第1問
問題:
使用貸借契約に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
ア. 使用貸借契約は、当事者の一方が物の引渡しを受けてはじめて成立する要物契約である。
イ. 使用貸借契約においては、借主は借用物の通常の必要費を負担する。
ウ. 使用貸借契約は、貸主の死亡によって終了する。
エ. 借主による用法違反による損害賠償の請求、貸主が支出した必要費・有益費の償還の請求は、いずれも貸主が返還を受けた時から1年以内にしなければならない。
オ. 借主は、契約又は借用物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
- アイ 2. アウ 3. イエ 4. ウオ 5. エオ
答え:
2(アウ)
解説:
ア. 誤り。使用貸借は、改正前民法では要物契約とされていたが、令和2年4月1日施行の民法(債権関係)改正により諾成契約に改められた(民法593条)。「当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる」とされ、合意のみで契約が成立する。
イ. 正しい。民法595条1項により、借主は借用物の通常の必要費を負担する。これは賃貸借と異なる(賃貸借では特約のない限り、必要費は貸主負担、608条1項)重要な対比点である。
ウ. 誤り。使用貸借契約の終了事由は民法597条・598条に規定されているが、借主の死亡は終了事由となる(597条3項)が、貸主の死亡は終了事由とされていない。借主の地位は人的信頼関係に基づくため終了し、貸主の地位は相続される。
エ. 正しい。民法600条1項により、用法違反による損害賠償請求権及び借主が支出した費用の償還請求権は、いずれも貸主が返還を受けた時から1年以内に行使しなければならない(短期の期間制限)。
オ. 正しい。民法594条1項により、借主は「契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない」と規定される。
第2問
問題:
抵当権の処分に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
ア. 抵当権の処分には、譲渡、放棄、順位の譲渡、順位の放棄の4種類があり、いずれも民法376条1項により規律される。
イ. 抵当権の譲渡は、同一の債務者に対する無担保債権者に対してすることができ、譲受人は譲渡人の優先弁済の限度において、自己の被担保債権について優先弁済を受ける。
ウ. 抵当権の順位の譲渡は、同一不動産上の後順位抵当権者に対してする処分であり、譲受人は譲渡人の本来の順位における優先弁済の限度で、自己の被担保債権の優先弁済を受ける。
エ. 抵当権の処分による権利変動を登記するときは、主登記による。
オ. 抵当権の処分は、主たる債務者・保証人・抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対する通知又はこれらの者の承諾がなければ、これらの者に対抗することができない。
答え:
エ
解説:
ア. 正しい。民法376条1項は、抵当権者がその抵当権を「①他の債権の担保とし」(転抵当)、「②同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し」、「③又は放棄することができる」と規定する。実務上、抵当権の処分は①転抵当のほか、本問の4類型(譲渡・放棄・順位の譲渡・順位の放棄)に整理される。
イ. 正しい。抵当権の譲渡(抵当権そのものを無担保債権者に譲渡する処分)の効果は、譲渡人の優先弁済の枠を譲受人が利用するというもので、譲渡人は無担保債権者と同順位(按分ではなく譲渡なので譲渡人は劣後)になる。
ウ. 正しい。抵当権の順位の譲渡(先順位抵当権者が後順位抵当権者に順位のみを譲る処分)の効果は、譲受人が譲渡人の本来の順位の枠(譲渡人の被担保債権額が上限)で自己の被担保債権の優先弁済を受け、譲渡人はその残りについて優先弁済を受ける。
エ. 誤り。抵当権の処分による権利変動を登記するときは、付記登記による(不動産登記規則3条4号)。同号は「権利の変更又は更正の登記」「登記名義人の氏名等の変更又は更正の登記」「権利の消滅に関する定めの登記」等を付記登記とするほか、抵当権の処分等の登記も付記登記によって行う運用が確立している。
オ. 正しい。民法377条1項により、抵当権の処分の対抗要件は、主たる債務者・保証人・抵当権設定者・これらの者の承継人に対する通知又はこれらの者の承諾である。
第3問
問題:
株式分割及び株式併合に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
ア. 取締役会設置会社は、株式分割をする場合、株主総会の決議によらずに取締役会の決議でこれを行うことができる。
イ. 株式分割により、各株主の有する株式の数は割合的に増加するが、会社の純資産額の変動はなく、株主に新たな出資義務も生じない。
ウ. 株式併合は、種類株式発行会社か否かを問わず、株主総会の特別決議によらなければならない。
エ. 株式併合により株式の一部が一に満たない端数となる株主は、当該端数となる株式について、会社に対し公正な価格による買取りを請求することができる。
オ. 種類株式発行会社でない会社が株式分割をする場合、当該株式分割と同時に発行可能株式総数を分割の割合に応じて増加させるには、株主総会の特別決議による定款変更を要する。
答え:
オ
解説:
ア. 正しい。会社法183条2項本文により、取締役会設置会社における株式分割は取締役会の決議による。取締役会非設置会社では株主総会の普通決議(同条同項のみなし規定)。
イ. 正しい。株式分割は、既存の株式を細分するだけで会社財産の変動はない。株主に追加出資義務も生じない。
