この記事の要点
- 世帯主変更届は、亡くなった方が世帯主で、残る世帯員が2人以上いる場合に必要になるのが一般的です。残る世帯員が1人だけになる場合は、住民基本台帳法施行令25条によって届出を要しないものとされています
- 届出の期限は死亡日から14日以内とされています(住民基本台帳法25条)
- 国民健康保険・介護保険の資格喪失届、印鑑登録の廃止(死亡により自動的に失効する市区町村も多い)など、同じタイミングで窓口に行く手続きがまとまっています
- 手続きは亡くなった方が住んでいた市区町村の窓口で、届出人本人(同一世帯の方など)が行うのが基本です
- 死亡後の手続き全体の流れは死亡後の手続き全体像で時系列に整理していますので、あわせてご確認ください
身内が亡くなったとき、葬儀の手配や関係者への連絡で慌ただしいなかにも、住民票の「世帯主」を書き換える届出には期限があります。亡くなった方が世帯主だった場合、死亡日から14日以内に世帯主変更届(住民異動届の一種で、「世帯主変更届」「世帯変更届」などと呼ばれます)を市区町村の窓口に出す必要があるとされています。
この記事では、世帯主変更届が必要になるケース・不要になるケース、届出の期限や持ち物、あわせて済ませておきたい手続きについて、一般的な流れを整理します。
世帯主変更届が必要かどうかは「残る世帯員の人数」で変わる
世帯主変更届が必要かどうかは、亡くなった方が世帯主だったかどうかと、その世帯に残るメンバー(世帯員)が何人になるかで変わります。
- 亡くなった方が世帯主で、残る世帯員が2人以上いる場合:誰が新しい世帯主になるかを届け出る必要があるとされるのが一般的です。たとえば、夫が世帯主で、妻と成人した子どもが同じ世帯に残る場合などがこれにあたります
- 亡くなった方が世帯主で、残る世帯員が1人だけになる場合:新しい世帯主となる方が1人に定まるため、法令上、届出を要しないものとされています。たとえば、夫婦二人暮らしで夫が世帯主として亡くなり、妻だけが残る場合などです
- 亡くなった方が世帯主ではなかった場合:世帯主の変更自体が生じないため、この届出は不要です
残る世帯員が1人だけになる場合に届出が要らないのは、各市区町村が気を利かせているからではなく、法令にはっきりした根拠があります。住民基本台帳法25条は、届出義務を負う者から「政令で定める者」を除いており、その政令にあたる住民基本台帳法施行令25条は「世帯変更届を要しない者」という見出しのもとで、除かれる者を「世帯主以外のその世帯に属する者が一人になつた場合におけるその者」と定めています。世帯主が亡くなって残る世帯員が1人になった場合は、この除外にあたります。
これに対して、残る世帯員が2人以上いても、たとえば一方が15歳未満のお子さんで、新しい世帯主となる方が実質的に1人に定まるようなケースを届出不要として扱うかどうかは、施行令に明文があるわけではありません。この部分は市区町村の運用によって分かれ得るところで、形式的に届出を求める市区町村もあり得ます。
自分のケースで届出が必要かどうか迷う場合は、窓口や電話で市区町村に確認するのが確実です。届出が不要とされた場合でも、住民票の記載が実態と合っているかを確認しておくと安心です。
届出の期限は死亡日から14日以内(住民基本台帳法25条)
世帯主変更届の期限は、変更があった日(世帯主が亡くなった日)から14日以内です(住民基本台帳法25条)。同条は「世帯変更届」の見出しのもとで、転入届(同法22条1項)および転居届(同法23条)の場合を除くほか、その属する世帯またはその世帯主に変更があった者(前の項目で触れた政令で定める者を除く)は、その変更があった日から14日以内に、その氏名・変更があった事項・変更があった年月日を市町村長に届け出なければならない、と定めています。
条文の文言から分かるとおり、届出義務を負うのは「変更があった者」、つまり亡くなった方ではなく世帯に残る方です。この点は、後で触れる届出人の範囲の話にもつながります。
なお、起算点が「変更があった日」である点は注意が必要です。死亡届のように「死亡の事実を知った日」から数える規定(戸籍法86条1項)とは起算点が異なります。もっとも、離れて暮らしていて死亡を後から知った場合など、14日以内に届け出られないことに無理からぬ事情があるケースもあります。後述する過料の規定が「正当な理由がなくて」届出をしない者を対象としている点も含め、実際の取扱いは事情によって変わり得ますので、遅れに気づいた時点で窓口に相談するのが現実的です。
