遺留分侵害額請求の「1年」はいつから数える?──起算日と期限の数え方

この記事の要点 遺留分侵害額請求の期限は、「相続の開始」と「遺留分を侵害する贈与または遺贈があったこと」の両方を知った時から1年です(民法1048条前段) それを知らないままでも、相続開始の時から10年を経過すると同じく消滅します(民法1048条後段) 期間は初日を数に入れず、1年後の応当する日の前日に満了します(民法140条・143条2項) 期限を過ぎると、請求できなくなります 遺留分(いりゅうぶん=一定の相続人に保障された最低限の取り分)が侵害されているとき、その分に相当するお金の支払いを請求できる権利があります(民法1046条1項)。2019年7月1日以降に開始した相続からは、財産そのものを取り戻す「遺留分減殺請求」ではなく、金銭の支払いを求める「遺留分侵害額請求」という形に改められました(制度の全体像はこちらの記事で整理しています)。 ...

2026年7月28日 · ひぐらしさとし

転籍があると戸籍の記載は引き継がれない──相続で古い戸籍まで必要になる理由

この記事の要点 転籍とは本籍地を移すことで、他の市町村に移すと転籍先で新しい戸籍が作られる 新しい戸籍には、すでにその戸籍から抜けている人(除籍された人)の記載が引き継がれない そのため、転籍後の戸籍だけを見ても相続人が分からず、出生まで遡って戸籍を集める必要がある 本文 他の市町村へ転籍すると、その戸籍からすでに抜けた人の記載は、新しく作られる戸籍に引き継がれません。相続手続きで「いま手元にある戸籍だけでは足りない」と言われるのは、これが理由のひとつです。 ...

2026年7月28日 · ひぐらしさとし

戸籍の広域交付とは──本籍地に行かずに最寄りの窓口で戸籍をまとめて集める

この記事の要点 令和6年3月1日から、本籍地でない市区町村の窓口でも戸籍証明書を請求できる「広域交付」が始まりました(戸籍法120条の2)。 請求できるのは本人・配偶者・直系尊属(父母、祖父母など)・直系卑属(子、孫など)に限られ、兄弟姉妹の戸籍は広域交付では請求できません。 郵送での請求も、代理人による請求もできません。 請求できる方ご本人が市区町村の戸籍担当窓口に出向き、顔写真付きの本人確認書類を示す必要があります。 コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は広域交付では出てきません。 「これで全部そろう」とは限らない点が最大の注意点です。 司法書士などが職務上請求で戸籍を集める場面では、広域交付は使えません。ご自身で集める場合と専門家に依頼する場合とで、たどる道筋が違います。 本籍地に行かなくても、戸籍がまとめて取れるようになりました 結論から書きます。令和6年3月1日から、本籍地が遠方でも、お住まいや勤務先の最寄りの市区町村の窓口で、戸籍証明書をまとめて請求できるようになりました。これを「広域交付」と呼びます。根拠は戸籍法120条の2で、令和元年法律第17号による改正が同日に施行されたものです(法務省民事局「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」)。 ...

2026年7月28日 · ひぐらしさとし

戸籍のフリガナ、届出期限は終わりました──通知どおりで確定した後に間違いに気づいたら

この記事の要点 戸籍の氏名の振り仮名の届出期間は、令和8年(2026年)5月25日ですでに終了している 届出をしなかった場合は、本籍地の市区町村長が、通知した振り仮名のとおりに戸籍へ記載する 市区町村長によって記載された振り仮名は、一度に限り、家庭裁判所の許可を得ずに変更の届出ができる 記載された振り仮名が自分の認識と違うと気づいたら、まず本籍地の市区町村の戸籍窓口に相談する 「戸籍にフリガナが記載されるらしい」という案内を見た記憶はあるけれど、結局どうなったのか分からないままになっている方もいるかもしれません。結論から言うと、この届出の受付期間は令和8年(2026年)5月25日をもってすでに終了しています。「これから届け出よう」というタイミングは過ぎており、今戸籍に載っている(あるいはこれから載る)振り仮名は、原則として本籍地の市区町村から通知された内容がそのまま確定する仕組みになっています。 ...

2026年7月27日 · ひぐらしさとし

生命保険金の請求にも期限がある?相続で見落としやすい『3年』の消滅時効

この記事の要点 生命保険金は受取人固有の財産で、原則として遺産分割の対象外だが、保険金を請求する権利そのものには消滅時効がある 消滅時効の期間は「行使することができる時から3年」(保険法95条1項) 遺産分割や相続放棄の判断に気を取られ、保険金請求そのものが後回しになりやすい点に注意が必要 本文 結論から言うと、生命保険金は受取人固有の財産であるため、原則として遺産分割の対象にはなりませんが、保険金を請求する権利そのものには保険法上の消滅時効があり、いつまでも請求できるわけではありません。 ...

