問題: 譲渡制限の意思表示がされた債権の譲渡に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、令和2年4月1日施行の改正民法を前提とする。

ア 譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(譲渡制限の意思表示)がされた債権であっても、その譲渡は、その効力を妨げられない。

イ 譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができる。

ウ 譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債務者は、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。

エ 譲渡制限の意思表示がされた債権について、債務者が債務を履行しない場合において、譲渡制限の意思表示につき悪意又は重大な過失のある譲受人が、相当の期間を定めて譲渡人への履行を催告し、その期間内に履行がないときは、債務者は、もはやその譲受人に対する債務の履行を拒むことができない。

オ 譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権が譲渡された場合であっても、その譲渡の効力は妨げられず、債務者は、譲渡制限の意思表示につき悪意の譲受人に対しても、譲渡人を債権者として取り扱うことはできない。

答え:

解説: 債権譲渡における譲渡制限の意思表示は、平成29年法律第44号による改正(令和2年4月1日施行)で扱いが大きく変わった分野である。改正前後で結論が逆転した点を意識して整理したい。

ア 正しい。民法466条2項により、当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(譲渡制限の意思表示)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。改正前は譲渡制限特約に反する譲渡は原則として無効と解されていたが、改正法は譲渡自体を有効としたうえで、債務者の保護を別の形で図っている。

イ 正しい。民法466条3項により、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。譲渡は有効としつつ、悪意・重過失の譲受人との関係では債務者が従来どおり譲渡人を相手に弁済等をすれば足りる、という建付けである。

ウ 正しい。民法466条の2第1項により、債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。譲渡人・譲受人のいずれに弁済すべきか判断に迷う債務者に、供託による解決の道を認めたものである。

エ 正しい。民法466条4項により、悪意又は重大な過失のある譲受人であっても、債務者が債務を履行しない場合に、相当の期間を定めて譲渡人への履行を催告し、その期間内に履行がないときは、債務者はもはやその譲受人に対する債務の履行を拒むことができない。債務者が譲渡人にも譲受人にも弁済せず債務を塩漬けにすることを防ぐ規定である。

オ 誤り。預貯金債権については、民法466条の5第1項が特則を定めている。預貯金債権について譲渡制限の意思表示がされたときは、466条2項の原則にかかわらず、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対し、これを対抗することができる。すなわち、悪意・重過失の譲受人との関係では、預貯金債権の譲渡は効力を生じず、債務者は譲渡人を債権者として取り扱えば足りる。本選択肢は、悪意の譲受人に対しても譲渡人を債権者として扱えないとする点で誤りである。

譲渡制限の意思表示は、①原則として譲渡は有効(466条2項)、②悪意・重過失の譲受人には債務者が履行拒絶・対抗できる(466条3項)、③債務者は供託できる(466条の2)、④債務者の不履行と催告による履行拒絶権の消滅(466条4項)、⑤預貯金債権の特則(466条の5)という構造で押さえるとよい。


問題: 所有権の保存の登記の申請適格者に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

ア 表題部所有者は、自己を登記名義人として所有権の保存の登記を申請することができる。

イ 区分建物以外の不動産について、表題部所有者から売買によって所有権を取得した者は、自己を登記名義人として直接に所有権の保存の登記を申請することができる。

ウ 表題部所有者の相続人は、自己を登記名義人として所有権の保存の登記を申請することができる。

エ 所有権を有することが確定判決によって確認された者は、所有権の保存の登記を申請することができる。

オ 敷地権付き区分建物について、表題部所有者から所有権を取得した者が所有権の保存の登記を申請するには、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。

答え:

解説: 所有権の保存の登記を申請することができる者は、不動産登記法74条に限定列挙されている。誰が申請適格を有するかを条文に即して整理する必要がある。

ア 正しい。不動産登記法74条1項1号により、表題部所有者は、所有権の保存の登記を申請することができる。表題部に所有者として記録された者が、権利部(甲区)に最初の所有権の登記を起こす、という基本形である。

イ 誤り。表題部所有者から売買等によって所有権を取得した者(特定承継人)は、不動産登記法74条1項各号に掲げられた者に含まれない。したがって、区分建物以外の不動産については、特定承継人が直接自己名義で所有権の保存の登記を申請することはできず、いったん表題部所有者を登記名義人とする保存の登記をしたうえで、所有権の移転の登記をすることになる。

ウ 正しい。不動産登記法74条1項1号は、「表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人」を申請適格者としている。表題部所有者の相続人は、自己を登記名義人として所有権の保存の登記を申請することができる。

