問題: 遺留分侵害額請求権に関する次の記述のうち、誤っているものは、ア〜オのうちいくつあるか。

ア.遺留分権利者は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

イ.遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。

ウ.被相続人の兄弟姉妹は、遺留分を有しないため、遺留分侵害額請求権を行使することができない。

エ.遺留分侵害額の算定の基礎となる財産には、相続人に対する贈与については相続開始前の10年間にされた贈与(婚姻もしくは養子縁組のため又は生計の資本としての贈与に限る)の価額が算入される。

オ.遺留分侵害額の支払請求を受けた受遺者は、裁判所に対し、その債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することを請求することができる。

答え: 0個(すべて正しい)

解説: 本問は令和元年7月1日施行の相続法改正で「遺留分減殺請求権」が「遺留分侵害額請求権」へと制度変更された後の現行法の理解を問う問題である。

ア.正しい。民法1046条1項。改正前は現物返還を原則としていたが、改正により遺留分権利者は受遺者又は受贈者に対し金銭の支払を請求する債権者の地位に立つことに整理された。

イ.正しい。民法1048条。短期消滅時効1年(相続開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈を知った時から)+長期除斥期間10年(相続開始の時から)の二段階構成。3年と書かれていないか注意。

ウ.正しい。民法1042条1項。遺留分権利者は兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者・子・直系尊属)に限られる。代襲相続人もこれに含まれる。

エ.正しい。民法1044条3項。相続人に対する贈与は相続開始前10年間かつ婚姻・養子縁組のため又は生計の資本としての贈与(特別受益に該当するもの)に限り基礎財産に算入される。相続人以外の者に対する贈与は同条1項により相続開始前1年間が原則。

オ.正しい。民法1047条5項。受遺者・受贈者は、裁判所に対し金銭債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することを請求できる。改正で導入された制度で、現物給付型から金銭給付型に移行したことに伴う負担調整の手段。

ひっかけポイント: イの「1年」を「3年」に置き換える誤肢が頻出。短期消滅時効1年・長期除斥期間10年のセットで押さえる。エの「相続人」と「相続人以外」で算入対象期間(10年と1年)が分かれる点も注意。


問題: 信託の登記に関する次の記述のうち、誤っているものは、ア〜オのうちいくつあるか。

ア.信託の登記の申請は、当該信託に係る権利の保存、設定、移転又は変更の登記の申請と同時にしなければならない。

イ.信託の登記は、受託者が単独で申請することができる。

ウ.信託財産に属する不動産については、信託の登記をしなければ、当該不動産が信託財産に属することを第三者に対抗することができない。

エ.信託の登記の登記事項として、信託目録に記録される事項には、委託者・受託者・受益者の氏名又は名称及び住所、信託の目的、信託財産の管理方法等が含まれる。

オ.受託者の変更による所有権の移転の登記には、所有権の移転の登記の本則税率である不動産価額の1000分の20の登録免許税が課される。

答え: 1個(オが誤り)

解説: 信託の登記は近年の家族信託の普及で実務頻出論点となっており、不動産登記法と信託法・登録免許税法の交錯を押さえる必要がある。

ア.正しい。不動産登記法98条1項。信託の登記は信託に係る権利変動の登記と同時申請が原則。

イ.正しい。不動産登記法98条2項。信託の登記の申請は、受託者が単独で行うことができる(信託に係る権利変動の登記とは別建ての扱い)。

ウ.正しい。信託法14条。登記又は登録をすることができる財産については、信託の登記又は登録をしなければ、当該財産が信託財産に属することを第三者に対抗できない

エ.正しい。不動産登記法97条1項。信託目録の記録事項として、委託者・受託者・受益者等の氏名又は名称及び住所、信託の目的、信託財産の管理方法、信託の終了の事由等が法定されている。

オ.誤り受託者の変更による所有権の移転の登記には、登録免許税が課されない(登録免許税法7条1項3号)。形式的に所有権が前受託者から新受託者に移転するが、実質的には信託財産の管理者が変わるにすぎず、実体的な所有権移転がないため非課税とされる。本則税率1000分の20(売買・贈与等)は通常の所有権移転に適用される税率で、受託者変更には適用されない。

