空き家を相続したら──『特定空家』に指定される前に知っておくこと

この記事の要点 空き家を放置すると、空家等対策特別措置法にもとづき「特定空家」または「管理不全空家」に指定されることがある 指定後は助言・指導→勧告→命令→行政代執行と段階が進む(命令・行政代執行まで進むのは特定空家のみ) 特定空家・管理不全空家のどちらも、勧告を受けると土地の固定資産税の軽減(住宅用地の特例)が受けられなくなる 相続登記をして名義を明確にしておくことが、放置状態を防ぐ第一歩になる 空き家をどうするか(売る・貸す・住む・手放す)は早めに方針を決めておくと選択肢が広い 実家を相続したものの誰も住まず、片付けも先延ばしにしている──というケースは珍しくありません。しかし空き家をそのまま放置していると、市区町村から「特定空家(とくていあきや)」や「管理不全空家(かんりふぜんあきや)」に指定されることがあります。指定されると、行政からの勧告や命令の対象になり、最終的には行政が代わって解体する「行政代執行(ぎょうせいだいしっこう)」に至ることもあります。この記事では、指定される前に知っておきたい制度の仕組みと、放置した場合に何が起きるかを整理します。 ...

2026年8月13日 · ひぐらしさとし

本人情報シートは誰が書く?──成年後見の申立てで使う診断書とのちがい

この記事の要点 「本人情報シート」を作成するのは、ケアマネジャー(介護支援専門員)や相談支援専門員など、本人を職務上の立場から支援している福祉関係者。「親族や本人が作成することは想定していません」と裁判所の手引に明記されている 「診断書(成年後見制度用)」を作成するのは医師。本人情報シートは、その医師が診断するときの「補助資料」という位置づけ 後見・保佐・補助のどの類型になるかを判断するのは家庭裁判所。後見・保佐では原則として鑑定が必要とされ、その要否を判断するのも家庭裁判所。補助は鑑定ではなく医師その他適当な者の意見を聴く仕組みで、いずれも書類を出す側が選べるものではない 成年後見の申立てを調べていくと、「診断書」と「本人情報シート」という2つの書類が出てきます。どちらも本人の状態を伝える書類なので混同されがちですが、書く人も、果たす役割も別の書類です。診断書は医師が書き、本人情報シートは本人を支えている福祉関係者が書きます。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし

簡易裁判所はどこに申し立てる?|被告の住所地・義務履行地で決まる土地管轄の基本

この記事の要点 「どこの裁判所に出すか」は土地管轄の問題で、「いくらまでが簡易裁判所の担当か」という事物管轄とは別の物差しです 訴えの原則は、被告(訴えられる側)の住所などで決まる普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所です(民事訴訟法4条) 財産権上の訴えは義務履行地に、不動産に関する訴えは不動産の所在地にも起こせます(同5条1号・12号)。管轄を誤って出しても、原則は却下ではなく管轄裁判所への移送です(同16条1項) 訴えを起こすとき、書類をどこに出すかは、2つの物差しの組み合わせで決まります。1つは「どの種類の裁判所か」(事物管轄)、もう1つは「全国のどの地の裁判所か」(土地管轄)です。この記事で扱うのは後者の土地管轄です。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし

土地家屋調査士試験 試験対策 第111回──土地の滅失の登記と河川区域内の土地の登記/業務を行い得ない事件/所有者不明土地管理命令と管理不全土地管理命令/登記の申請の却下及び取下げ/地籍調査の成果と登記

問題: 土地の滅失の登記及び河川区域内の土地の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。 ア. 土地が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、その滅失の日から一月以内に、当該土地の滅失の登記を申請しなければならない。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし

準確定申告とは──誰が、どこの税務署へ出すのか(亡くなった方の所得税・詳細は税理士へ)

この記事の要点 準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)のその年の所得税について、相続人が代わりに行う確定申告のことです 申告する義務を負うのは相続人で、包括受遺者(遺言で遺産の全部または割合で財産を受け取る人)も同じ立場に立ちます 相続人が2人以上いるときは、付表を添えて全員が連署した1通を出すのが原則で、他の相続人の氏名を付記して各別に出すこともできます 提出先は「被相続人の死亡当時の納税地」を所轄する税務署です。相続人自身の住所地の税務署ではありません 相続放棄をした人は、民法939条により初めから相続人でなかったものとみなされるため、相続人としての申告義務を負いません 申告が必要かどうかの判断・税額の計算・申告書の作成は税理士の専門分野です。具体的な内容は税理士にご相談ください 結論から言うと、準確定申告で最初につまずきやすいのは「4か月」という期限そのものよりも、誰が申告する立場なのかとどこの税務署に出すのかという2点です。とくに提出先は、相続人が住んでいる場所の税務署ではなく、亡くなった方が亡くなった当時の納税地を所轄する税務署になります。ここを取り違えると、期限を意識していても手続きが空回りしてしまいます。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし

実家じまいの進め方──売る・貸す・住む・手放すの4択と登記

この記事の要点 実家じまいの選択肢は「売る・貸す・住む・手放す」の4つ。どれを選んでも、相続登記で名義を相続人に移すことが出発点になります 相続登記は義務です。取得を知った日から3年以内に申請しなければならず(不動産登記法76条の2第1項)、正当な理由がないのに怠ると10万円以下の過料の対象になります(同法164条1項) 「手放す」=相続土地国庫帰属制度は土地だけの制度で、建物が建ったままでは申請できません(相続土地国庫帰属法2条3項1号)。承認申請そのものを専門家に代理してもらうことはできないとされています 「貸す」には期間を区切る「定期借家」という選択肢があります(借地借家法38条)。ただし賃料の設定や契約内容の設計は不動産の専門家の領域です 「何もしない」は5つ目の選択肢に見えて、実際には登記の義務も空き家の管理責任も残ったままになります 親が住んでいた家をこの先どうするか。いわゆる「実家じまい」で最初に決めるのは、売る・貸す・住む・手放すのどれを選ぶか、という4択です。そして4つのどれを選んだ場合でも、共通して先にやることが1つだけあります。相続登記で名義を親から相続人に移すことです。名義が親のままでは、買主への所有権移転登記を入れることも、貸主として誰が契約するのかをはっきりさせることもできません。国に引き取ってもらう場合も、名義を整える義務そのものは別に残ります。 ...

2026年8月12日 · ひぐらしさとし

「対抗することができない」とは──「登記がないと主張できない」の意味を条文で読む【不動産登記の条文で解説】

この記事の要点 条文の「対抗することができない」は、「無効になる」という意味ではない 「当事者の間では有効だが、当事者以外の一定の人(第三者)に向かっては権利を主張できない」という意味 不動産について定める民法177条では、登記が「第三者に対抗する」ための条件(対抗要件)とされている 法律の条文には、「第三者に対抗することができない」という言い回しがくり返し出てきます。日常語の「対抗」は、張り合う・対決するといったイメージですが、法律の世界では意味が違います。結論から言うと、「対抗する」は「権利や出来事を、相手に向かって主張して認めさせる」という意味で、「対抗することができない」は「当事者の間では有効だが、当事者以外の人(第三者)には主張できない」ことを表します。これを「無効」と読み違えると、条文の意味を大きく取り違えてしまいます。 ...

2026年8月11日 · ひぐらしさとし

登記の『連件申請』とは?──同じ不動産で複数の登記を続けて出すしくみ

この記事の要点 連件申請とは、同じ不動産について二つ以上の登記を、前後の順番がわかるようにして同時に申請する扱いの実務上の呼び名 前の登記で名義人になる人が後の登記で権利を渡す側になるときは、後の登記に必要な登記識別情報を「提供されたものとみなす」定め(不動産登記規則67条)があり、前の登記の完了を待たずに申請できる 前の申請が取下げ・却下になると、後の申請もそのままでは登記できなくなるため、書類は最初に一度でそろえておく必要がある 不動産の売買や相続の手続きで、司法書士から「この登記とこの登記を連件(れんけん)で出します」と言われることがあります。結論から言えば、「連件申請」とは、同じ不動産について複数の登記の申請を、どちらが先でどちらが後かをはっきりさせたうえで同時に法務局へ出す扱いのことです。なお、これは実務で使われている呼び名で、不動産登記法・不動産登記令・不動産登記規則の条文に「連件」という言葉が出てくるわけではありません。 ...

2026年8月11日 · ひぐらしさとし

土地家屋調査士試験 試験対策 第110回──建物の表題部の変更の登記/調査士法人の業務及び解散/地上権及び区分地上権/地図の写し及び登記簿の附属書類の公開/測量標の保全と測量成果の使用

問題: 建物の表題部の変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものはいくつあるか。 ア. 建物の家屋番号について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人は、当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。 ...

2026年8月11日 · ひぐらしさとし

遺言書保管制度の「通知」を使いこなす──関係遺言書保管通知と指定者通知のちがい

この記事の要点 法務局に預けた遺言書についての通知は2種類。「関係遺言書保管通知」と「指定者通知(遺言者が指定した方への通知)」で、届くきっかけがまったく違う 関係遺言書保管通知は、相続人などの誰か1人が閲覧や証明書の取得をしたときに、ほかの関係者へ届く。特別な申込みは不要 指定者通知は、遺言者が生前にあらかじめ指定した人へ届く。執筆時点(2026年8月)で3名まで指定でき、遺言者が希望した場合にだけ実施される どちらの通知にも、遺言書の「中身」は書かれていない。届いたら遺言書保管所で閲覧か遺言書情報証明書の請求をする 誰も動かなければ関係遺言書保管通知は届かない。だからこそ、保管申請のときに指定者通知を申し込んでおく意味がある 法務局に遺言書を預けたあと、その遺言書の存在は家族にどうやって伝わるのでしょうか。答えは「2種類の通知」です。ひとつは相続人などの誰かが動いたときに届くもの、もうひとつは遺言者が生前に指名した人へ届くもの。この2つは、届くきっかけも、事前の手続の要否もまったく違います。 ...

2026年8月11日 · ひぐらしさとし