問題: 即時取得(民法192条)に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア.即時取得が成立するためには、取引行為によって平穏かつ公然と動産の占有を始めたこと、その占有の取得が善意かつ無過失であることを要する。
イ.即時取得の対象となるのは動産であり、登記・登録によって公示される自動車であっても、未登録の自動車であれば即時取得の対象となり得る。
ウ.占有取得の方法が占有改定による場合であっても、外形上従来の占有状態に変更が生ずるため、即時取得は成立する。
エ.即時取得が成立する場合における無過失は、占有者が占有物について行使する権利を適法に有するものと推定されることから、これを基礎として事実上推定される。
オ.盗品又は遺失物については、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
答え: 誤っているものは、ウの1つである。
解説: 即時取得(民法192条)は、動産取引の安全を図るため、無権利者から動産を取得した者に、一定の要件の下で権利取得を認める制度である。
アは正しい(民法192条)。要件は、①取引行為によること、②動産であること、③平穏・公然・善意・無過失で占有を始めたことである。
イは正しい。即時取得は動産を対象とするが、道路運送車両法による登録を受けた自動車は即時取得の対象とならない一方(最判昭和62年4月24日裁判集民事150号925頁)、登録を受けていない自動車は対象となり得る(最判昭和45年12月4日民集24巻13号1987頁)。
ウは誤り。判例は、占有改定による占有取得では即時取得は成立しないとする(最判昭和35年2月11日民集14巻2号168頁)。外観上従来の占有状態に変更を生じない占有改定では、即時取得に必要な占有の取得があったとはいえない。
エは正しい。占有者は適法に権利を有するものと推定され(民法188条)、これを前提として無過失が事実上推定されるため、即時取得を主張する者は無過失を立証する必要がないとされる(最判昭和41年6月9日民集20巻5号1011頁)。
オは正しい(民法193条)。盗品・遺失物の特則として、被害者・遺失者は盗難・遺失の時から2年間、回復を請求できる。
問題: 所有権の保存の登記(不動産登記法74条)に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア.表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人は、所有権の保存の登記を申請することができる。
イ.所有権を有することが確定判決によって確認された者は、表題部所有者であるか否かにかかわらず、所有権の保存の登記を申請することができる。
ウ.収用によって所有権を取得した者は、所有権の保存の登記を申請することができる。
エ.区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、所有権の保存の登記を申請することができ、この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、その敷地権の登記名義人の承諾を得ることを要する。
オ.所有権の保存の登記の申請においては、登記原因及びその日付を申請情報の内容としなければならない。
答え: 正しいものは、ア・イ・ウ・エの4つである。
解説: 所有権の保存の登記は、所有権の登記がない不動産について初めてされる権利の登記であり、申請適格者は不動産登記法74条に限定列挙されている。
アは正しい(不動産登記法74条1項1号)。表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人が申請できる。
イは正しい(同項2号)。所有権を有することが確定判決によって確認された者は、表題部所有者でなくても申請できる。
ウは正しい(同項3号)。収用によって所有権を取得した者も申請適格を有する。
エは正しい(同条2項)。区分建物については、表題部所有者から所有権を取得した者も保存登記を申請でき、敷地権付き区分建物であるときは敷地権の登記名義人の承諾を要する。
オは誤り。所有権の保存の登記は、原則として登記原因及びその日付を申請情報の内容とすることを要しない(不動産登記令3条6号かっこ書参照。74条2項の保存登記など一部の例外を除く)。最初の所有権登記であり、対抗すべき従前の権利関係が存しないことによる。
問題: 種類株式及び種類株主総会に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア.株式会社は、剰余金の配当について内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができ、この場合には、その種類株式の内容及び発行可能種類株式総数を定款で定めなければならない。
イ.種類株式発行会社がある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときにする一定の行為は、原則として、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。
ウ.ある種類の株式の内容として、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限を設けることはできるが、株主総会において一切の議決権を有しない旨を定めることはできない。
エ.取得条項付株式とは、株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてその株式を取得することができる旨を定款で定めた株式をいう。
オ.譲渡による当該株式の取得について会社の承認を要する旨の定めは、その全部の株式の内容としてのみ定めることができ、一部の種類の株式の内容として定めることはできない。
答え: 正しいものは、ア・イ・エの3つである。
解説: 種類株式は、権利の内容が異なる二以上の種類の株式であり、その内容と発行可能種類株式総数は定款で定める(会社法108条2項柱書)。
アは正しい(会社法108条1項1号・2項柱書)。剰余金の配当について異なる定めをする種類株式を発行するには、その内容と発行可能種類株式総数を定款で定める。
