問題: 詐害行為取消権(民法424条以下)に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。

ア. 詐害行為取消請求は、債権者の被保全債権が、債務者が詐害行為をする前の原因に基づいて生じたものでなければ、することができない。

イ. 詐害行為取消請求の被告は、受益者または転得者であり、債務者を被告とすることはできない。

ウ. 詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びそのすべての債権者に対してもその効力を有する。

エ. 詐害行為取消請求は、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から2年、または行為の時から10年を経過したときは、することができない。

オ. 詐害行為の目的物が金銭であるときは、債権者は受益者または転得者に対し、その金銭を自己に直接支払うよう求めることができ、この場合、債権者は自らの債権額の限度で事実上の優先弁済を受けることができる。

答え: 誤っているものはなし(ア〜オすべて正しい記述である)。

解説: 詐害行為取消権は、平成29年民法改正(令和2年4月1日施行)で大きく整備された制度で、本試験でも頻出の論点である。各選択肢を順に確認する。

ア(正):民法424条3項は「債権者は、その債権が第1項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(詐害行為取消請求)をすることができる」と規定している。被保全債権は詐害行為時より前の原因に基づくものでなければならない。

イ(正):民法424条の7第1項は、詐害行為取消請求にかかる訴えにおいて、受益者を被告とする場合(1号)と転得者を被告とする場合(2号)を規定する。債務者は被告とならない。

ウ(正):民法425条は「詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する」と規定する。これは旧法(最判昭和46年10月22日民集25巻7号987頁の相対効説)から大きく変わった点である。

エ(正):民法426条は、出訴期間として「債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から二年」「行為の時から十年」の二重制限を定める。いずれも除斥期間と解されている。

オ(正):民法424条の9第1項は、債権者が金銭の支払または動産の引渡しを求める詐害行為取消請求をする場合、債権者は受益者または転得者に対し、自己への直接支払い・引渡しを求めることができると規定する。改正前の判例(最判昭和36年8月30日民集15巻7号2069頁等)の取扱いを条文化したもので、結果として債権者は事実上の優先弁済を受けることになる。

すべて正しい記述であり、本問は全肢正答型として、各条文の正確な理解を確認する出題形式である。


問題: 不動産登記法74条が定める所有権保存登記の申請主体に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。

ア. 表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人は、所有権保存登記を申請することができる。

イ. 自己の所有権を有することが確定判決によって確認された者は、所有権保存登記を申請することができ、この場合の判決は給付判決でなければならない。

ウ. 収用によって所有権を取得した者は、所有権保存登記を申請することができ、この場合は登記原因及びその日付を登記しなければならない。

エ. 区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者は、自己を登記名義人として直接所有権保存登記を申請することができる。

オ. 敷地権付き区分建物の表題部所有者から所有権を取得した者が所有権保存登記を申請する場合には、敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。

答え: 誤っているものは

解説: 所有権保存登記の申請主体は、不動産登記法74条が1項各号(一般の建物)と2項(区分建物の特則)で類型化している。本問は各類型の申請要件を細かく問う論点である。

ア(正):不動産登記法74条1項1号は「表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人」を申請権者とする。「相続人」だけでなく「一般承継人」(合併による承継法人など)も含まれることに注意。

イ():不動産登記法74条1項2号は「所有権を有することが確定判決によって確認された者」を申請権者とする。ここでいう確定判決は給付判決に限られず、確認判決・形成判決・判決の理由中で所有権が確認されたものも含むとするのが、登記実務の通説的取扱いである。「給付判決でなければならない」とする本肢は誤り。

ウ(正):不動産登記法74条1項3号は「収用によって所有権を取得した者」を申請権者とする。一般の所有権保存登記は登記原因を記載しないが(不動産登記令3条12号の運用)、収用による所有権保存登記の場合は「年月日収用」として登記原因とその日付を登記する(同号ただし書)。

エ(正):不動産登記法74条2項は、区分建物について、表題部所有者から所有権を取得した者が、自己を登記名義人として直接所有権保存登記を申請できるとする特則を定める。一般の建物では認められない例外であり、区分建物登記の流通促進のための制度。

オ(正):不動産登記法74条2項ただし書により、敷地権付き区分建物について同項本文の保存登記を申請する場合は、敷地権の登記名義人の承諾を得ることが必要である。区分建物所有権の取得は敷地利用権の処分にあたるため、敷地権の登記名義人の保護が要求される。

