問題: 時効の完成猶予事由と更新事由について、次の記述のうち誤っているものはどれか。
ア 裁判上の請求がされた場合、その事由が終了するまでの間(確定判決等により権利が確定することなくその事由が終了した場合は、その終了の時から6か月を経過するまでの間)は、時効は完成しない。
イ 確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は更新され、新たにその進行を始める。
ウ 強制執行・担保権の実行・形式競売・財産開示手続のいずれかが申し立てられた場合、その事由が終了するまでは時効は完成猶予され、終了したときは時効が更新される。
エ 権利の承認があったときは、承認の時に時効は完成猶予され、承認の事由が終了したときに時効が更新される。
オ 催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しない。
答え: エ
解説: 本問は、令和2年4月1日施行の改正民法(平成29年法律第44号)で再編された「時効の完成猶予事由」と「更新事由」の整理を問う問題である。改正前の「中断」「停止」概念から、「完成猶予(旧停止に対応)」と「更新(旧中断のうち権利確定型に対応)」へと整理し直された経緯を押さえる必要がある。
ア 正しい。民法147条1項により、裁判上の請求(1号)、支払督促(2号)、和解・調停(3号)、破産・再生・更生手続参加(4号)のいずれかがされた場合、その事由が終了するまで時効は完成しない。確定判決等によって権利が確定することなくその事由が終了した場合は、その終了の時から6か月を経過するまでの間は時効は完成しない(同項柱書のかっこ書)。
イ 正しい。民法147条2項により、上記1項各号の事由が終了するまでの間に確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は更新され、その事由が終了した時から新たにその進行を始める。
ウ 正しい。民法148条1項各号(強制執行・担保権の実行・形式競売・財産開示手続)に該当する事由については、その事由が終了するまで時効は完成猶予され(同条1項)、終了したときに時効は更新される(同条2項本文)。ただし、申立ての取下げまたは法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は更新されず、終了から6か月を経過するまでの間は完成猶予のみが継続する(同項ただし書)。
エ 誤り。民法152条1項により、権利の承認があったときは、時効は更新事由としてその時から新たに進行を始める。承認は「完成猶予を経て更新される」二段階ではなく、承認の時に直ちに更新される一段階の更新事由である。承認のみで完成猶予事由としては規定されていない点が改正前の「中断事由としての承認」と通じる構造である。
オ 正しい。民法150条1項により、催告があったときは、その時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しない(完成猶予)。同条2項により、催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告には、完成猶予の効力はない。
時効関連の論点では、「完成猶予」と「更新」のどちらに該当するか、両方の効力を持つか(148条のような二段階型)、更新事由のみか(152条のような一段階型)、完成猶予のみか(150条催告のような一段階型)の整理が頻出する。
問題: 根抵当権の元本確定事由および元本確定登記について、次の記述のうち正しいものはどれか。
ア 根抵当権設定者は、根抵当権の元本確定期日の定めがないときは、根抵当権設定の時から3年を経過したときに、根抵当権者に対し元本の確定を請求することができ、当該請求による元本確定の効力は、請求の時に直ちに生じる。
イ 根抵当権者は、いつでも根抵当権設定者に対し元本の確定を請求することができ、この場合の元本確定の効力発生時期は、請求の時から2週間を経過した時である。
ウ 根抵当権者が抵当不動産に対し競売または担保不動産収益執行もしくは物上代位による差押えを申し立てたときは、申立ての時に元本は確定し、別途の確定登記の申請を要する。
エ 債務者または根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたときは、破産手続開始の決定の時に元本が確定し、この場合の元本確定登記は不要である。
オ 元本確定請求(民法398条の19第1項)による元本確定の効力は、設定者の請求が根抵当権者に到達した時に生じ、この場合の元本確定登記は職権で記録される。
答え: エ
解説: 根抵当権の元本確定事由は民法398条の20第1項各号に列挙されており、確定の効力発生時期と確定登記の要否を整理して押さえる必要がある。