イは正しい(会社法322条1項柱書)。種類株主に損害を及ぼすおそれがある一定の行為は、原則として、当該種類株主総会の決議がなければ効力を生じない(ただし定款で当該種類株主総会を要しない旨を定めることができる場合がある。同条2項・3項)。
ウは誤り。会社法は、株主総会において議決権を行使することができる事項につき制限のある種類株式(議決権制限株式)を認めており、議決権を全く有しない旨を定めることも可能である(会社法108条1項3号・115条参照)。
エは正しい(会社法2条19号、108条1項6号)。取得条項付株式は、一定の事由が生じたことを条件として会社が取得できる株式である。
オは誤り。譲渡制限の定めは、その全部の株式の内容とすることもできるが(会社法107条1項1号)、種類株式発行会社においては、ある種類の株式の内容として定めることもできる(会社法108条1項4号)。
問題: 金銭債権に対する強制執行(債権執行)に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア.金銭債権に対する強制執行は、執行裁判所の差押命令により開始する。
イ.差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する。
ウ.差押命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならず、差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる。
エ.金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。
オ.差押えに係る金銭債権の額が差押債権者の債権及び執行費用の額を超えるときであっても、債権者は、その債権の全額について差押えをすることができる。
答え: 正しいものは、ア・イ・ウ・エの4つである。
解説: 債権執行は、債務者が第三債務者に対して有する金銭債権等を差し押さえて、債権者が満足を得る手続である。
アは正しい(民事執行法143条)。金銭債権に対する強制執行は、執行裁判所の差押命令により開始する。
イは正しい(同法145条2項)。差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する。第三債務者への弁済禁止の実効性を確保するためである。
ウは正しい(同法145条3項・5項)。差押命令は債務者及び第三債務者に送達し、差押えの効力は第三債務者に送達された時に生ずる。
エは正しい(同法155条1項)。差押債権者は、債務者に差押命令が送達された日から1週間(給与等の差押禁止債権の一部に係る場合は原則4週間)を経過したときは、被差押債権を取り立てることができる。
オは誤り。差押えの範囲は、原則として差押債権者の債権及び執行費用の額を超えない限度に限られる(超過差押えの禁止。民事執行法146条2項)。差し押さえる金銭債権の額が請求債権額等を超えるときは、その超える部分について差押えをすることができない。
問題: 司法書士法上の業務及び義務に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア.司法書士は、その業務として、登記又は供託に関する手続について代理することができる。
イ.司法書士は、正当な事由がある場合でなければ、依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒むことができない。
ウ.法務大臣の認定を受けた司法書士は、簡易裁判所における訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求に係る訴訟手続について、訴訟代理人となることができる。
エ.司法書士は、その業務上取り扱った事件について知ることのできた秘密を保持する義務を負うが、司法書士でなくなった後はこの義務を負わない。
オ.司法書士は、業務の停止の処分を受けることがあり、また、その品位を辱める行為があったときは懲戒の対象となる。
答え: 誤っているものは、エの1つである。
解説: 司法書士法は、3条で業務範囲を、その他の規定で各種義務・懲戒を定める。
アは正しい(司法書士法3条1項1号・2号)。登記・供託に関する手続の代理は司法書士の業務である。
イは正しい(同法21条)。司法書士は、正当な事由がなければ依頼を拒めない(依頼応諾義務。簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く)。
ウは正しい(同法3条1項6号・2項)。法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)は、訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求に係る簡易裁判所の訴訟手続等について代理できる。なお、この「140万円」は1個の債権の元本額で判断される(最判平成28年6月27日民集70巻5号1306頁)。
エは誤り(同法24条)。司法書士は業務上知り得た秘密を保持する義務を負い、司法書士でなくなった後も同様にこの義務を負う。
オは正しい(同法47条・2条)。司法書士は、戒告・業務の停止・業務の禁止の懲戒処分の対象となり、品位を保持する義務を負う。
出題分野の振り分け
| 問 | 科目 | 主な論点 | 根拠条文・判例 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(物権) | 即時取得の要件・占有改定・盗品遺失物 | 民法192条〜193条、最判昭35.2.11、最判昭41.6.9、最判昭45.12.4 |
| 第2問 | 不動産登記法 | 所有権保存登記の申請適格・登記原因 | 不登法74条、不登令3条6号 |
| 第3問 | 会社法 | 種類株式・種類株主総会・議決権制限株式 | 会社法107条・108条・322条 |
| 第4問 | 民事執行法 | 債権執行(差押命令・取立て・超過差押禁止) | 民執法143条・145条・146条・155条 |
| 第5問 | 司法書士法 | 業務範囲・依頼応諾義務・秘密保持・懲戒 | 司書法3条・21条・24条・47条 |