74条1項各号と2項の使い分けは試験頻出。確認判決による保存登記の可否(イの論点)は実務通説で「広く認められる」と整理されている。


問題: 会計参与(会社法333条・374条・375条・379条)に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア. 会計参与は、公認会計士もしくは監査法人または税理士もしくは税理士法人でなければならない。

イ. 株式会社またはその子会社の取締役、監査役もしくは執行役は、当該株式会社の会計参与となることができない。

ウ. 会計参与の任期は、選任後5年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである。

エ. 会計参与は、取締役と共同して、計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類を作成する。

オ. 会計参与は、その職務を行うため必要があるときは、株式会社の業務及び財産の状況の調査をすることができるが、子会社に対する調査権限はない。

  1. ア、イ、エ
  2. ア、ウ、オ
  3. イ、ウ、エ
  4. ア、エ、オ
  5. イ、ウ、オ

答え: 正しいものの組合せは1(ア、イ、エ)

解説: 会計参与は平成17年会社法制定で新設された機関で、中小企業の計算書類の信頼性向上を目的とする。各選択肢を確認する。

ア():会社法333条1項は「会計参与は、公認会計士(外国公認会計士を含む。)若しくは監査法人又は税理士若しくは税理士法人でなければならない」と規定する。

イ():会社法333条3項1号は、株式会社またはその子会社の取締役、監査役もしくは執行役、または当該子会社の会計参与は、会計参与となることができないと規定する(兼任禁止)。

ウ():会計参与の任期は、会社法379条1項により取締役の任期に関する規定(332条)が準用される。すなわち、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(非公開会社では定款で10年まで伸長可)。「5年」とする本肢は誤り。

エ():会社法374条1項は、会計参与は取締役と共同して、計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類ならびに連結計算書類を作成すると規定する。「共同して」がキーワードで、取締役の単独作成ではない。

オ():会社法374条2項は、会計参与の職務遂行のための調査権限を定めており、同条3項は子会社に対する調査権まで認めている。「子会社に対する調査権限はない」とする本肢は誤り。

会計参与は試験頻出の機関で、特に「公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人」(イコールではなく「いずれか」)、「取締役・監査役・執行役との兼任禁止」、「計算書類の共同作成権」が中核論点である。


問題: 民事訴訟における訴訟参加(民事訴訟法42条・47条・52条)に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。

ア. 補助参加は、訴訟の結果について利害関係を有する第三者が、当事者の一方を勝訴させる目的でその訴訟に参加する形態であり、ここでいう利害関係は事実上・経済上の利害ではなく、法律上の利害関係であることを要する。

イ. 独立当事者参加には、参加人が原告・被告双方に対して権利を主張する「権利主張参加」と、原告・被告が共謀して参加人を害する判決を得ようとするのを防ぐ「詐害防止参加」の2類型がある。

ウ. 共同訴訟参加は、訴訟の目的が当事者の一方と第三者との間で合一にのみ確定すべき場合に、第三者が共同訴訟人として参加する形態である。

エ. 補助参加人は、参加した訴訟について上訴を提起することができるが、独立当事者参加人は、訴訟の目的を独立に主張する地位を持つため、被参加人の意思に関わらず単独で上訴を提起することができる。

オ. 独立当事者参加においては、原告・被告・参加人の三者間で合一確定の要請が働くため、民事訴訟法40条1項から3項までの規定が準用される。

答え: 誤っているものはなし(ア〜オすべて正しい記述である)。

解説: 訴訟参加の3類型(補助参加・独立当事者参加・共同訴訟参加)は、それぞれ要件・効果が異なる。本問は各類型の特徴を整理する出題である。

ア(正):民事訴訟法42条は「訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる」と規定する。ここでいう「利害関係」は判例・通説により法律上の利害関係を意味し、事実上・経済上の利害関係では足りない(最決平成13年1月30日民集55巻1号30頁参照。実務通説)。

イ(正):民事訴訟法47条1項は、独立当事者参加について「訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者(権利主張参加)又は訴訟の結果によって権利が害されることを主張する第三者(詐害防止参加)は、その訴訟の当事者の双方又は一方を相手方として、当事者としてその訴訟に参加することができる」と規定する。