2026年7月24日 · ひぐらしさとし

戸籍の「続柄」欄の読み方──実子と養子の記載の違い、相続人確定での注意点

この記事の要点 戸籍の「続柄」欄には、その人が戸籍の筆頭者・父母から見てどのような続き柄にあたるかが記載される 実子は生まれた順に「長男」「二男」等と記載され、普通養子縁組による養子は「養子」「養女」と記載されて区別できる(特別養子は実子と同じ記載になる) 戸籍が作られた時期によって続柄欄の記載ルール自体が変わっている箇所があり、古い戸籍を読むときは注意が必要 本文 結論から言うと、戸籍の「続柄」欄は、その戸籍に記載されている人が戸籍の筆頭者や父母との関係でどの続き柄にあたるかを示す欄で、相続人を確定する作業では「誰が実子で、誰が養子か」を読み分ける手がかりになります。ただし、続柄欄の記載ルールは戸籍が作られた時期によって変わっている部分があるため、古い戸籍を読むときは表面上の記載だけで判断しないことが大切です。 ...

2026年7月24日 · ひぐらしさとし

相続人が海外在住のとき──サイン証明・在留証明と遺産分割協議書への調印

この記事の要点 相続人の中に海外在住の方がいても、遺産分割協議書は他の相続人と同じように作成できる 海外在住者は住民登録がないため印鑑証明書を取得できず、代わりに在外公館(大使館・総領事館)で「サイン証明(署名証明)」を取得する 住民票の代わりには「在留証明書」を使う 在外公館での手続きは予約制・本人出頭が原則で、日本国内より時間がかかることを見込んでおく 協議内容そのものでもめている場合は、司法書士の対応範囲を超えるため弁護士へ相談する場面になる 「相続人の一人が海外に住んでいて、日本の実印も印鑑証明書も持っていない」──こうした相続は珍しくありません。結論から言うと、相続人に海外在住者がいても、遺産分割協議書を作ること自体はできます。ただし、日本国内にいる相続人と同じ方法(実印+印鑑証明書)は使えないため、代わりの手続きが必要になります。この記事では、その代わりの手続きである「サイン証明(署名証明)」と「在留証明」を中心に、海外在住の相続人がいるときの進め方を整理します。 ...

2026年7月24日 · ひぐらしさとし

内縁の妻・事実婚パートナーに相続権はない──遺言・生命保険・生前贈与でできる備え

この記事の要点 内縁の妻・事実婚のパートナーには、法律上の相続権が一切ない(民法890条の「配偶者」は法律上の婚姻届を出した夫婦に限られる) 何も対策をしないまま亡くなると、財産は法律上の相続人(子・親・兄弟姉妹など)に渡り、内縁パートナーには当然には一切渡らない 遺言(遺贈)・死因贈与契約・生命保険の受取人指定・生前贈与など、生前にできる備えは複数ある どの方法にも一長一短があり、ほかの相続人の遺留分や税負担も考えたうえで選ぶ必要がある まずは今の家族関係を整理し、お近くの司法書士に相談して備えを検討するのが第一歩 長年連れ添っていても、婚姻届を出していない「内縁の妻・夫」「事実婚のパートナー」には、法律上の相続権がありません。これは、同居期間の長さや生計をともにしてきた実態とは関係なく決まるルールです。 ...

2026年7月23日 · ひぐらしさとし

再婚家庭の相続──前婚の子・連れ子・養子縁組で相続人の範囲はどう変わる?

この記事の要点 前婚の子(前の配偶者との間に生まれた子)は、同居の有無や交流の有無に関わらず、法律上当然に相続人になる 連れ子(再婚相手が前の関係で授かった子)は、養子縁組をしない限り、どれだけ長く同居していても相続人にはならない 養子縁組(普通養子縁組)をすると、連れ子は実子と同じ割合で相続人になる。ただし実親側の相続権も残る「二重の相続権」を持つ 前婚の子・現在の配偶者との間の子・養子縁組をした連れ子は、原則としてすべて頭割りで法定相続分を分け合う 相続人の範囲があいまいなまま放置せず、確定作業に不安があれば早めにお近くの司法書士にご相談ください 再婚をしている家庭の相続では、「誰が相続人になるのか」の見極めが、初婚同士の家庭よりも複雑になりがちです。結論から言うと、判断の基準は血のつながり、または法律上の親子関係の有無であり、一緒に暮らしていたかどうかではありません。この記事では、前婚の子・連れ子・養子縁組それぞれについて、相続人になるかどうかの制度上の違いを整理します。 ...

2026年7月22日 · ひぐらしさとし

甥・姪が相続人になったときの手続き──代襲相続で戸籍集めと遺産分割協議が大変な理由

この記事の要点 甥・姪が代襲相続人になると、被代襲者(先に亡くなった伯父・伯母の子である自分の親)の出生から死亡までの戸籍も必要になり、通常の相続より戸籍収集の通数が増えやすい 被相続人や他の相続人(いとこにあたる人など)と面識がないことが多く、連絡先の特定や協議への参加そのものにハードルがある 相続登記の申請義務は甥・姪にも及ぶ(3年以内・起算点は「自分が相続人として不動産を取得したことを知った日」) 相続財産に負債がある可能性が見える場合は、相続放棄の期限(3か月)にも注意が必要 手続きの負担が大きいと感じたら、早い段階でお近くの司法書士に相談するのが安全 「伯父(叔父)が亡くなったが、子どももおらず、両親もすでに他界していた。兄弟姉妹である自分の親(伯父の弟や妹)も先に亡くなっているため、自分(甥・姪)が代わりに相続人になった」──こうした連絡を受けて戸惑う方は少なくありません。 ...

2026年7月21日 · ひぐらしさとし