ア 誤り。設定者からの元本確定請求それ自体(民法398条の19第1項前段:元本確定期日の定めがないときに設定の時から3年経過後に請求可能)は条文文言と整合する。しかし、本選択肢後段の「請求の時に直ちに生じる」が誤り。設定者からの元本確定請求による確定の効力は、請求の時から2週間を経過することによって生ずる(同条1項後段)。なお、根抵当権者からの確定請求の場合は請求の時に効力が生ずる(同条2項後段)のと対比して整理されたい(選択肢イ参照)。
イ 誤り。根抵当権者からの元本確定請求は、民法398条の19第2項により、いつでもすることができる(時期制限なし)。ただし、この場合の効力発生時期は「請求の時に」生じる(同項後段)。本選択肢は「請求の時から2週間を経過した時」としており、これは設定者からの請求(民法398条の19第1項)の効力発生時期と入れ替えた誤り。
ウ 誤り。民法398条の20第1項1号により、「根抵当権者が抵当不動産について競売もしくは担保不動産収益執行又は第372条において準用する第304条の規定による差押えを申し立てたとき」は元本が確定する。ただし、確定の効力発生時期は「申立ての時」ではなく「競売手続もしくは担保不動産収益執行手続の開始または差押えがあったとき」である(同号文言)。さらに「ただし、競売手続の開始もしくは差押えがあったときに限る」と限定されている。本選択肢は「申立ての時」と誤って整理している。
エ 正しい。民法398条の20第1項4号により、「債務者または根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき」は元本が確定する。この事由による確定の場合、元本確定の登記をしなくても元本確定の効力は生じ、根抵当権者は確定後の手続(債権譲渡等)を進めることができる(不動産登記実務)。なお、民法398条の20第2項により、4号事由(破産)による確定後にその事由が遡って消滅した場合(破産手続開始の決定の取消し等)でも、これを前提として対象債権を取得した者がいる場合などには、確定の効果が維持される取扱いとなる。
オ 誤り。設定者からの元本確定請求(民法398条の19第1項)の効力は、請求が根抵当権者に到達した時ではなく「請求の時から2週間を経過することによって」生じる(同項後段)。また、確定の登記は職権ではなく、原則として当事者の申請による(共同申請:不動産登記法60条・93条等)。1号・3号事由については根抵当権者単独申請による確定登記が可能とする運用がある(不動産登記法93条ただし書関係)。
元本確定事由は「自働確定型(2号滞納処分・4号破産等)」と「請求型確定(398条の19・398条の20第1項3号)」と「行為型確定(1号競売等)」に大別される。各事由の効力発生時期・登記の要否・遡及的消滅の有無を整理することが本論点攻略の核心。
問題: 役員変更登記と権利義務取締役(会社法346条1項)について、次の記述のうち誤っているものはどれか。
ア 法令または定款で定めた取締役の員数を欠くに至った場合、任期の満了または辞任により退任した取締役は、新たに選任された取締役(一時取締役の職務を行う者を含む)が就任するまで、なお取締役としての権利義務を有する。
イ 会社法346条1項に基づく権利義務取締役は、解任により退任した取締役には適用されない。
ウ 権利義務取締役が在任している場合、登記簿には退任の登記をすることができず、後任者が就任した段階で退任の登記と就任の登記を同時に申請する必要がある。
エ 法定員数を欠かない範囲で退任する取締役については、権利義務取締役の規定の適用はなく、後任者の就任を待たずに退任の登記を申請することができる。
オ 権利義務取締役の規定は、監査役・会計参与・会計監査人については適用されず、これらの役員の任期満了による退任については、後任者の就任の有無にかかわらず退任の登記を申請することができる。
答え: オ
解説: 権利義務取締役の制度は、機関構成の連続性確保と会社運営の停滞防止を目的とした重要論点である。会社法346条1項の射程と他役員への準用関係を正確に押さえることが攻略の鍵となる。
ア 正しい。会社法346条1項本文により、「役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなった場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する」と規定されている。
イ 正しい。会社法346条1項本文は「任期の満了又は辞任により退任した役員」と適用対象を限定しており、解任・死亡・欠格事由による退任には適用されない。解任の場合は退任の登記を直ちに申請することができる。
ウ 正しい。権利義務取締役は依然として「役員」としての権利義務を有する以上、登記簿上は引き続き取締役として表示される必要があり、退任の登記を先行して申請することはできない。後任者の就任と権利義務取締役の退任を同時申請するのが原則的取扱いである(商業登記実務)。