ウ(正):民事訴訟法52条1項は「訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合には、その第三者は、共同訴訟人としてその訴訟に参加することができる」と規定する。類似必要的共同訴訟の対象となる場合の参加形態である。

エ(正):補助参加人は補助参加した訴訟について上訴できるが、被参加人の行為と抵触する場合は効力を生じない(民事訴訟法45条2項)。独立当事者参加人は固有の当事者の地位を有するため、被参加人の意思に関わらず単独で上訴できる(民事訴訟法47条4項・40条1項の準用)。

オ(正):民事訴訟法47条4項は「第40条第1項から第3項までの規定は、第1項の訴訟の当事者及び同項の規定によりその訴訟に参加した者について準用する」と規定する。必要的共同訴訟と同様に、合一確定のための審判規律が及ぶ。

訴訟参加の3類型の使い分けは、参加の目的(補助参加=当事者の一方を支援、独立当事者参加=独立の権利主張、共同訴訟参加=共同訴訟人としての参加)と参加人の地位(補助者・当事者・共同訴訟人)の違いで整理する。


問題: 司法書士の登録(司法書士法8条以下)に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。

ア. 司法書士となる資格を有する者が、司法書士となるには、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に登録を受けなければならない。

イ. 登録の申請は、入会しようとする司法書士会を経由してしなければならない。

ウ. 日本司法書士会連合会は、登録の申請をした者が司法書士となる資格を有しないと認めたとき、または当該申請者が心身の故障により司法書士の業務を行うことができないと認めたときは、その登録を拒否しなければならない。

エ. 司法書士は、その業務を行うため必要となる司法書士会の会員でなければならず、登録の効力が生じた時に、当然にその司法書士会の会員となる。

オ. 日本司法書士会連合会は、司法書士の登録を拒否しようとする場合は、あらかじめ、当該申請者にその旨を通知して、相当の期間内に陳述する機会を与えなければならない。

答え: 誤っているものはなし(ア〜オすべて正しい記述である)。

解説: 司法書士の登録は、登録申請から登録拒否までの一連の手続が司法書士法に詳細に規定されている。本問は各手続段階を確認する出題である。

ア(正):司法書士法8条1項は「司法書士となる資格を有する者が、司法書士となるには、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に登録を受けなければならない」と規定する。登録は司法書士業務を行うための前提となる。

イ(正):司法書士法9条1項は「前条第一項の登録を受けようとする者は、その事務所を設けようとする地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立されている司法書士会を経由して、日本司法書士会連合会に登録の申請をしなければならない」と規定する。司法書士会を経由する点が要件である。

ウ(正):司法書士法10条1項は登録拒否事由を列挙し、1号で「司法書士となる資格を有しないとき」、2号で「心身の故障により司法書士の業務を行うことができないとき」を挙げる。これらに該当する場合、連合会は登録を拒否しなければならない。

エ(正):司法書士法57条1項は「司法書士は、事務所を設けようとする地を管轄する法務局又は地方法務局の管轄区域内に設立されている司法書士会の会員でなければならない」と規定し、同条2項は「司法書士は、第八条第一項の登録を受けた時に、当然、前項の司法書士会の会員となる」と規定する(当然加入制)。

オ(正):司法書士法11条は、登録の拒否をしようとする場合の手続を定め、あらかじめ申請者に通知して陳述機会を与えることを要求する。行政手続法上の聴聞に類する手続保障である。

司法書士の登録は試験頻出論点で、特に「司法書士会経由の申請」「登録拒否事由」「当然加入制」「陳述機会の付与」が中核論点となる。


出題分野の振り分け

問題 科目 主な根拠条文・判例
第1問 民法 民法424条1項3項、424条の7、424条の9、425条、426条
第2問 不動産登記法 不動産登記法74条1項1〜3号、2項本文・ただし書、不動産登記令3条12号
第3問 会社法・商業登記法 会社法333条1項3項、374条1項2項3項、375条、379条1項、332条
第4問 民事訴訟法 民事訴訟法42条、45条2項、47条1項4項、52条1項、40条1項〜3項、最決平成13年1月30日民集55巻1号30頁
第5問 司法書士法 司法書士法8条1項、9条1項、10条1項1号2号、11条、57条1項2項