問題: 境界線付近の建築の制限に関する次の記述のうち、誤っているものは、ア〜オのうちいくつあるか。
ア.境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
イ.アの距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点と、隣地境界線上の最も近い点とを結ぶ直線距離をいう。
ウ.アの規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。
エ.境界線から50センチメートル以上の距離を保たないで建物を築造することは、原則として認められない。
オ.境界線付近の建築の制限に違反した者に対しては、隣地所有者は建物の収去又は変更を請求することができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
答え: 1個(イが誤り)
解説: 本問は民法234条〜236条の境界線付近の建築制限を問う。令和3年改正の相隣関係改正(令和5年4月1日施行)でも本条群は維持されている。
ア.正しい。民法235条1項。境界線から1m未満で他人宅地を観望できる窓・縁側を設ける者には、目隠しを付ける義務がある。
イ.誤り。民法235条2項は「前項の距離は、窓又は縁側(ベランダを含む)の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する」と定めている。すなわち境界線への垂直距離で測るのであって、最も近い点同士を結ぶ直線距離ではない。窓が境界線と斜めに向かい合っているケースで、両者の意味が異なる。
ウ.正しい。民法236条「前2条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う」。234条(50cm建築制限)・235条(1m目隠し)はいずれも慣習が優先する。
エ.正しい。民法234条1項。境界線から50cm以上の距離を保つことが原則。
オ.正しい。民法234条2項。違反者に対する建物収去・変更請求権と、1年経過・完成後の損害賠償への絞り込み。
ひっかけポイント: イは「最も近い点同士を結ぶ直線距離」と誤導する典型誤肢。235条2項は「垂直線によって境界線に至るまで」と明示しており、窓の最寄り点から境界線への垂線の長さで測る。建物の窓が境界線と斜めの角度で配置されているケースで答えがズレる原因になる。
問題: 建物の滅失の登記に関する次の記述のうち、誤っているものは、ア〜オのうちいくつあるか。
ア.建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から1月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。
イ.不動産登記法57条の「建物の滅失」とは、物理的滅失(取壊し・焼失・倒壊等)と、増改築工事による構造上一個の建物への合体とを含む。
ウ.申請義務に違反した者は、10万円以下の過料に処せられる。
エ.存在しない建物について登記がされているときは、その建物の登記記録に記録された所有者の相続人その他の一般承継人も、その建物の滅失の登記を申請することができる。
オ.建物の滅失の登記の申請には、添付情報として、当該建物が滅失した事実を証する情報(取壊証明書等)が必要である。
答え: 1個(イが誤り)
解説: 建物滅失登記は不動産登記法57条の表題部に関する申請義務登記の典型例で、相続登記義務化・住所等変更登記義務化と並ぶ「申請義務+過料」の規律を持つ。
ア.正しい。不動産登記法57条。1月以内の申請義務。
イ.誤り。不動産登記法57条の「建物の滅失」は物理的滅失(取壊し・焼失・倒壊・水没等)を指す概念で、増改築工事による合体は別の登記類型(不動産登記法49条「合体による登記等」)で処理される。合体は新たな1個の建物の表題登記+合体前建物の登記の閉鎖であって、滅失登記とは法的位置づけが異なる。
ウ.正しい。不動産登記法164条1項。表題部関係の申請義務違反は10万円以下の過料(住所等変更登記義務違反164条2項の5万円以下とは別の規律)。