エ 正しい。不動産登記法74条1項2号により、所有権を有することが確定判決によって確認された者は、所有権の保存の登記を申請することができる。なお、同項3号は、収用によって所有権を取得した者を申請適格者としている。

オ 正しい。不動産登記法74条2項により、区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、直接自己名義で所有権の保存の登記を申請することができる。これは、区分建物について逐一中間の保存の登記を求めるのが煩雑であることによる。ただし、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない(同項後段)。

所有権の保存の登記では、原則として特定承継人は申請適格を持たず、その例外として区分建物(74条2項)が認められること、敷地権付き区分建物では敷地権の登記名義人の承諾を要することを区別して押さえたい。


問題: 株主総会の決議の瑕疵を争う訴えに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

ア 株主総会の招集の手続が法令に違反することは、株主総会の決議の取消しの訴えにおける取消事由となる。

イ 株主総会の決議の内容が定款に違反することは、株主総会の決議の取消しの訴えにおける取消事由となる。

ウ 株主総会の招集の手続が法令に違反する場合において、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認められるときであっても、裁判所は、決議の取消しの請求を認容しなければならない。

エ 株主総会の決議の内容が法令に違反する場合には、その決議は無効であり、決議の無効の確認の訴えによってこれを主張することができる。

オ 株主総会の決議の取消しの訴えは、決議の日から3か月以内に提起しなければならない。

答え:

解説: 株主総会の決議の瑕疵を争う訴えには、決議の取消しの訴え、決議の無効の確認の訴え、決議の不存在の確認の訴えがある。瑕疵の種類によってどの訴えの対象となるかを区別する必要がある。

ア 正しい。会社法831条1項1号により、招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なときは、決議の取消しの訴えの取消事由となる。

イ 正しい。会社法831条1項2号により、株主総会の決議の内容が定款に違反するときは、決議の取消しの訴えの取消事由となる。決議内容の瑕疵のうち、「定款違反」は取消事由である点に注意を要する。

ウ 誤り。会社法831条2項は、取消事由が招集の手続又は決議の方法の法令・定款違反である場合(831条1項1号)において、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、裁判所は決議の取消しの請求を棄却することができると定めている(裁量棄却)。本選択肢は「認容しなければならない」とする点が誤りである。

エ 正しい。会社法830条2項により、株主総会の決議の内容が法令に違反する場合には、決議の無効の確認の訴えによってこれを主張することができる。決議内容の瑕疵のうち「法令違反」は無効事由であり、定款違反が取消事由であるのと対比される。なお、無効の確認の訴えには出訴期間の制限がない。

オ 正しい。会社法831条1項柱書により、決議の取消しの訴えは、決議の日から3か月以内に提起しなければならない。提訴期間が法定されている点は、出訴期間の制限のない無効・不存在の確認の訴えとの大きな違いである。

決議内容の瑕疵は、法令違反なら無効、定款違反なら取消しという振り分けが出題の軸になる。あわせて、取消しの訴えには3か月の出訴期間と裁量棄却があること、無効・不存在の確認の訴えには出訴期間の制限がないことを整理しておきたい。


問題: 訴えの取下げ並びに請求の放棄、請求の認諾及び訴訟上の和解に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

ア 訴訟上の和解について電子調書が作成され、これがファイルに記録された場合であっても、和解は当事者間の合意にすぎないため、確定判決と同一の効力が生じることはなく、和解の内容を実現するには別途給付の訴えを提起しなければならない。

イ 訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。

ウ 訴えの取下げがあった部分については、訴訟は、初めから係属していなかったものとみなされる。

エ 本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない。

オ 裁判所書記官が請求の放棄又は認諾について電子調書を作成し、これをファイルに記録したときは、その記録は、確定判決と同一の効力を有する。

答え:

解説: 当事者の意思によって訴訟を終了させる行為には、訴えの取下げ、請求の放棄、請求の認諾、訴訟上の和解がある。それぞれの効力の違いを正確に押さえる必要がある。なお、令和4年の民事訴訟法改正(民事裁判手続のIT化。令和8年5月21日全面施行)により、和解・請求の放棄・認諾は、裁判所書記官が作成する「電子調書」をファイルに記録する方式に改められている。

ア 誤り。民事訴訟法267条により、裁判所書記官が和解又は請求の放棄若しくは認諾について電子調書を作成し、これをファイルに記録したときは、その記録は確定判決と同一の効力を有する。訴訟上の和解について作成された電子調書は債務名義となり、その内容の実現のために別途給付の訴えを提起する必要はない。本選択肢は、確定判決と同一の効力が生じないとする点で誤りである。

