相続人が海外在住のとき──サイン証明・在留証明と遺産分割協議書への調印

この記事の要点 相続人の中に海外在住の方がいても、遺産分割協議書は他の相続人と同じように作成できる 海外在住者は住民登録がないため印鑑証明書を取得できず、代わりに在外公館(大使館・総領事館)で「サイン証明(署名証明)」を取得する 住民票の代わりには「在留証明書」を使う 在外公館での手続きは予約制・本人出頭が原則で、日本国内より時間がかかることを見込んでおく 協議内容そのものでもめている場合は、司法書士の対応範囲を超えるため弁護士へ相談する場面になる 「相続人の一人が海外に住んでいて、日本の実印も印鑑証明書も持っていない」──こうした相続は珍しくありません。結論から言うと、相続人に海外在住者がいても、遺産分割協議書を作ること自体はできます。ただし、日本国内にいる相続人と同じ方法(実印+印鑑証明書)は使えないため、代わりの手続きが必要になります。この記事では、その代わりの手続きである「サイン証明(署名証明)」と「在留証明」を中心に、海外在住の相続人がいるときの進め方を整理します。 ...

2026年7月24日 · ひぐらしさとし

甥・姪が相続人になったときの手続き──代襲相続で戸籍集めと遺産分割協議が大変な理由

この記事の要点 甥・姪が代襲相続人になると、被代襲者(先に亡くなった伯父・伯母の子である自分の親)の出生から死亡までの戸籍も必要になり、通常の相続より戸籍収集の通数が増えやすい 被相続人や他の相続人(いとこにあたる人など)と面識がないことが多く、連絡先の特定や協議への参加そのものにハードルがある 相続登記の申請義務は甥・姪にも及ぶ(3年以内・起算点は「自分が相続人として不動産を取得したことを知った日」) 相続財産に負債がある可能性が見える場合は、相続放棄の期限(3か月)にも注意が必要 手続きの負担が大きいと感じたら、早い段階でお近くの司法書士に相談するのが安全 「伯父(叔父)が亡くなったが、子どももおらず、両親もすでに他界していた。兄弟姉妹である自分の親(伯父の弟や妹)も先に亡くなっているため、自分(甥・姪)が代わりに相続人になった」──こうした連絡を受けて戸惑う方は少なくありません。 ...

2026年7月21日 · ひぐらしさとし

『親の預金が使われていた気がする』──相続で疑われる使い込み(使途不明金)への対応の流れ

この記事の要点 使い込みが疑われても、まずは通帳の取引履歴を確認し、事実関係を整理することが出発点 相続人全員が合意すれば、遺産分割の中で使途不明金を「取り込んで」計算し直せる(亡くなった後に処分された分については民法906条の2という仕組みがある) 合意できず解決しない場合は、返還を求める法的手段もあるが、その先は弁護士の領域 相続の場面で、「親の預金が、亡くなる前後に大きく減っていた」「同居していたきょうだいが勝手に引き出していたのでは」という疑いが持ち上がることがあります。結論から言うと、こうした使い込み(使途不明金)の疑いに対しては、①事実関係を確認する、②相続人全員の合意があれば遺産分割の中で調整する、③合意できなければ返還を求める法的手段を検討する、という段階を踏んで対応します。以下、それぞれを順番に整理します。 ...

2026年7月12日 · ひぐらしさとし

相続人の一人が行方不明──遺産分割はどう進める?|不在者財産管理人と失踪宣告の使い分け

「父が亡くなったが、相続人の一人である弟が何十年も音信不通で、どこにいるかわからない」——このようなとき、行方不明の相続人を外して勝手に遺産分割を進めることはできません。とれる道は大きく2つで、生存はしていそうだが連絡がつかない場合は「不在者財産管理人」、**生死が長い間まったくわからない場合は「失踪宣告」**を、家庭裁判所への申立てによって使い分けます。 ...

2026年7月2日 · ひぐらしさとし

相続人の中に認知症の方がいる──遺産分割は進められる?「成年後見人」が必要になるケース

この記事の要点 相続人に判断能力が不十分な方がいる場合、家族が代わりにサインした遺産分割協議は無効になる 家庭裁判所に成年後見人等を選んでもらい、その人が本人に代わって(または支えながら)協議に参加する必要がある 後見人自身が相続人だと利益相反になることがあり、特別代理人が必要な場合も。元気なうちの備え(遺言・任意後見・家族信託)も検討を 「父が亡くなって相続の手続きを始めたいけれど、母が認知症で、話し合いができない」。 「兄が病気で判断が難しくなっている。遺産分割の書類に、私が代わりにサインしてもいい?」 ...

