リゾートマンション・別荘を相続したら──「いらない不動産」に残された現実的な選択肢

この記事の要点 リゾートマンションや別荘は、使わなくても管理費・修繕積立金・固定資産税が毎年かかり続けるため、「もらっても困る不動産」になりやすい それでも相続登記は義務で、取得を知った日から3年以内に申請しないと過料の対象になり得る(不動産登記法第76条の2、第164条第1項) 亡くなった方が管理費を滞納していた場合、その支払義務は原則として相続人に引き継がれる。売買などで部屋を取得した人にも請求できる仕組みがある(建物の区分所有等に関する法律第8条) 「いらない土地を国に引き取ってもらう制度」は土地だけの制度で、建物であるリゾートマンションは対象にならない リゾートマンションや別荘を相続することになったとき、多くの方が最初に直面するのは「使う予定がないのに、費用だけが出ていく」という現実です。結論から言えば、受け取らないという判断(相続放棄)をしない限り、名義を引き継いだ人が、手放すまで費用を負担する立場になります。そして相続登記は義務であり、「使わないから放っておく」という選択は、法律上は用意されていません。 ...

2026年7月29日 · ひぐらしさとし

遺産分割協議書と遺産分割協議証明書──1通に全員が押すか、1人1通ずつ出すか

この記事の要点 中身の合意は同じ。違いは「1通の紙に全員が署名押印する(協議書)」か、「相続人が1人1通ずつ同じ内容を証明する(協議証明書)」かという書面の作り方だけ 相続登記では、相続人全員分がそろえば、どちらの方式でも使えるのが実務の扱い 相続人が多い・遠方に散っている・郵送で持ち回ると何か月もかかる、というときは協議証明書が向いている ただし全員分そろわないと使えない点は両方式で同じ。1人でも欠ければ、その分け方どおりの登記も預貯金の解約もできない 相続の手続きを進めていると、「遺産分割協議書」という言葉と並んで、「遺産分割協議証明書」という書類が出てくることがあります。名前がよく似ていて、司法書士から「今回は協議証明書の形で作りましょう」と言われても、何がどう違うのか分かりにくいものです。 ...

2026年7月29日 · ひぐらしさとし

戸籍の広域交付とは──本籍地に行かずに最寄りの窓口で戸籍をまとめて集める

この記事の要点 令和6年3月1日から、本籍地でない市区町村の窓口でも戸籍証明書を請求できる「広域交付」が始まりました(戸籍法120条の2)。 請求できるのは本人・配偶者・直系尊属(父母、祖父母など)・直系卑属(子、孫など)に限られ、兄弟姉妹の戸籍は広域交付では請求できません。 郵送での請求も、代理人による請求もできません。 請求できる方ご本人が市区町村の戸籍担当窓口に出向き、顔写真付きの本人確認書類を示す必要があります。 コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は広域交付では出てきません。 「これで全部そろう」とは限らない点が最大の注意点です。 司法書士などが職務上請求で戸籍を集める場面では、広域交付は使えません。ご自身で集める場合と専門家に依頼する場合とで、たどる道筋が違います。 本籍地に行かなくても、戸籍がまとめて取れるようになりました 結論から書きます。令和6年3月1日から、本籍地が遠方でも、お住まいや勤務先の最寄りの市区町村の窓口で、戸籍証明書をまとめて請求できるようになりました。これを「広域交付」と呼びます。根拠は戸籍法120条の2で、令和元年法律第17号による改正が同日に施行されたものです(法務省民事局「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」)。 ...

2026年7月28日 · ひぐらしさとし

山林を相続したら──90日以内の森林法の届出、管理の負担、そして手放すという選択肢

この記事の要点 山林を相続すると、期限の異なる2つの手続きが並行して走ることがある。相続登記は3年以内(不動産登記法第76条の2第1項)、森林法の届出は相続開始の日から90日以内(届出義務の根拠は森林法第10条の7の2第1項、90日という期限を定めているのは同法施行規則第7条第1項) 森林法の届出先は「市町村の長」。ただし対象は地域森林計画の対象となっている民有林に限られ、相続した山林がすべて届出の対象になるわけではない。まず市町村の林務担当窓口で対象かどうかを確認する 届出をせず、または虚偽の届出をすると10万円以下の過料(森林法第213条)。相続登記を怠った場合の10万円以下の過料(不動産登記法第164条第1項)とは別の制度 固定資産税は課税標準額が30万円未満なら課されないのが原則(地方税法第351条)。ただし「税金がかからない」ことと「管理の責任がなくなる」ことは別 手放す方法は国庫帰属・売却・自治体への寄付だが、いずれもハードルがある。特に境界が明らかでない土地は国庫帰属の申請そのものができない(相続土地国庫帰属法第2条第3項第5号) 親から山林を相続した、という相談は珍しくありません。ここで最初に押さえておきたいのは、山林の相続には、宅地の相続にはない別ルートの手続きが加わることがあるという点です。法務局への相続登記とは別に、市町村への届出が必要になる場合があり、しかもその期限は相続登記よりずっと短い90日です。 ...