イ 正しい。民事訴訟法261条2項により、訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。相手方にも本案判決を得る利益が生じているため、その同意を要するとしたものである。

ウ 正しい。民事訴訟法262条1項により、訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなされる。判決が確定するまでの間は訴えを取り下げることができる(同法261条1項)。

エ 正しい。民事訴訟法262条2項により、本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない(再訴の禁止)。終局判決を得ながら取下げによってこれを白紙に戻す行為を繰り返すことを防ぐ趣旨である。

オ 正しい。民事訴訟法267条により、裁判所書記官が請求の放棄又は認諾について電子調書を作成し、これをファイルに記録したときは、その記録は確定判決と同一の効力を有する。請求の放棄は原告が自らの請求に理由がないことを認める行為、請求の認諾は被告が請求に理由があることを認める行為である。

訴えの取下げは訴訟係属を遡及的に消滅させ、確定判決と同一の効力を生じないのに対し、請求の放棄・認諾及び訴訟上の和解は電子調書への記録により確定判決と同一の効力を生じる。この効力の違いが出題の中心となる。


問題: 司法書士が業務を行い得ない事件に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

ア 司法書士は、公務員として職務上取り扱った事件については、その業務を行ってはならない。

イ 司法書士は、仲裁手続により仲裁人として取り扱った事件については、その業務を行ってはならない。

ウ 司法書士は、公務員として職務上取り扱った事件であっても、当該事件の依頼者が同意した場合には、その業務を行うことができる。

エ 司法書士は、相手方の依頼を受けて裁判所に提出する書類を作成することを内容とする業務を行った事件については、当該事件についての裁判書類作成関係業務を行ってはならない。

オ 司法書士は、相手方の依頼を受けて裁判書類作成関係業務を行った事件については、その依頼者が同意した場合であっても、当該事件についての裁判書類作成関係業務を行うことはできない。

答え:

解説: 司法書士法22条は、司法書士が業務を行い得ない事件を定めている。事件の類型によって、依頼者の同意による解除が認められるかどうかが異なる点に注意を要する。

ア 正しい。司法書士法22条1項により、司法書士は、公務員として職務上取り扱った事件については、その業務を行ってはならない。在職中に公的な立場で取り扱った事件を、退職後に司法書士として扱うことを防ぎ、職務の公正に対する信頼を保つ趣旨である。

イ 正しい。司法書士法22条1項により、司法書士は、仲裁手続により仲裁人として取り扱った事件についても、その業務を行ってはならない。公務員として職務上取り扱った事件と並んで、絶対的に業務が禁止される事件である。

ウ 誤り。司法書士法22条1項が定める事件(公務員として職務上取り扱った事件・仲裁人として取り扱った事件)は、絶対的に業務が禁止される事件であり、依頼者の同意によって禁止が解除されることはない。本選択肢は、依頼者の同意があれば業務を行うことができるとする点で誤りである。

エ 正しい。司法書士法22条2項により、相手方の依頼を受けて裁判書類作成関係業務(裁判所に提出する書類の作成に関する業務等)を行った事件については、当該事件についての裁判書類作成関係業務を行ってはならない。一方の当事者の依頼で関与した事件について、その相手方のために重ねて関与することは、利益相反となるからである。

オ 正しい。司法書士法22条2項にはただし書がなく、相手方の依頼を受けて裁判書類作成関係業務を行った事件については、依頼者が同意した場合であっても、当該事件についての裁判書類作成関係業務を行うことはできない。依頼者の同意による解除が認められるのは、22条3項が定める簡裁訴訟代理等関係業務についての一定の事件に限られる。

司法書士法22条は、①公務員・仲裁人として取り扱った事件(1項)、②相手方の依頼を受けて裁判書類作成関係業務を行った事件など(2項)の業務を制限しており、いずれも依頼者の同意によって解除されない。依頼者の同意による解除が認められるのは、22条3項が定める簡裁訴訟代理等関係業務についての一定の事件に限られる点を整理しておきたい。


出題分野の振り分け

問題 科目 主な根拠条文
第1問 民法(債権譲渡) 民法466条2項・3項・4項、466条の2第1項、466条の5第1項(令和2年4月1日施行)
第2問 不動産登記法 不動産登記法74条1項1号〜3号・2項
第3問 会社法 会社法830条2項、831条1項1号・2号・柱書、831条2項
第4問 民事訴訟法 民事訴訟法261条1項・2項、262条1項・2項、267条
第5問 司法書士法 司法書士法22条1項・2項・3項