14日という期間は、他の初期手続き(後述する国民健康保険や介護保険の資格喪失届など)と足並みがそろっていることが多く、結果としてまとめて窓口に行きやすい期間になっています(そのように制度が設計された、と立法趣旨が公式に示されているわけではありません)。逆にいえば、葬儀や初七日などの対応に追われて後回しにしていると、あっという間に過ぎてしまう期間でもあります。
死亡届の提出(死亡の事実を知った日から7日以内が原則)と合わせて、亡くなってから2週間ほどの間にやるべきことをカレンダーで確認しておくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。全体の時系列は死亡後の手続き全体像にまとめていますので、あわせてご覧ください。
窓口での一般的な持ち物・流れ
世帯主変更届は、亡くなった方が住んでいた市区町村の窓口(住民課・戸籍住民課など、市区町村によって名称は異なります)で行います。一般的に必要とされることが多いものは次のとおりです。
- 届出書(窓口に備え付けられていることが多く、その場で記入できます)
- 届出人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 届出人の印鑑(自治体や届出方法によっては不要な場合もあります)
届出人になるのは、先ほど触れたとおり「変更があった者」、つまり世帯に残る方ご自身が基本です。世帯主が世帯員に代わって届け出ることもでき、同一世帯以外の方が代わりに窓口へ行く場合は委任状などを求められるのが通常です。ただし、どの範囲まで代理を認めるか、委任状の様式をどうするかといった細部は市区町村によって取り扱いが異なることがあるため、訪問前に電話やホームページで確認しておくと二度手間を防げます。
同時に済ませておきたい手続き
亡くなった方が世帯主だった場合、同じタイミングで次のような手続きも必要になることが多く、まとめて窓口に行くと効率的です。
- 国民健康保険・後期高齢者医療の資格喪失届:亡くなった方が加入していた場合に必要です。期限はこちらも死亡から14日以内とされています。なお、従来の紙の健康保険証は2025年(令和7年)12月1日で有効期限が終了し、期限切れの保険証を医療機関に持参した場合の取扱いも2026年(令和8年)7月31日で終了しました。現在は「マイナ保険証(健康保険証として利用登録したマイナンバーカード)」か、マイナ保険証をお持ちでない方に交付される「資格確認書」に切り替わっています。そのため、亡くなった方に資格確認書が交付されていた場合は、窓口に返すのはその資格確認書になります。逆に、マイナ保険証だけを使っていて資格確認書の交付を受けていなかった方の場合、返却する現物がないこともあります(マイナンバーカード自体は保険証とは別のものなので、返却の対象ではありません)。返すものがあるかどうか、いつ回収するか(自治体によっては後述の葬祭費の申請時に回収する取扱いもあります)は自治体で異なりますので、窓口で確認してください。また、世帯主が変わることで、世帯に残る方の資格確認書の記載を書き替える手続きが必要になる場合があります。あわせて、葬祭費という亡くなった方の加入していた保険から支給されるお金があり、請求しないと受け取れません。詳しくは葬祭費・埋葬料はもらい忘れやすいで整理しています
- 介護保険の資格喪失届:亡くなった方が介護保険の被保険者証(65歳以上の方、または40歳以上65歳未満で要介護認定を受けていた方など)を持っていた場合に必要です。介護保険は健康保険とは制度が異なり、マイナンバーカードによる資格確認への切り替えは段階的な導入の途中です(厚生労働省は、その土台となる介護情報基盤について、2028年〈令和10年〉4月1日までに全市町村で活用を開始することを目指すとしています)。そのため現時点では、紙の被保険者証が交付されている自治体が多くあります。そのため、こちらは被保険者証の返却があわせて求められることが一般的です
- 印鑑登録の廃止:亡くなった方が個人として印鑑登録をしていた場合、死亡届の提出によって自治体側で自動的に登録が抹消される取り扱いが一般的です。ただし印鑑登録は各市区町村の条例に基づく制度で、全国一律の法律の定めがあるわけではありません。廃止の届出や登録証(カード)の返却を求める市区町村もありますので、念のため窓口で確認しておくと安心です