エ 正しい。会社法346条1項の趣旨は「法定または定款の員数を欠いた場合」にのみ機関構成を維持する点にあるため、員数を欠かない範囲(例:取締役5名の会社で1名が退任しても残り4名で取締役会設置会社の最低員数3名を満たす場合)では権利義務取締役の規定は適用されない。この場合は後任者の選任を待たずに退任の登記を申請することができる。
オ 誤り。会社法346条1項の文言は「役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。)」と明記しており、監査役にも権利義務役員の規定が適用される。会計参与も同様である。一方、会計監査人は同項の「役員」の定義(会社法329条1項では「取締役、会計参与及び監査役」と定義)には含まれず、会社法346条4項以下で別途規律されている(会計監査人については監査役会等の決議による補欠選任、または会社法346条4項の特則的取扱い)。本選択肢は「監査役・会計参与・会計監査人については適用されず」と一括して誤って整理している。
権利義務取締役・権利義務監査役・権利義務会計参与の取扱いは商業登記の実務で頻出する論点であり、退任の登記の可否、後任者就任との同時申請、解任との区別が頻繁に問われる。
問題: 訴え提起の効果としての時効の完成猶予および二重起訴の禁止について、次の記述のうち誤っているものはどれか。
ア 訴え提起による時効の完成猶予の効力は、訴状が裁判所に提出された時に生じ、被告に訴状が送達された時に生じるものではない。
イ 訴えの取下げにより訴訟が終了した場合、当該訴え提起による時効の完成猶予の効力は失われ、訴えの取下げの時から6か月を経過するまでの間は時効は完成しないが、その後は完成猶予の効力は維持されない。
ウ 二重起訴の禁止(民訴法142条)は、すでに係属している訴訟と当事者および訴訟物が同一である後訴について適用され、後訴は不適法却下される。
エ 原告と被告の地位が逆転した訴え(例:原告が被告に対し金銭請求の訴えを提起した後、被告が原告に対し当該金銭支払債務の不存在確認の訴えを提起した場合)は、二重起訴の禁止に抵触する場合がある。
オ 二重起訴の禁止に違反する後訴は、その違反が訴訟要件の欠缺として職権調査事項とされ、裁判所は当事者の主張を待たずに却下することができる。
答え: イ
解説: 訴え提起の効果には「実体法上の効果(時効の完成猶予・更新、催告と同様の効果)」と「訴訟法上の効果(訴訟係属の発生、二重起訴の禁止、移送の効果等)」がある。それぞれの発生時期・要件・違反の効果を整理することが本論点の核心。
ア 正しい。民事訴訟法133条1項(訴え提起の方式)に基づく訴え提起は、訴状が裁判所に提出された時に成立する。民法147条1項1号の「裁判上の請求」による時効完成猶予の効力も、訴状の提出時点で生じる(最判昭45.9.10民集24巻10号1389頁等)。被告への訴状送達は、訴訟係属の成立要件(訴訟係属の発生時期)には影響するが、時効完成猶予の発生時点ではない。
イ 誤り。訴えの取下げにより訴訟が終了した場合、民法147条1項柱書のかっこ書により、「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合」に該当するため、その終了の時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しない(完成猶予の継続効果)。「完成猶予の効力は失われ」「6か月後は維持されない」という記述は半分正しいが、「完成猶予の効力は失われ」は誤った整理である。正確には「更新は生じないが、6か月の完成猶予は維持される」とするのが正しい。なお、訴え取下げ後6か月以内に再度訴え提起または催告等の完成猶予事由があれば、新たな完成猶予が発生する。
ウ 正しい。民訴法142条により、「裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない」と規定されている。同一の当事者および同一の訴訟物について重ねて訴えを提起することは禁じられる。違反した後訴は不適法として却下される。
エ 正しい。判例・通説により、原告・被告の地位が逆転した訴えであっても、訴訟物が実質的に同一(例:金銭支払請求とその債務不存在確認)であれば、二重起訴の禁止に抵触する場合があるとされる。特に、債務不存在確認の訴えと給付の訴えは、給付の訴えが先行している場合、後訴の債務不存在確認の訴えが二重起訴の禁止に抵触するとの整理が通説的である。
オ 正しい。二重起訴の禁止は訴訟要件(適法な訴え提起の要件)の問題として、裁判所が職権で調査すべき事項とされている(職権調査事項)。当事者の主張を待たずに、裁判所は職権で二重起訴か否かを判断し、後訴が二重起訴に該当する場合は判決により後訴を却下する。
訴え提起の効果については、実体法上の効果(時効・催告)と訴訟法上の効果(係属・二重起訴禁止)を分けて整理し、それぞれの発生時期・要件を正確に押さえることが頻出論点攻略の鍵である。