ひっかけポイント: オは「形式的所有権移転=非課税」の典型例。信託に係る登録免許税の特例(登免税法7条1項3号)と、信託契約による信託設定時の登録免許税1000分の4(同法別表第1の1の(10))を混同しないこと。


問題: 種類株主総会に関する次の記述のうち、誤っているものは、ア〜オのうちいくつあるか。

ア.種類株式発行会社において、ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがある一定の行為をする場合には、当該種類の株主を構成員とする種類株主総会の決議を要する。ただし、定款にこれを要しない旨の定めがあるときは、当該定款の定めの効力は、その株式が発行された後にこれを設けた場合であっても妨げられない。

イ.種類株主総会の決議は、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行うことを原則とする。

ウ.取得条項付種類株式の内容として、当該種類の株式の取得に関する種類株主総会の決議を要する旨の定めがある場合の決議は、特別決議によらなければならない。

エ.種類株主総会の決議の取消しの訴えについては、株主総会の決議取消しの訴えに関する会社法831条の規定が準用される。

オ.種類株主総会において議決権を行使することができる種類株式の株主が存しない場合には、当該種類株主総会の決議を要しない。

答え: 1個(アが誤り)

解説: 種類株主総会は会社法322条以下に規定があり、複数種類の株式を発行する会社の利害調整の中核制度である。

ア.誤り。会社法322条2項は、ある種類の株式の内容として「種類株主総会の決議を要しない」旨を定款で定めることを認めるが、同条3項により、当該種類の株式の発行後に定款の定めを設けることはできない(既存の種類株主の保護のため)。すなわち、種類株式を発行した後に「種類株主総会決議を要しない」旨の定款変更をすることはできない。記述アは「発行された後にこれを設けた場合であっても妨げられない」としており、322条3項に反する。

イ.正しい。会社法324条1項(種類株主総会の普通決議要件)。

ウ.正しい。会社法324条2項6号。取得条項付種類株式の取得に関する種類株主総会の決議は特別決議。

エ.正しい。会社法325条。種類株主総会についても株主総会に関する規定(招集手続、議事録、決議取消し等)が広く準用される。

オ.正しい。会社法322条4項。種類株主総会で議決権を行使できる種類株式の株主が存しない場合は、当該種類株主総会の決議を要しない。

ひっかけポイント: アは「定款で種類株主総会を不要とする定めを後から追加できる」と思わせる誤肢。322条2項の定款規定は当該種類株式を最初に発行する時の定款に限定され、後付けはできない(同条3項)。既存株主の権利を奪う変更を防ぐ規律。


問題: 訴訟告知に関する次の記述のうち、誤っているものは、ア〜オのうちいくつあるか。

ア.訴訟告知は、当事者の申立てによりするものであって、裁判所が職権でこれを行うことはできない。

イ.訴訟告知を受けた者は、訴訟告知者を補助するため、訴訟に参加することができる。

ウ.訴訟告知を受けた者が訴訟に参加しなかった場合であっても、参加することができた時に参加したものとみなして、補助参加の効力(民事訴訟法46条)の規定が適用される。

エ.訴訟告知の方式は、口頭でも書面でもよく、書面によるときは訴訟告知書を裁判所に提出してするものとされている。

オ.訴訟告知書には、告知の理由及び訴訟の程度を記載しなければならない。

答え: 1個(エが誤り)

解説: 訴訟告知は民事訴訟法53条が定める制度で、補助参加(同法42条)の周辺制度として理解する。

ア.正しい。民事訴訟法53条1項。「当事者は……訴訟の告知をすることができる」と当事者の申立てに限定されており、裁判所の職権発動の規定はない。

イ.正しい。民事訴訟法53条1項。訴訟告知を受けた者(被告知者)は補助参加することができる。

ウ.正しい。民事訴訟法53条4項。被告知者が補助参加しなかった場合でも、補助参加することができた時に参加したものとみなして46条の規定(参加的効力)を適用する。後訴で告知者と被告知者が再度争うことを防ぐ機能。