エ.正しい。不動産登記法57条+62条準用。一般承継人は被相続人等が有していた申請適格を承継する。
オ.正しい。不動産登記令別表により、滅失の事実を証する情報(取壊証明書、罹災証明書等)の添付が必要。
ひっかけポイント: イは「滅失」と「合体」を意図的に混同させる誤肢。物理的に存在しなくなる滅失(57条)と、複数建物が構造上一個になる合体(49条)は別の登記類型で、申請手続も添付情報も異なる。
問題: 土地家屋調査士の職務上請求に関する次の記述のうち、誤っているものは、ア〜オのうちいくつあるか。
ア.土地家屋調査士は、戸籍法10条の2第3項により、受任している事件又は事務に関する業務を遂行するため必要がある場合には、戸籍謄本・抄本を職務上請求することができる。
イ.土地家屋調査士は、住民基本台帳法12条の3により、受任している事件又は事務に関する業務を遂行するため必要がある場合には、住民票の写しを職務上請求することができる。
ウ.職務上請求は、調査士の業務として行う場合に限り認められ、自己又は親族の事件に係るものや、業務外の私的目的での請求はできない。
エ.職務上請求書(統一書式)には、請求の任に当たる土地家屋調査士の職印を押印する必要がある。
オ.職務上請求により取得した戸籍謄本・住民票記載事項証明書等は、調査士の業務以外の目的に使用することができないが、当該事件の処理が終了した後は、特段の手続を経ることなく自由に廃棄してよい。
答え: 1個(オが誤り)
解説: 職務上請求は司法書士・弁護士・土地家屋調査士等の特定資格者が業務上必要な範囲で戸籍・住民票を取得できる仕組みで、調査士業務でも分筆・合筆登記の前提となる権利関係調査等で使う場面がある。
ア.正しい。戸籍法10条の2第3項。対象は弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士の8士業。
イ.正しい。住民基本台帳法12条の3。戸籍法と同様の枠組み。
ウ.正しい。職務上請求は「受任している事件又は事務に関する業務を遂行するため必要がある場合」に限定される。自己・親族の事件や私的目的での請求は職務上請求の射程外で、通常の本人請求等によることになる。
エ.正しい。日本土地家屋調査士会連合会が定める統一書式の職務上請求書には、請求者の署名と職印押印が必要。
オ.誤り。職務上請求で取得した戸籍・住民票等は、事件処理終了後も個人情報の適正な管理が継続して求められる。各単位会の会則・連合会の運用基準等により、保存期間内は所定の管理を行い、廃棄する場合もシュレッダー処理・溶解処理等の適正な廃棄方法を要する。「特段の手続を経ることなく自由に廃棄」してよいものではない。守秘義務(調査士法24条の2)の射程は事件処理終了後も継続する。
ひっかけポイント: オは「事件終了後は廃棄自由」と誤導する誤肢。守秘義務と個人情報保護の規律は事件処理の終了で消滅しない。職務上請求書類の管理・保存・廃棄については、各単位会の規程で詳細が定められている。
問題: 交会法に関する次の記述のうち、誤っているものは、ア〜オのうちいくつあるか。
ア.前方交会法は、2つの既知点から未知点を視準し、各既知点における夾角の観測値から未知点の座標を求める方法である。
イ.後方交会法は、未知点から3つの既知点を視準し、観測した方向角又は夾角から未知点の座標を求める方法である。
ウ.後方交会法において、未知点と3つの既知点が同一円周上にある場合(いわゆる危険円)には、解が不定となる。
エ.側方交会法は、既知点Aと未知点Pの両方で観測を行い、両点における観測値から未知点Pの座標を求める方法である。
オ.交会法は、いずれの方法であっても、観測点配置の幾何学的条件に関わらず、常に高精度の解が得られることが保証されている。
答え: 1個(オが誤り)
解説: 交会法は基準点測量の補助的手法として古くから用いられてきた観測法。試験では「危険円」の理解が頻出。
ア.正しい。前方交会法(intersection)の定義。既知点A・Bから未知点Pを視準し、A・Bでの夾角α・βから未知点Pの座標を求める。
イ.正しい。後方交会法(resection)の定義。未知点Pから既知点A・B・Cの3点を視準し、視準方向の関係から未知点Pの座標を求める。