これらはいずれも市区町村の窓口が担当する手続きで、必要な書類や取り扱いは自治体によって細部が異なることがあります。年金の受給停止手続きは年金事務所が窓口になるなど、行き先が分かれる手続きもあるため、事前に問い合わせておくと当日の動きがスムーズになります。
まとめ
世帯主変更届は、亡くなった方が世帯主で残る世帯員が2人以上いる場合に必要になる届出で、死亡日から14日以内が期限とされています(住民基本台帳法25条)。残る世帯員が1人だけになる場合は、住民基本台帳法施行令25条によって届出を要しないものとされています。ただし、残る世帯員が2人以上いても新しい世帯主が実質的に1人に定まるようなケースの取扱いは市区町村によって分かれ得ますので、判断に迷うときは窓口で確認してください。国民健康保険・介護保険の資格喪失届や印鑑登録の確認など、同じ時期に済ませておきたい手続きもまとまっているため、まとめて窓口で確認するのが効率的です。
持ち物や必要書類、届出人の範囲は自治体によって取り扱いが異なることがあります。具体的な手続きについては、お住まいの市区町村窓口にご相談ください。
よくある質問
Q. 世帯主変更届に費用はかかりますか?
届出自体に手数料はかからないのが一般的です。ただし、あわせて住民票の写しを取得する場合は、住民票の交付手数料が別途かかります。手数料の金額は自治体によって異なるため、窓口やホームページで確認しておくと安心です。
Q. 14日を過ぎてしまったら、あるいは放置したらどうなりますか?
期限を過ぎても届出自体はできますが、正当な理由がなくて住民基本台帳法25条の届出をしない者は5万円以下の過料に処する、と定められています(同法52条2項)。実際に過料が科されるかどうかは個別の事情によりますが、期限が法律上の義務として定められていることに変わりはありません。また、住民票の世帯主欄が実態と異なったままだと、行政からの通知や各種手続きで混乱が生じることもあります。気づいた時点で早めに窓口へ相談することをおすすめします。
Q. 自分で手続きできますか?専門家に頼む必要はありますか?
世帯主変更届は、届出人となる方がご自身で市区町村の窓口に届け出る手続きです。特別な書類作成や専門知識は必要とされておらず、窓口で案内を受けながらその場で記入できることがほとんどです。ご不明な点があれば、まずはお住まいの市区町村窓口にお問い合わせください。
【さらに深掘り】世帯主変更と固定資産税・国民健康保険料の関係
ご注意 以下は執筆時点(2026年8月)の法令・通達・実務運用に基づく一般的な解説です。個別事情により判断が分かれる論点を含みます。実務適用は最新情報と個別事情を踏まえ、お住まいの市区町村の窓口(住民課・税務課など)や税理士にご確認ください。 ここから先は専門的な内容です。一般の方はここまでの内容で十分です。
世帯主変更届は住民票上の手続きですが、同じ市区町村の窓口で扱う税・保険の制度のなかには、世帯主が誰かによって取扱いが変わるものと、まったく別の理由で手続きが必要になるものが混在しています。混同しやすいので、順に分けて説明します。
まず、固定資産税・都市計画税は世帯主変更届とは無関係の制度です。これらは不動産の所有者に課される税で、世帯主が誰かは納税義務の有無に影響しません。所有者が亡くなった場合、その納税義務は相続人が引き継ぐことになりますが、相続人が複数いるときに誰がいくら負担するのか、誰に納税通知書が届くのかは、相続登記が済んでいるかどうかや自治体の運用によって取扱いが分かれます。ここは一律の説明ができない部分です。
そのうえで、相続登記が済むまでの間、納税通知書などの送達先を明確にする目的で、市区町村に「相続人代表者指定届」を提出する取扱いがあります。地方税法9条の2は、納税者につき相続があった場合において相続人が2人以上あるときは、相続人は自分たちのなかから賦課徴収(滞納処分を除く)・還付に関する書類を受領する代表者を指定することができ、指定をした相続人はその旨を地方団体の長に届け出なければならない、と定めています。つまり、代表者を指定するかどうか自体は任意ですが、指定した場合の届出は義務という構造です。また、相続人やその相続分のうちに明らかでないものがあり、かつ相当の期間内にこの届出がないときは、地方団体の長が相続人の一人を指定して代表者とすることができるとされています(同条2項)。届出書の名称や様式は市区町村によって異なります。
