問題: A、B、Cが債権者Xに対して150万円の連帯債務を負っている場合に関する次の記述のうち、令和2年4月1日施行の改正民法の下で誤っているものはどれか。
ア. AがXに対して150万円を弁済した場合、その効力はB及びCに対しても及び、B及びCの債務も消滅する。
イ. AがXとの間で更改契約を締結し、新債務を負担した場合、B及びCの債務も消滅する。
ウ. AのXに対する反対債権をもってXのAに対する債権と相殺した場合、その効力はB及びCに対しても及ぶ。
エ. XがAに対して履行の請求をした場合、その効力はB及びCに対しても及び、B及びCの債務についても消滅時効の完成が猶予される。
オ. XがAに対して債務を免除しても、B及びCに対しては効力が及ばず、B及びCは依然として150万円の債務を負う。
答え: エ
解説: 令和2年4月1日施行の改正民法(平成29年法律第44号)により、連帯債務における絶対効が整理された。改正後の絶対効は、弁済・更改(民法438条)、相殺(民法439条1項)、混同(民法440条)の4つに限定され、それ以外の事由(履行請求・免除・時効完成等)はすべて相対効(民法441条本文)に統一されている。
ア:正しい。弁済は絶対効として当然に残されている。150万円全額を弁済すれば、債務全体が消滅し、B及びCも債務を免れる。
イ:正しい。更改は絶対効(民法438条)として残されている。
ウ:正しい。相殺は絶対効(民法439条1項)として残されている。Aが自己の反対債権で相殺すれば、その額の範囲でB及びCの債務も消滅する。
エ:誤り。改正前は履行請求に絶対効があった(旧434条)が、改正後は履行請求は相対効(民法441条本文)となった。XがAに履行請求しても、B及びCには時効完成猶予の効力は生じない。
オ:正しい。免除も改正後は相対効(民法441条本文)。XがAに免除しても、B及びCには効力が及ばない。
【ポイント】改正後の絶対効は「弁・更・相・混(べんこうそうこん)」の4つ。履行請求・免除・時効完成は相対効へ統一された。
問題: 同一の不動産上に第1順位甲、第2順位乙、第3順位丙の3つの抵当権が設定されている場合における抵当権の順位の変更に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
ア. 抵当権の順位の変更は、各抵当権者の合意によってすることができ、登記をしなければ効力を生じない。
イ. 順位の変更について、利害関係を有する者がある場合は、その者の承諾を得なければならない。
ウ. 順位変更の登記の申請は、順位変更の合意をした抵当権者全員が共同して申請する。
エ. 抵当権設定者である所有者は、順位変更の登記の申請人とはならない。
オ. 順位変更は、3つの抵当権すべてを対象とする必要があり、3つのうち2つの抵当権のみを対象に順位を変更する登記をすることはできない。
答え: オ
解説: 民法374条1項・2項、不動産登記法89条1項、不動産登記令3条12号等が関係する。
ア:正しい。抵当権の順位の変更は各抵当権者の合意によってする(民法374条1項本文)。登記をしなければ効力を生じない(同条2項)。
イ:正しい。順位の変更について利害関係を有する者(転抵当権者など)がある場合は、その者の承諾を得なければならない(民法374条1項ただし書)。
ウ:正しい。順位変更の登記の申請は、順位変更の合意をした抵当権者全員が共同して申請する(不動産登記法89条1項)。
エ:正しい。所有者は申請人とならない。順位変更は抵当権者間の問題であり、所有者には承諾権限も登記申請権限もない。
オ:誤り。順位変更は、同一不動産上の複数の抵当権の一部のみを対象として行うこともできる。たとえば、甲と乙のみを対象に順位を入れ替え、丙はそのままとすることも、当該2者の合意(および利害関係人がある場合はその承諾)があれば可能。
【ポイント】順位変更は「合意・登記で効力発生・利害関係人の承諾」の3点。順位変更の対象は同一不動産上の複数抵当権の中から一部のみを選ぶこともできる。
問題: A株式会社(消滅会社)がB株式会社(存続会社)に吸収合併される場合に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
ア. 吸収合併の効力は、吸収合併契約で定めた効力発生日に生じる。
イ. 吸収合併消滅会社及び存続会社は、原則として、株主総会の特別決議により合併契約の承認を受ける必要がある。
ウ. 吸収合併存続会社は、効力発生日から本店所在地において2週間以内に、合併による変更登記をしなければならない。
エ. 吸収合併消滅会社は、効力発生日に解散したうえで清算手続を経て消滅する。
オ. 反対株主は、合併契約承認決議に先立って会社に対し書面又は電磁的方法により反対する旨を通知し、かつ当該総会において反対した場合は、株式買取請求権を行使できる。
答え: エ
解説: 会社法748条以下、750条1項、783条1項、795条1項、309条2項12号、921条、785条1項・2項、475条1号かっこ書等が関係する。
ア:正しい。吸収合併の効力は、吸収合併契約で定めた効力発生日に生じる(会社法750条1項)。
イ:正しい。消滅会社・存続会社の双方とも、原則として株主総会の特別決議(会社法309条2項12号)による合併契約の承認を要する(会社法783条1項、795条1項)。簡易合併(会社法796条2項)・略式合併(会社法796条1項、784条1項)の例外あり。
ウ:正しい。存続会社は、効力発生日から本店所在地において2週間以内に、合併による変更の登記をしなければならない(会社法921条)。
エ:誤り。吸収合併消滅会社は、効力発生日に消滅する(会社法750条1項)が、清算手続は経ない。会社法475条1号のかっこ書は、合併による解散の場合(同法471条4号)を清算開始の事由から除外しており、合併消滅会社は清算を経ないまま法人格が消滅する。消滅会社の権利義務は、包括承継により存続会社にすべて引き継がれる(会社法750条1項)。
オ:正しい。反対株主は、株式買取請求権を行使できる(会社法785条1項、797条1項)。手続として、総会前の通知(書面又は電磁的方法)+総会での反対が必要(会社法785条2項1号イ、797条2項1号イ)。