2026年7月28日 · ひぐらしさとし

農地を相続したら──農業委員会への届出と相続登記、そのあと『売る・貸す・転用する』の壁

この記事の要点 農地を相続しても、相続そのものには農地法の許可は不要(別に農業委員会への届出は必要) 許可がいらないのは「相続で取得する」ときだけで、その農地をあとで売る・貸す・転用しようとすると、あらためて農地法の許可が必要になる 農地転用の許可申請書類の作成代行は行政書士の業務、売買の仲介は宅地建物取引業者の業務であり、相続登記を担う司法書士とは役割が分かれる 無許可で転用すると、原状回復命令や罰則の対象になり得る 農地を相続すると、法務局への相続登記に加えて、農業委員会への届出という手続きが控えています。ここで押さえておきたいのは、相続そのものには農地法の許可が不要という点です。ただし、これは「相続で農地を受け取るとき」に限った話であり、届出を済ませたあとにその農地を売る・貸す・転用しようとすると、話は変わってきます。 ...

2026年7月27日 · ひぐらしさとし

「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」の違い──法令の時間表現を条文例で読み分ける

この記事の要点 一般には「直ちに」がもっとも急ぎ、「速やかに」「遅滞なく」の順にゆるやかになると説明される ただしこれは一般的な用語法であり、実際の意味はその条文の解釈で決まる 「三年以内」のように数字で区切る期限の定めとは、性質の異なる書き方である 法律の条文は、いつまでにやるべきかを「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」という言葉で示すことがあります。日常では似た意味ですが、法令では書き分けられており、急ぎの度合いが異なるとされています。 ...

2026年7月26日 · ひぐらしさとし

私道の相続登記を忘れずに──宅地だけ登記して私道持分が漏れる典型パターン

この記事の要点 家と敷地の相続登記が済んでいても、進入路の私道持分だけ別地番で漏れていることがよくある 私道持分も相続登記の義務化(令和6年4月〜)の対象で、放置すると過料10万円のリスクもある 名寄帳・公図・購入時の重要事項説明書を確認すれば、たいてい見つけられる 「実家の名義変更は終わったから、もう相続登記は大丈夫」──そう思っていたら、家の前の道路(私道)の持分だけ、亡くなった親の名義のまま何十年も残っていた。こうした見落としは、決して珍しいケースではありません。 ...

2026年7月25日 · ひぐらしさとし

相続人が海外在住のとき──サイン証明・在留証明と遺産分割協議書への調印

この記事の要点 相続人の中に海外在住の方がいても、遺産分割協議書は他の相続人と同じように作成できる 海外在住者は住民登録がないため印鑑証明書を取得できず、代わりに在外公館(大使館・総領事館)で「サイン証明(署名証明)」を取得する 住民票の代わりには「在留証明書」を使う 在外公館での手続きは予約制・本人出頭が原則で、日本国内より時間がかかることを見込んでおく 協議内容そのものでもめている場合は、司法書士の対応範囲を超えるため弁護士へ相談する場面になる 「相続人の一人が海外に住んでいて、日本の実印も印鑑証明書も持っていない」──こうした相続は珍しくありません。結論から言うと、相続人に海外在住者がいても、遺産分割協議書を作ること自体はできます。ただし、日本国内にいる相続人と同じ方法(実印+印鑑証明書)は使えないため、代わりの手続きが必要になります。この記事では、その代わりの手続きである「サイン証明(署名証明)」と「在留証明」を中心に、海外在住の相続人がいるときの進め方を整理します。 ...

2026年7月24日 · ひぐらしさとし

所有不動産記録証明制度とは|亡くなった方名義の不動産を一覧で調べる方法

「親が亡くなったが、どこにどれだけ不動産を持っていたのか分からない」——相続の場面でよくあるお悩みです。2026年(令和8年)2月2日から始まった所有不動産記録証明制度は、こうした「見落とし」を防ぐための新しいしくみです。この記事では、制度の中身と使い方、そして注意点をやさしく整理します。 ...

2026年7月11日 · ひぐらしさとし

抵当権付きの不動産を相続したとき──団信で完済されない場合の「債務者変更登記」

この記事の要点 住宅ローンに団体信用生命保険(団信)が付いていれば、契約者が亡くなると保険金で完済され、抵当権の抹消登記だけで済む 団信に未加入だったり、事業性ローンなど団信の対象外の借入れが残っていたりすると、ローン(債務)は相続人に引き継がれ、抵当権もそのまま残る この場合、金融機関との調整を経て、抵当権の登記事項である「債務者」を書き換える変更登記が必要になる 親が亡くなり、実家の不動産を相続することになった。登記簿を確認したら、住宅ローンの「抵当権」がまだ残っていた──。こうしたとき、多くの方がまず思い浮かべるのは「団信で完済されているはず」という期待です。しかし、団信に入っていなかったり、事業用の借入れだったりすると、話が変わってきます。 ...

2026年7月9日 · ひぐらしさとし