エ.誤り。訴訟告知の方式は**書面(訴訟告知書)**による必要があり(民事訴訟規則22条1項)、口頭ではできない。訴訟告知書を裁判所に提出してする。

オ.正しい。民事訴訟法53条2項。訴訟告知書には告知の理由(請求権の依存関係・求償関係等)と訴訟の程度(係属している審級・期日等)の記載が必要。

ひっかけポイント: エは「口頭でも書面でもよい」とした上で書面の手続を補足する形で、もっともらしく見えるが、訴訟告知は書面に限定される(口頭は不可)。補助参加の申出(民訴法43条1項)は書面・口頭どちらでも可能であるのと対比して整理しておく。


問題: 認定司法書士の簡裁訴訟代理権に関する次の記述のうち、誤っているものは、ア〜オのうちいくつあるか。

ア.認定司法書士は、簡易裁判所における訴訟手続のうち、訴訟の目的の価額が140万円を超えないものについて、訴訟代理権を有する。

イ.認定司法書士が代理することができる裁判手続には、簡易裁判所における民事訴訟手続のほか、民事調停手続、和解手続、支払督促手続、証拠保全手続が含まれる。

ウ.簡易裁判所における訴訟手続について訴訟代理権を有する認定司法書士であっても、控訴審においては当該事件の訴訟代理人となることができない。

エ.認定司法書士が代理して進行中の事件において、訴訟の目的の価額が140万円を超える反訴が提起された場合、当該認定司法書士は、反訴に係る部分について訴訟代理権を有しないこととなる。

オ.認定司法書士の取り扱う紛争目的の価額の算定は、訴え提起の時を基準として確定するものであり、その後の訴訟経過における訴額の変動によって代理権の範囲が左右されることはない。

答え: 1個(オが誤り)

解説: 認定司法書士の業務範囲(司法書士法3条1項6号・同条2項)は試験頻出論点で、特に140万円基準の判定の時的基準が問われる。

ア.正しい。司法書士法3条1項6号イ+同条2項。簡裁の民事訴訟手続で訴額140万円以下のものについて訴訟代理権を有する。

イ.正しい。司法書士法3条1項6号イ〜ハ・8項各号。民事訴訟・民事調停・和解・支払督促・証拠保全のいずれも認定司法書士の代理対象。

ウ.正しい。司法書士法3条1項6号ロ。簡裁訴訟代理権は第一審のみに及び、控訴審(地方裁判所)には及ばない。

エ.正しい。最高裁平成28年6月27日第一小法廷判決民集70巻5号1297頁。反訴提起や訴え変更により訴訟物の価額が140万円を超えた場合、当該超過部分について認定司法書士は訴訟代理権を有しないこととなる。

オ.誤り。最高裁平成28年6月27日判決は、紛争目的の価額は訴え提起時のみならず訴訟係属中の各段階で随時判断されることを明示している。すなわち、当初140万円以下で代理を開始しても、その後の反訴・訴え変更・併合等により訴訟物の価額が140万円を超えた場合、認定司法書士は当該事件の代理を継続することができなくなる。「訴え提起時を基準として固定」されるわけではない。

ひっかけポイント: オは「訴え提起時基準で固定」と誤導する典型誤肢。最判平28.6.27は、訴額判定が訴訟段階ごとに動的に行われることを明示しており、認定司法書士は代理継続中も常に訴額の変動に注意する必要がある(業務上の越権を防ぐため)。


出題分野の振り分け

出題分野 主な根拠条文・判例
第1問 民法(相続・遺留分) 民法1042条、1044条1項・3項、1046条1項、1047条5項、1048条
第2問 不動産登記法(信託の登記) 不動産登記法97条1項、98条1項・2項、信託法14条、登録免許税法7条1項3号
第3問 会社法(種類株主総会) 会社法322条1項・2項・3項・4項、324条1項・2項6号、325条
第4問 民事訴訟法(訴訟告知) 民事訴訟法42条、46条、53条1項・2項・4項、民事訴訟規則22条1項
第5問 司法書士法(認定司法書士・簡裁訴訟代理権) 司法書士法3条1項6号・2項・8項、最判平28.6.27民集70巻5号1297頁