なお、この代表者は「書類を受け取る窓口役」であって、指定されたことによってその人が相続人全員分の税を負担する立場になるわけではありません。ここを取り違えると、代表者に指定された方が過大な負担を心配することになりますので、注意してください。
これに対して、国民健康保険料(税)は世帯主が誰かと直結する制度です。国民健康保険法76条1項は、市町村は国民健康保険事業に要する費用に充てるため、被保険者の属する世帯の世帯主(その市町村の区域内に住所を有する世帯主に限る)から保険料を徴収しなければならない、と定めています。ただし書きで「地方税法の規定により国民健康保険税を課するときは、この限りでない」とされており、保険料方式をとる市町村では世帯主が納付義務を負う仕組みになっています。保険料に代えて国民健康保険税を課している市町村では、地方税法の規定により世帯主が納税義務者とされます。いずれの方式でも、世帯主自身が国民健康保険に加入していない場合であっても世帯主が納付・納税の義務者として扱われる、と説明されるのが一般的です(いわゆる擬制世帯主の扱い)。そのため、世帯主が変わると、保険料・保険税の請求書の宛先も新しい世帯主に変わることになります。
介護保険料についても、世帯の状況が関係してくる場面があります。65歳以上の方の介護保険料は、本人や世帯の住民税の課税状況などに応じた段階に区分して決められるのが一般的で、その具体的な区分や金額は各市区町村の条例で定められています。世帯の構成が変わることでこの区分の判定に影響が及ぶ可能性はありますが、どの段階になるか、実際に金額が変わるかは、世帯の収入や課税状況、その市区町村の定めによって異なります。ここは一般論として「影響し得る」と言えるにとどまり、変わる・変わらないを一律に述べることはできません。
以上はいずれも制度の一般的な説明にとどまります。具体的な税額・保険料額の計算や、ご自身が納税義務者・納付義務者にあたるかどうかについては、税理士またはお住まいの市区町村の税務窓口・国保窓口にご確認ください。
参考資料
この記事は、次の資料を参照して内容を確認しています(確認日:2026年08月)。
- 住民基本台帳法 第25条・第26条・第52条第2項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342AC0000000081
- 住民基本台帳法施行令 第25条(世帯変更届を要しない者)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/342CO0000000292
- 戸籍法 第86条第1項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
- 国民健康保険法 第76条第1項(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000192
- 地方税法 第9条の2(相続人からの徴収の手続)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
- 厚生労働省「資格確認方法について」(従来の健康保険証の有効期限・経過措置の終了日): https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_50657.html
- 厚生労働省「介護情報基盤について」(全市町村での活用開始時期): https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59231.html
※ 窓口での実際の取扱い(届出が不要となる場合・持ち物・代理人の委任状)については、次の市区町村の案内ページを参照しました。取扱いは自治体によって異なります。
- 川崎市「世帯主変更届(世帯主の変更のとき)」: https://www.city.kawasaki.jp/250/page/0000037098.html
- 杉並区「世帯変更届:世帯主が変わったときや、世帯を分けたとき」: https://www.city.suginami.tokyo.jp/s018/10725.html