ウ. 正しい。株式併合は、株主の権利関係に大きな影響を及ぼすため、会社法180条2項により株主総会で決定し、同309条2項4号により特別決議事項とされている。種類株式発行会社か否かを問わない。
エ. 正しい。会社法182条の4第1項により、株式併合により端数となる株式について、反対株主は会社に対し公正な価格による買取請求権を行使できる(端数株主の保護規定)。
オ. 誤り。会社法184条2項により、種類株式発行会社でない会社の株式分割と同時にする発行可能株式総数の増加は、株主総会の決議によらず、取締役会設置会社では取締役会の決議、取締役会非設置会社では取締役の決定によって行うことができる(定款変更を要しない例外規定)。種類株式発行会社の場合は、株主総会の特別決議による定款変更が必要となる点と対比して理解する。
第4問
問題:
民事訴訟法上の控訴に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
ア. 控訴は、判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に提起しなければならない。
イ. 第一審で全部認容判決を受けた原告は、自己の請求がより大きな利益として認められるべきだったとしても、控訴の利益を有しない。
ウ. 被控訴人は、控訴期間が経過した後であっても、控訴審の口頭弁論の終結に至るまで、付帯控訴をすることができる。
エ. 控訴審は、第一審判決の取消し及び変更を、不服申立ての限度においてのみすることができる。
オ. 控訴審において訴えの変更をするには、相手方の同意を得なければならない。
答え:
オ
解説:
ア. 正しい。民事訴訟法285条本文により、控訴期間は判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間である。
イ. 正しい。控訴の利益(不服の利益)は当事者の不利益是正のために認められるものであり、全部認容判決を得た当事者には不服がないため控訴の利益は認められない(民事訴訟法上の通説的整理)。
ウ. 正しい。民事訴訟法293条1項により、付帯控訴は控訴審の口頭弁論の終結に至るまでできる(控訴期間経過後でも可)。
エ. 正しい。民事訴訟法304条により、不利益変更禁止の原則(控訴審判決は不服申立ての限度を超えて当事者に不利益な変更をすることはできない)が規定されている。
オ. 誤り。民事訴訟法297条が準用する143条1項により、訴えの変更は控訴審でも認められ、原則として相手方の同意は不要である。一方、反訴については控訴審で提起するには相手方の同意が必要(民事訴訟法300条1項)であり、両者の区別が頻出論点となっている。
第5問
問題:
司法書士に対する懲戒処分に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
ア. 司法書士に対する懲戒処分は、法務大臣が行う。
イ. 司法書士に対する懲戒処分の種類は、戒告、2年以内の業務の停止、業務の禁止の3種類である。
ウ. 何人も、司法書士について司法書士法又は同法に基づく命令に違反する事実があると思料するときは、当該事実を法務大臣に通告し、適当な措置をとることを求めることができる。
エ. 法務大臣は、司法書士に対する業務の停止又は業務の禁止の処分をしようとするときは、行政手続法に基づく聴聞を行わなければならない。
オ. 法務大臣がした懲戒処分は、その種類のいかんを問わず、官報をもって公告しなければならない。
答え:
オ
解説:
ア. 正しい。司法書士法47条柱書により、懲戒処分の主体は法務大臣である(令和元年法律第29号による改正で、それまでの日本司法書士会連合会から法務大臣へ一元化、令和2年8月1日施行)。
イ. 正しい。司法書士法47条1項各号により、懲戒処分は①戒告、②2年以内の業務の停止、③業務の禁止の3種類である。これ以外の併科や登録取消しの直接的な懲戒処分は規定されていない。
ウ. 正しい。司法書士法49条1項により、何人も法務大臣に対し懲戒事実を通告して適当な措置を求めることができる(懲戒の請求権)。
エ. 正しい。司法書士法48条2項により、業務の停止又は業務の禁止の処分をしようとするときは、行政手続法に基づく聴聞を行わなければならない(同法13条1項1号の不利益処分に該当)。なお、戒告処分は同条同項により聴聞ではなく弁明の機会の付与で足りる。
オ. 誤り。司法書士法51条により、官報による公告対象は業務の停止と業務の禁止の処分に限られ、戒告処分は公告対象外である(法務省「司法書士及び司法書士法人に対する懲戒処分の考え方(処分基準等)」の運用整理も同旨)。「種類のいかんを問わず」とする本選択肢は誤りである。なお、司法書士法50条は「登録取消しの制限等」を定める別条であり、混同しやすい点に注意する。
出題分野の振り分け
| 問 | 主要科目 | 主要論点 | 主な根拠条文・判例 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法(債権各論) | 使用貸借契約の改正論点/賃貸借との対比 | 民法593条・594条1項・595条1項・597条3項・600条1項 |
| 第2問 | 不動産登記法/民法 | 抵当権の処分4類型と登記方法 | 民法376条1項・377条1項/不動産登記規則3条4号 |
| 第3問 | 会社法/商業登記法 | 株式分割と株式併合の決議要件・発行可能株式総数 | 会社法180条2項・182条の4第1項・183条2項・184条2項/309条2項4号 |
| 第4問 | 民事訴訟法 | 控訴の対象・要件・効果/訴えの変更と反訴の対比 | 民事訴訟法285条・293条1項・297条・300条1項・304条/143条1項 |
| 第5問 | 司法書士法 | 懲戒処分の種類・手続・公告 | 司法書士法47条・48条2項・49条1項・51条/行政手続法13条1項1号 |