問題: 民事執行法156条に基づく第三債務者の供託(執行供託)について、次の記述のうち誤っているものはどれか。
ア 債権の差押えがあったとき、第三債務者は、差し押さえられた債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる(権利供託)。
イ 債権について複数の差押え(または差押えと仮差押えの執行)が競合してされた場合、第三債務者は、差し押さえられた債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない(義務供託)。
ウ 第三債務者が民事執行法156条1項または2項により供託をしたときは、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。
エ 第三債務者が、差押債権者の取立てに応じて支払をしたときは、その後に他の債権者が同一の債権について差押えをしたとしても、すでに支払った範囲では差押えの効力は及ばない。
オ 民事執行法156条による供託は弁済供託としての性質のみを有し、差押債権者は供託金還付請求権を取得するが、債務者(被差押債権の債権者)は供託金取戻請求権を当然に取得する。
答え: オ
解説: 執行供託は弁済供託(民法494条)とは別の制度であり、性質・手続・債権者の権利の所在が異なる。民事執行法156条の構造と、権利供託・義務供託の区別を正確に押さえる必要がある。
ア 正しい。民事執行法156条1項により、「第三債務者は、差し押さえられた金銭債権(差押命令により差し押さえられた金銭債権に限る。第百六十一条の二において同じ。)の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる」とされている。これは権利供託であり、第三債務者の選択により供託することができる規定である。
イ 正しい。民事執行法156条2項により、「第三債務者は、次に掲げるときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない」とされ、各号で①差押えと差押えの競合、②差押えと仮差押えの執行の競合、③差押えと滞納処分による差押えの競合等が列挙されている。これは義務供託であり、第三債務者は供託をしなければならない。
ウ 正しい。民事執行法156条3項により、「第三債務者は、前二項の規定による供託をしたときは、その事情を執行裁判所に届け出なければならない」とされている。この事情届は、執行裁判所が配当手続に進むための前提となる重要な手続である。
エ 正しい。民事執行法155条1項により、「金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したとき(差押禁止債権が含まれる場合は4週間を経過したとき。同条2項)は、その債権を取り立てることができる」とされている。第三債務者が取立てに応じて支払をした場合、その範囲で被差押債権は消滅するため、その後の差押えはすでに支払われた範囲には及ばない。なお、第三債務者は取立訴訟による支払の場合は確定判決に基づくこととなり、また、複数の差押えが競合する場合は義務供託の対象となる点に留意が必要である。
オ 誤り。民事執行法156条による執行供託は、弁済供託(民法494条)とは性質を異にする。第三債務者は供託により被差押債権の弁済義務から解放され、供託金は配当手続を経て差押債権者に交付されることになる。債務者(被差押債権の債権者)は、供託金取戻請求権を当然に取得するわけではなく、供託金は執行裁判所による配当の対象となり、配当残余があった場合に限り債務者に交付される。
このように、執行供託は「第三債務者の債務消滅機能」と「配当手続の前提となる供託金の確保」を兼ね備えた特殊な供託制度であり、純粋な弁済供託とは区別される。供託金還付請求権・取戻請求権の所在を弁済供託と混同しないことが重要。
民事執行法156条の権利供託・義務供託の区別、事情届の要否、性質論(弁済供託との対比)は試験頻出論点であり、条文構造の理解とともに整理する必要がある。
出題分野の振り分け
| 問題 | 科目 | 主な根拠条文・判例 |
|---|---|---|
| 第1問 | 民法(時効) | 民法147条・148条・150条・152条(令和2年4月1日施行) |
| 第2問 | 不動産登記法/民法(根抵当権) | 民法398条の19・398条の20、不動産登記法60条・93条 |
| 第3問 | 商業登記法/会社法 | 会社法346条1項、329条1項 |
| 第4問 | 民事訴訟法 | 民訴法133条1項・142条、最判昭45.9.10民集24巻10号1389頁(訴え提起による時効中断の効力発生時点) |
| 第5問 | 民事執行法 | 民執法155条1項・156条1~3項、161条の2 |