生から死亡までの戸籍も必要になり、通常の相続より戸籍収集の通数が増えやすい 被相続人や他の相続人(いとこにあたる人など)と面識がないことが多く、連絡先の特定や協議への参加そのものにハードルがある 相続登記の申請義務は甥・姪にも及ぶ(3年以内・起算点は「自分が相続人として不動産を取得したことを知った日」) 相続財産に負債がある可能性が見える場合は、相続放棄の期限(3か月)にも注意が必要 手続きの負担が大きいと感じたら、早い段階でお近くの司法書士に相談するのが安全 「伯父(叔父)が亡くなったが、子どももおらず、両親もすでに他界していた。兄弟姉妹である自分の親(伯父の弟や妹)も先に亡くなっているため、自分(甥・姪)が代わりに相続人になった」──こうした連絡を受けて戸惑う方は少なくありません。 ...

2026年7月21日 · ひぐらしさとし

『親の預金が使われていた気がする』──相続で疑われる使い込み(使途不明金)への対応の流れ

この記事の要点 使い込みが疑われても、まずは通帳の取引履歴を確認し、事実関係を整理することが出発点 相続人全員が合意すれば、遺産分割の中で使途不明金を「取り込んで」計算し直せる(亡くなった後に処分された分については民法906条の2という仕組みがある) 合意できず解決しない場合は、返還を求める法的手段もあるが、その先は弁護士の領域 相続の場面で、「親の預金が、亡くなる前後に大きく減っていた」「同居していたきょうだいが勝手に引き出していたのでは」という疑いが持ち上がることがあります。結論から言うと、こうした使い込み(使途不明金)の疑いに対しては、①事実関係を確認する、②相続人全員の合意があれば遺産分割の中で調整する、③合意できなければ返還を求める法的手段を検討する、という段階を踏んで対応します。以下、それぞれを順番に整理します。 ...

2026年7月12日 · ひぐらしさとし

相続人の一人が行方不明──遺産分割はどう進める?|不在者財産管理人と失踪宣告の使い分け

「父が亡くなったが、相続人の一人である弟が何十年も音信不通で、どこにいるかわからない」——このようなとき、行方不明の相続人を外して勝手に遺産分割を進めることはできません。とれる道は大きく2つで、生存はしていそうだが連絡がつかない場合は「不在者財産管理人」、**生死が長い間まったくわからない場合は「失踪宣告」**を、家庭裁判所への申立てによって使い分けます。 ...

2026年7月2日 · ひぐらしさとし

相続人の中に認知症の方がいる──遺産分割は進められる?「成年後見人」が必要になるケース

この記事の要点 相続人に判断能力が不十分な方がいる場合、家族が代わりにサインした遺産分割協議は無効になる 家庭裁判所に成年後見人等を選んでもらい、その人が本人に代わって(または支えながら)協議に参加する必要がある 後見人自身が相続人だと利益相反になることがあり、特別代理人が必要な場合も。元気なうちの備え(遺言・任意後見・家族信託)も検討を 「父が亡くなって相続の手続きを始めたいけれど、母が認知症で、話し合いができない」。 「兄が病気で判断が難しくなっている。遺産分割の書類に、私が代わりにサインしてもいい?」 ...

2026年6月20日 · ひぐらしさとし