2026年6月20日 · ひぐらしさとし

生前にもらった人がいる相続──特別受益と「持戻し」のきほん

この記事の要点 特別受益は、生前贈与や遺贈を「相続分の前渡し」とみなし、遺産に足し戻して計算する調整のしくみ(民法903条) 婚姻20年以上の配偶者への自宅の贈与は、持戻し免除の意思があったと推定される(民法903条4項) 何が特別受益にあたるかは総合判断でケースにより結論が分かれるため、判断に迷うときは早めに専門家へ 「兄は家を建てるとき、親からまとまったお金を出してもらっていた」「妹だけ結婚のときに援助を受けていた」——いざ相続が始まると、こうした生前の贈与をめぐって、きょうだいの間で「不公平ではないか」という思いが表に出てくることがあります。 ...

2026年6月14日 · ひぐらしさとし

未成年の子がいる相続──親は子の代わりに遺産分割できない?「特別代理人」のしくみ

この記事の要点 親と未成年の子がともに相続人になる遺産分割では、親は子を代理できず、家庭裁判所で特別代理人を選んでもらう必要がある(民法826条) 子どもが2人以上いる場合は、子どもごとに別々の特別代理人が必要 申立てには遺産分割協議書の案を添えるのが実務の通例。特別代理人を立てずにした協議は後から効力を否定されるおそれがある 夫が亡くなり、相続人は妻と小学生の子ども2人──。 ...

2026年6月11日 · ひぐらしさとし

法定相続分とは?──配偶者・子・親・兄弟姉妹、それぞれの取り分をやさしく整理

この記事の要点 法定相続分は「遺言も話し合いもないとき」の目安であり、遺言や遺産分割協議があればそちらが優先される 配偶者は常に相続人になり、取り分は一緒に相続する相手が子・親・兄弟姉妹のどれかで1/2・2/3・3/4と変わる 兄弟姉妹が相続人になる場合、半血(父母の一方のみ共通)の兄弟姉妹の取り分は全血の半分になる 「法定相続分」という言葉を聞いたことはあっても、自分の場合はどれくらいの割合になるのか、正確にわかる方は意外と多くありません。配偶者と子がいる場合、配偶者と親の場合、配偶者と兄弟姉妹の場合では、それぞれ割合が変わります。 ...

2026年6月5日 · ひぐらしさとし

遺産の「分け方」には4つの型があります──現物・代償・換価・共有分割の違いと、登記・税金の注意点

この記事の要点 遺産分割には現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の4つの型があり、財産ごとに組み合わせて使うこともできる どの方法を選ぶかで、相続登記の進め方や、譲渡所得税・相続税の扱いが変わる 共有分割は将来の合意形成や共有者の増殖リスクがあるため、最終的な分け方としては慎重に検討すべき 「実家の土地建物と、少しの預貯金。相続人は子ども3人」――こうした相続は珍しくありません。このとき悩むのが、「どうやって分けるか」です。 ...

2026年6月2日 · ひぐらしさとし

遺産分割協議書の作り方と落とし穴──全員署名・印鑑証明書・複数原本のポイント

この記事の要点 遺産分割協議書は相続人「全員」の署名・実印・印鑑証明書がそろって初めて使える書類。1人でも欠けると無効 不動産は登記事項証明書のとおりの表記で書かないと相続登記に使えない 相続登記の申請義務(3年以内)と遺産分割の10年ルールという2つの期限が迫っているため、後回しにしない 被相続人(亡くなった方)の財産を相続人が話し合って分けるときに作る書面が「遺産分割協議書」です。法律で書式が決まった用紙があるわけではなく、相続人が自分たちで作る私文書ですが、これ1枚で不動産の名義変更も、預貯金の解約も、相続税の申告書類も動きます。それだけ大事な書面なのに、「全員の署名がそろわない」「印鑑証明書の有効期限を勘違いしていた」「後から財産が出てきて作り直すはめになった」──そんな落とし穴で、せっかく書いた協議書が使えなくなるケースが少なくありません。 ...

2026年5月24日 · ひぐらしさとし