【ポイント】合併消滅会社は「清算なしの消滅」。権利義務はすべて包括承継で存続会社へ移る。
問題: 民事訴訟における補助参加に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
ア. 補助参加は、訴訟の結果について法律上の利害関係を有する第三者が、当事者の一方を勝訴させるためにすることができる。
イ. 補助参加の申出は、参加の趣旨及び理由を明らかにして、補助参加をしようとする裁判所にしなければならない。
ウ. 補助参加人は、訴訟について、攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起その他一切の訴訟行為をすることができる。
エ. 補助参加人のする訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない。
オ. 補助参加に係る訴訟の裁判は、いかなる場合であっても、補助参加人に対してその効力を有する。
答え: オ
解説: 民事訴訟法42条、43条1項、45条1項本文・2項、46条本文・各号等が関係する。
ア:正しい。補助参加の要件は「訴訟の結果について法律上の利害関係を有する第三者」(民事訴訟法42条)。法律上の利害関係であり、事実上・経済上の利害関係では足りない(通説)。
イ:正しい。補助参加の申出は、参加の趣旨及び理由を明らかにして、補助参加をしようとする裁判所に行う(民事訴訟法43条1項)。
ウ:正しい。補助参加人は、攻撃又は防御の方法の提出、異議の申立て、上訴の提起その他一切の訴訟行為をすることができる(民事訴訟法45条1項本文)。ただし参加時の訴訟状況に応じた制限あり(同条1項ただし書)。
エ:正しい。補助参加人の訴訟行為は、被参加人の訴訟行為と抵触するときは、その効力を有しない(民事訴訟法45条2項)。
オ:誤り。補助参加に係る訴訟の裁判は、原則として補助参加人に対してもその効力を有する(参加的効力、民事訴訟法46条本文)が、民事訴訟法46条各号に該当する事由(補助参加人が訴訟行為をすることができなかった事由、補助参加人の訴訟行為が被参加人の訴訟行為と抵触したため効力を有しなかった事由、被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げた事由、被参加人が補助参加人のすることのできない訴訟行為を故意又は過失によってしなかった事由)がある場合は、参加的効力は及ばない。
【ポイント】補助参加人の地位は「一切の訴訟行為が原則として可能だが、被参加人と抵触すれば効力なし」「参加的効力には民訴法46条各号の例外がある」の2点。
問題: 強制執行に対する債務者及び第三者の不服申立てに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
ア. 債務者は、債務名義に表示された請求権の存在又は内容について異議があるときは、請求異議の訴え(民事執行法35条1項)を提起することができる。
イ. 確定判決を債務名義とする請求異議の訴えにおいては、口頭弁論終結後に生じた事由に限り、異議事由として主張することができる。
ウ. 強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、第三者異議の訴え(民事執行法38条1項)を提起することができる。
エ. 執行裁判所の執行処分に対する不服申立ての方法は、すべて執行抗告であり、執行異議の方法によることは認められていない。
オ. 請求異議の訴え及び第三者異議の訴えは、いずれも執行裁判所の専属管轄に属する。
答え: エ
解説: 民事執行法10条1項、11条1項、35条1項・2項、38条1項、33条2項、35条3項等が関係する。
ア:正しい。請求異議の訴えは、債務名義に表示された請求権の存在又は内容について異議のある債務者が提起することができる(民事執行法35条1項本文)。
イ:正しい。確定判決を債務名義とする請求異議の訴えでは、口頭弁論終結後に生じた事由に限り異議事由として主張可能(民事執行法35条2項)。既判力との関係で時的制限が設けられている。
ウ:正しい。第三者異議の訴えは、強制執行の目的物について「所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利」を有する第三者が提起する(民事執行法38条1項)。
エ:誤り。執行裁判所の執行処分に対する不服申立ては、執行抗告(民事執行法10条1項)と執行異議(同法11条1項)の2種類がある。執行抗告は「特別の定めがある場合に限り」できるものであり(10条1項)、それ以外の執行処分に対する不服申立ては執行異議(11条1項)による。したがって「すべて執行抗告」は誤り。
オ:正しい。請求異議の訴え及び第三者異議の訴えは、原則として執行裁判所が管轄する(民事執行法33条2項、35条3項、38条3項)。これらは専属管轄である。
【ポイント】強制執行に対する不服申立ては「請求異議の訴え/第三者異議の訴え/執行抗告/執行異議」の4つを使い分ける。執行抗告は「特別の定めある場合に限り」、それ以外は執行異議。
出題分野の振り分け
| 問 | 科目 | 論点 | 主な根拠条文・改正情報 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(債権総論) | 連帯債務の絶対効と相対効 | 民法438条・439条1項・440条・441条本文(令和2年4月1日施行・改正) |
| 第2問 | 不動産登記法 | 抵当権の順位変更 | 民法374条1項・2項、不動産登記法89条1項、不動産登記令3条12号 |
| 第3問 | 会社法・商業登記法 | 吸収合併と消滅会社・存続会社の手続 | 会社法750条1項・783条1項・795条1項・309条2項12号・921条・475条1号かっこ書・785条 |
| 第4問 | 民事訴訟法 | 補助参加と参加的効力 | 民事訴訟法42条・43条1項・45条1項・2項・46条本文・各号 |
| 第5問 | 民事執行法 | 強制執行の不服申立ての類型 | 民事執行法10条1項・11条1項・35条1項・2項・38条1項・33条2項 |