ウ.正しい。危険円の問題。未知点Pが3つの既知点A・B・Cと同一円周上にある場合、観測値からはPの位置を一意に決定できない(解が不定)。後方交会の精度設計では、求点と既知点の幾何学的配置に注意する必要がある。
エ.正しい。側方交会法(side intersection)の定義。既知点と未知点の両方で観測を行うことで、前方・後方の中間的性格を持つ。
オ.誤り。交会法の精度は観測点配置の幾何学的条件に大きく依存する。前方交会法では既知点と未知点が成す三角形の内角が著しく鋭角・鈍角になると精度が劣化し、後方交会法では危険円(ウ)の問題がある。「観測点配置に関わらず常に高精度」というのは誤り。
公共測量作業規程の準則上は、交会法による基準点設置についても、観測点配置・観測精度・点検計算の条件が細かく定められている。
ひっかけポイント: オは「常に高精度」と断定する誤肢。交会法は配置条件で精度が大きく変動するため、現場では複数の観測手法を組み合わせた点検が重要。
問題: 建物の合体による登記等に関する次の記述のうち、誤っているものは、ア〜オのうちいくつあるか。
ア.「建物の合体」とは、数個の建物が増築工事等により構造上一個の建物となることをいう。
イ.合体による登記等は、合体前の建物の表題部の登記を抹消するとともに、合体後の建物について新たに表題登記をする一連の手続をいう。
ウ.合体前の数個の建物の所有者が同一人で、いずれの建物にも所有権の登記がない場合には、合体の日から1月以内に合体による表題登記を申請しなければならない。
エ.合体前の建物のうちの一部にのみ所有権の登記がある場合には、合体による登記等の申請は、所有権の登記がある建物の登記名義人と所有権の登記がない建物の表題部所有者との共同申請による。
オ.合体による登記等の申請には、合体後の建物について作成した建物図面及び各階平面図のほか、合体前の建物が物理的に滅失した事実を証する情報の添付が必要である。
答え: 1個(オが誤り)
解説: 建物の合体は不動産登記法49条に規定され、滅失(57条)・分割(54条)と並ぶ表題部登記の重要類型。
ア.正しい。建物の合体の定義。増築・改築により隣接していた数個の建物が構造上一個の建物となる物理的現象を指す。
イ.正しい。合体による登記等の構造。合体前建物の登記閉鎖+合体後建物の新規表題登記が一連の手続として処理される(不動産登記法49条1項)。
ウ.正しい。不動産登記法49条1項+57条準用。合体の日から1月以内の申請義務がある。
エ.正しい。合体前建物に所有権登記があるものとないものが混在する場合、所有権登記名義人と表題部所有者の共同申請による(不動産登記法49条1項各号の規律)。
オ.誤り。合体による登記等では、合体前の建物が物理的に滅失したわけではなく、構造上一個の建物として存続している(合体)ため、「滅失した事実を証する情報」は不要である。建物図面・各階平面図は必要だが(不動産登記令別表)、滅失証明書類は性質上添付しない。物理的滅失(滅失登記=不登法57条)と合体(49条)の登記類型の違いに対応する。
ひっかけポイント: オは「合体=物理的に古い建物がなくなる」と誤解させる誤肢。合体は数個の建物がまとまって1個の建物として存続する現象であって、物理的滅失ではない。添付情報の規律もこの違いに対応している。
出題分野の振り分け
| 問 | 出題分野 | 主な根拠条文・判例 |
|---|---|---|
| 第1問 | 民法(相隣関係・境界線付近の建築制限) | 民法234条1項・2項、235条1項・2項、236条 |
| 第2問 | 不動産登記法(建物滅失登記) | 不動産登記法57条、62条準用、164条1項、不動産登記令別表 |
| 第3問 | 土地家屋調査士法(職務上請求) | 戸籍法10条の2第3項、住民基本台帳法12条の3、調査士法24条の2 |
| 第4問 | 測量計算(交会法) | 前方交会法・後方交会法・側方交会法、危険円、公共測量作業規程の準則 |
| 第5問 | 不動産登記法(合体による登記等) | 不動産登記法49条1項、57条との対比、不動産登記令別表 |